Re: 『女の子』小説企画*Glace!//参加者募集中 ( No.51 ) |
- 日時: 2008/07/06 13:15:33
- 名前: 三谷羅菜
- ―――迷子になったアリスは途方に暮れて、道端に座り込んでしまいました。その時、綺麗なちょうちょがアリスの目の前に現れました。そして、アリスを導くように飛んでいきます。アリスはちょうちょの後を追いました。
「好き」っていったい何だろう?
「好きだよ」ってどんな気持ちで言うのだろう?
…………「恋」っていったい、何だろう?
どこでもいい。とにかく頭を何か硬いものにでもぶつけたい。けれど認めるしかなかった。こんな乙女チックな、少女マンガの吹き出しにでも書かれていそうな思考回路を展開しているのは、紛れもなくこの私自身なのだ。 いつからそんなことを考え始めたのか。それはわからなかった。気がついたらそんな少女マンガ思考になっていた。……「乙女チック」とか「少女マンガ」に興味なんてまるでなかったのに。まあ一応私も「女の子」ではあるのだけれど。 とりあえず、原因はわかっている。 「よお、元気ー?」 頭を抱えて突っ伏していると、突然ぽんぽんと頭をはたかれた。何事かと思って顔をあげると、案の定、原因が笑顔を浮かべて立っていた。 「元気だけど」 「そかそか。そりゃよかった」 何が良かったのかはわからないが、原因は人懐っこそうな笑みを浮かべた。 原因の特徴。私の幼馴染。野球バカで運動バカ。けれど勉強もそこそこ出来て、男女問わず友達たくさん。数年前までは私と同じくらいの身長だったのに、いつの間にか二十センチも差がついた。 「さっきっからずっと寝てっからさー。どっか調子わりーのかと思って」 「なっ……」 驚くことじゃない。はずなのに、素っ頓狂な声を出してしまった。顔が熱くなる。もしかして……赤くなってる? 原因はそんな私に構わず、手をひらひらと振って、 「だいじょぶそーなら良いや。んじゃな」 と一人で勝手に完結して去って行った。 ―――もしかして、もしかしなくても。私の心配をしてくれたんだろうか……? 一瞬、そんなことを思ってしまった。いや違う違う、何期待してるんだ私……って期待って何だ期待って!? とまれ考えるなうーあー。 結局原因が去って数秒後に、私はまた頭を抱えて机に突っ伏した。
☆☆☆ どうも、少女マンガというか、乙女チックに挑戦したかった三谷羅菜です。 でも派手に玉砕してるよーな気がします。うぬう、やっぱり私には恋愛はまだ早かったか。 それよりもそもそもお題に合ってないような……?(滝汗) 最初のアレは自分で勝手に作ってみました。三谷のイメージではアリスは常に迷子です。 最後に、私の拙作を読んでくださった方にお礼を言ってから、逃げたいと思います。 ありがとうございました。 失礼しますっ(逃亡)
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「恋する女の記憶力」 ( No.52 ) |
- 日時: 2008/07/07 18:34:49
- 名前: 深月鈴花
- 「やっばい、ホントカッコいいまじやっばい。」
この色気も可愛げも主語もない台詞を吐いたのは残念ながら私の親友である。黒い瞳に長い黒髪を持つこの女は、黙っていれば可愛いものの、口を開けばこれだ。 さて、少々遅くなったが読者の皆様に説明しよう。何が「ホントカッコいいまじやばい」のか、というと。 「そんなの咲森先輩に決まってんじゃーん!!あ、ぎゃーっ!ちょっ、今シュート決めた見た!?」 ……あんたは黙ってろっ! …ごほんっ、咲森聖也(さきもりせいや)という名の、顔よし性格よし運動神経よしの超スーパーボーイである。 まぁ、ここまではいい。確かにかっこいいし性格も爽やかで、嫌味がない。好きになるのは全然しょうがない。だけど。 毎日放課後にサッカー部の見学に無理やり付き合わされている私の身にもなれってのよ、この品無し女!
- 恋する女の記憶力 -
「はぁ、ホンット、なんであたし1年早く生まれてなかったわけ!?そしたら咲森先輩と同い年!!同い年だったのに!」 叫ぶな、ただでさえ女子の(主に咲森先輩への)黄色い声援で耳がもげそうなんだから! 私はその意思をこめて隣にいる女の足を軽く踏んだ。 「あんたね、そんなだと咲森先輩に嫌われるわよ?咲森先輩清楚で可愛い人が好みらしいから。」 「え、それまじ!?」 いや、嘘だけど。こう言えば少しはおとなしくなるだろうかと思ったのだが。 「じゃああたし今日から清楚になる!」 片腹痛いわこの品無し女。嘘とは言え、こんな堂々と宣言すんな。挙手すんな。 「ま、せいぜい頑張りなさいよ。」 「うん、さんくすー。」 ……嫌味に気づかないあたりは天然というか鈍感というか。 「ねー、そーいえばさぁー。」 視線はしっかりと咲森先輩を捉え、口調は私に語りかけるように口を開いた。 「なっちゃんは?恋してないの?」 なっちゃん、とは私のこと。まぁ、こんな風に呼ぶのはこの女だけだけど。 「私?」 …いない、なぁ。好きな人なんて、最後にいたのは2年ほど前だったか。その男の子も高校になってから見てないし。 「じゃー、あんたでいいわよ恋してる人。」 そう悪戯っぽく言うと、私の思い人(笑)はケラケラと愉快そうに笑った。 「あっはー、いーねーそれ!でもあたしは咲森先輩一筋だから!」 なんかもういろいろ反応するのも面倒なので、はいはい、と適当に流しておいた。
それから、3日後。 事態は急展開(と言っても進展なんてものは皆無ではあったが)を迎えた。 咲森先輩に、彼女ができた。咲森先輩がいつものように黄色い声援をあげている女子達(私は例外)に、咲森先輩が直接伝えに来たのだ。「彼女ができたから、もうこういうのはやめてほしい」、と。 相手は先輩と同い年の、かなり可愛らしい女子だった。華道部に所属しているのを私は知っている。 ホントに清楚な子が好みだったんだーなどと思いながら、横目でちらりと親友を見ると、大してショックを受けている様子もなく、私と目が合うとへらりと笑って見せた。
夕焼けとは反対方向に歩き、目の前の親友の背中を見つめながら、小さく語りかけた。 「あんた、いいの?」 「なにが?」 「咲森先輩に彼女できた、って…」 「はー?誰それ?そんなの知らないし?」 咲森先輩応援団(私的視点)が解散して、二人で帰り道を歩いているとき、突然そんなこと言いだした。 「あんなの、記憶内から削除削除!」 明るい声で、笑いながら。 「…あんたの記憶ってずいぶんと都合がいいのね。」 「あははっ!私もそー思うー。」 少しの沈黙が私達を襲う。それを破ったのは私の方だった。 「……夕焼け、綺麗ね。」 見えもしないのに。こんなセリフしか出てこないのか、私は。 「うん、そーだね。」 見えてもないくせに。 「あ、信号赤になっちゃう。走るわよ!」 もう帰りながら見ることは最後になるだろう夕焼けを背景に。 私は親友の背中をとん、と押した。 さて、ここからは全く関係ない話になる。 この女に恋する私の記憶(ここ笑っていいわよ)では、この女は自分の泣き顔を見られるのをひどく嫌う。 意味はないけれど、この帰り道のうちは、この背中を追い越すのはやめておこう。 ああ、そういえば。 私の記憶によると、明日は確か雨だ。 「明日、雨降るんですって。」 私は、親友が歩くたびにアスファルトに少し染みる水滴を見つつ、そう呟いた。 それに対する返答は、なかったように思う。
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ぎゃあぁぁ……っ!! ご、ごごごめごめごめんなさいませ!(←自重) 私自分お題うまく使えない人間だということに気づけた。 んむー、お題使うのって難しいんだと再確認させていただきました! かなり長くなりそうだったので、途中途中カットしていったらこんな文になってしまいまして…! 主人公の名前も、親友の名前もきちんとあるんですがそこもカット!今思えばなんでだろう!(待) あと私やっぱり女の子好きです。書いててすごくすごく楽しかった。書かせていただき、そして何より目を通していただきありがとうございました! そしてお目汚し申し訳ないです…!
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Re: 『女の子』小説企画*Glace!//参加者募集中 ( No.53 ) |
- 日時: 2008/07/10 18:02:14
- 名前: 木野 あきら
- あーなんかみんなすごいいい文書いてる・・・
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にげてゆく春 ( No.54 ) |
- 日時: 2008/07/11 21:13:22
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
おひさまの光が眩しすぎて、ぐっと目を細めたら見えなくなって、ぱっと見開いたら眩しすぎてぎゃっと叫んであわてて目を塞ぐ。 おたおたしているわたしを見て、くるるちゃんはくすくすと笑う。 「くるちゃん、ひどいっ」 「あははー、ごめんね?きらちゃんがあんまり可愛いんだもの」 そういってわらうくるるちゃんの方が、とってもきれい。 くるるちゃん―――皆の間では「くるちゃん」、って呼ばれているその女の子は、長い黒髪に真っ黒な瞳の、とってもきれいなこ。 漢字はたしか、きへんにとても難しい字を付けたかっこいい字。樞、かな? 「くるちゃんの方が、きれいだよっ」 「またまたそんなー。きらちゃんは可愛いよ?」 くるるちゃんはそういって、ふわりと笑った。 まるでお姉さんみたいだ。 わたし―――皆からは「きらちゃん」、って呼ばれてるわたしは、きららって名前。 雲母と書いて、きらら。これは本当。 理科の鉱物の授業ではとてもからかわれた。一時期あだなは「黒雲母ちゃん」。 もちろん読み方はくろきらら。 何をするにも遅くて要領のわるいわたしを、くるるちゃんはいつも助けてくれる。 どうして?ってきくけど、くるちゃんはいつもあいまいに笑うだけ。
季節は、春。
学校の不思議な規則でクラス替えはなくて、二年生のときと同じクラスメイトと三年もよろしくね、なんて挨拶をした。 「三年生だねぇ」 「そうだねぇ」 「受験生だねー…」 呟いたくるちゃんの顔が、なんというか寂しげだったので、わたしはあわてて言った。 「でもくるちゃん、頭いいよ!志望校、茅ヶ原でしょ?」 くるちゃんはとても頭がよくて、わたしと同じ塾に行っているのに成績順でクラスが決まるから、わたしはくるちゃんよりひとつ下のクラスだ。 志望校も茅ヶ原高校っていう、偏差値の高さに驚いてしまうようなところ。 「なに言ってんの、部活動生は引退した今から成績上がるんだから!あたしなんてすぐに追い越されるよ」 それより、とくるちゃんはきっ、と猫みたいなどんぐり眼でわたしをみる。 「きらちゃんだって頭いいじゃない!どうして勉強しないのよー」 「だ、だって、数式とか、見てたら頭痛くて…」 三年生になって、急に受験生だとかなんとか言われて、わたしたちの生活は急にあわただしくなった。 塾にも行って慣れない勉強もしだしたし、試験も塾のものはもっと偏差値を上げろ、って要求される。 今こうしてクラスメイトやくるちゃんと笑いあってても、受験直前は忙しくなるだろうし、高校だってきっと離れてしまう。 それは少しさみしいな、とぼんやりと思って、また気持ちがしょげた。 うう、と半泣きになったわたしを見ずに、くるちゃんはぼそりと呟いた。
「……きらちゃんと、同じ高校行きたいのに」 「…ほんとう?」 驚いて聞くと、くるちゃんは恥ずかしそうに頷いた。 えへへ、と笑みがこぼれて、どうしようもなく嬉しくなった。 「わたし、頑張るね!」 「…ん、頑張んなさい。偏差値あと5くらい上げなさい」 「さすがにそれは無理だよう…」 ううっ、とまた半泣きになったわたしを見て、くるちゃんはその素敵な笑みでくすくすと笑った。
はる、ハル、春。
暖かな春は逃げてゆき、一回りしたらやがて別れの春がやってくる。
嗚呼、春が!
素敵な春がにげてゆく!
戸惑うわたしたちをおきざりにして、春はどんどんにげてゆく。
「きらちゃん、帰りコンビニ寄ろ」 「あー、あたしアイス食べたいーっ」
でも、変わらないものも、ここにある。
だから、手をつないで、追いかける。
にげてゆく春を追いかけて、 やがて来る夏をつかまえて。
―――――――――――――――――――― お題タイトル「にげてゆく春」、でしたー。 学園もの、女子の友情、不思議っ子と秀才ツンデレという自分なりの趣味が詰め込まれてできましたかっこわらい! あああもう駄文ですみませ…! 思った以上に長くなったので削ったら逆に半端になったよ!(← 本当失礼しました、皆さんの素敵文章の下にすみませんでした…!
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Re: 『女の子』小説企画*Glace!//参加者募集中 ( No.55 ) |
- 日時: 2008/07/21 00:06:29
- 名前: 玲
流れ星には願いを叶える力があるという。たとえそれが、悠久の刻を越えた願いであっても――。
−星空が落ちてくる−
【……ナ、……カイナ】
「……」 自分の名前を呼ばれたわけでもないのに、私はその声に反応してしまった。隣に佇み望遠鏡を覗いている友人に顔を向け、問う。 「呼んだ?」 私の問いに対して彼女は否と答え、満点の星空に視線を戻した。 今日は年に数度とない流星群の日。私が所属する天文部ではその日を夜の学校で天体観測をする野外活動の日と決めていた。今、校舎の屋上には私を含め部員である生徒がちらほらと姿を見せている。 ――……カイナって 誰だろう。決してありふれた名前じゃなく、生まれてこのかた聞いたことのない名であるにも拘らず懐かしいと思った。それが何故なのか、自問しても答は出ない。 その時、頭上に眩しいほどの星が舞った。同時に周囲で歓声が上がり、続いて自分も空を見上げる。 「……」 なんだろう。天文部恒例行事で来ているだけなのに、胸の奥が妙にざわめく。 言い表しがたい感情が込み上げてきて、身体が熱を帯びているようだ。 暗いはずの夜そのものを照らす星たちに目を奪われる中、私の意識は別の光景を見ていた。
「フラディール様っ」 肩にかかるかかからないかほどの黒髪をなびかせて小走りに駆ける少女がいた。まだ幼さの残る顔を笑みで満たしていて、彼女が駆け寄った先には見目麗しい銀髪の女性。黒髪の子より大人びているがまだ少女と呼んでもおかしくない年頃だろう。二人とも白地の布を身にあてているが身分の差は歴然だった。純白で豪奢なドレスに身を包むフラディールと呼ばれた銀髪の少女は、黒髪の少女とは裏腹に美しい顔に真剣さを灯し、眉間には深く皺を刻んでいた。 「いいか、よく聞くんだカイナ」 これまでにない深刻な表情の彼女を見て、少女は息を呑む。 「国の各地で大地が崩壊している。原因は判らない。……じきに、ここも危うくなるだろう。カイナ、お前だけでも逃げ……」 彼女は相当焦っているようで、口早に述べると途中で口を閉ざした。 「フラディール様……?」 「……逃げる場所など、何処にもないか」 彼女の口元には失笑ともとれる笑みが浮かんでいる。 フラディールは今まで強張っていた表情を緩めると、ふっと微笑んで窓から窺える空に視線を移した。 「そういえば、明日は星空の落ちる夜だったな」 「え……?」 フラディールの言う言葉の意味が解らず、黒髪の少女は聞き返した。彼女の声にフラディールは顔の向きを戻し、優しく口の端を吊り上げる。 「神官が発見したんだ。一年のほぼ同時期に訪れる奇跡のような夜を。星が群を成して流れてくることから流星群を名付けたらしい。お前と……お前と共に、見たかったな」 目を伏せ顔を歪ませるフラディールの手を取り、黒髪の少女――カイナが口を開いた。 「見ましょう」 「だがこの国はもう……」 「フラディール様、星はなくなったりしません。私たちが見たいと願い続ければ、きっとご覧になることができましょう」 偏りも曇りもないはっきりした声にフラディールは一瞬目を見張り、瞼を閉じて口元を緩ませた。 「……そうか。ならば願おう。この果てなく広がる空の下で、お前と流星群を見られることを」 フラディールが瞼をあげカイナと視線を合わせた直後、一筋の光が空を流れる。 「流れ星……」 二人は目を瞑り手を組んだ。 いつかまた、出逢えると信じて。
彼女らの祈りを最期に静寂だった夜を地響きが包み込み、音と共に大地を引き裂いた。 これは、一夜にして滅んだ国の話――。
心が訴えてくる。あれは“私”だ。 長い年月を経て私は私になった。あれは、私である以前の私。 「雨海?」 隣で友人が怪訝そうな表情で私の名を呼んだ。身体と意識が入り交ざっている感覚だった私はその声で我に返った。 「大丈夫? なんか上の空だったよ」 彼女に大丈夫と答え、眩い星空に視線を戻そうとした際、照らし出された大地にぽつんと佇む人影を確認できた。
トクン
鼓動がなった。 星の光で輝く人影の髪は、美しい銀色の――。 そう思った瞬間、自然と私は走り出していた。 友人の声も聞かず屋上を非常階段から一気に駆け下りる。 銀髪の人影の前に来た時、真っ直ぐにこっちを見る彼女と目が合った。 その顔は、紛れもなく――
「フラ、ディー……ル、さま……」
口にした途端緩んだ涙腺から泪が溢れ出した。表すならぶわっと、とめどなく流れる泪も気に留めず、私は彼女に向かって駆け出した。
「願いを叶えに来たよ……カイナ」
―――――――――――――――― …も、もうなんか信じられないくらい長くてすみませ…! 私に話を纏めるなんて高度な技術は無理でしたよ! 最後まで読んで下さった心優しい方ありがとうございました! 少しでも皆さんのようなきゅんとくるような話になっていれば幸いです。 また、このような神企画を立ち上げて下さったゆうこさまありがとうございます。 女の子だけの物語って書いたことがなくて、凄く新鮮でしたv 色んなことに挑戦することは大事だと思うの! 今回は本当にありがとうございましたー!
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Re: 『女の子』小説企画*Glace!//参加者募集中 ( No.56 ) |
- 日時: 2008/07/27 18:29:42
- 名前: 色田ゆうこ
- あ、やばいっもうあと4日しかない…(おい主催者!)
皆さん続々投下ありがとうございます^^
記事つなぐのはもうちょっと意識のはっきりしているときに やろうと思いま す…!←
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Re: 『女の子』小説企画*Glace!//参加者募集中 ( No.57 ) |
- 日時: 2008/07/31 23:26:39
- 名前: 色田ゆうこ
ドアをあけたら奥さんがいた。
「ユイくん、おかえり」
ご飯にする? お風呂にする? それとも……まで想像したところで、 そういえばぼくはまだ結婚してないじゃないかと気付いた。
「七緒ちゃん」
名前を呼んで頭を撫でると、七緒ちゃんは照れくさそうに肩をすくめ る。吉原七緒。13歳で中学1年生の、ぼくの従姉妹だ。七緒ちゃんが遊 びに来るのはいつだって夏だった。七緒ちゃんは夏とともにやってくる。
「今日はそうめんだよー」
料理をしていたのだとアピールするように、彼女は身に着けたエプロン の裾をひっぱった。淡くてやさしいライムグリーン。
「そのエプロン、かわいいね」 「いい色でしょ?」
得意げにほほ笑んだ七緒ちゃんは、くるりと一回転して見せてから、足 音を鳴らしてキッチンへ入って行った。 かたい靴を脱いで、ぼくも彼女につづく。
(やさしすぎるみどり、)
あの、秘められたにがみを、思い出していた。淡くてやさしい、包み込 むようなみどりの色。その、やわらかく示された憎しみ。 美しい背中だった。
そういえば大きくなった。相変わらず細いけど。むかし、高校生だった ぼくのあとをついてきては、ユイくんのおよめさんになる、とうるさくて、 うざいとかきもいとか言ってよく泣かせた。
「おつゆに氷いれる? 何個がいい?」
キッチンから顔を覗かせて、七緒ちゃんが言った。髪の毛が揺れる。 髪も伸びた。すっかり中学生だ。女の子だ。
2個がいい、と答えた時に返ってきた笑顔がひどくうつくしくて何かと思った。
彼女のエプロンはライムグリーン。 あの愛らしい球体。
できるだけそっともぎとって、腹におさめてしまいたいくらいだった。 その自由な両足でどこまで走ってゆくのかを、ぼくらが見守っていかなければならかった。 その鋭い酸味を、やわらかくやわらかく、包んでやらなければならなかった。
・ライムグリーンにくちづけ
% 主催者のくせに期限ぎりぎりです(死) しかも23時っていう……← 書き終わって、やっぱり自分、女の子好きだなあ、と実感しています。ちょうすき!(…) 今回はお題のライムグリーンを前面に押し出して(笑)やってみました。 女でよかったです← この企画もできてよかった…! 自分のお題が次々にすてきな文章に変身してて、やべえすげえの連続でした……! ではでは、参加してくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました!
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12gくらいの恋 ( No.58 ) |
- 日時: 2008/08/01 00:04:44
- 名前: 桜
- 参照: http://mist26.jugem.jp/
汗をかいた透明なグラスをなぞると、爪の先に雫が溜まった。 ストローのひだを雫のついた爪でひっかく。 その動作を三回。
「私には、わからないかも」
ストラップもなにもついていないピンク色の携帯を見た。 メールも着信もなし。平和だと思った。
想いを伝えるんだ、と言葉を紡ぎ続ける淡い桃色の唇を持つ彼女には、私にはない速さを持っていた。 致命的な速さ。 死に至る速さ。 置いてきぼりをくらったら死んでしまうけど、背景のようになってしまったらお終いだという。
恋は戦争。という文字が脳みその後ろを駆け抜けていったような気がした。
そんなバカな。
*
冷たいアイスティーをストローでかき回す。 話しかけておいてつまらなそうに雑踏の方へ向く黒い瞳、人は何故だれかを好きだと思うのだろう。 私にはわからない。 ましてや、見たことも無い自分のこころのままに相手の人生を奪うことに喜びが所在するのかどうかなど。
私は私を好きになった人を好きになる。 好きという感情が、いつしか正しいものと探り当てられた暁にという話である。
*
御門くんのことが好きなの、と確かにそう聞いた。
「…そう、か」
答えを待つ真摯さに心臓はびくびくと大きく早く打った。
純は答えを出すことが小さな頃から苦手だった。 純とあの子は同じではないの、純が好きなものをあの子が好きとは限らないの。 そうか、だったら、と幼い僕は心の中に自分、そして他の人という部屋を作った。
答え≠正解 。
でも、国語も数学もどちらが良いとかは無かった。
「うん」
彼女の視線が机の木目に落とされる。
「わかったよ」
彼女の視線が再び純の眼を捕らえた。
「ありがとう」
でも俺は君の想いにこたえる方法がわからない。
*
「それは、ちょっと酷いんじゃない」 「どうして?」
シロップの蓋をめくって一口も飲んでいないアイスティーに注いだ。 外にいたときには汗をかいていた首筋は今はさらりと乾いていて、クーラーの風が私と純の髪を揺らした。
「…わかりもしないのにお付き合いだけします、なんて」
彼女が欲しいだけみたいじゃないか、俺はそんなにがっついてないよ。 ちり紙を引っ張って千切る。 私にだって好きだとか恋してるとかわからないし、そのときが来るまでわかろうとは思わない。 でもその幼稚なくせの治らないてのひらで私に触れてみて欲しいなんて、どうして。 恋心がわからないからと理由をつけて可愛い子をみすみす逃がすようなしょうもない君に。
「だったらわからないって言えば良かったんだ」
ストローを思い切り吸った。 甘い重たい液と微かに渋い紅茶の味が混ざった。
甘すぎ、まずい、
むせ返ってみせて涙を拭いた。彼が笑った。 uccガムシロップ12g入り、そうか、恋心は12gのシロップなんだ。
でも教えてやらない。
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ぎりぎりの主催者のさらにあとっていうかあのその期限すぎてるっていうかえーと…
ごっ…ごめんなさいいいいいいいいい!!!!!←
あのまだ受理していただければなぁと思います…。 何度も何度も主人公が男子になりかけてとっても苦しい戦いでしたが(←)最後まで書けていい経験になりました。 遅くなってしまいましたが素敵企画をありがとう!また何かあったら挑戦したいです♪
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Re: 『女の子』小説企画*Glace! ( No.59 ) |
- 日時: 2008/08/05 21:27:05
- 名前: 色田ゆうこ
- わー皆さん提出ありがとうございました!*
お知らせなんですが、サイト作りは15日あたりからにしようと思ってます。 で、文章はすべてこのスレからコピペで持っていくので、 手直ししたーい、とかありましたら、(あと誤字脱字とか!) 8月14日までに修正をお願いします><
あ、それと、もしかしたらページの関係で「あとがき」をちょっと 編集させていただく場合があるかもしれないです; まず無いと思うんですが、一応了承お願いしますー。
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Re: 『女の子』小説企画*Glace! ( No.60 ) |
- 日時: 2008/08/05 21:56:50
- 名前: 玲
- 了解でーすw
ゆうこちゃん頑張ってっ!
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