Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.90 )
日時: 2008/03/07 18:02:37
名前: 三谷羅菜

「…………っ」
 息を呑む様な声が聞こえた。視線を彼に向けると、虚ろだった目に光が戻っている。
「リ……ゼ……っ!」
 わき腹に刺さった短刀が抜かれるのがわかる。引き攣れるような痛みに悲鳴を上げそうになったが、同時に身体から異物が抜かれたことに安堵する。
 ……いや。
 安堵したのは、そのせいではなかった。
「……なんて顔してんだよ、馬鹿」
 数歩後ずさり、呆然とこちらを見ているマリオロストに向かって苦笑する。それから一瞬で距離を詰め、彼の鳩尾に膝を叩き込んだ。何の反応も出来ずに身体を「く」の字に折ったマリオロストの首筋に、手刀で駄目押しの一撃を加える。完全に意識を失った彼を肩に担いで、空を見上げた。
 ぽつりぽつりと、雨が降ってくる。
「ただの悪夢って事になれば良いんだけどな」
 こんな事を、覚えておく必要はない。
 マリオロストが意識を取り戻したときに、この事を覚えていないことを祈りながら、リゼルは雨の中を歩き出した。

★★★
>>88の続き。
性懲りもなくまだ続くかも知れません(汗)。