「さびしいと死んじゃうなんて迷信!」 ( No.48 ) |
- 日時: 2008/07/01 23:40:27
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 彼女はいつも一人だった。
最初に彼女を見掛けたのは、私がこの組織に入って一ヶ月半が過ぎた頃だっただろうか。近くに女子の群れがあるというのに、ぽつんと一人離れたところに腰掛け、物静かに読書に勤しんでいる姿が視界に入ってきた。 この組織はあまり単独行動を良しとしない。それは裏切りを互いに見張らせる為でもあり、生命を失う確率を下げる為でもあった。 私達の組織に名称はない。所属した者も殆どの場合、本名では呼ばれない。組織や周りから付けられた二つ名で互いを呼び交わす。 そんな組織の構成員である私達が行う活動はただ一つ。「世界の安定と平和を守る」というもの。 頭がおかしいのではないだろうか、と思われるだろうその目的は、けれど真剣に行われている。――――――――目に見えない脅威から、この世界を守るために。 そんなわけで、異端であるはずの彼女は、けれど誰にも咎められることなく一人でそこに存在していた。 最初は気にならなかった。たまたまそうなのだろうと思っていたから。けれど毎回見る度に一人でいるのを確認し、私は彼女に興味を持ってしまったのだ。
「いつも一人です、ね」 思い切って声を掛けたのは、彼女を初めて見掛けた日から一年と三ヶ月ちょっと後のことだ。 それはとても勇気のいることだった。いつも一人でいる彼女に声を掛けるのは、いつも誰かと一緒にいる私にとって、未知の領域に足を踏み入れるようなものだった。 彼女の心地よい空間を壊してしまったら、と思うと、冷や汗が流れてしまう。 「ええ」 そんな私の心情を知らず、彼女は素っ気なく言葉を返す。だから私も深く考えないようにして、会話を続けることにした。 「あなたはどうしてこの組織に?」 答えたくないなら答えなくてもいい、と言外に言いながら、私は彼女を見る。 「生まれたときから決まっていたことだから」 「生まれたときから?」 「そう」 とても意外な言葉だった。 普通は能力などを見込まれてスカウトされるか、何らかの形で組織の存在を知った人間が入ってくるのだ。彼女のようなケースは珍しいに違いない。 「あなたは?」 「私? 私はスカウトされて。……何処をどう見込んだのか、解らないけれど」 本音だった。 私は平凡の中の平凡であると自負している。 「…………ええと。それで、どうしていつも一人なんですか?」 「一人の方が楽だから」 聞けば、彼女はプライベートの時間でも組織の一員として動いている時間でも、基本的に一人でいるらしい。他人と関わる時間が極端に短いという。 それを聞き、私は思わず聞いてしまった。 「それって、淋しくないんですか?」 聞いてしまってから、しまった、と思う。これは聞いてはいけない話題だろう、と。 けれど彼女の答えは簡潔だった。 「淋しくても死なないから」 彼女にとって、自分の寂しさより生死の方が大切で、自分が生きていることによって救えるだろう命が大切で。そう教えられてきたのだろうと解ってしまった。 ああ、なんて淋しい生き方だろうか。 「私でよければ、話し相手、なりますよ?」 同情とは違う、けれどそれに似た感情でそう問えば、彼女は柔らかく笑った。彼女が表情を変えたのは、それが初めてだった。 「ありがとう」 ああ、なんて綺麗に笑うのだろうか! この綺麗な笑顔をずっと向けてもらえるように、私はきっと、これから組織で頑張っていくのだろう。
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<後書きという名の懺悔> こんな訳の解らない文章になってすみませんーっ! 思いっきり内容がスッカラカンだ……。 組織って何、彼女って、私って……という不完全燃焼気味ですが、まあそこは読み手の想像力にお任せいたします。 …………丸投げですみませぬ。 最後まで読んでくださった方、しっかり目の手当をしてくださいね。
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