それは必然? ( No.68 ) |
- 日時: 2008/02/25 15:58:16
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 「…………今度は客として来てくれ、とは言いましたが」
早過ぎやしませんか。 そう言うクロスに肩を竦めるだけで返し、自分たちは真夜中の病院内部へとやって来た。 あの撥ねられた男が運ばれた病院、だ。 「撥ねた馬鹿バイクを捕まえたいんだよ」 「警察に任せればいいでしょうに」 「僕がナンバーを覚えなかった所為で捕まらなかったら寝覚めが悪い」 不機嫌にそう言い放つと、男の病室へと足を進める。 やはりかなりの重症らしく、沢山の機械が彼に絡み付いていた。とても痛々しい。 「ねぇ、暁。この人が相手覚えてなかったら?」 「…………どうしようか」 ティアナちゃんの言葉に苦笑しつつそう返す。けれどもしそうなったら、クロスに土下座でもなんでもして犯人捜しに協力して貰おうとは思っている。 仕方ないなぁ、なんて呟くと、ティアナちゃんは男の額に手を置き、彼の記憶を自身の中に取り込んでいく。 具現化したデータ体である彼女にとって、その作業は朝飯前と言っても過言ではない。 暫くして、ティアナちゃんはこちらを見た。 「………………暁」 「何?」 まさか覚えていなかったのだろうか。そう思い真剣な目を向ければ。 「この人、『暁千影』って言って、綺世のマネージャー…………」 思わず止まる。動きも思考も。 けれどすぐに気付いた。彼女がとても複雑そうな顔をしているのを。 無言で先を促せば、そのままの表情で続ける。 「今、一番忙しい時期なんだって。なのにこんな事になって…………。ね、暁、この人の仕事、代わりに出来ないかな? あたしがコピーしたこれまでの綺世の記憶、暁にダウンロードするから」 駄目? と。上目遣いに頼まれて断ることなんてできなかった。 それに、これも何かの縁なのだろうと思う。歯車が噛み合ってしまったのだ、と。 頷けば、ティアナちゃんは男の額に置いていた手を離し、今度はこちらの額に当て始める。 「暁千影」の綺世に関する記憶が流れ込んできた。曲も仕事も、どんな些細なことも。彼はマネージャーとして優秀だったのかもしれない。綺世のことをずっと見守り続けている。 記憶のダウンロードが終わり、クロスを見れば、やれやれとでも言いたげに肩を竦められた。 「他人の身代わりって結構大変ですよ?」 「解ってるよ。でもほら、僕って結構器用だし」 「そうだね、普通の人の記憶に残らないようにすること、出来るもんね」 ティアナちゃんの言葉に苦笑しつつ、「暁千影」に近寄り、その手を取った。
「それでは綺世の代理マネージャー、何でも屋暁が引き受けました」
少しだけ、その手に力が入ったような気がした。 病院を後にした後、「暁千影」と他人が認識するように自身の纏う空気をクロスに手伝って貰いながら変質させたり、トワイライトがとんでもない情報を持ってきたり、それによってとある事件を通して仲良くなった十文字兄弟を巻き込まなくてはいけなくなったりと色々あったが。 それはまた、別のお話。
――――――――――――――――――――――――― (>>67の続き)
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