ただひたすら後ろを振り向かずに歩んでる ( No.87 )
日時: 2008/03/06 17:52:54
名前: 一夜◆KFb2oRyLnqg

時間って儚いもの。



一愛は空を見上げた。綺麗な夜色を隠すかのように黒く分厚い雲が重なっていた。
これから起きることを表すかのように。

「・・・夏夜、本当にここでいいの?」
「あぁ。だってヤツら、ここで待ってろよっつってたし。」

空を見上げていた紫色の瞳を少しだけ下げた。
次に一愛の視界に入ったのは、大きな一本の桜の樹だった。
鮮やかな桃色の花びらが咲き誇っていた。
・・・何故、あんなに雨が降ったのにこの桜は咲き続けるのだろう。

「それより、遅くね?まさかアタシらにびびって逃げた?」

ニィっと笑いながら夏夜は余裕に言った。
その瞬間、ぶわっと勢い良く風が吹いた。
その風とともに胸を包帯でサラシのように巻きつけ、その上には白のロングコートを着た何十人ものヤツがいっせいに現れた。

「誰がお前らにびびるんだよ?」
「・・・・・・・桜東軍、やっと来たか。」
「へぇ、随分余裕なんだね一愛ちゃん。」

薄茶色のショートヘアに桃色の目をもつ少女。
いや、桜東軍の頭領―――華憐は一愛のことを睨みながら呟いた。

「別に・・・。それよりさ、面倒だからさっさと終わらせようよ。・・・どうせ私と夏夜の勝ちなんだし。」
「ふざけんなよ、そう簡単にはいかねーよ。」

華憐は手を上に掲げてぱちんっと鳴らした。
それが合図だったかのように、さらに何十人もの桜東軍が現れた。

「んなっ!?前はこんなに数いなかっただろ!?」
「お前ら二人に殺るために別の軍のヤツらを入れたんだよっ!」

同時に華憐は夏夜を木刀で殴りつけようとする。

「!?」
「まず、一匹目・・・。」

覚悟を決めたかのように夏夜が目を伏せた。
だが、もう殴られててもおかしくないのに殴られていない。
夏夜はゆっくりと目を開く。
そこには、木刀で華憐の木刀を止める一愛の姿があった。

「ひ、一愛・・・!?」
「夏夜は、傷つけさせない。」
「くっ、そ・・・。てめぇら、いっせいにかかれ!!二人を殺すんだっ!!」

何十人もの桜東軍が二人にかかっていった。
そんな中、夏夜は申し訳なさそうな表情で一愛の背中を見た。

「一愛・・・。」
「夏夜、油断したら死ぬよ。それとも・・・死にたい?」

一愛は夏夜を見ずに言った。それに答えるかのように夏夜は木刀を構え

「んなワケねーだろ?」
「そう。それこそが夏夜だ。」

一愛と夏夜。
二人はお互いの背中を合わせ

「「いくよ。」」

そう呟いた。



時が経たなければいいのに。
経てば経つほど彼女は変わっていく。
・・・大事な仲間を傷つけてしまう。


『これだけじゃ足りない。私の憎しみを失くすにはもっと、もっと・・・――――――。』



>>85の続き)