しゅごキャラ!キュンキュン 第三十三話「それぞれの戦い」 |
作者: My heart egg 2017年12月09日(土) 13時00分47秒公開 ID:y.W.qTLzo2E |
しゅごキャラ!キュンキュン33 第三十三話「それぞれの戦い」 光輝が唯世達と離れた時、唯世達は光輝の帰りを待たずに下校することにした。 なぎひこ「日黒君のことはいいのかい?」 唯世「うん。光輝君は大丈夫だよ。先に帰ってごめんって、後で僕から謝っておくよ」 なぎひこ「そうか。ところで、この後空いてる?」 唯世「いや、ガララ君のお見舞いに行かなくちゃ。よければ藤咲君もどう?」 なぎひこ「やめておくよ。ムララちゃんにバレたら、ちょっと大変だからね」 空海「そうだよなぁ。女装だも………イタタタッ!お前、動きが速い……」 なぎひこ「バスケをしていたからね。相手の背後に行くのは簡単なことさ。でも、ガララ君のことは、心配だね」 唯世「入学式で、ガララ君を全校生徒の前で紹介することになってるんだけど、ずっと寝込んでるままなら、行けないだろうなってところなんだよね」 なぎひこ「そうか。まぁ、話し相手になってあげることが大事だね」 唯世「そうだね。じゃあ、僕そろそろ行くね」 唯世はなぎひこ、りま、空海に手を振り、ガララのいる松野家へ向かった。 聖夜学園から数十メートル歩くと、松野家が見えた。 ドアをノックすると、中からマララの声が聞こえ、彼女がドアを開けた。 ムララ「どうぞ。お兄ちゃんは二階にいるよ」 唯世「ありがとうムララちゃん」 唯世は二階への階段を上がり、ガララのいる部屋へと行った。部屋のドアは開けっ放しだった。 唯世「やぁガララ君。気分はどう?」 ガララ「タダセ。いつもありがとう。今は大丈夫だよ」 唯世「それは良かった。今度入学式でガララ君に全校生徒の前で自己紹介してほしいんだ。あ、無理はしなくていいけど」 ガララ「そうか。もう春休みが終わったんだね。でも、まだ僕の身体は動かない。ずっと、傷だらけのままだ」 唯世「…………ガララ君は、どうしてエンブリオがほしいの?」 ガララ「………お父さんのような、強い人になりたいんだ」 唯世「強い人に…」 キセキ「そうだ。その通り!王は強くなくてはならん」 唯世「こら、キセキ!」 ガララ「いや、キセキの言う通りだよ。今ここにアサンがいないから言えることだけど、僕が生んだたまご、僕のなりたかったキャラはあんなのじゃなかったって、最近気がついた。肉体的に強くなるんじゃなく、精神的に強くならなきゃって思ったんだ」 唯世「ガララ君……」 ガララ「僕……もう学校に行かずに、国に……帰ろうかな」 ガララの目には涙が浮かんでいた。唯世はそれを見て、そっとハンカチをガララに渡した。 唯世「少しずつ、少しずつでいいから、強くしていこうよ、君の心を」 ガララ「タダセ、ありがとう」 ガララは、自分の心と戦う決心をした。その時にはもう、ガララは泣き止んでいた。唯世もガララの肩を優しく叩き、励ました。しかしここで、唯世はある事に気がついた。 唯世「そう言えば、さっきアサンがここにはいないって言っていたけど、どこにいるの?」 ガララ「分からない。でも考えられる場所が一つある。きっと、そこに違いない」 ガララは窓から見えた看板を見つめていた。唯世もそちらに目を向ける。見えたのは、英語でEgg Makerと書かれた看板とエッグメーカー社の本社ビルだった。 一方その建物内には、監禁状態の光輝がいた。 気を失っていた光輝は目を覚ましたばかりだった。光輝は辺りを見渡した。 分かったのは、ここが拘束室と呼ばれていること。ずっと上の方には、監禁されている者を監視するためのガラスがある。今は電気が点いていなくて、番人もいないが、そこまで到達するのは無理だろうと光輝は考えた。さらに光輝はある事に気づいた。服装は白衣を羽織っているだけで、三つのこころのたまごが無いということだ。 光輝が為す術がないと感じた時、監視室の電気が点き、尋問官が現れた。尋問官を務めていたのは、黒髪のあむだった。 黒あむ「拘束者日黒光輝。エンブリオを持つ男の子の居場所を教えろ」 光輝「その前に。話が違うよな。オリジナルあむちゃんの居場所を教えろ!」 彼女は何も言わなかった。その代わりに大音量の不協和音を拘束室に流し、光輝を苦しめた。 数分後、苦しみ疲れた光輝に、彼女はもう一度尋問した。 黒あむ「質問を変えよう。エンブリオを持つ男の子が隠れている場所はどこだ」 光輝「質問の意味……変わってねーじゃねーか。教える気は無……ッ!?グアアァッ、アアアアッ!!」 今度は彼女は、光輝が話し終わる前に不協和音を流した。 耳を劈く不協和音を二度も聞いた光輝の身体はボロボロだった。 光輝が三度目は勘弁だと思った時、建物内に警告アナウンスが鳴った。 「侵入者発見。侵入者発見。総員直ちに配置につけ。繰り返す……侵入……シャ…ハッケ」 このアナウンスにより、監視を続けることが出来なくなったあむは移動を開始した。侵入者の出た所へ向かったのだろうと光輝は思い、その後拷問からの解放を喜び、息を吐いた。 光輝が息を吐いた時だった。扉の無いはずの拘束室に、隠し扉が現れた。光輝はそこへすかさず飛び込んだ。 扉を開けると、なんとそこには、光輝が来ていた制服と三つのこころのたまごが入っているかごがあった。光輝は急いで制服に着替え、しゅごキャラ達を解放した。 タイムラル「ふぅ。やっと出られた」 光輝「お前達、たまごから出られなかったのか?」 ミネルヴァ「話は後だ。今はここから出るのが先だ!」 光輝「分かった。よし、タイムラル、走るぞ」 タイムラル「よっしゃー、ひっさびさ!」 光輝「俺の心、アンロック!」 光輝はフォーチュネイトスピーディーにキャラなりし、全速力で、先に続く廊下を走った。 ずっと走っていると、横に開くドアが見えた。そのドアは近づく前に開いた。 光輝「よし、この辺で止まるぞ」 光輝はタイムラルに合図を出し、ブレーキをかけて止まり、開いたままのドアに近づいた。 光輝が部屋へ入ると、後ろのドアは閉まった。部屋の中はひんやりしていて何も見えなかったが、すぐに電気が点いた。しかし、その電気はある物を照らすためのものだった。光輝が見たもの。それは、何体ものクローンだった。 光輝「こ、こいつら……動かない……よな?」 光輝の身体は、ずっと震えていた。 |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |