Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.21 ) |
- 日時: 2007/01/19 23:21:21
- 名前: 玲
- 参照: http://yaplog.jp/yami-tuki/
- 時刻は二十三時近く。世界は闇で満ちていた。
街灯が淡い光を放っているが、それも微かなもの――。 とある学園の敷地内であるこの空間では人通りも見られない。 そんな夜の世界に、イレギュラーが二つ……。
「ねえ副会長。『学校の七不思議』は知ってるよね」 少女は窓に背を預け雑誌に目を通している少年に話しかけた。 どうやら部屋の中にいるらしい。扉の前には【第二音楽室】のプレート。 少年は手に持っていた雑誌を閉じ、黒瞳を少女へと向けた。 「……聞いたことは」 高くも低くもなく、男性としてはまだ成り立つには至らない、 少年として丁度いいくらいの声で少年は答えた。それから続け、問う。 「何故?」 少年の問いに対し、少女は答える。 「また園内で流行ってるらしくてね。……どう思う?」 「どう、とは」 「……二ヶ月前みたいに、人、或いは人ならざる人の手によって行われているのか。 それともただの噂なのか。どっちだと思う」 「単なる噂に興味はない」 そこで一呼吸置き、少年は言った。 「けれどそれが、俺や月館さんのように人から外れた存在の仕業であるのなら……」 続きを、少年はあえて口にはしなかった。 言わなくても、少女なら用意に推測できると思ったのだろう。 少年の言動を理解すると同時に、少女の顔は微程に歪み、色を失った。 「……そう、だね」 少女の気が落ちたのに気がついたのか。少年は抑揚のない口調で続けた。 「月館さん、俺たちは生きているよ。 人と言っていい存在であるかどうかは判らない。けれど、」 少年はそこで、一度閉じた雑誌を再度開き左上から右下へ視線を滑らせると 隅に佇む漆黒へと近付いた。 「……俺たちは、確かに生きている」
闇に響くは、繊細なピアノの音色――。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.22 ) |
- 日時: 2007/01/20 20:51:35
- 名前: 鈴花
- 参照: http://ameblo.jp/rinka0703/
- 高級マンションのベランダで小さな小さな、溜息をついた。
「聖羅?どうした?」 茶色い髪の毛のいかにも不良って男が私に聞いてきた。私の、幼馴染。 「蓮・・・ちょーっとねぇ・・・3年前のこと思い出してた。」 「3年前ってぇと・・・高2か?」 「そ。覚えてるでしょ?」 蓮と私は3年前の高2にありえない不思議な体験をしている。 「・・・戦国の時代に飛んだヤツ?忘れるわけねぇっしょ。」 顔を見合わせて笑った。 「あーあ、もう1回行きたいなぁー・・・」 頬杖をつきながらもう1度溜息をもらす。 「あんときゃ面白かったよな、聖羅が1年坊主にベタ惚れで・・・」 「きゃーっ!言わないでよ!!」 そんなこともあったなー・・・って、人事のように思う。 「みんな、今頃どうしてるんだろ・・・」 みんなに、会いたい。 きっと、私の知らない世界のどこかで、活躍してるんだと思う。 「ま、生きてはいるだろ。」 「うわっ、超無関心!」 笑いあう、この瞬間がだいすき。
みんな、今どうしていますか?
今この言葉が届くなら、まず・・・
私のこの力を、怯えることなく受け入れてくれてありがとう。
みんながいなかったら私は今ここに生きてなかったかもしれない。
高校を卒業して会うことはなくなってしまったけれど
みんなも私の見てる空を見てるんだよね?
泣いていても
辛くても
私が見上げる空は一つだから。
It can meet everyone and is happy.
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.23 ) |
- 日時: 2007/01/21 22:12:56
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 「…………小太郎」
「なんや、改まって。……気色悪ぅ」 幼馴染みで腐れ縁。…………ある時は従兄弟、とも言ったかもしれない。そんな永礼が声を掛けてくる。 今は……現代。 と言ってもオレ達にとってそう言う概念は希薄なものだ。自分がいる時代が「現代」なのだから。 とりあえず今のオレと永礼は、ある組織のスポンサーとそれに敵対する組織のメンバーと言う役柄を演じている。 「いや、何かさ、昔みたいだったから」 「……オレが荒れてた頃?」 「そう」 オレの昔は荒んでいた。不良じゃないが目付きは悪く、手当たり次第に全てを壞して回った。……いや、不良か。 その時は永礼もオレを渾名で呼ぼうとはしなかった。オレも呼ばれようとはしなかった。 ただ一つのことだけに目が向いていたから、周りにかまけていられなかったんだ。 今はもちろん違うケド。 普段関西弁を使うのは、人と上手く付き合い、自分を制御するための仮面として。 本来のオレは、こんなんだ。 「……キミの、お姉さんの情報」 ほら、来た。今も目的にしているただ一つだけのこと。 「こっちにはまだ無いよ……」 「そうか。……こっちもや」 オレの姉は随分前に消えてしまっている。行方不明という奴だ。何処にいるか解らない。 永礼に今は協力して貰い、西へ東へ北へ南へ、現在へ過去へ未来へ。そして……。 兎に角、姉を見つけようとオレと永礼は躍起になっている。 「しかし、お互い面倒なことになったね」 「ああ、そうやな。……敵同士の方が別の情報はいるからいいけど」 苦笑しつつオレは言う。 「それでも、お前は相棒やから」 「ありがと、クロコ」 さあ、仮面を被って続けよう。 道化物を壞す道化者と、道化物を繰る道化者の、周り相手の化かし劇を。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.24 ) |
- 日時: 2007/03/04 17:25:24
- 名前: 玲
- 参照: http://yaplog.jp/yami-tuki/
- 助けて、と彼女は僕に手を伸ばしながら言った。
呻き声に近かったが、少なくとも僕にはそう聞こえた。 だから普通、僕は彼女を助けにいくべきなんだ。だって彼女は、僕のすぐ目の前に――。 けれど僕の身体は近づくどころか、寧ろ後退していっている。 ……怖かったんだ。 彼女が、ではない。 その上に乗っている、巨大な黒い物体が……。 あれが何かは判らない。 けれどあれは確実に、地球の生き物ではなかった。 後ろに退がり続けた僕の身体はやがて、それ以上進めない壁にぶつかった。 そこから横に、上へ上り、下へ下る階段がある。 僕は無我夢中だった。 抜けて立てないと思っていた腰は案外軽く持ち上がり、足はそれ以上に軽く速かった。 一気に階段を駆け下りる。 二階と一階の間に差し掛かった時、僕の耳に少女の断末魔が響いた。 軽かった足は急に重くなり、僕の身体はスピードを落としやがて止まる。 ――逃げなきゃ、そう思った。 逃げないと、あの黒い物体がやってくる。 だから動け、動けよ僕の身体。動いて…………!
その後僕は自分がどうやって危機を脱出したのか解らなかったけど、確かに生きていた。 そして今でも思う。 彼女は、助けてとなど言っていない。 きっとあれは、僕に逃げてと言ったんだ。 だって彼女はたとえ自分が傷つくとしても、それでも他人を助けようとする人だから。 ……そう、考えでもしないと僕は生きていけなかった。 自分に都合のいいように合理化して、事実を事実と認めず逃げる。 自分の所為で彼女が――姉が死んだのだと思いたくなかった。 でも、もう逃げるのはお終いだ。 姉を殺したあいつを見つける。 僕はそう決心した。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.25 ) |
- 日時: 2007/03/09 09:37:50
- 名前: 葉羅◆IhgxfDc5iWI
- 参照: http://id37.fm-p.jp/38/myframe/
- 「なぁ、普通ってなんだろ?」
「何よ急に。 ・・・・そうねぇ、普通、かぁ。考えた事も無いわ。多分、”並大抵”ってことじゃないかしら?」 「あ、あれか。一般庶民にとっての日常?」 「でしょうね。・・・私たちは普通なのかしら?」 「さぁ?」 「何よアンタ。私はアンタの質問に律儀に答えてあげたのにっ!」 「いや、ちょストップ!声荒げて殴りかかるな! ごめんスンマセン!ほら謝るから!!」 「そう?じゃぁ答えてよ。」 「いや、本当にわかんねぇもん。・・・・・。 ま、俺達にとっては普通でも並大抵の奴には普通じゃないんじゃね?」 「うーん、そうねぇ・・・。 一つだけ分かったわ。」 「ん、何?」 「こんな事、いくら考えても不毛よ!何の結果も生み出さないわ。あぁ、私らしくない、無駄なことはしない・考えないが私のポリシーなのにぃ・・・・」 「・・・ま、それでいんじゃね?」
§§§ 会話だけで作ってみました。とくに何の設定もナシ。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.26 ) |
- 日時: 2007/03/12 23:17:14
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 「……〜〜〜、〜〜〜〜♪」
微かな旋律が流れていく。 車いすに座った少女の口から、旋律が微かにこぼれ落ちていく。 眼下には、高層ビル群。 少女と景色の間には、一枚の壁のようになった強化ガラスが填め込まれている。 「〜〜、〜〜〜〜♪」 「姉さん、ここにいたんだ」 少女の背後に近寄った少年が、車いすの持ち手を握る。 そして少女の顔をちらり、と見て微笑んだ。 「今日はご機嫌だね」 少年の言葉に反応せず、少女の口からは旋律だけが零れていく。 それに顔色を変えない少年は、じっとガラスの向こうを見つめる。 「姉さん、僕だけはずっと側を離れないからね?」 高層ビル群を見つめ、けれどその向こうの何かを睨みつける少年の傍らで。 少女は旋律を紡ぎ続けていた。
籠の鳥は出られない。 出られず狂って壊れゆく。 蒼い鳥は狂った、紅い鳥は壊れた。 それでもまだまだ、出られない。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.27 ) |
- 日時: 2007/03/29 21:59:03
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- ひらひらと風に煽られてカーテンが揺れる。
風が髪を通りぬけてゆく感じがなんだか新鮮だった。 「まだちょっと寒いな……」 そう呟いて、なんとなく頬を染めてはにかんだ。
長かった髪はバッサリ切って、前よりもたくさん笑えるようになった。 こんなこと、3年前の自分からは考えられないことだけど。 「あのーぉ」 「へっ!?あっ…はっはい?」 突然後ろから声をかけられ、慌てて髪をかきあげる。 黒い髪の青年が、キョトンとしたような顔で首を傾げていた。 「……雨乃ちゃん?」 「え?」 「ここに入院しとったんや〜、髪短うなってたからわからへんかったわ」 「関西弁……あ、高校の」 そう呟くと、青年はにっこりと微笑んだ。 雨乃もなんとなく微笑み返す。 ――どうしよう、名前が出てこない……
「手術終わったん?」 「あ、はい」
3年前のあの出来事に背中を押されるように、手術を受けた。 誰も口にしなかったけれど、いい結果ではないらしい。
心臓が、前よりも重くなったように感じるようになった。
「あ、もう行かなあかんわ。ほな元気でな」 そう言って、まさに嵐のように青年は出て行った。 彼は何をしにこの病院に来たのだろう。 なんとなくおかしくて、彼が出て行った後もしばらく笑いつづけてた。
「青いな、空が……」
カーテンが揺れる。
このまま目を閉じたら、風になれる気がした。
――あ、名前、思い出した……
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.28 ) |
- 日時: 2007/03/29 23:46:00
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- 「せんぱーいっ、何なんですかさっきからあの人は?宇宙人と交信してるんですか」
「・・・・・・何じゃその安易な想像は・・・・・皐月、余計な詮索をするものでは無いよ」 「でも気になるじゃないっすか。何してんですかねぇ、音哉先輩?」 「そうじゃな・・・・・・・物思いに耽っている、というか、何かに想いを馳せている、というか」 「物思いィ!?ちょ、皆机の下に隠れろ地震が起こるか槍が降るぞー!」 「・・・・・・・・・・お前なぁ、今の彼奴が聞いていたら撲殺されるぞ・・・・・・・・」
暖かな午後の日差しが差し込む教室の窓際で。
パイプ椅子に腰掛け、傾けた顔に風に煽られた茶色い髪が当たって視界に入る。
片手に飲みかけのブリックパックを持って、窓の外に目を向けながら。
私は思い出している。
あの日の言葉を、思い出している――――――
「そういえば音哉先輩、何でこの高校来たんですか?頭良いからもっと上狙えたのに」 「ああ、それはな・・・・・・私もよく解らん。何だったかな、確か・・・・・・「未来が成立しないから」、だとか」 「はぁ?何それ本当に宇宙人みたい・・・・!」 「・・・・・「私が一年ダブる事になるには、この高校に行かなければならないからです」だと。というかお前何だその発言は仮にも霊媒師のくせに」 「俺は無神論者ですっ。つーか音哉先輩行方眩まして出席日数足りなかったんでしょ?何でわざわざ」 「あいつは謎じゃよ、幼馴染の私でも解らん。でも、この学校にいる理由は「待っている」とも言っていたな、確か」 「何ですか、お迎えを待ってんですか!?仲間の飛行船の!?」
待っている、私は待っている。
貴方との約束を守るため。
叶わない約束を守るため。
「音哉先輩、音哉先輩ーっ。そろそろ現実に帰ってこーい」 「・・・・・・・・・・・・・“召集”、じゃよ」 「・・・・・・・・・・はい、今行きます」
いつか来るその日のために。
君と出会うために、此処で、待っている―――――
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.29 ) |
- 日時: 2007/03/30 00:18:33
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 履き慣れたスニーカーに足を通して、私は今日も家を出る。
それはここ一ヶ月近い私の日課。
「……兄(にい)。今日も探すの?」 「ええ。…………会いたい、ですから」
にっこり笑ってあげると、陸は微妙な顔をしてくれる。
「なんか、健気」 「……陸も早く探したらどうです?」 「うっ、五月蠅いなぁっ。オレは色々とネットワークを駆使して……はわわっ」 「…………」
どうやら、陸は陸なりの探し方をしているようで。 これは近いうちにきっと見つけ出すでしょうね。
扉を開けて、家を出る。 キミは待っていてくれているのでしょうか? 何時来るともしれない私を。 世界に翻弄されるしか脳のない、この私を。 私は思うのです。 キミを捜し出せないのは、キミが会いたくないと思っているのではないか、と。 私が、畏れているからではないか、と。 ……けれど。 もう限界ですからね。 絶対、今日明日中に見つけて見せますから。 どんな手を使っても、ね。 覚悟していてください。
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Re: 短筆 1 (握った手、いつまでも離さないでいて) ( No.30 ) |
- 日時: 2007/03/30 23:32:45
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- 『人は必ず変わります。
そして過去は不変。 人の出会いは必然。 ……なんて、ね。』 ・・・・・・・・・・そう呟いて、貴方はいつものその笑顔で笑ったんだ。
空は快晴。心地良い風が吹く午後。 木の下のベンチで、静かに本のページを捲る音が聞こえる。 腰掛けるのは、明るい茶色の髪を肩まで伸ばした少女。 校舎へ続く並木通りの途中にあるこの場所は、部活動時間のこの時間は人通りが全くと言って良いほど無く、少女が読書に没頭するには最適な場所だった。 ぱらりとページを捲ると、そこに一枚の紙が挟まっていた。
「失くしたと思っていたら・・・・・此処に在ったんですか」
呟きながら紙を開くと、それは数人の男女の写真だった。 その服装はRPGゲームの登場人物さながらの不思議な格好で、皆とても満ち足りたような笑顔を浮かべている。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 眺めながら少女は微笑む。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私も未練深いんですね」
溜息をついて、写真をベンチの片隅に置くとまた読書を始めた。
ふいに、風が吹きつける。 本のページが捲れそうになっていることに気を取られた少女は、ベンチの片隅の写真が風に飛ばされて行ったことに暫く気付かなかった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、写真」 ようやく気付いて少女は本をベンチに置いて立ち上がると、注意深く付近の足元を捜した。 少し離れたところに写真は落ちていて、少女は駆け寄ろうとする。 するとその写真を、並木を歩いてきた人が拾い上げた。
ざわりと風が吹いて、周囲の木々を揺らす。
「久し振り・・・・・・・ですね。探しましたよ」
響く声が、少女の記憶を思い出させる。 それは、間違いなくあの人の声。 傍へ駆け寄って、袖を掴む。 幻想で無いと解った瞬間、口から言葉が溢れ出した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・久し振り、じゃないですよ」
少女の声が、震える。
「何故、早く来なかったんですか・・・・・・・・・!」
「ずっと・・・・・・・ずっと、待っていたのに」
“約束”をしてから、どれだけ待ち焦がれただろう。 毎日毎日、飽きることなく此処で待ち続けた。そんな健気な自分が馬鹿らしいと自嘲した。 叶わないと思いながら、その“約束”を信じて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・約束、したのに」
少女の咎めるような口調に、青年は困ったように笑った。
「・・・・・・・・・・すみません。・・・・・・・でも、会えました、音哉」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ、浅海さん」
頬に流れるものが涙と気付くまでに、暫く時間がかかった。 数年ぶりの涙と、数か月分の想い。 伝えたいことは沢山あるけれど、とりあえず――――
今はもう、ずっと離れぬ事を、願っていよう。
それは、小さな星たちの物語。 光り輝くほしくずの中で出会った、星たちの物語。
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