(惚気話) ( No.94 ) |
- 日時: 2007/09/12 17:42:11
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 「そういえばさ」
唐突に礼子ちゃんが私に向かって掛けた言葉は、
「あんたから惚気話聞いたことないんだけど」
凄い破壊力を持っていました。 思わず飲みかけのジュースで咽せてしまって、慌てて礼子ちゃんが背中をさすってくれる。 放課後、近くの公園で他愛もない話をしていたときにこの話題。それもジュースを飲んでいるときだったからタイミングが悪い。 炭酸の刺激で喉が普通に咽せるより痛い気がする。
「ごめんごめん、まさかこんな風に咽せるなんて思わなくてさ」 「……思ってやったら、確信犯だよ」 「そりゃそーだわね」
悪びれた風もなく言ってのける礼子ちゃんに脱力しつつ、私はベンチの背もたれに背中を預けた。 …………惚気話、か。
「惚気話、って、実際何をどう言えばいいかわからないの」
素直に言えば礼子ちゃんが怪訝そうな顔をする。
「だって、惚気ってよく解らない。他人に好きな人を自慢しても意味ないでしょう?」 「意味ないってあんた……。世間の恋する女子に謝っときなさい、一応」 「うん、ごめんなさい」
頭を下げてから、あれでもこれを聞いてるのって礼子ちゃんだけだよね、なんて気付いてみる。 とりあえずそれはスルーして、頭を上げてからしっかりと礼子ちゃんの目を見て言った。
「好きな人の素敵なところ、自分だけが知ってればいいと思う。だって、ただでさえ恭哉君、みんなにモテるのに、素敵なところ、みんなが知っちゃったら…………」 「あああ、解ったから解ったから。泣かない泣かない」 「…………うん」
ぐし、と潤んでいた目を乱暴に擦って私は俯く。
「だから、惚気話なんて絶対しないの」 「……玲奈には玲奈なりの思いがあったのね」
しみじみ言うと、礼子ちゃんは手に持っていたコンビニの中華まんが入った袋を押しつけてくる。 慰めてくれていると思うと、やっぱり素敵な親友は持つべきだな、なんて思う。 そうして思うのだ。 礼子ちゃんについての惚気話だって絶対にしてあげない、って。
「悪いこと聞いて泣かせかけたからね。それ、食べて」 「礼子ちゃん……」 「お礼なんて言わなくていいわ」 「…………これ、礼治君へのお土産だって言ってなかった?」
――――――――――――――――――――――――― (>>83の続き) (>>97へ続く)
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