Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.41 ) |
- 日時: 2007/04/02 20:54:16
- 名前: 鈴花
- 参照: http://ameblo.jp/rinka0703/
- 「・・・会長?」
クラスの文化祭費用の合計を書いた紙を持って、生徒会室のドアを少し開けた。中は電気がつきっぱなしで、大きく積まれた紙の中心で会長が机に突っ伏して寝ていた。 「会長・・・;お、起きてください、風邪、引きますよ?」 少し肩を揺すってみる。起きる気配は全くナシ。 「睫毛・・・長いんだ・・・」 そんなこと思いながら山積みにされた紙に目をやる。 紙は一応種類別に別けられているみたいで、一番上にやらなければいけないことが書いてあった。 【昼休みの終わりまでにホッチキス止め】とか【放課後までに合計値計算】とか。 「昼休み・・・って・・・」 今調度昼休みなんだけど・・・終わりまで、あと28分。 急がないと間に合わない!! 勝手にやっちゃ悪いかなと思いつつも、私は束を手に取った。 ざっと200部くらい。幸い2・3部は作ってあって、どういう風にとめればいいかはわかった。
バチンッ バチンッ
こういう作業は小学校の頃よくやってた(学級委員を断れなかった)ので、慣れてた。 ・・・それにしても・・・ これを全部会長一人でやるなんて・・・ちょっと無謀なんじゃないかな・・・ 会長の寝顔を見ながら、少し微笑んだ。
最後の一部をとめ終えて、時計を見ると1時26分。昼休み終了まであと4分。 「間に合ったぁ!!」 気付くと、そう叫んでた。 急に恥ずかしくなり口を押さたけど、会長は薄く目を開けていた。 「あ・・・会長、すみません・・・起こしちゃいましたよね・・・」 「・・・俺、寝てた?」 「ええ、とてもよく。」 目をこする会長が可愛らしくて、思わず顔がほころんだ。 「・・・起こしてくれてよかったのに・・・って!俺、昼休み終わりまでにホッチキス止め・・・」 慌てたようにあたりを見回す会長。 「あ・・・勝手かな、とも思ったんですけど・・・もう少しで昼休み終わりそうだったので・・・」 やっぱり、まずかったかな・・・ 「ありがとう、美!!助かった!!」 会長は満面の笑みで私に抱きつ・・・えぇッ!? 「かっ、会長!?」 「あっ、ご、ごめん・・・俺、職員室にこれ届けに行ってくるから!」 会長の顔は真っ赤で、照れくさそうに生徒会室を出て行った。 私の顔は火照ったまま・・・
そのとき、調度昼休み終わりの予鈴が鳴った。 私は駆け足で教室まで戻ったけど、会長は何分か遅刻して教室に入ってきた。 会長が席に座るとき、目があって。 「お礼に今度お茶でもどう?奢るから。」 「え、あっ・・・はいっ!」
今まで恋なんてしたことなかった私が、この人のたった一言でこんなにも嬉しくなれる。 こんなにはまってしまった私が、少し可笑しかった。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.42 ) |
- 日時: 2007/04/02 23:02:00
- 名前: 玲
- 参照: http://yaplog.jp/yami-tuki/
- 人が大量に行き交う繁華街。
金色の髪に真っ赤な瞳を隠した、年端もいかない少年がその中にぽつんと立っていた。 焦点の合わない瞳はただ虚空を彷徨う――。 そんな少年に、一人の女性が近寄って言った。 「ボク。良かったらお姉さんとお茶しない?」 唐突なお誘い。でも、だから当然のように、少年はにっこり笑って女性に振り返った。 「いいですよ」
「…………そう。キミはご両親がいないのね? 寂しかったでしょう、まだ幼いのに……」 女性は言う。 少年はその手には大きいくらいのカップを両手に包み、視線を落として答えた。 「そうでも、ないです。居ても大して構ってくれる両親ではなかったので。……寂しいわけじゃないんです。ただ、一人は少し怖い…………」 徐々に元気が抜けていく顔。 今にも涙が出そうなのを必死に堪え、少年は無理に笑顔を繕った。 「ごめんなさい。何言ってるんでしょうね、僕。初めて会った人にこんな……」 「いいのよ。泣きたいのなら泣いて。私しか見ていないわ」 女性の言葉に少年は顔を上げ、それと同時に堪えていた涙が頬を伝う。 「…………お姉さんが、僕のお母さんだったら良かったのに」 少年は呟いた。
「今夜は泊まっていってね。いいえ、好きなだけ此処に居ていいわ」 その後女性は自宅に少年を連れて行き、食事を与え、風呂に入れさせ、ベッドを用意した。 「ありがとうございます」 少年は微笑んで謝礼の言葉を口にした。 それから手招きで女性を自分のもとに呼び、その額に軽く口付けをする。 「まあ」 「……感謝の、印です」 少年は顔を赤らめ俯き、手を後ろに回し恥じらいを現していた。 「ありがとう。私はシャワーを浴びてくるから、寝てもいいし、自分の家だと思ってのびのびと過ごしてね」 「はい」
女性は入浴し終え、再び部屋に戻ると驚愕した。 いるはずの少年がそこには居なく、……いや、居た形跡すらない。 何もかもが少年を招き入れる前の状態となった部屋を見渡し、はっと悪い予感が頭を過ぎった。 慌てて金庫を開くとそこには一枚のカードのみ、丁寧な字で文章が綴ってあった。
暗闇の中、五メートルはある塀から樹をつたい少年が降りる。 「へっ、女なんかちょろいぜ」 ボトム、ジャケットの内ポケットに溢れんばかりの宝石を詰め込み夜道を走る。 「ちょっと泣いて微笑みかけりゃあすんなり家に入れてくれるんだもんな」 走っている途中、やけに大きい屋敷が少年の視界に入った。 次の獲物を見つけたと言わんばかりに口の端をつりあげ、屋敷を観察しながらその場を走り去る。
金色の少年と黒色の少年が出会うのは、これよりまだ先の話――。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.43 ) |
- 日時: 2007/04/02 23:29:41
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- 鮮血の花が舞う場所で、一人の男が倒れ伏した。
手には自分の血と他人の血が混ざった血が乾いてこびり付いている。 ・・・・・・・・・・・・・・・殺さなければならなかった。そうしなければ生きていけなかった。 そんな言い訳を心の中で何度も何度も呟いて、男は再び体中が悲鳴を上げるのも構わず起き上がった。 そして、その手に掴んだワイヤーを振り翳した。
もう何人目の悲鳴を聞いただろう。意識が遠退きそうな自分を必死に叱咤する。 まどろむ景色の中で、自分の腹部に穿たれた穴から激痛と生温い鮮血が伝い、やけにその感覚だけはっきりしていた。 どさり、とその場にくずおれると、目に光を宿していない、かつて人だったモノ達が近くに転がっている。
・・・・・・・・・・これが、結果なのか。
何も得るものなどなかった。舞う鮮血を慈しむことも、綺麗だと思うことも、気持ち悪いと思うこともなく。 生き延びようとも、思っていなかった。 自分が死んで悲しむ人間などいないし、自分にはそう思える他人もいない。 意識を手放そうとしたその瞬間、声が聞こえた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、大丈夫か」 日の光に揺れる、綺麗な銀に光る髪の少女が自分を見下ろしていた。
「これからお前と組むことになる人を連れてくるよ」 そういって銀髪の女は振り向くと軽く笑った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どんな奴」 「可愛い女の子、だな。煙草とか吸うんじゃないぞ」 「餓鬼・・・・・・・・」 子供は嫌いだ。お前も子供だと言われればそれもそうなのだが、無垢な瞳を向けるその視線が大嫌いだった。 あの時目の前の銀髪の女に拾われた自分は、その力を買われて共にとある騎士団に入ることとなった。 そして仕事上の相棒を組まされることとなる。 子供だと聞かされてうんざりしていると、向こうから団長代理と、その人影に隠れるようにして小さな少女が歩いてきた。 「・・・・・・・・・・ほら、自己紹介」 「・・・・・・・・・・・・スウェル。スウェル・バルフォア」 銀髪の女に言われて無機質にそう答えると、向こうの少女はにこりと笑って言った。 「はじめまして、スウェルさん。よろしくお願いします」 その笑顔が、遠い記憶を呼び起こした。 陽だまりの中で微笑む少女は、常闇の中に差す、ひとすじの光のようで。 「・・・・・・・・・・・・・お前、名前は」 「わたしのなまえは、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少しだけ、笑えるような、救われたような。 生きていける、気がした。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.44 ) |
- 日時: 2007/04/03 00:42:50
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 私が好きになったのは、クラスのみんなが好意を持っている、友達作りの上手い男の子でした。
名前は倉橋英司君。 優しくて明るくて、日向にいる人。 暗くて目立たなくて、日陰にいる私とは正反対の人。
「……恋って苦しいね」 「春菜、好きな人がいるんだ?」
親友の小熊由多に零すと、そう言葉が返ってきた。 由多は不思議な子。 中心にいるでなく、かといって端っこで目立たないでもなく。 ただ、いつの間にか風景の一部に組み込まれてしまう子。 その子が私の親友。
「……片想いだけど、ね」 「誰か聞いてもいい?」 「………………倉橋君」 「ああ、倉橋英司君か。素敵な人だもんね」
由多がそう言って笑顔を浮かべる。 もしかして、彼女も倉橋君が好き、なのだろうか。
「ああ、安心して。私、好きな人いないから」
彼女の一言に安堵してしまう自分がいた。 どうして恋をすると、こうも余裕が無くなるのだろうか。 そんなことを思いながら、由多の隣で溜息を吐いた。
「恋は止められないし、相手の気持ちは見えないからだよ」
私の気持ちを見透かしたような答えに、私は少し目を見開く。 よく見ると深い緑だと解る彼女の瞳を見つめて、私は彼女の言葉を胸中で繰り返した。 恋が止められないのは解る。 …………それは、今の私の状態だから。 相手の気持ちがわからないのも解る。 …………それは、今私がそう思っているから。 だから、とても心に響く。
「……由多。私、これ、初恋なんだけど」 「わぁ、おめでとう」 「由多の初恋って、何時?」 「…………まだ」
苦笑してそう言った由多の顔はどことなく寂しそうで。 早く彼女の恋の相手が見つかればいいな、と。 自分のことそっちのけで考えてしまった。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.45 ) |
- 日時: 2007/04/03 11:55:04
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- 「何してるの、生きてる?」
「……死んでる」
そう答えた私に、彼は呆れたようにため息をついた。 今は授業中。 私は寝転がったままぼんやりと彼を見つめる。 「……授業は?」 「今は特数」 そうじゃなくて、授業中なのにどうしてここにいるか聞きたいのに。 面倒くさいから聞きなおさないけど。 私は腕を伸ばしながらむっくりとベッドから起き上がる。 彼はまたため息をついた。 「シャツはだけてるんですけど……」 「何が」 「下着がみえる」 そう言いながら彼は気まずそうに目をそらす。 ふむ、なるほど。紳士だ。 でも紳士ならもう少し間接的に言ってほしかった、天邪鬼な私は言われると何もできなくなる。 私はまたさっきのようにベッドに寝転がった。 「ってまた寝るの?」 「眠いから」 「あのね……あんまり寝てると襲われるよ」 「いいよ、襲われても」 そう答えた瞬間、彼は呆気にとられて固まってしまった。 ……ああ、主語が抜けた。 あなたになら、襲われてもいいよ。 でもやっぱり面倒くさいから言い直さない。さて、どうしようか。 1度固まってしまった彼を元に戻すのは少しむつかしい。
好きだといえば、戻るだろうか。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.46 ) |
- 日時: 2007/04/03 19:05:41
- 名前: 玲
- 参照: http://yaplog.jp/yami-tuki/
- 「ほーら〜っ、早く席に着きなさい!」
まだ空が青い時間帯、俺が通う高等学校のとある教室で甲高い少女の声が響いた。 「……煩いですよ先輩」 その空間にいるのは少女と、もう一人俺だけ。 俺は少女――俺の先輩の声に多少反抗の意を表したものの、素直に空いている椅子に座る。 逆らったらどうなるか判ったもんじゃないからな。 「そこ、反抗しないっ!」 案の定、先輩の地獄耳は呟いただけの俺の言葉も聞き漏らさず俺をびしっと利き手の人差し指で指して咎めた。 「へーい。……早く卒業すればいいのに」 今度はさっきよりも小さな声で言ったぞ。なのに、なのにだ。 「あたっ」 俺の顔についている視覚を働かせる二つの部位の間に存在する、所謂眉間は物理的衝撃を感じた。 当事者は当然、黒板の前でチョークを投げたままの姿勢で立っている先輩。 「なーにか言ったかしら〜?」 それからずかずかと俺の前に歩み寄ってくる。 先輩の小さい手が俺の頬を両側から掴み、同時に引っ張った。 「いたっ。痛いっスよ先輩!」 「さっき頓珍漢な事言ったのはこの口かしら? え? 秋宮楓」 「ひゃ、ひゃにひっへんふは。ほへははひもひっへはいへふよ?」 上手く喋れない。通訳すると「な、何言ってんスか。俺は何も言ってないですよ?」だ。 「何言ってんのか解んないのよ! 言いたい事があるならはっきり言いなさい」 そんな無茶な。この状態で俺にどう喋れと。 俺が大人しくしてると先輩は飽きたのか、俺の頬から手を放し再び黒板前に戻っていった。 「まったく、タイムロスだわ。秋宮楓。帰りに駅前のファミレスでスーパージャンボバナナチョコパフェを奢りなさい」 「はっ!?」 「これはお願いじゃないわ、命令よ」 「ふざけてますよね?」 「ふざけてるわけないじゃない。私はいつでも本気よ」 「じゃあ先輩の存在自体ふざけてるってことで……あたっ」 またチョークを投げられた。 それにしても先輩。百発百中眉間に当てられるなんて……野球部からスカウトが来ますよ? と、ゆーわけで俺と先輩は部活を強制的に終了させ駅前へと向かうことにした。 学生が行き交う街の中で、俺は思い出したように先輩に言った。 「……先輩。俺がさっき言った頓珍漢な事憶えてますか?」 「ええ。後で仕返ししようと思ってたのよ」 「…………」 「それがどうかした?」 「いーえ、何でもありません」 「変な人ね」 「先輩には負けますけどね」 「それは喜んでいいのかしら?」 「先輩次第で」 こんな適当な会話をしながら店へ向かう。 俺が言った、先輩曰く頓珍漢な事の本当の意味は、また後日話すことにしよう。 とりあえず今はスーパージャンボバナナチョコパフェの料金をどう払うか、という思考に専念することにした。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.47 ) |
- 日時: 2007/05/25 16:03:34
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 私の友達が、初恋をした、そうです。
恋の相談を受けました。 しん、と静まりかえった教室の机を揃えながら、私は春菜の好きな人の顔を思い浮かべます。 なんというか、好青年で途轍もなくスポーツが似合う人、です。 初恋の相手が彼のような人でよかったな、と思います。 これでナンパ師だったら、私は春菜の恋を諦めさせなければいけませんから。 彼女はきっと、これから初めての恋にヤキモキするのでしょう。 けれど私は知っているんです。 それは、つい先日のこと。 遅くなって廊下を一人歩いていたときのこと。
「なぁ、中西。オレの席にある鞄、取ってくれないか?」
声が、聞こえてきたんです。 倉橋君の声でした。
「あ、ついでにお前の鞄と日誌ももってこいよ」 「え?」
春菜の声もしました。 二人とも、教室にいるのでしょう。 教室の方へ一歩足を踏み出そうとした瞬間。
「一緒に帰ろうぜ」
倉橋君が、春菜にそう言ったのです。 春菜の頷いた声が、倉橋君の促す声が、私の耳に届いてきました。 咄嗟に身体を隠し、二人の様子を窺うために頭だけ物陰から出して観察しました。 見えたのは二人の横顔。 頬を赤く染めた春菜と、ほんのり頬が赤くなっている倉橋君。 けれどどうやら、春菜は倉橋君の様子に気付いていないようで、二人はそのまま並んで帰ってしまいました。 そうなんです。 倉橋君もどうやら、春菜のことが好きなようなんです。 だから私は、春菜の恋を別段心配してはいません。 くっつくときは、自然とくっつく物ですし、ね。 ああでも、恋愛相談の最後の言葉は少し訂正しておきたいですよねぇ。 きっと春菜、誤解しちゃったでしょうし。
私の初恋は、まだ、続いているんです、って。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.48 ) |
- 日時: 2007/05/25 21:19:34
- 名前: 深月鈴花
- 参照: http://ameblo.jp/rinka0703/
- 高校生・・・って私にとって忘れられないことがいくつもある。
戦国時代へトリップしてしまったことは、もちろんそうだけど・・・ そんな中で、私は一つの恋をした。 奈央・・・って、過去の私はあの人のことをそう呼んでいた。 私より一つ年下で・・・ 生意気で・・・・・・でも、優しかった。 時たま、ふと奈央のことを思い出してしまう。 街中を歩いていて、奈央くらいの身長の男の子を見つけると、ついそっちを振り向いてしまう。 フラれてるのに、未練がましいな・・・って、苦笑いを浮かべた。
私は、今日、イギリスへ行く。 私が養女になった家の主人が、母国へ帰ることになったから。 空港で、飛行機を待ちながら私はバックから1枚の写真を取り出した。 奈央と私、あと雨乃ちゃんと未羅に蓮・・・今でも鮮明に覚えてるよ。 写真の中の私達は、笑っていた。 なんだかそれが切なくて、胸が締め付けられる。 「What went wrong?(どうした?)」 私の後ろから、声がする。私の、一応の・・・お父様。 私は心配させないように、微笑んで答えを返した。 「It can say, and is nothing. (いえ、なんでもありません。)」 するとお父様は心底心配そうな顔で、
「Then, why do you cry?(なら、なんで泣いているんだ?)」 と。
そう、私は泣いていた。 目から一筋、頬につたう涙。 私は今更、気付いたの。 大嫌いだった日本という国・・・ううん、思い出がこんなにも私の中で大きくなっていたなんて。
でも、もう手遅れだとでも言うように、私が乗る飛行機が空港に到着した。 私は後ろを振り返らないように、まっすぐ前を向いて歩いた。 と、そのとき。
「神崎先輩!!」
・・・・・・嗚呼、どうして?
振り返らないと、たった数秒前に決めていた決意がこんなにも簡単に崩れてしまう。 少し、声は低くなってしまったけど、わかる。 振り返ると、背の高くなった奈央が立っていた。
「また、帰ってきてくださいね」
と、一言。 聞きたいことは、たくさん、山ほどあったのに。 なんで、ここにいるの? なんで、私だってわかったの? なんで、なんで、なんで・・・ 声が出ない。 私はお父様に腕をひかれ、飛行機に乗せられてしまった。 窓からは後ろを向いて帰ろうとしている奈央に向かってでめて、と微笑んだ・・・つもりだったのに。 だんだんと目の奥があつくなり、私はしゃがみこんで、声を殺して泣いた。
これは、私がイギリスへ行く日の、大嫌いだった神様が起こしてくれた小さな奇跡でした。
そして、この3ヵ月後。 お母様とお父様が離婚して・・・ また日本へ戻ることになったのは・・・次のお話で。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.49 ) |
- 日時: 2007/05/26 17:29:55
- 名前: 葉羅◆IhgxfDc5iWI
- 参照: http://id37.fm-p.jp/38/myframe/
- 少年の目に映ったのは、出来て間もない、血の海。冷たく動かない、屍。
延々と、其れだけが、其れしか映らない。
そして、屍達には、知っている顔が沢山、沢山、在る―――
「う・・」
少年の口から、僅かな呻き声が漏れる。 それはその内、連続して―― 「うあぁあああぁあぁあ!!!」 何とも悲痛な雄叫びに変わっていく。
「何で!何で何でなんでっ!!?」
少年の目に、恐怖の色は無い。只々、深い悲しみだけに染まっている。
「何でだよ・・・!何で、皆死んじゃうんだよ!? 俺なんかを守って死んでも、何にもならないだろ・・・?」
そう、少年は自軍の、父の軍兵達の死を悲しんでいるのだ。
そして、少年は半生半死の、一人の兵士を抱えていた。そして、ひたすら懺悔の言葉を紡ぐ。
「ごめん、守れなくて・・、俺が自分で戦うなんて言わなければ、足手まといになんか・・ならなければ・・・こんなに沢山、皆死ななかったのに・・!」
「そう、でしょうか・・?」
もう、息さえろくに出来ていない兵士は、最後の力で少年に話しかける。
「誰も・・、そうは思って・・・ません・・・。 貴方を恨んでなど・・。」
「黙って!無理、しないで・・。まだ助かるかもしれない・・・。」
いつの間にか、少年の瞳から、涙が流れ出していた。
「無理、ですよ・・・。だから、最後に、貴方に伝えたい・・・。
皆・・貴方が好きだから・・・・守るの・・です・・・。 我々が・・守ったその命・・・大切に、生きて・・ ・・生きてください・・、紅・・さ・・・ま・・」
そこで、兵士は息絶えた。 残されたのは、己の無力さに打ちひしがれ、兵士の屍を抱えたまま微動だにしない、一人の少年だけだった。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.50 ) |
- 日時: 2007/05/27 00:12:59
- 名前: カルメラ1号
もうしんじゃうんじゃないの?って言ったらすごい怒られて
それから泣かれた。(何でだよう!)
僕は自分のなまっちろい腕についた点滴をぶちりと外す。 久し振りなので結構、痛かった。それから抜け出すのも久し振り。 この暑い中、今度、外出したらしにますよ!と2週間ばかり前 お医者さんに怒られたことなんて少しも頭を過らなかった。 うん、本当だよ。少しも少しも。
裸足にリノリウムの床は冷たくて、気持ち良かった。 「(ああ生きてる!っていうか。)」 僕はちょっと嬉しくなって、スキップで病室を後にした。 真夜中の病院の廊下は少し怖い、でも抜け出すのは今しかないもの。
「(だってあの子が、泣いてる気がするんだ。)」
あの子は泣き虫だからいつも泣いてる。 (本当は知ってるよ。知ってるさ。悪循環だよなあ。)
ごめんね今いくからもう泣かないでおくれよ。
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