(称号「バカップル」) ( No.97 ) |
- 日時: 2007/09/14 18:54:13
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- うちのクラスの鈴村玲奈に彼氏が出来て、もう二ヶ月になる。
彼氏は学年で、いや、この学校で一番モテるのかもしれない栗宮恭哉。 当初、栗宮ファンの女子は言っていた。「あんな子一ヶ月も持たない」と。 だからオレは「賭ける?」と意地悪く言ってやったのだ。 結果はオレの一人勝ち。……まぁ、賭けたものなんて無いから手元には何も残らないが。 オレはここ二ヶ月、ずっと鈴村玲奈と栗宮恭哉の言動を見える限り見つめ続けてきた。ああいや、違うな。 半年以上前から、だ。
あれ、なんだかいつもと違う? そう思ったのが切っ掛けだった。 鈴村玲奈はとても大人しく、目立つ子じゃない。寧ろ隣にいる渡瀬礼子の方が印象に残りやすい。 いつもはそんな事を考えながらクラスの一部として目に止めていたのだが、その日だけは違った。 鈴村玲奈に、どこからか視線が向かっていたのだ。 別にオレの席が鈴村玲奈の近くだから気付いた、と言うわけではない。寧ろ彼女の席とは結構離れている。 オレは昔から視線にだけは敏感なのだ。自分に向けられるものも、他人に向けられるものも。 だから気付くことが出来た。 通りかかった栗宮恭哉の視線が(恐らく無意識に)鈴村玲奈へと向かっていることに。 それから暫くして、同じように、今度は鈴村玲奈が栗宮恭哉に視線を送り始めた。 そこでオレは興味を持ってしまった。その二人の視線に込められた感情に。 鈴村玲奈が栗宮恭哉に視線を送り始めたのと同じ日から、栗宮恭哉からの視線が何処か意識されたものへと変化した。 感情に気付いたのだろう。自分の中にあった感情に。けれど、鈴村玲奈がそれに気付くのはまだ先だと見える。何故なら視線を向けてはすぐ意図的に逸らすのだ。気付かない振りをしているのかもしれない。自分の中の感情に。 観察を続けていると、一ヶ月近く経って鈴村玲奈が渡瀬礼子に視線に込められた感情を言い当てられる現場に遭遇した。 本当に偶然、たまたま通りかかった廊下でそれを目撃、否、立ち聞きしてしまったのだ。
「あんた、栗宮が好きでしょ?」
ズバリと言った言葉は確認のような響きを持っていた。 それに頷きつつ、オレは会話を盗み聞きする。どうやら漸く鈴村玲奈も自分の感情を認めたらしい。 一通り情報を集め終えると、オレは観察を再開した。
だが、展開を見せたのはそれから約半年後のことだった。
あり得ない、なんて頭を抱えつつ、それでもオレは観察を辞める気はなかった。 周りの栗宮ファンの動向も気になっていたし、それにまだ何か一波乱起きるのではないかという勘があった。 案の定、オレの勘は当たり、鈴村玲奈と栗宮恭哉の間に一悶着あり、ますます結びつきが強まったように見えた。 …………そこまではいい。そこまではよかったのだ。 オレは今、鈴村玲奈と同じクラスであると言うことを激しく後悔している。何しろ授業間休みやどちらかが移動教室であるとき、決まって二人は視線を交わし合うのだ。 最初の方に言っておいたが、オレは自他関係なく視線に敏感だ。敏感すぎてたまに気分が悪くなることがある。 なのに。 奴らオレのいるときに限って頻繁に視線を交わすのだ。 嫌がらせか? 嫌がらせなのか!? ああもうお前等にはオレからバカップルの称号を贈ってやる! だから頼むからクラス替えを今すぐしてその二人から離してくれ!
――――――――――――――――――――――――― (>>94の続き) fin
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