Re: 短筆部文集 3冊目 (行事があってもマイペースに製作中!) ( No.74 ) |
- 日時: 2008/02/28 21:49:18
- 名前: 飛亜
- わたしはモデルだった
某雑誌のトップモデル。華やかで、キラキラ輝いてた…。
え?歌手デビューのキッカケ?…CROSS。知ってるでしょ?ラバーソウルの。あの二人のおかげで…デビューを決めたの
小1の頃からモデルをやっていた。いろんな可愛い服を着て、時にはTVにも出てた。
CROSSというグループを知ったのは一年前。TVで歌っていた…
「すみません あの…この二人は?」 「あぁCROSSね あのラバーソウルのとこだからかなり有名よ それにカッコいいしね♪」
と女性スタッフがウィンクをしながら行ってしまった
「CROSS……」
わたしの…王子様――
わたしはCROSSの歌を聴いていた。歌に聴き惚れてしまった。
そんな時だ、歌手デビューが決まったのは。
零ちゃんデビューのキッカケ。
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或る少年たちの追憶。(或るミュージシャン〜とは別物です) ( No.75 ) |
- 日時: 2008/02/28 23:04:40
- 名前: 沖見あさぎ
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- ――She said good-bye.
――We cannot meet her any longer. ――It is unavoidable one although it is sad. ――however... ――We cannot say good-bye to her yet.
ブツ、と音を立てて音楽が切れる。 灰が顔だけ振り返ると、コンポのリモコンを持った優生が仁王立ちをしていた。その眉間には深々と皺が刻み込まれている。 部屋で独り曲を聴いていた灰は、彼がコンポの電源を切ったのだと悟った。
「……なに聴いてんだよ」 「…べつに」
そっけなく、しかし感情を見透かすことの難しい声音で答えてから、灰は顔を前に向けなおす。 沈黙したコンポ。先ほどまで聴いていた曲は、間違いなく、自分たちが奏でていたモノ。 自分たちが『CROSS』になる前に結成していたグループが、解散した直後に……そう、『彼女』を失った直後に、粗末なテープレコーダーに直接吹き込んで作った曲だ。 『カイ』と『ユウ』ではなく、川浪優生と黒葛原灰としての、最初で最後の曲。 優生にとっての「忘れなければならない汚点」であり、灰にとっての「忘れてはならない記憶」だった。 だから灰は、優生が外出している隙にこっそり聴いていたのだが…遂に見つかってしまったらしい。
「まだそんなもん、聴いてやがったのかよ…」 「だって、優生」
窓から差し込む夕陽に漆黒の目を細めながら、灰は呟く。 その硝子玉のような瞳は、世界の総てが映っているようで、また世界の何も映ってはいないようだった。 その甘やかな声は、何もかもを許容するようで、また何もかもを拒むような色を持っていた。
「もう、今週の日曜だよ。カナカの、三周忌」 「……奏歌」
かなか。同じ名前を唱えながらも、灰と優生の表情は正反対に違う。 それはまるで、「彼女」という過去に対する想いを体現しているかのようだった。 そう―――どうしようと、あれはもう過去なのだ。灰はそう考えた。
……あの夏の日は、もう終わってしまったのだと。
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あくる日の境目(意味はない、いきおいだ) ( No.76 ) |
- 日時: 2008/02/29 17:32:49
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- 「浅月さんチの子、誰とも口を利こうとしないのよ」
「昔から変わってるとは思ってたけどね」
壊れたレコーダーのように、何度も同じ事ばかりをくり返す。 そんなくだらない事に費やすぐらいなら初めから喋らない方がいい。 当人達が潜めているつもりであろう声は、仕切なく耳に届いてきた。案外潜めているつもりなどないのかもしれない。 振り返ると、彼女達は慌てた素振りも見せずに微笑んだ。 「あら早帆ちゃん、お出かけ? ちょっとこっちにいらっしゃいよ」 1人がにこやかにそう言って手招いた。 もう1人は言葉では賛同の意を見せているものの、表情はどこか嫌がっているようだった。 手招きを断るように首を振り、そのまま前を通り過ぎていく。 後ろの方ではまた彼女達の会話が再開されたようだった。
早帆ちゃん。
そんな人はいない。
愛想がないのは今に始まったことではなく、きっと生まれつきだったのだ。 ただ人と口を利くのを拒むようになったのはここ2、3年間のことだった。 元々周囲に親しい人間などいなかったし、話さなくなっても不便なことはなかった。 何も困ることはない。 だったら何故喋ることが必要だったのか。 ふと立ち止まり、両腕に抱えた赤いギターをベンチの上に降ろした。 誰もいない。 「……」 撫でるようにギターに触れた。 その感触が、感覚が、何よりも「生」を実感させてくれる。 だったら、やっぱり喋らなくたっていい。 「弾かないの、ギター」 「……」 「早帆ちゃん」 顔を上げると、いつの間にかにこやかに笑う青年が立っていた。 黙ったままベンチに目を向けると、青年は何か言う代わりにそこに座った。 続いてその隣に腰を下ろす。 頭1つ分ほど違う背丈の所為で、見上げなくては彼の顔を見ることはできなかった。 「もう来ないかと思ってたよ。だって1年ぶりだもん、元気だった?」 子供のような口調でそう言って、青年は笑う。 年齢相応には思えないぐらい無邪気に見えた。 「そのギターまだ持っててくれてるんだね、嬉しいな」 何も答えないまま、彼を見る。 色白な肌がますます白くなっているように見えて、少しばかりゾッとした。 でもそれを確認する術も何も、今は持っていないのだ。 青年はその視線に気付いたのかちょっと苦い顔をして、そしてまた笑った。 「早帆ちゃんならさ、絶対プロになれると思うんだ。俺早帆ちゃんの歌好きだもん、1番ファンね」
いつから歌を忘れていたのか、それすら思い出せない。 ある日を境に喋ることをやめた。 自然と歌も消えていった。
赤いギターをもう1度その手で手渡してくれた彼は、全部を知っているかのような優しい顔をしていた。 「また歌ってよ、俺のつくった曲」 あのセンスのない曲を? でも、彼があまりに嬉しそうだったからいいとした。
「早帆」なんて人いない。 彼のそばでしか、「早帆」じゃない。
だから喋ることをやめた。
否定する言葉も、肯定する言葉もいらなかったから。
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『恋心』 ( No.77 ) |
- 日時: 2008/02/29 20:12:33
- 名前: 神凪由華
- 参照: http://mbbs.tv/u/read.php?id=illustsuki&tid=63
- 『なに・・・これ・・・。』
足元を満たすは、紅き血。 足元を満たすは、魂の残骸。
ふと、手をあげると、
まとわりつくは貴方の血。
もう、二度と 会えない。
「あ・・・あ゛・・・。」
自然と涙が込み上げて。 目は虚ろで。
「あ゛ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
この思いは何? この気持ちは何?
失ってから 気付いたそれは、 貴方への
『恋心』
「はぁ、はぁっ・・・・!!」 夢、か・・・。 桜色髪の少女は、悪夢でうなされていた。 「・・・・・尚・・・・・。」 彼が・・・パートナーが消えてから、10年。 少女は変わらぬ容姿のまま、ここにいた。 死神として。 10年前と、何も変わらずに。 ここにいた・・・・。 「・・・馬鹿らしっ・・・・。」 死神になってもう15年。魔物に魅いられた人間を斬るなんて、簡単なのに。 残酷な殺し方だってしているのに。 最初の『パートナー』が、忘れられないなんて・・・。 「尚・・・。」 死んでからじゃ、遅い。 だって死神のパートナーと言ったって所詮人間。 だから・・・。
伝えることのできない、この気持ち。 封じ込めて、前に進むこと。 それが、一番の彼への償いだった・・・。
end... ++++++++++ ↓夢の漫画 http://mbbs.tv/u/viewMedia.php?id=illustsuki&mid=1681 ↓つづき http://mbbs.tv/u/viewMedia.php?id=illustsuki&mid=1682
夢の部分の漫画バージョンです。よかったら見てみて下さいね。
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.78 ) |
- 日時: 2008/02/29 21:48:51
- 名前: 深月鈴花
- ラジオの収録を終えたあと、そのまますぐ打ち合わせ室で雑誌の取材が2本。
それも終えあたしはもう1度ラジオの収録をしたとこに戻ってきていた。 「あ、鏡魅ちゃん、いつもの?」 「はい!」 にこやかに笑顔を振りまきながら、今日のラジオで読み切れなかった葉書や手紙の入ったダンボールを抱えた。ずっしりと重く、私はよろよろしながら傍にいた男性スタッフに手渡す。 「それじゃあ、これ!よろしくお願いしますね!」 男性スタッフは、何のことかわかっているのでああ、と言ってそれを受取る。軽く持つそれは、やっぱり男の人だと違うんだなぁ、とぼんやり思った。 「しっかし、いつも思うけどこれ全部読んでるのかい?」 …あれ、こういうのってなんだったかな?………あぁ、そうだ。 「グモン(※愚問)ですよー!読むのすっごく楽しいんです!」 「すごいねぇ。それじゃあ、いつもみたいに自宅に宅配しとくから。」 2日くらいで届くと思うよ、とその男性スタッフは付け足した。
そう、あたしはいっつもこの大きなダンボールにいっぱいの葉書を、家で寝る前に全部読む。 本当に楽しい。それに何より勉強になる。 中には相談事とかもたくさんあって、その中でも重くて、暗くて、悲しくて、辛い悩み事を抱えてる人も数人いる。 そんなときに、あたしのところにメッセージをくれる。これってあたしを頼ってくれてるってことでしょ?なら、きちんとお返事もしないとあたしが嫌だから。だから、やってるだけ。ただの自己満足。 ある程度は有名になったし、最近はオフがほとんどないくらい忙しい日々。 これからもっともっと仕事が増えていくはずなんだから(これ予定ね!)、時間がなくなってくるとは思うけど。 やっぱり出来る限りは、ってゆーかこれからもずっとこうやっていられたらなぁ、って思うんだ―……
あたしは、裏口の戸のドアノブに手をかけ、ゆっくりと開けた。芸能人は、こちらから出入りすることが決まっている。騒ぎになっては困るからだ。 たまぁに、熱狂的なファンがこれをどこから聞き出したのか出待ちしていることがあるのだが……今日は違うようだ。 ファンと触れ合うのが好きなあたしにとっては、微妙なところなのだけれど。 そろ〜っと外に出て、やっとあたしは玄関の変化に気がついた。 女の人が、いっぱいいた。 何事かと思ったけど、ちょっと耳を立てていたら、すぐに理解した。 『出待ち』だ。 しかも、『CROSS』の。 どこから聞いたのだろう、しかもこんなに。ぱっと見て20人ほどいるだろうか。 やっぱり、『CROSS』は違うなぁ……とかって感心している場合ではない。 少人数ならばいいものの、この人数だ。騒ぎになるのは、まず間違いないだろう。 などと思っていたところ、後ろの戸の向こうから、何やら声が。 聴覚に異常に長けているあたしには、その声の主が誰か一瞬でわかってしまった。 急いで裏口の戸を開けると、そこにはびっくりした様子の『CROSS』の二人。 ………ああ、やっぱり。
・
>>70の続き
(変なとこできってごめんなさい、あさぎちゃん;鏡魅は好き勝手に動かしちゃって大丈夫なので!むしろどうぞやってください!)
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.79 ) |
- 日時: 2008/02/29 23:14:17
- 名前: 三谷羅菜
- ――――少年は剣を構えた。
素直で真っ直ぐな突き。それを受けて俺は苦笑した。 血の塊を吐き出しつつ、不思議そうな表情をした少年に教えてやる。 ―――満足か? 俺を殺せば世界が救えると……「英雄」になれると信じていたんだろう? だが甘いな。俺を殺したことで今まで俺が抑えていた「邪気」が溢れ出しちまった。それを抑えるために俺は「魔王」になったわけだが……さあ、お前はどうする? 呆然として眼を見開く少年の顔を眺めるのは面白かった。その表情が苦しそうに歪むのを見るのも。出来る事なら少年がどうするのか、眺めていたいのだが……それは無理そうだった。「魔王」の驚異的な身体能力でも延命出来る時間には限りがある。 それでも最後まで見つめ続け……少年は。 剣を落とした。
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或るミュージシャンの仕事帰り。 ( No.80 ) |
- 日時: 2008/02/29 23:25:07
- 名前: 沖見あさぎ
- 参照: http://tool-4.net/?mysugarcat
- 「はい、今日分の撮影は終了です。お疲れ様でしたー」
「「お疲れ様でしたー!」」
朝から続けていた撮影も遂に終了し、女性監督の一声で俺たちは解放された。 気付けば辺りは真っ暗になっている。(俺たちがいたのは密閉されたスタジオだから、時間の経過が曖昧だ) それとなしに携帯を開くと、ディスプレイの時計は8時半過ぎを指していた。 深夜まで続く撮影があることも考えればまだ軽いほうだが、疲労したのには変わりない。 張り詰め続けていた精神を緩ませ、俺は立ち上がった。 ――隣では暢気な相方が、パックの苺牛乳を啜りながらゆるゆると支度をしているところだった。
あー、つかれたつかれた、と全然疲れてなさそうな様子でカイがぼやいた。 スタジオの裏口に続く廊下は珍しく人気がない。(いつもならスタッフが忙しなく早足で歩き回っているのだが) こつこつと堅い二人分の足音と、カイの独り言が静まった廊下に響いていた。
「ねーユウ、今日のメシはカレーが良い」 「俺に言うな。作るのは倖生なんだから」
コウキ、とは俺の兄の名前だ。 いつも仕事帰りに俺の家へ転がり込んでくるカイの分のメシまで用意してくれている親切(余計なお世話)な若手俳優である。 カイはオフのときでも俺の家にいることが多い。カイはボロアパートに独り暮らしをしていて、本人曰く寂しい、のだそうだ。(俺からしたら果てしなく羨ましいことだ) いつもと同じようにうざったく絡んでくるカイをあしらいながら、俺たちは廊下の角を曲がった。 もう裏口は目の前だ。あと数歩、でこのスタジオ(=今日分の仕事)から完全に自由になる。 カイが俺の先を行き、右手に苺牛乳を持ちながら、左手をドアノブへ向かって伸ばした。 と、
ガチャンッ!
騒々しい音を立てて、ドアが『外側から』開いた。 さすがのカイもそれには少々驚いたようで、空を切った手が硬直したまま動かない。
……ドアを開けたのは、赤茶色の髪をした、緑眼の美少女。
まるで少女マンガ(俺たちサイドからしたら少年漫画?)のような出逢い方だったが、その美少女は驚くこともせず、しかしひどく慌てた様子で俺たちのほうに駆け寄ってきた。 カイが俺の前にいるので、自然、俺はカイ越しにその美少女と向き合うことになる。 その美少女は――ほかでもない、鏡魅だった。
「カガミだ。どうしたの」
既に先ほどの驚きから己を取り戻したカイが、いつもと同じようなドルチェの声音で訊ねた。 向き合う彼女は、その、あの、とワタワタ慌てている。慌てながらも、先ほど自分がいた方――つまり、ドアの外を指差した。
「今、外に出たら駄目です!」
焦ったように、しかし何処か断定的なきっぱりとした口調で鏡魅は言った。 カイが、「?」と首を傾げる。俺の頭の中も「?」というような状態だったが。 それから、鏡魅とは正反対の緊張感のない声で呟く。
「出たら撃たれる?」 「ち、違います!」
出た。カイお得意の電波受信だ。 カイの電波発言に鏡魅が困惑してしまったので、俺は「そりゃそうだろバカ」と後ろからカイの頭をぶっ叩いた。 それから鏡魅がおずおずと唇を開く。
「突然変なこと言ってごめんなさい…! でも、今外に出たら大変なことになるんです。 その……ファンの方たちが、外で出待ちしてて…」
半ば慌てたような、半ば緊張したような、どちらにしろしどろもどろな口調で鏡魅が言った。 しかしその短い説明だけで俺たちには充分通じる。 つまり、俺たちのファンがこの外にいるのだろう。それもかなりの人数とみた。 少人数ならまだしも、大人数いた場合外に出るのは危険だ。 それにいち早く気付いた鏡魅が、俺たちに知らせようと飛び込んできたのだと思う。 ならば、俺たちは鏡魅に感謝すべきだ。鏡魅が来なければ、俺たちは人の渦に巻き込まれていただろう。
「人気者はつらいねー」
カイが楽しそうに呟いた。何処までも緊張感のない男だ。 反対に鏡魅は俺たちの反応を窺っている。 …きっとこのままでは鏡魅も俺たちも帰りつけない。 しかし家には帰りたい。鏡魅だってそれは同じだろう。 不意に、カイが俺のほうを向いた。笑っている。いつもとは少しだけ違った、悪戯っ子の笑顔だ。 ――伊達に何年も付き合っていない。どうやら、俺たちの考えは同じようだ。
「カガミも帰れないと困るよね?」 「えっ、いえ、あ、まあ……ちょっと困る、かなぁ……」 「ならさ」
にこり、カイが鏡魅に向かって愛想のいい笑みを浮かべる。 そして――次の瞬間、
「強行突破だっ」
持っていた苺牛乳を傍のゴミ箱に投げ入れ、カイが鏡魅を担ぎ上げた。 「!?きゃぁっ!」と悲鳴をあげた鏡魅のことは最早気にしていない。
……姫だっことかさ、もっと色気ある抱きあげ方すれば?
と思うも刹那、カイがドアを開けて一気に全力疾走し始めたので、それは叶わなかった。
‐‐‐‐‐‐ (>>71のつづき!)(そのままタクシーにでも飛び込めばいいと思います。スキャンダル!/やだよ)
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“綺麗すぎる世界だからこそもっと汚くなろう。” ( No.81 ) |
- 日時: 2008/03/01 17:31:45
- 名前: 一夜◆KFb2oRyLnqg
夜は、私の味方になった。 朝は、私の敵になった。
闇は、私の味方になった。 光は、私の敵になった。
憎しみは、私の味方になった。 愛は、私の敵になった。
今日も私は誰かに感情をぶつけている。この感情を誰かにぶつけなくては、私は私を保たれなかった。 感情が膨らみはち切れ、それは涙となって溢れてくる。
【憎しみ】
この感情が私を支配する。心にはそれ以外の感情がない。・・・いや、あったとしてもそれは粒のように淡いものだろう。
「ぐっ・・・・・・あっ、あぁっ・・・。」
女が低く擦れた声を漏らす。女の腹部には固く握り締められた私の拳。 ゆっくりと拳を離すと女はその場に崩れ落ちた。 ・・・この女だけではない。私の目の前でこのように崩れ落ちたものは何十人もいた。 “自分たちから喧嘩を仕掛けてきたのに弱い奴ら” そう思いながらグイっと崩れ落ちたばかりの女の胸倉を掴み上げた。
「お、願・・・い・・・っっ!!も、ぉ・・・ゆ、許して・・・よっ!!」
涙ながら必死に叫ぶぼろぼろになった女。 むかついて、むかついて、むかついて。 私はそんな思いを抑えきれずに腫れ上がった女の頬を思いっきり平手で打った。
「ぐあっ・・・・・・!!!―――――――。」
口から少量の血を吐きながら女は地面に打たれ、気を失った。 あたりから音が消えた。 あたりには気を失った何十人かのものたち。 世界には私一人しかいないかのように静寂だった。 その静寂を打ち破るかのように私は呟く。
「何でだよ。・・・何でみんなこんなに弱いんだよ。お願いだからみんな・・・私の敵に、なってよ・・・っ!!」
哀しく微笑みながら夜空を見上げる。無数の星がきらきらと夜空を瞬いていた。 この世界は、あまりにも綺麗すぎる。 綺麗な世界に汚い私。 もっと、もっともっともっと汚くなれば私は変わるのかな。 変われるかもしれない。でも、変わらないかもしれない。 そうだとしても、してみる価値はあるでしょう・・・?
幼い私が見つけたもの。 それは、それは・・・未来の道から外れてしまった、入ったら入口が消え、そして出口のない迷宮だった。
『もう、戻ることなんてできないんだ。私はこの迷路で彷徨うという道を選んだんだから・・・――――――。』
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エンドレスポロネーズ ( No.82 ) |
- 日時: 2008/03/02 19:02:57
- 名前: 桜
- 参照: http://mist26.jugem.jp/
2年ぶりの言葉、風景、空気。 私は祖国の太陽に目を眇めた。
「…また、始まるのね」
*****
――――Ich entschied mich, zu mir, Japan, zuruuml;ckzukommen. (私、日本へ帰ることにしました。) ――――Ach, ich werde einsam. Aber bin ich abrupt. (あら、寂しくなるわね…。それにしても突然じゃない?) ――――Das, was ich herausfordern wollte, wurde gefunden. (やるべき事が見つかったんです。)
あなたはもう迷える子羊、じゃなくなったのね。 そう言って彼女は鳶色の瞳を夕日に輝かせた。 荒野にもいずれあなたの好きな花が咲くよ、と途方に暮れた私を受け入れたときと同じ光。
私は歩く。 冷たい灰色の冬の石畳、暖炉に照らされた橙色の大理石、遠い記憶に埋まっている学び舎の床。
伝説と悪意と希望を、着き止めよ。
願うことをやめたら、運命は力を失った。 私は知ったのだ、ひとを好きになることに定義が必要ないことを。
*
「十文字………。…鈴音たち、元気にしてるかなぁ」
あんな手紙をはるばるドイツまで、彼らの知人が送ってくる程度には元気でやっているのだろう。 古い紙を燃やしたアルコールランプの匂いを思い出しつつ、早苗は機内食にありついた。
遡ること約一ヶ月。 朝霧早苗は、鈴音の知り合い、という人物から手紙を受け取った。 エミリアはその手紙ともう一つ不思議な手紙があったの、と言う。 それは蝋を用いて封をしてある羊皮紙の封筒だった。
"私"にとって、それはよく見知ったもの。
2通の手紙を渡して、階下に戻ろうとしていたエミリアにありがとうを言い、もうじき此処を離れねばならなくなることをいつ言おうかと逡巡した。
「ね、エミリア。 私、国に帰ろうかと思うの」 「…また随分と話が突然ね」 「音楽を作ることになったのよ」 「あのお手紙に書いてあった人?」 「ええ、エミリアは目ざといのね」
帰国が決まってからは早かった、ように感じる。 住まいは引き払ってしまっていたので新たに確保した。 エミリアは気をつけてね、と水晶のついたネックレスを手渡してくれて、蔓の絡まった大きな門扉の前で手を振った。私はここにいるから、と。
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私は歩く。 また数多くの"運命"の一つを彼らと共に出来ることを、心のうちで喜びながら。
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Loversoulのスピンオフ的な。 早苗がOracionに誘われて日本へ戻るお話。
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.83 ) |
- 日時: 2008/03/02 19:27:59
- 名前: 深月鈴花
- カイがにこ、と微笑んだ。
その笑みに見とれていた、ので油断していた…というのだろうか。
「強行突破だっ」
カイがゴミ箱に何かを投げる仕草をしたその刹那、急にあたしの体が浮いた。 「!?きゃぁっ!」 カイが扉を開けた。ちょっと待って!? 目の前に広がるのは、道路に、人。そして横目で見ると…… 「『CROSS』だ!!」 「え、誰あれ!?」 あたしのことだね、それ完璧! 「きゃーっ!!ユウー!」 「カイくーん!!」 後ろから追いかけてくるのがはっきりとわかる。 怖っ、女の人のファンちょっと怖い! し、ししししししかもあたしの今の状況って……!? やばい、とりあえずあたしの顔を見られないようにフードをかぶってみた。 カイが耳元で 「あのタクシーに乗るから」 そう言った。 走ってくるあたしたちに気づいた中年のタクシーの運転手さんがドアを開けてくれた。 すぐにそれに乗り込み、ドアが閉められる。すぐさまカイの隣でユウが目的地を告げた。 車が揺れて、窓の外で景色が流れ始めた。 な、なんとか、セー……フ? 「あー、疲れたー。」 言いながらカイがあたしを自分の真横におろしてくれた。 「ご、ごめんなさいっ、重かったですよねっ!?あぅ、こんなことならダイエットしておけばよかった……」 疲れてるはずなのに、重いもの(※あたし)を持ってあんな全速力で…… すごく申訳がない。 頭を抱えるあたしを見て、カイが吹き出した。ユウは肩がふるえている。笑いをこらえているのが、見て取れた。 「え、え?」 訳がわかっていないあたしに、カイがひとしきり笑ったあと、口を開いた。 「カガミ、もうちょっと太った方がいいよ?うん、そんな気がする。」 「えぇっ!?」 お世辞だとは思いながらも、カイにそう言われればそれでもいいかもしれない、と思ってしまった自分がいる。…う〜ん、重症かも。 あたしは背もたれにもたれて、少し緊張を解いた。と、手に、カサリとした感触。 「……ん?」 感触の正体は黒い手帳だった。 ちら、と横を見ると、カイとユウは今日のドラマの撮影のことを話していた。立ち位置とか、セリフの感情の込め方とか。 どちらかの私物だったら見るのは失礼だが、話の邪魔をしては悪いし、他の誰かの落し物かもしれない。あたしはその手帳をそっと開いた。 いっぱい文字がつづってあり、それを読んでいくとカイの私物だということがわかった、のだけど。 とある文字を目にして、びっくりした。と共に顔がちょっと熱くなった。 それは…… 「あ、着いた。」 『CROSS』の二人の家に着いたらしい。とりあえず、この手帳をカイに渡さなければ。 「あの、これカイ……さんの、ですよね?」 タクシーから出ようとしたカイに、手帳を手渡した。 「あ、そうそう!ありがとね。」 カイはそれを受け取り、ポケットにしまった。それから、あたしはカイの手を握った。カイは少し驚いているようだったけど。黒い手帳に、大きな文字で書いてあったから。
『カガミと握手する』
そう書いてあったから。 「えへへっ、ありがとうございました!」 今日あったいろんなことに対しての感謝を込めて。 カイは何のことかわかってないと思うけど、それでもいいや。伝えたかったから。 ドアを閉めて窓越しにぺこ、と礼をすると、カイの口が「こちらこそ」と動いた気がした。
……あぁ、今日はいろいろありすぎた。 でも、なんだかとってもとっても幸せなのは 『CROSS』のおかげかなぁ。
・
>>78の続き
(ちょっ、こんなのになっちゃいました…!ごめんなさい、あさぎちゃん…orz)
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