Re: 『女の子』小説企画*Glace!//参加者募集中 ( No.57 ) |
- 日時: 2008/07/31 23:26:39
- 名前: 色田ゆうこ
ドアをあけたら奥さんがいた。
「ユイくん、おかえり」
ご飯にする? お風呂にする? それとも……まで想像したところで、 そういえばぼくはまだ結婚してないじゃないかと気付いた。
「七緒ちゃん」
名前を呼んで頭を撫でると、七緒ちゃんは照れくさそうに肩をすくめ る。吉原七緒。13歳で中学1年生の、ぼくの従姉妹だ。七緒ちゃんが遊 びに来るのはいつだって夏だった。七緒ちゃんは夏とともにやってくる。
「今日はそうめんだよー」
料理をしていたのだとアピールするように、彼女は身に着けたエプロン の裾をひっぱった。淡くてやさしいライムグリーン。
「そのエプロン、かわいいね」 「いい色でしょ?」
得意げにほほ笑んだ七緒ちゃんは、くるりと一回転して見せてから、足 音を鳴らしてキッチンへ入って行った。 かたい靴を脱いで、ぼくも彼女につづく。
(やさしすぎるみどり、)
あの、秘められたにがみを、思い出していた。淡くてやさしい、包み込 むようなみどりの色。その、やわらかく示された憎しみ。 美しい背中だった。
そういえば大きくなった。相変わらず細いけど。むかし、高校生だった ぼくのあとをついてきては、ユイくんのおよめさんになる、とうるさくて、 うざいとかきもいとか言ってよく泣かせた。
「おつゆに氷いれる? 何個がいい?」
キッチンから顔を覗かせて、七緒ちゃんが言った。髪の毛が揺れる。 髪も伸びた。すっかり中学生だ。女の子だ。
2個がいい、と答えた時に返ってきた笑顔がひどくうつくしくて何かと思った。
彼女のエプロンはライムグリーン。 あの愛らしい球体。
できるだけそっともぎとって、腹におさめてしまいたいくらいだった。 その自由な両足でどこまで走ってゆくのかを、ぼくらが見守っていかなければならかった。 その鋭い酸味を、やわらかくやわらかく、包んでやらなければならなかった。
・ライムグリーンにくちづけ
% 主催者のくせに期限ぎりぎりです(死) しかも23時っていう……← 書き終わって、やっぱり自分、女の子好きだなあ、と実感しています。ちょうすき!(…) 今回はお題のライムグリーンを前面に押し出して(笑)やってみました。 女でよかったです← この企画もできてよかった…! 自分のお題が次々にすてきな文章に変身してて、やべえすげえの連続でした……! ではでは、参加してくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました!
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