幼い自分が決めた道を今も ( No.85 )
日時: 2008/03/04 19:36:07
名前: 一夜◆KFb2oRyLnqg

あれから2年の月日が流れた。



廃墟となった建物の中に彼女はいた。
腰まで垂らした金髪が朝日によってきらきらと輝く。
綺麗な顔のあちこちには傷やら泥やらがついていた。
建物の中は静寂に包まれていて、それに守られるかのように彼女は眠りこけていた。
崩れた天井の隙間から空が見えた。
その隙間から雫が一粒落ちてきて、それは彼女の頬にぽつりと当たった。

「ん・・・・・・。」

ゆっくりと彼女は目を開けた。
紫色の瞳が雫が落ちてきた方を見上げる。

「今日は、雨か・・・。」

その言葉が放たれた瞬間、彼女が放った言葉が呪文かのように雨は音をたてて降ってきた。
すると、建物の入口からかたっという音がした。
彼女はゆっくりと目線を音がしたほうに動かす。
入口から一人の少女がびしょ濡れの状態で入ってきて彼女に言う。

「雨、急に降ってきやがった!ったくこのアタシがびしょびしょになっちまったじゃねーか!」

胸元まで垂らした漆黒の髪と赤紫色の目をもつ少女はお世辞でも綺麗とは言えない言葉を放った。
そして続けて言った。

「・・・よくこんな所に住んでられるな、一愛。」

彼女―――一愛はぼそりと「別に。」と呟いた。
そんな一愛にわざとらしいため息を少女はついた。

「なんでお前はそういう言い方しかできないかねぇ?」

少女は自分の着ていたロングコートで体中を拭きながら言った。
一愛は何も言わずにただ一点を見つめていた。
肩でため息をして目を伏せて一愛は

「あっ、そ。それよりさ・・・まだ夜じゃないのに何で来たの、夏夜。」

少女―――夏夜と一愛はいつも夜じゃないと会うことはない。
そのため、朝に会うということは珍しいことだった。

「そうそう!一愛にとって良い速報が入ったんだよ!」

夏夜は体中を拭く手を止め、にやっと笑いながら一愛のことを見て声のトーンを上げて言った。

「・・・今夜は狩りだ!ヤツら、性懲りもなく喧嘩売ってきてさー。」

一愛の体がぴくっと動いた。

「なっ?良い速報だろ?・・・ってかさ、そろそろ殺っちゃおうぜ?」

まっすぐと夏夜の目を見て一愛は妖しく微笑みながら

「アイツらの命だって神から得たものなんだし。・・・綺麗に散らせてやろうよ。」

一愛は立ち上がり、触れたら崩れそうな階段にかけて置いたロングコートを手に取り羽織った。
階段は音を立てながら崩れた。しかし、一愛の妖しい微笑みは崩れることはなかった。



この狩りから一愛は『金色の天使』と呼ばれるようになる。
だがその姿は、天使というよりもまるで
悪魔のように・・・恐ろしかった。


『さぁ、楽しい舞踏会の始まりだよ。・・・お姫さまは一体誰・・・――――――?』




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