Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.37 )
日時: 2007/07/24 21:44:25
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参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

それは、ふとした偶然。

偶然その日は任務が無くて、偶然門の外の森を散歩していて、偶然其処を通りかかった。

通りかかった、その場所に。

人が落ちていた。


「・・・・・・・・・・・・・え、何これ」


落ちていた、とは変な言い方だと思うがそういう表現しか出来ない。
まるで上空から投げ落とされたように、薄汚れた外套を身に纏った人が倒れていた。

「ねぇ、この人何処から来た?」

背後の門番に問いかけてみる。・・・・・確か、物凄く長い名前の。
知らねぇ、いきなり降って来やがった、とそっけない返事を返されて、ありがとうと手を振る。

「このままにしてもおけないし、ねぇ・・・・・・」

さてどうしたものか、と思案していると、人影が微かに呻き声をあげて動いた。
「・・・・・あ、大丈夫、きみ―――」
声をかけた途端、人影がびくりと反応して、こちらに手を突き出す。
その手に握られているのは、小振りなナイフ。
酷く汚れて、微かに錆びているその鉄の物質が、がたがたと震える手に握られていた。
長い黒髪の間から覗くのは、見開かれた暗緑色の瞳。
薄汚れた顔の中で一際目立つその瞳は、全てに絶望したような、哀しい瞳をしていた。

「・・・・・・・・大丈夫」

ナイフを握る、震える右手を強く握り締める。
人影がびくりと震えて手を引き抜こうとしたが、そのまま押し留めた。

「大丈夫、此処は大丈夫だよ。・・・・・・何があったの?」

優しく呟くと、人影―――――青年は酷く聞き取りにくい英語で何か呟き、どさりと倒れこんだ。

手放されたナイフを取り上げ、少女は思案していた。

その青年が呟いた、言葉を。


『―――――――――――――――死にたい、』