Re: 短筆部文集 3冊目 (行事があってもマイペースに製作中!) ( No.37 ) |
- 日時: 2007/12/22 23:49:52
- 名前: 玲
- 参照: http://yamituki.blog.shinobi.jp/
- ある組織に、凄腕の殺し屋がいると聞いたことがある。
しかしそれも2、3年前の話で、噂では組織に処刑されたと、そう言われていた。
"黒猫"は、驚愕と恐怖と緊張と――三つの感情を持ち合わせた少年にゆっくり近付いていく。 相手が何者か知らなかったとは言え、伝説の暗殺者に銃を向けた自分の末路を、リエンは考えずにはいられなかった。 驚愕で目を見開き、恐怖で水分が頬を伝い、緊張で身が強張る。 銃は盗られたが、腰にまだ剣が残っている。けれど動かない身体には、喩えオリハルコンの武器を持っていたとしても全く意味をなさず。
死ぬことが恐ろしいことだと思ったことはなかった。 ただ最も恐れなければならないのは、自分が死ぬことによって"あの人"のことまで忘れてしまうこと。 "あの人"と過ごした日々の記憶、思い出……全ては塵と化し、風に掬い上げられて消えてしまう。 ……それだけは、なんとしても避けたかった。
死を恐れず記憶の消失を恐れる少年と、伝説と謳われた殺し屋が視線を交じ合わせた。 そして――次の瞬間の"黒猫"の行動は、少年が思っていたこととはあまりにもかけ離れていた。
――は……?
思わず間抜けな声が口から出てしまいそうな程、突拍子のない行動。 "黒猫"はリエンの横を通り過ぎると、そのままベッドにぼすっと音を立てて座ったのだ。 今まで眼前にあった鋭い気配が、今は横からする。 何の真似だと思い、そう尋ねようと唇を振るわせた瞬間、"黒猫"が言葉を放つ。
「こんなとこで何やってんだ? いっくらオレが紳士とはいえ、女に夜這いされたら冷静でいられるかどうか」 「……はぁ?」
今度は嫌でも漏れてしまった。 一瞬彼が何を言っているのか理解出来なくて、凍り付いていたリエンに追い討ちをかけるように彼は続けた。
「それでもいいってんならオレはいいけどな。見たところ上等な美人さんみたいだし? だいかんげ……」
全部言い終えることはできなかった。 その前にリエンの拳が"黒猫"の頭を襲い、皆まで言わせなかったからだ。 わなわなと震える拳を握り締め、リエンは"黒猫"と正面から向かい合う。
「てっめわざと言ってんのか!? どこをどう見れば俺が女に見える!」
言われた本人はきょとんとして、暗闇の中でリエンを凝視する。 それから、本当に今気付いたように、
「……へ? "おれ"? え、まじ……?」
(>>33の続き)
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