Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.88 )
日時: 2008/03/06 20:59:08
名前: 三谷羅菜

 何故だ。どうしてそんな事になった。
 問いかけても答えは見つからない。それ以前に、自問自答している場合でもない。喉元めがけて迫ってくる手刀をどうにか避けて、叫ぶ。
「…………ッ! マリオロスト!」
 名前を呼びかけても変化はない。黒い瞳は虚ろなまま、ただ彼女の命を狙って手刀が繰り出される。手刀と言っても彼のそれは刃物と同然だった。避け損ねて肩を僅かに掠っただけ、それだけにも関わらず服に赤いものが滲む。
 舌打ちをして、大きく跳躍して距離を取る。ほんの数メートル離れた先で、マリオロストが腰のベルトに挿した短刀を引き抜くのを見た。思わず手が背負った長槍の柄へと伸びる。
(……何やってんだ、あたしは)
 胸中で毒づいて、長槍を掴んだ。鞘は払わずに長槍を地面に放る。この状態では、相棒同然の武器も足手まといでしかなかった。
 こちらへと距離を詰めてくるマリオロストを見据えて、彼女は口の中で呪文を唱えた。前にも一度、彼が『戻って』しまったことがある。その時にそれは洗脳によるものである事も知った。その洗脳が魔術的なものならば……【解除】することも可能かも知れない。
 左手の手刀、それを掴んで自分の方へと引き寄せる。次の瞬間に短刀で刺されることは覚悟していた。それでもわき腹に走った痛みに顔をしかめる。それでも手は離さない。
「いい加減、目を覚ませ……!」
 叫んでから、彼女は右の掌を彼の胸に叩き付けた。

★★★
懐かしい連中投下♪