Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.22 ) |
- 日時: 2008/05/14 11:59:41
- 名前: 飛亜
- 「あれ?あの人は?」
暗い部屋に蝋燭の炎が灯った。そのせいか、ヒトの影しか映らない。 「さぁ?あの人のことだから……」 「ふぅん」 どうやら一人は少年、一人は女らしい。 「それより…どうよ?そっち」 「それなりに。そっちは?」 「好調 楽しいわよ」 「怖いなぁ そういうの」 「何いってんの これぐらい耐えなさい。私達は彗様に選ばれた存在なんだから」 「へーい…」 少年は髪をぐしゃっと掻いた。 「そうそう、あの子は?あなたにとって大切な人」 「あぁ…刹那のことですか?だいじょーぶ、必ずこっちに来ます 彼女は人形(ドール)なんですから」 「本当かしらねェ〜?抵抗とか拒否とかするんじゃない?」 「ご心配なく。対策はしてる」 「流石ね 対策が早いわぁ」 「これぐらい先を見ないと後悔するからさ」 「先を見るのもイイケド、見すぎるのもダメよ?未来ってさ、変わるもんだから」 「はいはい…それぐらいわかってる」 「あ わたしそろそろ行かないと…それじゃあね、翔舞」 翔舞と呼ばれた少年は苦笑しながら 「また…」 と一言。そして近くにあった蔓草模様の豪華な椅子に座る 「…待ってろ…必ず迎いに行くからさ……刹那」 椅子の近くのテーブルにあったシャンパンを手に取り、飲み干した
『翔舞…貴方の仇は私がとる だから……見てて…?』 刹那は夕陽を見つめた。
少女は知らなかった。彼が生存していることに。 少年は知っていた。彼女が生きていることに。 二人の…輪(ループ)が廻りだす
+++++ いやーっ!!!(悲鳴)なんだこれ、最悪だっ!駄文だっ!○| ̄|_ すいません!すいませんっ!こんなんで!次…日華さん、お願いします…
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.23 ) |
- 日時: 2008/05/19 19:33:06
- 名前: 日華
- 「…あの、盛り上がってるとこ悪いんですけど」
また一人、半ば強引に仲間が増え、一行は路地裏で個人的な自己紹介などなど、どことなく和やかな雰囲気だった。 その中、少し申し訳なさそうにエリエットが言いだす。皆、どうかしたのかという顔で彼を見る。
「目的忘れてません? あの女の人を自治組織に渡すために来たんですよね…?」
苦笑いを浮かべながらそう言うエリエットを数秒見つめ、数人以外が、ああそういえば、と思い出す。 女を自治組織に渡す、というのも第二の目的だったはずだ。第一の目的な魔物退治。この集団、数人のストッパーがいなければどう逸れていくのだろう。 センリは暮れていく赤い夕日を見上げ、小さく溜息を吐いた。隣にいた萱田が苦く笑った。
「…多分もう無理、かな」
頭を掻きながらセンリはそう言って、え、という顔で見てくる一行の視線から目を逸らした。 詰め所はもう閉まっているはずだ。日没が遅いから、こんなに明るくても時間は遅いはず。 誰からでもなく、溜息が漏れる。その溜息は恐らく、何故こう横道逸れてばかりいるのだろう、という溜息だろう。
「うーん…でももう仕方ないじゃん? とりあえず次のこと考えようよ」
重い雰囲気はいつでもスィッタの言葉で変わるもので、スィッタが笑顔でそう言ったので皆そうだな、と頷く。
「次のことって言ったら…」 「いきなり魔物をやっつけに行くー、なんて無理だからね?」 「とりあえずさ、泊まるところじゃない?」
結論を出したのはウィルドだった。いつの間にやらすっかり馴染んでいる。隣にいたフェローラがそのことに密かに驚いている。 しかしこの大所帯。普通に行動していたってかなり目立つ。武装しているし、何の集団かと、誰もが振り向くはずだ。嬉しくない。 だからと言って分かれるとなるとまた面倒なので、全員で行くことになるのか。
「でも…あの、私お金ないんですけど…」
そう小さく言い出したのは萱田。皆さんはあるんですか、と無言で問うような目だったので、エルティはそういえば俺もない、と呟いた。 様子を見ると、大金を持っている者はいないらしい。皆一人で行動していたので、持っているとしても自分が数日間寝泊まりして食っていける程度。 その金を使うとなると少し気が引ける。やはり、野宿というベタな手を使うのか、と諦めかけていたとき、未だセンリの隣にくっついたままの鬼柳が小さく挙手をした。
「僕、タダで泊まれるとこ知ってるけど」 「え、嘘」
それを早く言え、と誰もが思いながら、安堵していた。とりあえず野宿はせずに済むらしい。
「僕の知り合いで、古い館みたいなところで住んでるから、多分泊めてもらえるよ」 「…なあ、そこってちゃんとした家? ていうかちゃんとした人?」
壁に凭れかかりながら腕組をしたアイが、薄く笑いながら訝しげに訊ねた。隣に立っていたエルティが、人以外って何だよ、と笑う。 鬼柳は、首を傾げながらその住人を思い出していた。半分冗談で言ったつもりが、首を捻られアイは焦る。
「んー…人は人だけど変わった人だから…僕が先に行って説明するね」 「…それって、どういう意味なの?」
フェローラが低く訊ねるが、鬼柳は笑顔を向けただけだったので、余計にフェローラの不安を煽ることになった。
「ま、いいんじゃね? とりあえず寝れれば。知り合いだったらまあ何とかなるだろ」 「そうそう、野宿よりはマシだって」
どこでも寝れればいい、という小ざっぱりした考えの雪人とエルティは、そう言ってまとめてしまった。 フェローラはまだ不満そうにしている。刹那がひょこりと顔を覗き込み、その無表情な顔のまま、怖いの?、と首を傾げた。 ぎょっとしてフェローラは顔を上げ、即座に首を振った。
「そ、そんなことないわよっ、いいわよ別に、そこでも!」
刹那は突然顔を上げて否定したフェローラにきょとんとしてから、くすりと笑った。 彼女が笑ったところは初めて見たので、取り乱していたフェローラもきょとんとしてしまう。なんだ、普通の女の子じゃない。 しかしその笑顔を見たのはフェローラだけだったらしく、他の皆は気付いていなかった。密に、勿体ない、と思う。
「それじゃ、行こ? もう日が暮れるよ」
鬼柳が今まで来た道と反対の道を指差し、そう言ったので、他の者たちも頷いて歩き出した。センリが背負っていこうかと言ったが、笑って断った。 道は覚えているらしく、いくつかの角を曲がり人通りの少ない広い道に出る。 日が暮れかけている所為もあるが、薄暗く不気味だ。無意識に背後を気にしてしまう。何度も振り向く萱田を見て、エリエットはくすりと笑った。
「大丈夫ですよー萱田さん、そんなに怖がらなくたって」 「だって何が出てくるか分かんないような道じゃないですか!」 「何も出ないよ、出るとしたら野良犬野良猫ぐらい…かな?」 「かなって!」 「うるっせえなあ武器はあるだろー?」
ぐだぐだと叫びながら半泣きになりながら笑いながら、一行は暗い夜道を歩く。 そうこう言っている内に大きな影が目の前に見えてきたので、先頭で歩いていた鬼柳が足を止めた。
「そこ。大きいでしょ? ちょっと待っててね、話してくるから」
目の前に見える館はこれまた不気味に大きく、一体何が住んでいるのやら分からない。一同は引き攣った表情で館を見上げた。鬼柳はその館の扉まで走って行ってしまった。 待つしかない彼らは、ゆっくりと開く扉と、そこから漏れてくる明りを遠くからじっと見ていた。
「…俺想像つかないんだけど」 「何がですか、雪人さん」 「いや、どんな人が出てくるか」 「人じゃなかったりね」 「…同感」 「ちょっと刹那ちゃんまでー!」 「…あの、ちょっと、呼んでる気がするんだけど…」
盛り上がっている数人を止め、センリが館の方を指差す。気の所為かどうかという程度にしか見えないが、大きく手を振っているらしい。 かなりの距離があるので、走って向かう。笑っているところからして、おそらく交渉成立だろう。 息を切らして走ってきた10人を確認してから、鬼柳はもう一度にこりと笑った。
「こちら、この家の方ー」
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.24 ) |
- 日時: 2008/05/19 19:35:13
- 名前: 日華
- 扉の影から顔を出したのは少女だった。想像とあまりに違ったので、一瞬疑ってしまう。
少女は長く黒い髪に真っ黒い瞳、無表情な顔は白く陶器のよう。文字通り、人形のような少女だった。 泊めてもらうのだから、それなりのことを言わなければならないと分かりつつも、唖然として誰も言葉を口にすることを忘れていた。 まさか、この少女がこの家に一人で住んでるわけじゃないだろうな? そう考えている内に、少女はにこりと笑顔になり、礼儀正しくお辞儀をした。 反射的に、萱田とエリエットが頭を下げたので、一瞬視線を合わせてから他の者も頭を下げる。おかしなご対面だ。 「えっとー…本当にいいんですか? 泊めてもらって。…かなり大人数ですけど」
一番礼儀正しそうなエリエットが、戸惑いながらもそう言う。 少女は大きな真っ黒い目でエリエットをじっと見据えながら、口元に笑顔を浮かべたまま言った。
「いいわ、楽しい御一行さんたちのようだから。お入りくださいな。あ、私はトルキズアっていうの。よろしく皆さん」
その声は容姿に似合わず大人びていて、違和感があった。少女――トルキズアは鬼柳よりも幼く小柄で、5、6歳といったところだろうか。 トルキズアが背を向けて館に入って行ったので、それに続いて入って行く。 最後に刹那が入ると、重そうな扉はギイ、と音を立てて閉まった。
館の中は想像以上に広く、高い天井、長い廊下、堂々とした階段の踊り場にある柱時計などなど、外見通りのものがある。 逃げ道はなさそうだな、と無意識に考えていた雪人は、その考えに気付き、少しばかり自分が嫌になった。 しかしそう考えていたのは雪人だけではなく、無駄に広い玄関で、ウィルドはさり気無く武器のことを考えた。 身構えているような一行を見て、トルキズアはくすくすと笑った。
「何も出ないわ? 魔物も、幽霊も、殺し屋もね。私が化物だったりしたら、話は別だけど」
その言葉に、引き攣った笑顔になってしまったのは一人や二人ではなかったように見える。 館に入って目の前のど真ん中に見える、幅の広い階段の中心に立って、トルキズアは右手を上げた。
「そちらの廊下を行くと、向かい合わせに5つ部屋があるわ。そこの部屋なら使っていないから、そこを使って。 食堂は反対側の廊下を行けばある。バスルームは奥の廊下。私は二階の、左手の廊下の突き当たりの部屋にいるわ。何かあったら来てくれれば、私大体の時間起きてるから」
手早く説明をしたトルキズアは、質問がないかと訊ねてから、夕食の時間になったら呼ぶ、と言って自室へ戻って行った。 残された彼らがまずすることと言えば、部屋割である。
「んーと、フェローラと刹那はとりあえず一緒の部屋で…あとの人はどうする?」
センリがくるりと振り返って男性軍に問うが、ぱっとした案よりも先に、くじで決めようということになり、即席で作った番号の振られた紙を引いた。 くじの結果、アイとウィルド、雪人とセンリ、エルティと鬼柳、3人部屋はスィッタとエリエットと萱田となった。 それぞれ顔を見合わせてから、部屋へ入って行った。夕食というのはいつか分からないが、まだ暫く時間があるはずだ。
エルティと鬼柳の組は、部屋に入ってから、二人ともベッドに腰かけた。暫く無言でそれぞれ頭の中を整理していたが、やがて鬼柳がごろりと仰向けに寝転がった。 目を閉じているとはっきり言って死んでいるようだ、とエルティは思った。 寝返りをうつように、また向きを変えてエルティに背を向けると、くぐもった生気のない声で呟いた。
「…トルキズアは変な人なの」 「…さっき言ってたね」 「暫く会ってなかった。今日話してわかったけど、何か前までと変わってる」 「――それって?」
顔だけをエルティの方に向け、無表情のまま、
「安全は保障できないかも」
そう言ってから、本当に死んだようにぱたりと力が抜けた。 エルティはじっと鬼柳を見たままトルキズアの笑顔を思い出していた。
■■■ 長い、やたら長い…! お前リレーなのに空気読めよって感じですね本当すいませんorz 切るところが分からなくなった… 新しいキャラまで出しちゃってすいません…何か不穏な空気漂ってますが使うも使わないもご自由にどうぞ…!どうせ使い捨てだと思いながら考えた即席キャラなので…! なんか言いにくい名前だしゴスロリ風味だしごめんなさい…どんなキャラにでもしてやってください煮るなり焼くなり! ちなみに部屋割はリアルにあみだくじなわけです(!) 決めようがなかったんであみだ書いてやりました、不正はしてませんので! 抜けてる方もしいたら教えてください…! 一応全員セリフ言わせたつも…り…なんですが; 鬼柳がやたらとセリフが多いのが非常に気に食いませんねこれ…! なんか分かれちゃったし微妙なところだし、すいません; 栞頑張ってください!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.25 ) |
- 日時: 2008/05/25 20:39:47
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- 「安全は保障出来ないかも」
あっさりと宣言し、そのまま力が抜けたように脱力してしまった鬼柳の台詞を頭の中で反芻しつつ、エルティは静かに己の記憶を辿り始めた。
彼にとって、「記憶」とは寄り合わされた糸のようなものだ。 細い一本の「単語」が寄り合わされて太い糸―――――「記憶」となり、それらは織り上げられて「エルティ・ベルシュタット」という人間を確立させる。 手繰り寄せるように記憶を辿っても、トルキズアという名前の幼い少女は見当たらなかった。 ふと視線を逸らし、ベッドに力なく横たわる鬼柳を見る。 首元に包帯。僅かに見える肌には無数の傷。 正直、不思議な少年だと思う。 年端もいかない幼い子供でありながら、達観したような性格に、この身体の傷。 何よりも、身体から流れ出た――――意思を持ったような、あの血液。 鬼柳だけではない、他の仲間もだ。 どこか謎を抱えたような人物が多いな、と切に感じた。
「…………ま、得体が知れないのは俺も同じか」 ぽつりと呟くと、鬼柳が顔だけをこちらに向けて問うてくる。 「…エルティ、何か言った?」 「いや、なんでもないよ。それより鬼柳、夕食の時間まで散歩でもしないかい?」 こくりと鬼柳は頷いてベッドからゆっくりと起き上がった。 軋む扉をゆっくりと開けて、エルティと鬼柳は廊下へと出た。
「大分暗くなったなー」 薄暗い闇に包まれた風景。 屋敷を一通り見たエルティと鬼柳は、夕食の時間までまだ余裕があるということで、屋敷の周辺だけ、と自制をかけて外に出てみることにした。 館の背後は鬱蒼とした森で、大きく生えた木々が巨大な館に暗い影を落としている。 微かに聞こえる鳥の鳴き声に、エルティの顔が引き攣った。 「何か…ホラー小説の舞台にはばっちりだな」 「…嫌なこと言わないでよ、エルティ」 鬼柳は笑うでもなく嫌そうな顔をするでもなく、淡々と言い返した。
時刻は黄昏、逢魔ヶ刻。
月が出るまで、あと少し。
背後に忍び寄る影に彼らが気付くまで、あと―――――
―――――――――――――――――――――――――― 思い切ってここで終わらせちゃいました!(短っ) とりあえず部屋割りごとに物語を展開してもらおうと思って、エルティ・鬼柳組を散歩させてみました。 全員の話はあえてしなかった よ …! すみませ!(土下座) ではえるちゃん願いします!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.26 ) |
- 日時: 2008/05/28 10:44:06
- 名前: 絵瑠◆OMBM0w5yVFM
- 「なーなー、アイが持ってるそれってギターだろ?」
「……ああ」 「アイ、ギター弾けんのか?」 「……弾けもしないのに重いギターなんて持ち歩くと思うか?」 「なー、ちっとでいいから聞かしてくれよ。俺、生でギター聞いたことねーんだ。」 「…誰が聞かせるか。」 「けっ、ケチ。」 ……もう何度目になるだろう。 一度そっぽを向いて諦めたかと思えば、10分も経たぬうちに同じことを聞いてくる。 ……俺をナメてんだろうか、このガキは。 同い年の男をガキ呼ばわりしつつ、アイは小さな溜息をつく。これでは今夜の安眠も保証できまい。 −−それにしても。ウィルドが拗ねているこの隙に、アイは部屋全体に視線を巡らせる。この屋敷はどうも息苦しい。 自分があの幼女を知らないせいなのだろうが、監視されているような気がして居心地が悪い。 ……それに。 何だかわからないが、嫌な予感がする。 ここにいてはいけないような、妙に何かにせっつかれているような。 堪えられなくなって、部屋を飛び出した。 「ちょっ、アイ!?」 ウィルドが止める声も聞こえない。 とにかく屋敷から離れたくて、森の中を夢中で走った。 蔦に躓いて、転ぶ。この切迫感は何だろうと、考えるだけで泣けてきた。
……刹那、強い風が吹き抜ける。 思わず顔を上げると、少し離れたところに、女性が一人立っていた。 年の頃は20代、遠目からでは服装はよく見えない。 ただ、その綺麗な金髪だけが、妙に頭に残った。 女性はこちらに気付くことなく、そのまま歩いていってしまう。 ……またどこかで会いそうだな。 ぼんやりそんな事を考えて、アイはそのまま、暗い森の中でまどろみに落ちた。
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ツッコミどころ満載でごめんなさ……! アイとウィルドくん(主にアイ←)の話をしてみました。 一応、後半で逢った「女性」っちゅーのはアイリのことです。 なんか、こんなアレですが、Gardちゃん次お願いします!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.27 ) |
- 日時: 2008/06/14 18:27:36
- 名前: 桜
- 参照: http://mist26.jugem.jp/
まどろみの入り口で誰かが佇む。 誰か、は歌うように言葉を紡いだ。
「可哀相な迷い羊、十と、ひとり、ふたり……さんにん…」
聞いた事のない、音だった。
「僕は出口を教えない」 「でも羊を傷つけるのは許さないよ」
アイリは眼に力を込めた。
「…何者だ、貴様」
森のざわめきに浅葱色の髪を靡かせ、少年は質問には答えないまま微笑んだ。
*
部屋の扉を雪人が閉め、センリが溜息を吐いた。
「……つかれたー…」 「ん、お疲れ」
センリは意思の汲み取れない雪人の表情を見つつ、ベッドに腰掛けた。 どちらかといえばまともな方なのかも、と僅かな期待を目の前の男に抱いていたがどうやらそうでも無いようである。 初対面で手首を飛ばしてきた相手が雪人だったことを思い出したのも手伝って、その期待が的外れなものだったことがセンリの中で決定した。
そんなことを思われているのを知ってか知らずか、雪人は休息も取らずに室内をうろついている。 ベッドの弾力性を確かめるように圧力をかけてみたり、しきりに壁を触ってみたり、窓を開けて身を乗り出したり。
「そういえばさ」 「ああ」
雪人は気が済んだのか、自分に割り当てられたベッドへようやく腰掛けた。
「バーの地下で使ってた…、手首? あれって一体何なの…とか訊いてもいい?」 「大丈夫だ。…それと、別に気を使って喋る必要もないぜ」 「そ? なら良かった。気まずくなったらどうしようかと」
俺はそんなに短気じゃねぇよ、と薄く微笑を浮かべた雪人に先程の期待が再び頭をもたげた。
「……あの手首はな、傀儡の一部だよ」 「カイライ………ってあやつり人形のこと?」 「その通りだ。 共同戦線を張るだろうから言っておくが…俺は傀儡を使って戦う」 「…へぇ」
センリは言葉を選びつつ、思考をめぐらせた。 まだ会って一日と経たない相手にこうも手の内を晒すものなのだろうか。 信用されていると喜ぶべきか、何か別の意思があるのかと勘繰るべきなのか、思考の両端で意見がぶつかった。 出来れば前者であって欲しいなどと思いながら雪人の赤い瞳を覗き込んでも、答えは出なかった。
センリが何か言おうかと口を開きかけたその時だった。
「何の音だ?」 「隣、かな…? 誰だっけ」
乱暴に扉を開ける音、誰かが駆けて出てゆく足音が響いた。 呼び止めるような声が聞こえる。
「ウィルド…?」 「つーことは今走ってったのは…アイ、だな」 「…どうしたんだろ」 「財布パクろうとしたり脱走したり……面倒な奴だな」
雪人がぼやき、それとほぼ同時に部屋の扉が開かれた。困った表情のウィルドがいた。
「なぁ!アイの奴がどっか行っちまったんだけど…っ、」 「……探しに行けって事か?」 「知ってて放っておく訳にも行かないでしょ…」
オレが怒らせちまったからかな、と少々申し訳無さそうなウィルドとどうでも良さそうな雪人を眺めながら、センリは大事に至らないことを祈るばかりだった。
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取り敢えず遅れまくってしまって本当にごめんなさい! 冒頭でモクくん出してみました。 キャラちげぇよ!って感じだったら遠慮なく言ってやって下さい〜。 ほんとはエルティさんと鬼柳くんも書きたかったんだけども自重しました(←) ではではお次、Gardにバトンタッチします♪よろしくです。
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.28 ) |
- 日時: 2008/06/29 23:51:43
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 黄昏を迎えた館は時間の経過に従い、闇に包まれていた。
後は深まるだけの暗さに包まれた外の景色を一瞥し、雪人は嘆息する。 「仕方ねぇ、探すか」 「よし、そうと決まれば早速!」 自分が原因だと思っているらしいウィルドが先頭切って館の廊下へと再び出る。それを追って雪人も廊下へと出たが、同室のセンリは出てこなかった。 ウィルドも雪人も顔を見合わせ、部屋を覗き込む。 鬼柳に対する態度といい、ここでアイを見捨てるような奴ではないと思っていたのだが。 そんな二人の疑問を氷解するべく、雪人の方に丸い何かが飛んでくる。 「おっと」 何とか叩き落とすことなく受け取ると、雪人はそれに視線を落とす。 何処からどう見ても、それはエリエットから貰った水晶玉だった。 「…………投げるなよ」 「ごめん」 本当に悪いと思っているのか判別しにくい表情で言うと、センリは二人の方へ歩いてくる。もちろん、その手には雪人と同じように水晶玉が乗っている。 ウィルドが疑問に思ったのか首を傾げると、雪人は納得がいったように頷いた。 「どういう事だよ」 「つまり、手分けして探そうって事だろ。な、センリ」 「ああ。二度手間にならないように、連絡とる手段、必要だろ?」 「……成る程」 エリエットから貰った水晶玉の機能は、同じように水晶玉を持った人物同士の連絡だったはずだ。それを使えば誰かがアイを見つけたとき、すぐに集合できるだろう。理に適っている。 ウィルドも自身に割り当てられた部屋へと戻り、同じように水晶玉を持ってくる。その際、少し眉間に皺を刻んで。 「どうした?」 雪人の言葉に、今にも文句を言いそうな表情で口を開いた。 「アイの奴が持っていってたらいいな、って思ったんだけど、やっぱり持っていってなかった」 「……飛び出したんだろ? んな暇ねー筈だぜ」 「あ、そっか」 酷く単純なことに気付き、それもそうだよな、等というウィルドに溜息を吐きながら、雪人はセンリと顔を見合わせた。 「んじゃ、俺こっちを探すから」 「解った。気をつけて、雪人」 ひらり、と手を振り、雪人はセンリに背を向けて廊下の向こうへと消えていく。 それを見送ってから、センリはウィルドに声を掛けた。 「それで、ウィルドは何処に行くんだ?」 「…………あ! 雪人はどっち行ったんだ?」 「あっち」 雪人が消えた方を指さし、センリは首を傾げて問いの答えを要求する。 はしり、と瞬きをし、ウィルドはじゃあ、と雪人が消えたのと逆の廊下の端を指さす。 「俺、こっちにする」 「解った」 こくり、と頷くと、センリはウィルドに気をつけて、と言葉を投げかけて雪人の消えた方向へと足を向ける。 「センリはさ」 一歩歩き出そうとした瞬間、ウィルドはセンリへと言葉を向けた。 「なに?」 「何処探すんだ?」 尤もな問いかけである。雪人と同じ方向を探せば、それこそ二度手間ではないだろうか。 けれどそれは余計な心配だったようだ。 「オレは外を探すよ」 「あ……」 館の中だけで考えていたが、外に出ていないという保証はない。それを考えれば、外を探すという選択肢が無いのはおかしかった。 そういう意味では三人で探すのはいい選択しかもしれない。 「それじゃ、後で」 「あ、うん」 ウィルドに再び背を向けてセンリは歩き出す。 それにあわせるようにして、ウィルドもまた、センリに背を向けて歩き出した。心持ち、早足で。
夜はまだ、始まったばかり。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
うわぁい、スランプだーっ! いや、多分スランプなんてもんじゃないんだろうけど。 兎に角、読みにくく理解できにくい文章でお送りしました。 うぅっ、ごめんね、玲。 バトンタッチです……。
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.29 ) |
- 日時: 2008/07/19 22:10:08
- 名前: 三谷羅菜
- 「何者だと聞いている」
声に殺気さえ乗せて、重ねて少年に告げた。
「それをボクに聞いて、きみに何か得るものがあるのかな」 「どちらにしても、ボクにはその義務はない」
小首を傾げて微笑を浮かべ、歌うように告げてくる。
「おやすみ。迷子の羊さん」 「怖い夢を見ないと良いね」
声が徐々に遠くなる――――。意識を保とうと足掻いてはみたものの、結局いつの間にか視界は暗くなっていた。
☆★☆
足音が聞こえた。走っている、というわけでもないのに、何故か焦っているように聞こえた。
「どうしたんだろ…………」 「んー、どうしたんだろーね」
扉の向こうの方へ視線を向け、独り言のようにぽつりと言う萱田に、ベッドに寝転んだスィッタが答える。 そのまま沈黙してしまった萱田をちらりと見てから、スィッタは勢いをつけて起き上った。そして今度は、床の上に何やら不思議な模様の描かれた布のようなものを広げて、ぶつぶつと何か唱えているらしいエリエットへと視線を向ける。
「ねえねえ、エリエットはどう思うー?」 「……よ、ま…………え? どうかしたんですか?」 「なんかねー、外が騒がしいみたいなんだ。何かあったんじゃないかなって」
俺ちょっと様子見てみよっか? と軽い調子で提案してみる。
「そうですね……ですが、どうもここはちょっと危険なような気がします」 「危険?」
突然出てきた物騒な言葉に、スィッタは顔をしかめた。扉の方を見詰めていた萱田も、ぴくりと反応する。
「ええ、先ほどから色々調べてみたのですけれど……どうも、呪術のようなものが掛けられているような気がするんですよね」
もしかしたら気のせいかも知れませんが、と小さく付け足すように言う。「ここには何かがある」と確信しているようだった。
「んー。じゃあちょっ俺、外の様子見てくるわ」
一緒に行く? と萱田の方を見ると、彼は一瞬逡巡したもののすぐにこくりと頷いた。それに満足して、エリエットには視線だけで問う。
「私はここでもう少し調べてみます」 「ん。了解。じゃあお互いわかったら何か連絡するって事で」 「はい」
エリエットが再び布へと向かう。それを視界の端に捕えて苦笑を浮かべ、スィッタと萱田は部屋の外へと出た。
☆★☆ ……ええと。とりあえず。 ごめんなさいすみません申し訳ありません(土下座)。 三人部屋組をどう動かそうかと思案し、このような駄文となりました(滝汗)。 涼様、次回よろしくお願いいたします。それではっ(逃亡)。
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.30 ) |
- 日時: 2008/07/30 23:02:19
- 名前: 涼
- 参照: http://green.ap.teacup.com/ryou/
- フェローラは部屋に入ると、中にある調度品をなめる様に見てまわった。
「…何してるの?」
刹那はためらいがちにフェローラの背中に語りかける。 振り向きもせずに相変わらずてきぱきと手を、目を動かしながら肩越しの返答をした。
「何って、決まってるじゃない。盗聴器、カメラ、……そういう類のもの探してるの。 監視されながら過ごすなんて考えられないし。」
確かにここの主人は得体の知れないところがある。 自分と同じくらいの年齢だろう少女のしっかりさに半ば呆れ、半ば感心する。
とりあえず収穫も無く部屋の中を調べ尽したフェローラは、最後にカーテンを開ける。 濁った窓の外側にはぼんやりと人影のようなものが見えた。
「………ん……?」
懸命に目を凝らす姿を不審に思い、刹那も窓側に寄った。 錆付いた鍵をなんとかまわし、窓を開けようとする。 だが、滑りが悪いのかどうしても開けられない。
「あれって…」
目を細め、窓に張り付いた姿勢で刹那は呟く。
「……アイリじゃない?」
☆★☆★
横たわったアイリを見て、少年は微笑んだ。 ……少なくとも近くにいたセンリにはそう見えた。 爽快とも取れる風に身を翻して闇へと化していく。
「ちょっと待ってくれ。」
アイリに駆け寄りながら、微かに残った残像に語りかける。 アイリは大丈夫。ただ眠っているだけみたいだ。
「あの…」 「先に言うけど、まだ何も答えられないよ?」
いたずらっ子のように笑いかけて、人差し指を口にあてる。 どこか寂しそうな笑みのせいか、そのまま闇に同化してしまいそうだった。
ー−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− すっすっすっすみませんっ!!!(濁流汗) まさかのまさかで、私なんかのせいで時間をおかけしてしまうとは…… 全然キャラじゃないしっ!!とかあったら速攻で直しますので! いつものごとく、駄文すみません 凛華様、続きをよろしくお願いしますっ
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.31 ) |
- 日時: 2008/08/13 19:50:28
- 名前: 凛華
- 参照: http://capriccio0705.blog.shinobi.jp/
- センリや、雪人と別れて。
アイを探しながら歩いていたウィルドは、少しして、小さく息をついた。 月の明かりで薄暗く照らされる廊下には、今はたった一人きり。 歩くペースを緩めて、ぽりぽりと頭を掻いた。 「なんか。変なことになっちまったなぁ」 魔族である自分が、まさか、魔族退治の一団と行動を共にするなんて。 我ながら、よくもまあそんなことを、と呆れなくもない。 ただ理由をつけるなら、それは好奇心。 魔族が身を潜めることで保ってきた人間との均衡が、破れるのだとしたら。 その中心にいるのも、悪くはない。 「……俺も狙われるのかな、やっぱ」 魔族である以上。 いつかは、きっと彼らの敵になるのだろうか。 もしかしたら、もう気付かれていて今は泳がされているだけなのかもしれない。 どちらにしろ、このまま行って魔族と戦闘になれば、ばれるのは必至。 「ま、いざとなりゃとんずらすればいっか。いっそその方が、楽しめそうだしな」 「へぇ、何を楽しむのー?」 「そりゃ、あいつら腕は立ちそうだから……」 後ろから飛んできた声に、思わず答えそうになって、はたり、と足を止めた。 今自分はひとり。 ひとり、のはず。 「ウィルドー?」 「っ、スィッタ!」 途中で止まった言葉に不自然を覚えたのか、気がつけば首をかしげたスィッタが目の前にいた。 思わず勢いよく飛び退けば、すぐ後ろに柔らかな壁を感じる。 「……萱田、」 「どうしました?」 「いや……、つーか、それこっちの台詞」 「オレたちはねー、なんか外が騒がしいから様子をみにきたんだよ!」 ああ、とウィルドは頷いた。 先ほどからバタバタバタバタと、自分を筆頭に動きまわっている。 「実はさ。アイが、どっかいっちまって」 「アイちゃんが!?」 「なるほど、それで探し回っていたのですね」 目を見開いたスィッタと、納得したように頷く萱田に、まあね、と頷き返す。 それは一大事だ、とスィッタはずい、と手を挙げた。 「それは大変だ、オレも手伝うよ!」 「そうですね。ここは少し……危険、なようですし」 「危険?」 聞き返せば、萱田がええ、と難しそうに眉を寄せた。 「エリエットの見解ですけどね。呪術が、どうとか」 「あのトルキズアって子が?」 不穏な言葉と共に思い浮かんだのは、朗らかな少女の笑顔。 確かに、どこか不審な雰囲気を纏っていた気がする。 「……なおさら、早く見つけた方がよさそうだな」 「あ! 二人ともっ!」 萱田と頷き合ったその時、スィッタが声を上げた。 何事かと振り返れば、窓から身を乗り出したスウィッタが、必死に後方の一点を指さしている。 「スィッタ? どーしたんだよ。早くアイを探しにいかねぇと」 「そのアイちゃん!」 「え、」 叫び声に近いスウィッタの声に、萱田とウィルドは勢いよく窓へ飛び着いた。 スウィッタの横から、二人で首を伸ばす。 「ほんとだ!」 「なにか……ただならぬ雰囲気ですね」 「っ、中よりこっちの方が早いよな!?」 言うや否や、ウィルドが窓から外へ飛び降りた。 それに続くように、スウィッタも。 一直線に、アイたちのもとへ駆け寄っていく。 「え、ちょ、二人とも!」 少し遅れて、思いがけず後れを取ってしまった萱田も、そのあとを追って行った。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲ な、な、な、なんと申しますか、ジャンピングして土下座したい勢いでございます;;;;;; 話が結構ずれてしまった気がしてならない(沈 こんなに遅くなってしまった上にこの愚文、どうしようもない感に溢れておりまする……っっ 春歌様、どうか頑張って続けてくださいますよう、お願い申しあげます……っ(平伏。
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