(付き合い始めて何日目?) ( No.22 ) |
- 日時: 2007/07/22 15:47:20
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- オレのクラスメイトに彼女が出来た。
そのクラスメイトっつーのは、同い年な筈なのに何処か達観していて、冷静でクールで格好良くて。 実際、女子が(同学年も先輩も一丸となって)夢中になるほどの人気だった。男のオレから見たって美形だし。 ただ、何処か他人と距離を作っているように見える奴だったから、正直彼女が出来たときには驚いたな。 しかもその彼女って言うのが、オレの双子の姉貴の友達で、結構何だかんだでオレとも仲良くしてくれる奴だったんだから更に驚き。 彼女は結構大人しくて目立たないタイプだから、一体何が切っ掛けでアイツが興味を持ったのかオレには解らない。 っていうか、アイツ――――――――恭哉の考えが読める奴なんていないだろ。 分厚い壁を作って、一人でいる時間を好いている恭哉。 オレが話しかけたときだけ壁は薄くなってくれるけど(多分他の女子とかへの対応と同じだ)、会話が終わればすぐに壁が戻る。 だからだろう。 ああもうホント、こんな恭哉の姿なんて想像したこともなかった!
「……ちょっと、聞いてるの?」 「きーてませんでしたー」 「…………殴っていい?」 「それは勘弁っ」
ただいま現在自分から話しかけることが極端に少ないはずの恭哉君に話しかけられてます。 何がどうしてこうなったかって、そりゃあもうすぐ恭哉の彼女である玲奈の誕生日だからで。 玲奈との(友達)付き合いが長いオレに誕生日プレゼントは何がいいかな、と聞いてきたのだ。 玲奈という彼女が出来てから(実際には、その彼女を泣かせた後から)、恭哉のオレへの態度が変わった。 なんて言うか……そう、頼れるクラスメイトに昇格! って感じだ。嬉しかねーケド。 多分あの時に「オレは玲奈の友達なんだぜ〜」みたいなことを言って、尚かつ恭哉に家を教えたのが原因だと思われる。 って冷静に分析してる場合じゃなくて。
「玲奈の誕生日なー。……あー、姉貴は毎年チョコやってるけど」 「チョコ、好きなの?」 「や、甘いもの全般普通に好きじゃなかったかな。女子だし」 「ふぅん。……で、どんなチョコ?」 「チ○ルチョコ」 「………………なにそれ」
だって毎年それなんだもんよ。 オレだって気になって何で毎回それなのか聞いてみたさ。 曰く、「プレゼントはたとえ十円でも十万でも気持ちの入り方が大きい方が高いのよ!」だそうで。 玲奈も嫌がらずに毎回笑顔で受け取っているからきっと、玲奈にとっては確かにそう言うものなのだろうと思う。 だけどいくら何でもチ○ルチョコはどうかと思うんだ、オレでもさ。
「気持ちが入ってりゃ何でも喜んで受け取ってくれるって」 「そりゃあ玲奈は優しいし人の気持ちを第一にするし自分に向けられる好意には積極的に行動しようとするし…………」
あ、地雷踏んだ。 最近は話しかけられる機会が増えたせいか、恭哉の玲奈に対する溢れんばかりの想いを聞かされることが多くなってきた。 っつーかあれだ、プレゼントの話じゃなくて実は惚気たかっただけだろテメー。 等と思っている間にも長々と惚気話は続いていく。 ちなみに今いる時間と場所は昼休みの屋上という絶好の静かなポイント(の一つ)だったりする。 生徒立ち入り禁止だけど、鍵が掛かってたりするんだけど、オレの手にかかりゃあどうってコトないね。 それに、周りがこの惚気話を聞いて恭哉から離れるよりはマシだし。 人垣の中にいるこいつを見るのがオレは結構楽しいのだ。恭哉を囲む壁をしっかり遠くから見れるから。
「はいはい、わーったから。……そーだなぁ、定番としては」 「定番としては?」
くりっ、と小首を傾げる恭哉。 他の奴がやるとただただ幼稚に見えるそれも、何故だか似合って見える(あれ、オレの目って節穴だらけだっけ)。
「ぬいぐるみとか花束じゃね?」 「……ああ、そう言えば結構ぬいぐるみあったかも」
今恭哉は玲奈の部屋の中を思い出していることだろう。大中小のぬいぐるみが置いてあるあの部屋を。 ……うん、女子らしいよな、姉貴の部屋と違って。
「そうか、じゃあぬいぐるみと……お菓子、にしようかな」 「それがいーって」 「ありがとう、礼治」 「うっわ栗宮がオレにお礼言った!」
初めて過ぎてびっくりして腰抜けると思った! そう言ったら呆れた視線を投げかけてくださいました。いらねーっ!
「僕だってお礼を言うときはあるよ」 「言わないときもあるのかよっ!」 「相手によるね」 「っていうか、お前に名前呼ばれたの初めてなんすけど」 「そうだっけ」
今までキミとかキミとかキミとか(あれ、全部二人称じゃん)しか言われてませんでしたけど。 名字ですら呼ばれてねーって、それもどうよ。
「じゃあキミも僕のこと名前で呼んだら」 「え、いいのか?」 「別にどう呼ばれてもいいからね」 「彼女以外興味なしかよ!」 「当たり前でしょ」
がっくりと肩を落とす。 彼女が出来て少しでも変わったんじゃあ、なんて淡い期待を抱いたオレが馬鹿だった。
「まぁ、キミには色々感謝してるけど」 「えっ?」
ボソリ、と呟かれた言葉が信じられなくて顔を上げると、何でもない、と返された。 どうやら聞こえなかったと思ったらしい。 仕方ない、聞こえなかったふりをしてやろうじゃあないか。素直じゃない恭哉君のために! 玲奈と恭哉、付き合い始めてもうすぐ二週間。 恭哉の方に、少しずついい変化がもたらされている、らしかった。
――――――――――――――――――――――――― (>>35へ続く)
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