+破面日和+ ( No.64 ) |
- 日時: 2008/02/12 14:54:44
- 名前: 神凪由華
- 参照: http://happy.ap.teacup.com/04260606/
- ギャグ、です。
思いっきり、の。 多少CPっぽい・・・?とか、その辺は気にしないでください。(笑 規定内で、しっかり笑える(自信ねェ〜・・・)ものを書きます〜。
+破面日和+ 1.朝の情景 「おはよ〜・・・。」 虚圏の朝。・・・・・空は、一日中明るいので朝と言えるのかは怪しいが、一応時間的に朝。 破面達は、食堂に集まっていた。 「お、カス。遅いぞ〜。」 「だって〜・・・つ〜かイール起こしてよ〜。」 「俺が起こしても、起きないだろ!!!」 先に食堂に到着していたイールフォルトは、ディ・ロイを叱りながらも、隣の席を空けた。 「うん〜・・・眠い・・・。」 「馬鹿。徹夜で研究なんかしてるからだ、ボケ。」 「ノイトラ様、一応、それザエルアポロ様の職業ですし・・・まあ、こいつがどうなってもいいけど(ぼそっ」 「?何か最後のほうに言ったか?テスラ。」 「いえ、何も(ニッコリ」 続いて、ノイトラ、ザエルアポロ、テスラが登場した。 テスラとザエルアポロは仲が悪く、いつもノイトラ奪還線(?)をしていた。(笑 ザエルはどうやら、ノイトラの霊圧データが欲しいらしい・・・(?)のだが、テスラは何をするかわからない と・言う理由で、反対している。(当のノイトラは何も知らない
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+破面日和+ ( No.65 ) |
- 日時: 2008/02/12 20:01:38
- 名前: 神凪由華
- 参照: http://happy.ap.teacup.com/04260606/
- 「・・・おぅ、ウルキオラ、グリムジョー。」
第4十刃、第6十刃同時で食堂についた。 「おっ・・・ノイトラ・・・と、+α・・・(テスラ、ザエルアポロの事」 「今日も黒いな・・・。」 二人は、なんだかんだ言って仲がよく、一緒に食堂へ行くことが多い。 と、言うか十刃内では、ウルキオラ、グリムジョー、ノイトラ、この3人はかなり仲がよい。 「あ〜・・・藍染様、まだかな〜・・・・。」 ここでは、藍染様達が来ないと、食べられないというきまりができている。 しかも、決まって藍染様達は少し遅めにくる。 「腹減ったよなぁ?テスラ。」 「そうですね・・・・・あ。ハリベル様・・・。」 そんな中、ハリベルが現れる。 十刃でもめずらしい女性破面の、ハリベル。 プロポーションはいいが、性格が男勝りなのが欠点だ。 「お、ハリベル。珍しいな、お前が藍染様より、先に来ンのは。」 「・・・今日は槍でも振るか。」 ウルキオラが少し面白がると、彼女の従属官であるアパッチの、ミラ・ローズが声を荒げた。 「ンだと、ウルキオラ!!!」 「ハリベル様を、馬鹿に・・・!」 「お止めなさいな、二人とも。言い返しながらも霊圧の震えが隠しきれてないですよ。」 それを止めたのは、スンスン。 冷静で、美人な彼女は、ウルキオラの霊圧に怯えながらも口論する二人を哀れんだ。 こんな騒がしい朝だが、終わりがくる。 藍染様達が食堂に現れたのだ。 食堂には、大体の破面が集まっている。 「さあ、皆。食べようじゃないか。」
かなりアットホームな破面達の日々が始まる・・・。
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フォークで幸福をすくう ( No.66 ) |
- 日時: 2008/02/22 19:21:39
- 名前: 色田ゆうこ
15歳の誕生日、父と母から、2人の婚約指輪をプレゼントされた。 こんな大切なもの、と言ったのに、彼らはそろって左手の薬指を腫らしながら (2人とも、これを嵌めてから16年間、取ったことは一度もないのだそうだ) プロポーズして、された日から、長女の15歳の誕生日にはこれをプレゼントしようと決めていたのだという。 いつも通り薄化粧をした母の頬が、そっと色付いた。 私は、つけていた銀の、ハートのネックレスを外し、その2つの指輪を通した。
「これが無いと存在しえなかった、お前が持つのが一番いい」
人のよさそうなただのおじさんであったはずの父は、少年のように笑って言った。 母にネックレスを留めてもらう。首が重くなった。 リビングの照明が、急にキラキラと光るシャンデリアのように思えた。 シャンデリアに照らされて、銀のネックレスは誇り高く輝いた。 テーブルの中央に置かれたケーキ(わたしが中学生になってからお菓子作りに凝りはじめた母の手作りだ。 イチゴショートがいいと言ったのはわたしだった。 本当はチョコレートケーキの方が好きだけれど、イチゴショートのケーキが一番、 子供の誕生日を祝うには相応しいと思ったから)には、円の輪郭に沿うように、 赤と白の蝋燭がやわらかな火を点して15本、頼りなく立っている。 「お母さん、今日は頑張っちゃった」 母が腕を回す仕草をしながら、わたしの背中を叩いた。 母は、わたしが成長していくたびに綺麗になっていくように思える。 このひとの何もかも、キラキラ輝いて見える。
(憧れ、だ)
母のような人になりたい。父のような人と一緒になりたい。2人は理想だった。 わたしは、この人たちの子供になるために生まれてきたのだ。
「お誕生日おめでとう。きみが生まれてきてくれて、お父さんたちはすごく幸せだ。愛してるよ」
照れくさそうに父が言った言葉に、母が隣で大きく頷いた。
私も愛してるよ。
泣きたい。
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それは偶然 ( No.67 ) |
- 日時: 2008/02/25 15:29:24
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- ラジオから耳に心地よい曲が流れている。
久しぶりに潜った扉の向こう、涼やかな音色のベルに掻き消されない、けれど大きすぎもしない音量で、何処か懐かしいような曲が流れている。 カウンターの向こうで、顔なじみの店主が自分に気付いた。 「……ああ、暁。久しぶりですね」 「クロス、久しぶり。…………この曲は?」 この店の主であるクロスに聞けば、側にあったCDコンポを示される。どうやらラジオだと思っていたそれはCDだったらしい。 「ティアナが最近はまっているバンドです。ヴィジュアルの服装でバラードを多く歌っているとか」 「へぇ、ティアナちゃんがねぇ」 あまり音楽に興味を持たない彼女がはまった曲。それだけヒトの心を引き付ける何かを持っているのだろう。 流れる曲は穏やかだ。暫し口を閉ざし、カウンターに頬杖を付いて曲を堪能する。 「暁さん、いらっしゃい」 どれだけの時間が流れていたのか、背後にティアナちゃんが現れていた。時計を見ればきっかり五分経っていた。 自分もあまり音楽に興味はないのだが、と苦笑しつつティアナちゃんの方へ向き直る。 「やあ、久しぶり」 「久しぶり。あんま来てくれないからさ、死んだのかと思ってた」 「失敬な。忙しかったんだよ、お仕事が」 「『獏』の仕事? それとも何でも屋としての仕事?」 「それ、どっちも同じ」 「…………」 ふい、とそっぽを向いた彼女はその場から消え、少し離れた場所にある商品棚の上に現れる。それが彼女の照れ隠しであることは既に知っている。 彼女が現れた商品棚に近付けば、また新商品のファンシーな小物があることに気付いた。 「なに、僕に買えって?」 「ちーがーうー! あたしが考えたんだ、だから感想ちょうだい?」 「へぇ、ティアナちゃんが考えたんだ」 この店――――――――ファンシーショップ「夢由(むゆう)」にある商品の殆どはクロスが考え、創り出したオリジナル商品だ。けれどここにある新商品をティアナちゃんが考えたと言うことは。 「……クロス、ティアナちゃんのこと店員として認めたんだねぇ」 「当たり前でしょう。私は彼女を店員として認めなかったことはありませんよ」 「さいですか」 苦笑しつつ商品を手にとって見てみる。成る程、女の子ならではの視点で創られているらしい。 一通り眺めてから彼女に目をやる。キラキラと期待に満ちた眼差しで見つめられていた。 「いいんじゃないかな。僕素人だけど」 「素人の意見が一番いいんだよっ」 嬉しそうに飛び回る彼女。勢い余ってクロスに飛びついている。 それを笑顔を浮かべつつ見ていたら、CDが止まっていることに気付く。 「ティアナちゃん、CD終わってるよ」 「あ! ホントだ」 ふわりと消え、瞬時にCDコンポの所に現れると、彼女は別のCDに取り替える。流れ出した曲は、同じバンドのものだった。 ふと気になって尋ねてみた。 「ね、それなんて言うバンド?」 「ん、『綺世』」 「綺世」。一度口の中で転がしてからその名を記憶に刻み込む。 先程のCDをケースごと貸して貰い、矯めつ眇めつ見る。確かにヴィジュアル系だ。 「ナギ兄さんや時人に送ったらどう言うと思う? 暁」 笑い混じりでいきなりそう声を掛けられ、言葉に詰まる。第一自分は「ナギ兄さん」のことはクロスに聞いたことしか知識にない。 仕方ないので無言を貫くと、ティアナちゃんがクロスに突っ込んでいる声が聞こえた。 それにしても、だ。 何故このバンドはどことなく懐かしい曲を奏でるのだろうか。 クロスにツッコミ終えたティアナちゃんに視線を投げ、聞いてみれば意外な答えが返ってきた。 「ギターだよ、ギター。人よりもヒトに近いモノが弾いてる。コーラスも同じモノが歌ってるみたい。だからだよ」 言われ、ジャケットに視線を落として気付く。 「…………ああ、人ではなくなったヒトが留まっているんだね」 「そゆこと」 軽く肩を竦め、返してねとだけ言ってCDを持ち、ティアナちゃんは店内から消える。 相変わらずの早業だなぁ、なんて思いながら自分も腰を上げ、クロスを振り返った。 「それじゃ、僕はもう行くよ」 「今度は客として来てくださいね」 「善処します」 「夢由」と金の飾り文字で硝子に書かれた扉を押し開け、外へと出る。柔らかな陽射しが心地よかった。 そのまま何も考えずに歩いていると、目の前の青信号の横断歩道で一人の男性が信号無視をしてきたバイクに撥(は)ねられた。辺りが騒然とする。 「っ!」 撥ねたバイクはと言うと、そのまま逃げ去ってしまう。あまりの出来事で、この自分でさえバイクのナンバーを見ることが出来なかった。 とりあえず近くの人間に救急車を呼ぶように言って男性の方へ駆け寄る。打撲、骨折、それから出血。かなりの重症である。 今までの知識を振り絞って応急処置をするが、気休め程度にしかならないかもしれない。 「…………ぁ、……」 「喋るな!」 何事かを喋ろうとした彼を押し止め、救急車を待つ。 応急処置に使ったクロス作の「抑えの包帯」が血で赤く染まる頃、漸く救急車がやってきた。
――――――――――――――――――――――――― (>>68へ続く)
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それは必然? ( No.68 ) |
- 日時: 2008/02/25 15:58:16
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 「…………今度は客として来てくれ、とは言いましたが」
早過ぎやしませんか。 そう言うクロスに肩を竦めるだけで返し、自分たちは真夜中の病院内部へとやって来た。 あの撥ねられた男が運ばれた病院、だ。 「撥ねた馬鹿バイクを捕まえたいんだよ」 「警察に任せればいいでしょうに」 「僕がナンバーを覚えなかった所為で捕まらなかったら寝覚めが悪い」 不機嫌にそう言い放つと、男の病室へと足を進める。 やはりかなりの重症らしく、沢山の機械が彼に絡み付いていた。とても痛々しい。 「ねぇ、暁。この人が相手覚えてなかったら?」 「…………どうしようか」 ティアナちゃんの言葉に苦笑しつつそう返す。けれどもしそうなったら、クロスに土下座でもなんでもして犯人捜しに協力して貰おうとは思っている。 仕方ないなぁ、なんて呟くと、ティアナちゃんは男の額に手を置き、彼の記憶を自身の中に取り込んでいく。 具現化したデータ体である彼女にとって、その作業は朝飯前と言っても過言ではない。 暫くして、ティアナちゃんはこちらを見た。 「………………暁」 「何?」 まさか覚えていなかったのだろうか。そう思い真剣な目を向ければ。 「この人、『暁千影』って言って、綺世のマネージャー…………」 思わず止まる。動きも思考も。 けれどすぐに気付いた。彼女がとても複雑そうな顔をしているのを。 無言で先を促せば、そのままの表情で続ける。 「今、一番忙しい時期なんだって。なのにこんな事になって…………。ね、暁、この人の仕事、代わりに出来ないかな? あたしがコピーしたこれまでの綺世の記憶、暁にダウンロードするから」 駄目? と。上目遣いに頼まれて断ることなんてできなかった。 それに、これも何かの縁なのだろうと思う。歯車が噛み合ってしまったのだ、と。 頷けば、ティアナちゃんは男の額に置いていた手を離し、今度はこちらの額に当て始める。 「暁千影」の綺世に関する記憶が流れ込んできた。曲も仕事も、どんな些細なことも。彼はマネージャーとして優秀だったのかもしれない。綺世のことをずっと見守り続けている。 記憶のダウンロードが終わり、クロスを見れば、やれやれとでも言いたげに肩を竦められた。 「他人の身代わりって結構大変ですよ?」 「解ってるよ。でもほら、僕って結構器用だし」 「そうだね、普通の人の記憶に残らないようにすること、出来るもんね」 ティアナちゃんの言葉に苦笑しつつ、「暁千影」に近寄り、その手を取った。
「それでは綺世の代理マネージャー、何でも屋暁が引き受けました」
少しだけ、その手に力が入ったような気がした。 病院を後にした後、「暁千影」と他人が認識するように自身の纏う空気をクロスに手伝って貰いながら変質させたり、トワイライトがとんでもない情報を持ってきたり、それによってとある事件を通して仲良くなった十文字兄弟を巻き込まなくてはいけなくなったりと色々あったが。 それはまた、別のお話。
――――――――――――――――――――――――― (>>67の続き)
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或るミュージシャンの移動中。 ( No.69 ) |
- 日時: 2008/02/25 19:17:55
- 名前: 沖見あさぎ
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- 「ユウ、次は第二スタジオだーってさ」
楽屋の入り口からひょっこりと顔を出したカイが俺に告げてきた。 靖成(人気アイドル『Alice』の専属マネージャーでヘアメイクを担当する、ラバーソウルのスタッフだ。一応年上なのだが、俺はふつうに呼び捨てで呼んでいる)によるヘアメイクも終わったので、俺は荷物を纏めて立ち上がった。 と、不意に尻ポケットに入れた携帯がブブブ、とメールを受信。ディスプレイを見ると竜一サンからだった。 いつもと同じように、今日の夜遊びにいこう、という旨の内容だ。24といったらもう大人と呼んでもいい年齢なのに、あの人はいつまでも変わらない。 携帯をポケットにしまって(スライド式なので閉じる必要はない)俺はカイのほうへ歩み寄る。
「ああ、今行く」
「……あれ?」
廊下で不意にカイが後ろを向いた。こいつがそういう反応をすることは予期していたので、次いで俺も振り返る。 其処にいたのは紛れも無く、「カイのお気に入り」である「カガミ」の後ろ姿。 いつもぼんやりとしているこいつのことだから、きっと気付かないだろうと黙っていた俺がバカだった。 カイはじっとカガミの背中を見つめ、瞬間にやっと笑った。 もし猫が笑うとしたらこんなふうに笑うだろう、と不意に思う。(そしてカイが猫だったら相当手がかかる気まぐれな猫に違いない。) ふと、道の先にいたカガミが振り向いた。いやな予感だ。
「ねーユウ、収録始まるのってあとどれくらい?」 「………あと10分」 「じゃあ」
ちらっと俺のほうを目だけで見てから、カイはくいっと顎をカガミのほうへしゃくった。
「ちょっと立ち話しても怒られないよね。……うん、そんな気がする」
こいつの自己完結はいつものことだ。 俺が何かを言う前にカイは廊下を引き返していた。もちろん目的はお気に入りの彼女。
……ひとつ溜息を吐いてから、早足で俺も後を追った。
‐‐‐‐‐‐ (>>59のつづき!)
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Re: 短筆部文集 3冊目 (行事があってもマイペースに製作中!) ( No.70 ) |
- 日時: 2008/02/25 20:55:15
- 名前: 深月鈴花
- 振り返ったら、「CROSS」の二人は何やら話をしていた。
ど、どうしよう、挨拶できなかったの、嫌な子って思われちゃったかな…… と、そのとき。 「CROSS」の「カイ」がこちらに向かって歩いてきた。それを追うようにして、「ユウ」もこちらに歩いてくる。 あたしは慌てて、 「えっ、こ、こんにちは!」 と挨拶をした。 「えっ」はどうしようもないよ、だってびっくりしたんだもん。まさか、あたしなんかのために引き返してきてくれるなんて思わなかったんだもん! 話したことなんて、数えるぐらいしかない。本当に人気があって、最近はドラマや雑誌でもよく見かける。 あたしにとっては、とっても尊敬する先輩。 そんな先輩が、目の前で笑ってる。 「こーんにちは。」 カイが、独特の甘い声でそう言った。 近くで見ると、本当に二人とも美形だ。 「あ、あの、ごめんなさい!ちょっと考え事してて、それで……あの、気づけなくって……」 あたしよりも頭1,5こ分くらい身長が高いカイが、ぷっ、と笑った。 「気にしてないよ。」 その言葉にホッと笑みをこぼしながらも、あたしははっと腕の時計を見た。 ラジオの生放送の収録まで、あと1時間とちょっと。 あたしはいつも寄せられてくる葉書を念入りに読んでから収録するため、早めに行かなければ間に合わなくなる。 もっと話していたいと思いながらも、時間は待ってはくれない。 「すみませんっ、もうそろそろ時間が……」 顔を上げないと合わない視線を、一生懸命合わせる。 カイの黒い瞳に、あたしが映った。 「うん、またね?」 「っ、はい!それじゃあ、失礼します!」 ぺこり、と一礼してから、ラジオ収録へと急いだ。
(またね、かぁ………)
今日はなんだかいいことありそう。
いつもより軽い足取りが、それを物語っている気がした。
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或るミュージシャンの現場入り。 ( No.71 ) |
- 日時: 2008/02/26 21:52:58
- 名前: 沖見あさぎ
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
「『CROSS』の二人入りまーす」 「よろしくお願いしまぁす」
撮影所に入った途端、スタッフの一人が俺たちの存在を知らせ、前にいたカイが軽く手を挙げて気の抜けた挨拶をした。 今日の俺たちの仕事は、来月から始まる学園ドラマの撮影だった。 ので、セットは教室やら職員室やらと学校関係のものが集まっている。 不意に見回すと、他の役者はもうドラマの制服に着替えて待機していた。 カイが『カガミ』と話をしたせいで(といっても別にカガミを責めているわけではなく寄り道をしたカイが悪いのだ)大幅に遅れ、どうやら俺たちがビリらしい。 しかし俺たち(ってゆうかカイ)が遅いのはスタッフも共演者も把握していて、これといって追及されることもなかった。 おはようございます、よろしくお願いします、と律儀に周りのスタッフに挨拶をしていると、歩いてくる人影があった。
「やっほ。カイ、ユウ」 「チカぁー」
カイが頬を緩めて目の前の男に抱きついた。言っとくが此処はアメリカじゃねぇ。 白いシャツの上にキャメル色のカーディガンを羽織り臙脂のネクタイを締め、ゆったりと笑っているその男は他でもない。 『ドロップ』のリーダー、CHIKA―――有末千景だ。 このドラマでは生徒会長の役を務め、主要メンバーの一人でもある。 役どころでは、不良役であるカイとは対立する間柄であるのだが……今の状態はそんなことを微塵も感じさせぬ仲のよさだった。 (こんななのに一旦撮影が始まると相手への視線が敵意を含んだものになるのだから凄いと思う)(本当はお互い好いてはいないのかもしれない)
「あれ、ヒナタは?」 「今日はこっちは入ってないよ。ほら、バスケ部だから。神奈川の学校に撮りに行ってる」 「あ、そーだったっけ。屋外組かー」
カイの突撃によって乱れた髪を直しながら、チカはふいに俺を見てにっこりと笑った。 ――俺はこいつのことが、少し苦手だ。 腹の底で何を考えているのかわからない性格は好かない。 しかし関わらないというわけにもいかないのだ。俺の兄は俳優だが、ひどくチカと仲がよくたまに家へ遊びにきたりする。 ぺこり、と一礼すればひらひらと手を振られた。
「ね、ね、きーてよチカぁ。さっき俺、カガミに会ったー」 「へえ? すごいじゃん。握手した?」 「あ、忘れた」 「お前、「もし会ったらぜったい握手するー」っつってなかったっけ?」 「言ったっけ?」 「……んっとに忘れっぽいよね、カイって」 「まーいーじゃん。帰りにまた会えるかも。此処のスタジオらしいし」 「…ラジオ番組とドラマの終了時間がかぶるのは難しいんじゃない?」 「なんとかなるって。うん、そんな気がする」
傍にいた男性スタッフが笑って、「チカ、ユウ、休憩時間にカイが逃げないように見張っといてくれよ?」と茶化した。 チカは笑って、はーい、と返事をしたが、本当にカイは逃げていきそうで怖い。 (どうしてそこまでカガミが好きなのかは知らんが)
「じゃあお二人とも、着替えてきてくださいねー」
軽く言われて、女性スタイリストによって更衣室へ押された。 ……今日は、スムーズに終わるといいな。早く帰りたい。
また一日が、始まる。
‐‐‐‐‐‐ (>>69のつづき!)
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炎の髪と音域のない声 -出会い- ( No.72 ) |
- 日時: 2008/02/27 15:28:12
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 燃え上がる炎の髪を持った女性と出会ったのは、小学六年の三学期末だった。
「ただいまぁー」 やる気のない声を出しながらも玄関に靴を脱ぎ散らかして階段を上り、自分の部屋へ行ってベッドに突っ伏す。それがボクの日常。 けれど今日は、自分の部屋に入る前に首根っこを掴まれてしまった。 「シン、お帰り」 「待ってたよ、シン」 姉さんと兄さん。ちなみに二卵性とは思えないほどよく似通った顔立ちの双子。声だってそっくりだ。 ……この二人を見ているからか、ボクは性別というものを曖昧に捉えてしまっている。だって、どっちが兄さんでどっちが姉さんで、と言うことを多くの人が見分けられないのだから。性別違うのに。 まぁ、それは置いておいて。 「なに、ボクに何か用〜?」 「うん、用」 「オレ等の友達来てるからジュース持ってきて」 「自分たちで取りにいきなよ、ここまで来たんなら」 「「えーっ」」 ブーイングでハモられた。 この二人に口で対抗するなんて言う七面倒くさいことは御免なので、仕方なくランドセルをベッドに放り投げて上がってきた階段を下りる。これすらめんどいのは仕方ない。あの二人にステレオで抗議されるよりはマシ。 キッチンへ行けば、母さんがいなかった。成る程、だからボクをここへ寄越したのか。 冷蔵庫を開けて中を漁る。めぼしいジュースはない。紙パックもペットボトルもない。そう言えば昨日、姉さんと兄さんでペットボトル一本空けてなかっただろうか。 仕方ないので目に付いた缶ジュースを三つ持つ。…………そうだ。 ニヤリ、と口端を吊り上げると、缶ジュースにちょっとした細工をして階段を駆け上り、兄さんと姉さんの部屋の扉を開ける。 「いらっしゃいませ、姉さんと兄さんのお友達さん」 にこり、と営業スマイルを貼り付けて見やった部屋の中の三人目。燃え上がるような炎の髪。一瞬、あるアニメのキャラを思い出してしまった。 「…………どうも」 軽く会釈をしたその女性に缶ジュースを渡し、続いて姉さんと兄さんにも渡す。 「すみません、今これしかなくて」 「私のことは気遣わなくても結構です」 …………どうやら、これは本音らしい。気むずかしい人、なのかもしれない。 カシュッ、と兄さんと姉さんが同時にプルタブを開けた。勢いよく。それと時を同じくして、飲み口からジュースが吹き出してくる。 実はあのジュース、炭酸だったりする。二人に渡すものだけ思いきり振ってきたのだ。 「っ、シン!」 「ちょ、何してんだよあんた!」 兄さんと姉さんのその言葉にボクは申し訳なさそうな顔をする。 「ご、ごめん。冷たいうちに渡した方がいいかな、と思って急いできたから振っちゃったのかも…………」 う゛、と兄さんの動きが止まる。けれど姉さんは続けてきた。 「あたし達への仕返しでしょ! パシリみたいなコトさせたからって、」 不自然に姉さんが口を噤んだ。その視線は二人の友達に向いている。 …………ものすっごい睨まれてるんですけど!? 「あなた達は自分たちが楽するために年下を顎で使ったんですか」 「あ、いや、そうじゃなくてね?」 「それも恐らく学校から帰ったばかりのその子を。恥を知りなさい」 ばしぃっ、と言って、彼女はボクの方へと歩いてくる。 「すみません、私が来たばかりに。ああけれど、あれは感心しません。仕返しは他に被害が行かないように的確にやりなさい」 「………………はい」 普通は仕返しした方が叱られるのだけれど。母さんの口癖は「年下なんだからお姉ちゃんとお兄ちゃんの言うことは聞きなさい」だもんな。 ぽかん、として見ていると、うっすらと笑みを浮かべられた。 なんというか、凍った炎のようなイメージの人、だ。見た目は熱いのに、触れたら冷たい。けれどその奥は炎のように熱い。 「さて、私はそろそろ帰ります。ラン、リン、それでは」 ジュースの缶を持ったまま部屋を出て帰って行く彼女の後ろ姿を見送ると、姉さんと兄さんが部屋の隅でのの字を書いていた。 よほど彼女に嫌われたのがショックらしい。 「姉さん、兄さん、鬱陶しいよ」 「「うぅ、だって」」 ステレオでウザさ倍増。仕方ないので溜息混じりで口を開く。 「あまり鬱陶しいと塩を掛けますよ」 「「っ」」 ちなみに先刻の女性の声、だ。 ボクの声帯は高音も低音も自由自在、自分の声を確立するのに時間が掛かったぐらい様々な声が出せる。だからこんなモノは朝飯前だ。 「シン〜、どうすればいい?」 「ウィルに嫌われたらオレ達、オレ達…………」 さっきの人はウィルというらしい。仕方ないのでボクも床に座り込んで言ってあげる。 「だったら明日、反省しているって素直にウィルさん? に言ったら」 「「それだ!」」 …………双子って、どうしてこんなに五月蠅いんだろう。
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世界は脆く、それゆえに強い ( No.73 ) |
- 日時: 2008/02/28 16:18:33
- 名前: 絵瑠◆OMBM0w5yVFM
- 「ねぇ、一緒にバンドやらない?」
高校に入って一週間、まだ隣の奴の名前もあやふやな頃、俺はその言葉に乗せられて軽音楽部に入部した。 誘ってきたのは、同じクラスの久保癒衣。後に「ユイ」という名前で、『綺世』リーダーとして名を轟かせる事になる女だ。 最低でも3年間は共に活動することになる部活のバンドメンバーに男を誘うのは女としてどうかと思ったが、癒衣の人を見る目は確かだった。奴は俺以外にも、他のクラスからメンバーを集めてきたのだ。 一人が小橋直人、後の「ナオ」。もう一人は、今でこそ正式メンバーではないが、「アキラ」と呼ばれていたベーシストだった。癒衣は正確に俺たちの得意分野と才能を見抜き、メンバーとして勧誘していった。ラバーソウルの新人発掘にハズレがないのは、間違いなくその洞察力の賜だろう。 ……ともあれ、あまりにも順調すぎるスタートで、『綺世』は結成された。
(綺世高校時代の話。)
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