(イチャつき具合=周りの呆れ度) ( No.83 )
日時: 2007/09/05 23:39:40
名前: Gard
参照: http://watari.kitunebi.com/

 あれをイチャついていると言わずして何と言おうか。





 夏真っ盛りの八月を過ぎ、秋へと移り変わる九月に入っても残暑は猛威を振るっていた。寧ろこれでは残暑とは言えない。
 それぐらいの気温になることも度々な中、丁度予想気温が低い日に恭哉は彼女である玲奈と待ち合わせをしていた。
 公園の木々の緑が風に揺れてざわめいた。
 予定より十分近くも早く来てしまった恭哉は何の気無しに日陰のベンチに座り込んで玲奈の到着を待っていた。特に何もすることはないのか、その目は地面の上で踊る木漏れ日を映している。
 風で樹々が揺らめく度にきらきらと場所と影の濃さを変える木漏れ日はある意味天然の万華鏡のようだった。
 ふ、と視線を地面から前の方へ向ける。
 じりじりと、予想気温が低いと言っても夏日並の太陽に照らされた日当たりのいい公園の地面を挟んで向かい側、そこにあるベンチで一組の男女が並んで座っているのが見えた。
 まず恭哉の最初に目に飛び込んできたのは。

「ぺあるっく…………」

 思わず呆然と幼稚な感じで言ってしまったが、その男女は本当にペアルックだった。同じ赤いTシャツに何かのロゴが同じように入っている。
 何というか、近付きたくない。
 更にその男女は肩をくっつけあって腕を絡め、楽しそうに笑っている。特に女性が楽しそうに見えた。
 何というか、凄く近付きたくない。
 見ていれば、絡めた腕をそのままに、逆の手同士を組み、指を絡め始める。いわゆる恋人繋ぎという奴だ。それを笑顔のまま、くっついたまましている。
 何というか、絶対近付きたくない。
 こんな熱い夏日に何故こんな暑苦しい人間を見なければいけないのか。
 思わず恭哉の眉が寄り、眉間に皺が刻まれた。
 けれど、そんな表情も長くは続かない。

「ごめんなさい! 待たせた?」

 玲奈の声にそちらを見やれば、可愛らしくコーディネイトした服装の玲奈が立っていた。

「ううん、全然。僕が少し早すぎただけだから」

 それにまだ約束の時間まで五分あるよ。
 微笑みながらそう言えば、玲奈もつられるようにして微笑みを浮かべる。

「とりあえずどこに行く?」
「えっと、映画館行ってから図書館なんてどう?」
「……………………電王見ていい?」
「……え。あ、うん」

 そんな遣り取りをしながら先程の男女を見る。
 とりあえず、あそこまで暑苦しいことは自粛しよう。
 恭哉は一人そう思った。

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