12gくらいの恋 ( No.58 )
日時: 2008/08/01 00:04:44
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参照: http://mist26.jugem.jp/



汗をかいた透明なグラスをなぞると、爪の先に雫が溜まった。
ストローのひだを雫のついた爪でひっかく。
その動作を三回。


「私には、わからないかも」

ストラップもなにもついていないピンク色の携帯を見た。
メールも着信もなし。平和だと思った。

想いを伝えるんだ、と言葉を紡ぎ続ける淡い桃色の唇を持つ彼女には、私にはない速さを持っていた。
致命的な速さ。
死に至る速さ。
置いてきぼりをくらったら死んでしまうけど、背景のようになってしまったらお終いだという。

恋は戦争。という文字が脳みその後ろを駆け抜けていったような気がした。

そんなバカな。






冷たいアイスティーをストローでかき回す。
話しかけておいてつまらなそうに雑踏の方へ向く黒い瞳、人は何故だれかを好きだと思うのだろう。
私にはわからない。
ましてや、見たことも無い自分のこころのままに相手の人生を奪うことに喜びが所在するのかどうかなど。

私は私を好きになった人を好きになる。
好きという感情が、いつしか正しいものと探り当てられた暁にという話である。






御門くんのことが好きなの、と確かにそう聞いた。


「…そう、か」

答えを待つ真摯さに心臓はびくびくと大きく早く打った。

純は答えを出すことが小さな頃から苦手だった。
純とあの子は同じではないの、純が好きなものをあの子が好きとは限らないの。
そうか、だったら、と幼い僕は心の中に自分、そして他の人という部屋を作った。

答え≠正解 。

でも、国語も数学もどちらが良いとかは無かった。


「うん」

彼女の視線が机の木目に落とされる。

「わかったよ」

彼女の視線が再び純の眼を捕らえた。

「ありがとう」


でも俺は君の想いにこたえる方法がわからない。







「それは、ちょっと酷いんじゃない」
「どうして?」

シロップの蓋をめくって一口も飲んでいないアイスティーに注いだ。
外にいたときには汗をかいていた首筋は今はさらりと乾いていて、クーラーの風が私と純の髪を揺らした。

「…わかりもしないのにお付き合いだけします、なんて」

彼女が欲しいだけみたいじゃないか、俺はそんなにがっついてないよ。
ちり紙を引っ張って千切る。
私にだって好きだとか恋してるとかわからないし、そのときが来るまでわかろうとは思わない。
でもその幼稚なくせの治らないてのひらで私に触れてみて欲しいなんて、どうして。
恋心がわからないからと理由をつけて可愛い子をみすみす逃がすようなしょうもない君に。

「だったらわからないって言えば良かったんだ」


ストローを思い切り吸った。
甘い重たい液と微かに渋い紅茶の味が混ざった。

甘すぎ、まずい、

むせ返ってみせて涙を拭いた。彼が笑った。
uccガムシロップ12g入り、そうか、恋心は12gのシロップなんだ。

でも教えてやらない。





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ぎりぎりの主催者のさらにあとっていうかあのその期限すぎてるっていうかえーと…

ごっ…ごめんなさいいいいいいいいい!!!!!←

あのまだ受理していただければなぁと思います…。
何度も何度も主人公が男子になりかけてとっても苦しい戦いでしたが(←)最後まで書けていい経験になりました。
遅くなってしまいましたが素敵企画をありがとう!また何かあったら挑戦したいです♪