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魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜
日時: 2012/06/17 02:47:22
名前: 孝(たか)

アルハザード……遥か昔に大次元震動により滅び、人々から忘れ去られた超科学都市と謳われた世界…


シナプス……天上人(てんじょうびと)が住まい、天使の舞うヴァルハラと謳われし世界…


ペルソナ……ラテン語で「人」・「仮面」を意味するが、遥か太古では「本能」とも言われ、現代では「もう一人の自分」、別人格が具現化した特殊能力を指す。


魔族……人間達には悪魔として認識される存在ではあるが、本来は誇り高く、気高い種族であり、人間とは比べるのもおこがましい程の強大な力を持っている。


魔王……魔族や悪魔を統べる絶対的存在。その魔王にも、「善・悪」が存在する。


天使…天上人、あるいは「神の御使い」と言われる尊き存在。清き心のまま亡くなった者達を極楽浄土へと導く存在と謳われている。


これらは遥か太古の時代に存在し、現代では大昔の空想・偶像・伝承となっている。


だが…それは間違いである。


魔族も…天使も…悪魔も…神も…


人間達に感知出来ていないだけで…


別の次元…

別の世界…

隣り合う世界でありながら、決して近づく事のない。

そんな世界に……存在しているのだから…。


そして…これは…そんな伝承に語られた者達が出会う…

そんな物語…

なのは「魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜……始まります。」

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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.1 )
日時: 2012/06/17 03:34:58
名前: 孝(たか)

絶え間なく強風が舞う世界。

産まれたばかりの砂漠の世界。

此処にあるのは、砂と風だけの世界。

常に強烈な日差しに照らされた灼熱大地の世界。

未だ生物が誕生していないこの世界。


ズドオオオオオオオオオオオオオオオン!!


しかし、そんな世界に爆発の様な衝撃が巻き起こる。

プロローグ1

??「ちぃっ!!またお前達か!!まだ俺の力を狙っているのか!?」

そこに居たのは、まだ幼さの残る薄蒼の髪と薄蒼の瞳を持つ少年。

少年はその容姿からは考えられない程の殺気と憎しみの視線を向ける。

男「はっ!貴様のような”化け物”を我々が有効活用してやろうと言っているのだ!我々のもとへ来い。それが貴様の為だ。」

??「断る!お前達には私利私欲しか感じられない。何が世界の管理だ!何が危険な遺失物だ!?お前達の物差しで勝手に計るな!?お前達のせいで、罪の無い者達が!世界が!どれ程滅んだと思っている!?」

 少年の前に出たのは30代程の男性。槍のようにも見える機械的な杖を少年に向け、その少年を化け物と呼ぶ。

男「我々が管理しなければ、この世は滅ぶだけだ!だが、貴様には感謝しているぞ?貴様の持つ異能力(レアスキル)!その暴走が、我々を滅びの”遥か未来から千年前の過去”であるこの時代へと転移させたのだからな!!」

 狂喜の瞳を少年に向け、少年を捕える事で自らの理想…滅びの未来を変える。

 そう宣言する人間達…そう、彼らは少年の持つ異能力…レアスキルと呼ばれる力で遥か未来からやってきたのだ。

??「………で」

男「ああ?」

??「そのせいで…俺のこの力のせいで…お前達をこの時代に呼び寄せてしまった…お前達のせいで…俺の故郷は!家族は!友は!氷の世界に閉じ込められた!?生きる事も、死ぬ事も出来ず…!」

男「…く…クククク……くははははは!?異な事を言う!そもそも貴様の世界を氷に閉ざしたのは……”お前自身ではないか”?」

??「ああ、そうだ。確かに俺の魔力が暴走したのが原因だ…だが!!その原因を作ったのはお前達人間だ!?俺達が何をしたというんだ!?ただ平穏に過ごしていただけだろうが!?それを…それをお前達が!お前達のせいで弟は…あいつの騎士達は!”魔導書の闇”に食いつくされた!」

 胸に燻ぶっている想いをすべて吐き出すかの如く少年は叫ぶ。

男「貴様達化け物が、世界を滅ぼす程の力を持っているからさ。だから我々が管理し、役立ててやろうとしているのではないか?」

??「フザけるな!お前達にそんな事をされる云われは無い!確かに俺達は、強大な力を持っている。だが、それを悪用した事など、ただの一度もありはしない!私利私欲で使った事など無い!!お前達の様な輩と一緒にするな!?」

 そう言って、少年は懐からWと刻印された六角形の鉄板を取り出す。

??「行くぞ”ガングニール”!奴らをこの時代から追い出す!!」

GN『仰せのままに!』

??「我が意に従い、我が手に集え!気高き心はこの胸に!貫く誇りはこの腕に!この手に力を!ガングニール!セットアップ!!」

 気高き蒼の魔力が、少年を包み込む。

光が収まった場所には…

 軽装の鎧に身を包み、2メートル近い巨大な突撃槍…ランスを構える少年が居た。

??「一族の誇りに掛けて……これ以上お前達の好きにはさせない!!!!」

男「くはははははは……かかれぇっ!!!奴を捕え、我が組織の礎とさせるのだ!!!そう!我々が!!この世界を!!この時代を!管理し、導く!先導者となるのだ!!!」


画して……彼の少年は、1000の人間を相手に立ち向かうのだった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.2 )
日時: 2012/06/18 06:00:16
名前: 孝(たか)

海……一面が海水で満たされる世界。

此処は世界の99%が海水で満たされているウォーターワールド。

水中生物の楽園。

僅かにある陸にはこの世界特有の植物が生い茂るだけである。

そんな世界に……


プロローグ2


??「……………………」

漆黒の髪と真紅の瞳を持つ幼さの残る少年は無表情のまま陸の上に佇んでいる。

だが、彼の周りには辛うじて息はしているがズタボロとなったこの世界の海洋生物が横たわっていた。

??「これは…君達が?」

幽鬼の様なゆらりとした動作で視線を向ける。

その先に居た者は、ライフルとも大砲とも言えないが、銃である事は判るモノを構えた30代程の男とその部下達が立っていた。

男「あぁ、いきなり襲って来たのでね…危険生物として迎撃したのさ。」

??「……嘘だね。この世界の生物は皆友好的な生物で、凶暴なのは深海から決して上がって来ない。」

男「ふん。知っていたか…」

特に慌てる事も無く肯定した。

??「……なるほど。君達の狙いは僕って訳?誰に雇われたの?」

男「シナプスの者さ。それ以外は言えないな。」

??「……あぁ、彼が依頼者か。全く、僕は王位に興味なんて無いのに…本当に彼は憶病なんだね」

男「ほう。検討は付いていると?」

??「……僕は人の心が読めるんだ。生態といってもいいね。それで?僕を誘き寄せる為に、こんなヒドイコトヲシタノ??」

徐々に殺気が膨れ上がっていく少年。

男「それは序にすぎないな。ある組織の依頼でね。珍しい生物のデータが欲しいそうだ。その手付金として、強力な兵器も受け取っている」

??「つまり、一石二鳥の策って事ね…でも、君達は思い違いをしているよ?」

男「ほう?何をかね?」

??「君達如きに倒される程、僕は弱くない。」

シュバッ!……ズガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

右手を縦に一閃すると、少年から男達の直線状に深い谷間が出来た。

??「命を惜しまない者からきなよ…罪の無い生物を痛めつけた罰だ。確実に・・・…その命を絶つ!」

男「生意気な小僧だ。宇宙最大の海賊の俺達にそこまで啖呵を切れるとわな……野郎共!!あの小僧を血祭りにあげろおおおおい!!」

『『おおおおおおおおおおおおおおお!!!』』

画して総勢3000人の宇宙海賊は各々武器を取って少年に襲いかかった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.3 )
日時: 2012/06/19 08:27:38
名前: 孝(たか)

第一話…前編…終わりと始まり…


??「270!271!272!」

確実に一人一人仕留めていく薄蒼の少年。

??「くっ…凍てろ氷結!ギガクール!!」


広範囲にも及ぶ氷結の魔法が着実に敵を屠る。

男「ふ…フフフフフフフフ…やはり貴様は化け物だよ!たかだが数分で300もの部下を凪払うとはね…!!」

??「ちぃっ!?囲まれたか…」

男「だが、流石に1000人という人海戦術で向かえばなんと言う事は…」

??「なんて言うとでも思ったのか?」

少年はニヤリとほくそ笑む。

??「……穿て……メテオランサー!!!!!!」

ガングニールを振りまわしたかと思うと、それによって引力が生まれ、隕石をガングニールに纏わせる。

巨大な槍へと変貌したガングニールをそのまま投擲する。

それこそが槍技・メテオランサー。

??「吹き飛べええええええええええええ!!!」

まさに隕石が落下した衝撃が敵を飲み込む。


男「くっ……やはりそうそう上手くはいかんか…だが…こちらも準備は整った」

邪悪な笑みを浮かべると、男は命じた。


男「”Arc-en-ciel”を放て!!!」

上空…大気圏外の戦艦の砲門が開く。

放たれる前に男達は戦艦に転移…そして拡声魔法で少年に告げる。

男「”Arc-en-ciel”とは、百数十キロ圏内を空間歪曲と反応消滅で対象を殲滅する。文字通り殲滅兵器だ!貴様を手に入れられないのは惜しいが…引き込めないなら邪魔されては困るのでね…滅ぶがいい”氷牙・アンヴィレント”!!”Arc-en-ciel”……ファイア!!!!!!」

氷牙「ガングニール!オーバードライブ!!リフレクションフィールド最大出力!!」

一人きりで戦っていた少年は氷牙というようだ。

彼、氷牙はありったけの魔力をガングニールに注ぎ、魔力を反射の盾に込めるのだった。

氷牙「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!!


耳鳴りの様な音が鳴り響き、辺り一面を抉り消した。


だが、その中心に、少年・氷牙は片膝を付きつつも生存していた。

氷牙「はぁはぁ…耐え…きった…ぞ……今度は…こちらの……番だ!!」

辺りに撒き散っている魔力の残滓を長距離仕様となったガングニールに込める。

氷牙の持つ最大の砲撃。

氷牙「インフィニティ…ビッグバン…ストリーム!!!!」

己の異能力で次元に穴をあけ、敵の戦艦の目の前に出口の穴を開ける。

そこに、集束砲を撃ち放…

ズドム!!!

氷牙「…ごふっ…な…んだと?」

まさに引き金を引くその直前。

組織のトップである先程戦艦に逃げた筈の男が…

少年・氷牙の背中から自らの武器を突き刺した。

男「あばよ…化け物。アルハザードの技術と貴様のDNAは貰っていく。」

その言葉と同時に、氷牙がかき集めた魔力は膨れ上がり、勢い良く弾け飛んだ。

その瞬間に、男も転移で逃げ帰る。

そして、再び撃ちこまれる”Arc-en-ciel”

暴散した魔力とArc-en-cielの消滅波で荒れ狂い、氷牙の異能力の余波。

それら三つが干渉しあい、過去最大の次元断層が起こるのだった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.4 )
日時: 2012/06/21 04:43:30
名前: 孝(たか)

第一話…後編…終わりと始まり…


??「燃えろ。ギガファイア」

腕を横凪に一閃すると、灼熱の炎が敵を取り囲み、一瞬にして40人の敵を蒸発させた。

頭領「ちぃ!?聞いていた以上の化け物じゃねぇか!?野郎共!撃てえええええ!!」

一斉に魔導系の子分達が少年に向かって様々な魔法を放つ。

それらは弾丸となって少年に向かう。

??「白刃・ヘイムニル」

少年は身の丈ほどの巨大なブーメランの形をした武器を取り出した。

大人一人分はあるであろうブーメランを少年は片手で投げ飛ばす。

ギュルルルルと風を切りながら突き進み、放たれた魔法ごと敵を凪払っていく。

??「聖なる光よ。邪なる者を浄化せん。ギガセイント」

少年が右手を掲げ、呪文を唱える。

詠唱が完了し腕を振り下ろすと同時に、光の矢がスコールの如き勢いで広範囲に降り注いだ。

頭領「ぐぬぅ!?しかたねぇ…おい!アレを出せ!」

男は子分に命令し、例の兵器を使用する様だ。

頭領「いくら貴様でも、これには耐えられまい!”Arc-en-ciel”!発射ああああああ!!!」

??「魔力解放。灼熱なる業火よ。深遠なる闇の力と共に、邪悪を滅せよ。ギガファイア。ギガダーク。魔法合成…ダーク・インフェルノ!!」

灼熱の力と闇の力を合成し、地獄の業火を顕現する少年。

全てを消滅せん光の砲撃・Arc-en-cielと、少年の地獄の業火が衝突し、せめぎ合う。

??「オーバー……ドライブ!」

少年は更に魔力を注ぎ込み、Arc-en-cielを撃ち砕き、地獄の業火が全てを焼き尽くす。

??「………う…」

少年は魔力を消費し過ぎたのか、片膝をついてしまう。

しかし、周囲の敵を駆逐した為の安堵でもあったのかもしれない。

??「……お墓、作らなきゃ…」

宇宙海賊達に攻撃され、治療が間に合わずに息絶えた海洋生物達の墓を作るべく立ち上がる少年。

ダーーーンッ!!

だが、それと同時に少年の右の胸を貫く衝撃が襲いかかった。

??「あ…れ?」

ドクドクと少年の胸から血が溢れ出る。

?「外したか…運がいいな?鏡夜・D・フラグリアスよ。」

鏡夜「ミー、ノー、ス…なん、で…ここに?」

鏡夜と呼ばれた少年は痛む傷を押さえながら振り返る。

ミーノース「貴様の始末は私自身が付けねば意味が無いのだよ。私が、”天(シナプス)の王(マスター)”になるにはね!」

鏡夜「言った、はずだよ…ゼェ、僕は、王になるつもりは、ないって…」

ミーノース「貴様がどう言おうと、周りが認めないのだよ。だが、王位継承者である貴様を、私が倒したとなれば…私がシナプスの王だ!!」

鏡夜「その、為だけに、ケホッ。彼らを、差し向けたって事?」

鏡夜が推察して聞く。

ミーノース「ああそうだ。翼を持たない地蟲(ダウナー)が、宇宙という空を我が物顔で蔓延っていたのでな。ついでに消して貰ったよ。あんな奴らが、貴様に敵う訳が無いからねぇ…だが、貴様を疲労させてくれた事には評価してやろう。」

鏡夜「く…外道…」

自分達以外の種族など、必要無いとでも言う様な口ぶりに、鏡夜も表情を歪める。

ミーノース「なんとでもいいたまえ。では、さらばだ…世界を司る魂の輝き、偉大なる天空の裁きを!天罰(ネメシス)!!!」

ミーノースの放つ天の雷が少年・鏡夜に降り注ぐ。

鏡夜「うあ!?ぐああああああああああああああああああああああッ!?!?」

強力な雷が鏡夜の身を焦がしていく。

ミーノース「ふはははははははははは!?!?「ズドッ」がはっ!?」

高笑いをするミーノースだが、突如として血を吐く。

ミーノース「ごふ…こ、れは…ま、魔剣…ドゥームブリンガーだと!?」

鏡夜は身を焦がされながらも、呪われし破壊丸(ドゥームブリンガー)をミーノースに投げ放ったのだった。

呪われし破壊丸=ドゥームブリンガー。所持者に不運の呪いをかける魔剣。
一度手にしたが最後。捨てること叶わず、呪われ続けるがそれを補って余りある力を持つ魔剣である。
捨てる事はできないが投げ放つ事が出来、その呪いを打ち消す程の強大な魔力を持っていれば適格者と見なされ、不運を打ち消せる。

そして・・・Arc-en-ciel、ダーク・インフェルノ、天罰(ネメシス)という強大な魔力の奔流は、砂漠世界で起こった次元断層と全く同じ規模で”同じタイミング”で起こるのだった。


次回…第二話…出会いは唐突に、なの…
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.5 )
日時: 2012/06/24 00:50:51
名前: 孝(たか)

第二話…出会いは唐突に、なの…薄蒼の少年編

…………イタイ…クライ…ナニモミエナイ…

暗闇の中で横たわっている少年は思う。

…………ココハ…ドコ?…ワカラナイ…

…………ボクハ…ダレ?…オモイダセナイ…

全身は激痛に見舞われ、此処がどこかもわからず、自分が何者かもわからない。

少しずつ自分の体が冷たくなっていくのが判る。

…………ボクハ…シヌノカナ?…マア…ドウデモイイヤ…

少年が諦めかけたその時…ふと、手の平が暖かな温もりに包まれた。

…………アタタカイ…ナンデ?…ドウシテ?…

…………ワカラナイ…デモ…ナンダカ…ナツカシイ…

少年が目を瞑ると同時に、暗闇の中から少年の姿が消えた。

「u…a…?」

身体の痛みに反応して目を覚ます薄蒼の少年。

それは、砂漠の世界で重傷を負った氷牙と呼ばれた少年だった。

??「大丈夫?」

ふと、少年は声のする方へ視線を向ける。

「a…a…u…」

何かを呟こうとするが、言葉が通じないのか、意味不明な言葉を吐いた。

??「はい。お水」

ゆっくりと頭を支えられ、水の入った急須の様な形に近い硝子の瓶の先を口に含ませる。

コク…コク…

ゆっくりと水を飲み込む少年。

だが、それだけでも辛いのか?顔を顰める。

??「大丈夫?痛くない?」

水をくれた女の人…何を言っているのか理解は出来ないが、心配そうにしているのは判る。

「a…r…g…t…u」

言葉は通じていない筈。

だが、女の人は微笑むと頭を撫でてくれた。

その温もりに安堵したのか…少年は再び眠りにつく。

「……s-……s-……」

??「安心して…此処には、貴方を傷つける人はいないから。」

その女性は慈愛に満ちた表情で少年の頭を撫で続けた。

コンコン…

静かにノックの音が聞こえる。

?「桃子。入るぞ?」

桃子「士郎さん…」

女性は桃子という名前らしく、入ってきた男性は士郎というらしい。

士郎「様子はどうだい?」

桃子「今、ホンの少しだけ目を覚ましたの。少し水を飲ませて、頭を撫でたら…安心したみたいに眠ったわ…」

少年を起こさない様に小さな声で会話する二人。

どうやら夫婦の様だ。

士郎「そうか。じゃぁ、そろそろ交代しよう。次は俺が看病するから、桃子も少し休むといい。」

桃子「……えぇ…わかったわ。」

そういって、桃子は部屋を後にした。

士郎「………こんなに小さいのに…身体中に”切り傷”や”銃創”、”火傷の痕”まで…一体、誰がこんな酷い事を…」

士郎は少年に近付き、優しく手を取る。

士郎「…大丈夫。君は俺が守ってやる。だから、安心してくれ…」

まるで神に祈る様に、赤の他人である少年に家族の様な眼差しで告げる士郎だった。


それは今朝の事…

桃子「なのは〜!朝食が出来たからみんなを呼んできてくれる?」

なのは「はーい」!

なのはと呼ばれた4〜5歳ほどの少女は、元気よく返事を返し、トテトテと道場の方へと駆けて行った。

なのは「ルン♪ルン♪」

鼻歌を口ずさみながら道場へ向かうなのは…

なのは「ふぇ??」

ふと、天気が暗くなった気がして空を見上げる少女。

なのは「えぇぇぇ!?」

少女が見上げた先…そこでは、空が歪んでいた…

なのは「な、なになになに!?」

あわあわと少女は混乱するばかり。

そして…

なのは「あれって……?」

なのはが目を凝らして歪んだ空を見つめる。

なのは「何か……落ちてくる?」

歪んだ空から何かが現れた。

ズブリという擬音が聞こえそうな雰囲気と共に、それは起こった。

なのは「ひ、人!?」

歪んだ空から出てきた人と思わしき影は、真っ直ぐに少女…なのはの家の庭先目がけて落下してきた。

ドゴキッ!!!!!ドシャッ!!!!!

骨が砕け、肉が潰れる音が生々しく響き渡った。

なのは「あ、あ…きゃああああああああああ!?」

少女の悲鳴が挙がるのは当然の出来事であった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.6 )
日時: 2012/07/04 08:05:31
名前: 孝(たか)

なのはの悲鳴からあれよあれよと時は流れる。

なのはの悲鳴に兄・恭也と父・士郎、姉の美由紀が道場から駆けつけ、庭先で大怪我している少年を発見。

なのははあまりの出来事に失神してしまう。

それからは少年の状態を確認すると、あれほどの高所から落下し、激突したにもかかわらず、息はしていた。

すぐさま医者を呼んで治療して貰う。

本来なら病院に連れて行くのが普通だが、応急処置をしている間に、少年の傷が徐々にだが治り始めているのだ。

異常な回復現象に驚いてはいるが、今はそんな事よりも、少年の命が助かる事に安堵する一家であった。


あの後、士郎が看病し続けてから朝を迎える。

少年が目覚める気配は無いが、徐々に落ち着いているのが見て取れた。

大怪我している少年を放っておくわけにはいかないので、喫茶店である翠屋は本日は臨時休業である。

朝になって再び桃子が看病する事になったので、士郎は道場にやってきた。

何時もなら恭也達に鍛錬させるのだが、そんな事をしている場合ではない。

だが、彼は此処に来た。

その理由とは…

士郎「………ふむ。それにしても、なんなんだこの槍は…」

士郎がいぶかしんでいるのは、少年の持っていた槍・ガングニールである。

明らかに少年の…それ以前に、士郎の身長に近いのだ。

槍は短い物で10センチ、長い物で6メートル程のものがあるが、基本的に、自分の身長か、もしくはその倍の長さが無難とされている。

だが、このガングニールと銘打たれた槍は槍であって槍では無いように見える。一見、剣と見紛う程の長大な刃。グリップの無い大剣と言えばいいだろうか?どう贔屓目に見ても、戦闘用。それも、オーダーメイド品である事は明らかである。

しかも、少年を発見した時には少年同様にズタボロの状態だった。

しかし、今士郎の目の前に存在しているガングニールは・・・最初から傷なんてものは無かったかのように修復されているのだ。

士郎「まぁ、とりあえずはあの子の目が覚めるのを待つしかないか。」

士郎はそう言って道場を出ようとする。

『そ……男……し……よ。』

士郎「む?」

キョロキョロと士郎は辺りを見回す。

士郎「・・・気のせいか?何か聞こえた気がしたんだが…」

『そこ………こ………し……ま……よ』

士郎「っ?!誰だ!」

しかし、どこにも人の気配を感じられない。

士郎「まさか、あの男の子を襲った奴の仲間か!?」

ガタガタガタガタガタ!!!!

士郎「な!?」

そこで士郎は目の当たりにする。

先程まで眺めていた槍・ガングニールが勝手にガタガタと何かを訴えるように動いていたのだから…。

一方その頃…子供達は後ろ髪引かれる思いだが学校や幼稚園へと登校していた。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.7 )
日時: 2012/07/08 13:00:52
名前: カイナ

そしてなのはは幼稚園にやってくるが、そこでものすっごい嫌そうなため息をついていた。

一刀「おはよう、なのはちゃん。今日も可愛いね〜」

笑顔で話しかけてきたのは一人の少年――日本人らしき名前なのに何故か銀髪に赤と碧のオッドアイ。顔はイケメンと言えるだろうが何故かなのははこの少年を嫌悪していた。
この少年の名は神裂一刀。実は転生者で神のミスにより死んでしまいこの世界へと転生。その時に様々な特典を無理強いしたのだが神は彼の能力の一つに細工、それが所謂ニコポ&ナデポというもので、自身に対して好意を持っている者に使えば高感度が上がるのだが、好意を持っていない者に使えば、たちまち高感度が激減するというように細工。そしてなのはは別に彼に対し好意を持っていなかったため好感度が激減、この一刀に対し嫌悪感を持つ結果になっているわけだ。とはいえ一刀は全然気づいておらず、しつこく付きまとっているわけなのだが。

??「うるさい」
一刀「あん?」

そこに一つの声が横槍を入れ、一刀はそっちを向く。そこには青い髪を右目が少し隠れそうなくらいに伸ばした、一刀に負けず劣らずの整った顔立ちをした少年が眠たげな半目をして一刀を見ていた。

??「うるさいって言ったんだ。それにその子が嫌がっているよ」
一刀「なんだとこのモブ! なのはちゃんが僕を拒絶するなんてあるわけないだろ!?」
??「……モブっていうのがどういう意味かは知らないけど、人の気持ちを考えられないのは最低だって言うよ」

その言葉が発された瞬間、一刀はカッとなったように少年に殴りかかる。しかし少年はそれを軽くかわし、逆に一刀はスリップしてダウンしてしまった。

??「喧嘩する気はないんだけど……」
一刀「うっせえ! モブ如きがこの僕を馬鹿にしやがって!!」

少年は困ったように呟き、一刀は立ち上がると両腕をぶんぶんと振り回して殴りかかる。しかし少年はそれら全てをふらふらと揺れるようにだが確実にかわしていた。

一刀「このっ!」

そして一刀が振り下ろした右の拳を少年はひょいっとかわす。と勢いあまって一刀はスリップする。既に息も上がっており、一刀は立ち上がると少年を見る。

一刀「モ、モブ如きが! 覚えてろよ、この僕に手を出した事後悔させてやるからな!!」
??「手は出していないんだけど……」

そういうやいなや一刀は逃げていき、少年は静かに声を漏らす。

なのは「あ、あの、ありがとね……神裂君、なんかよく分からないけど妙に苦手なの」
??「……き、気にしなくていいよ」

なのはは笑顔で少年にお礼を言い、その笑顔を見た少年は照れたように顔を伏せて呟く。

なのは「あのね、私、高町なのは! 君の名前は?」
??「……な、名乗るほどのものじゃないよ。ただ、昼寝の邪魔だったから助けただけだし……どうでもいいよ」

なのはは自分の名前を名乗った後少年に名前を尋ね、少年は少し顔を赤くしながらなのはから顔を逸らし、呟く。となのははむっとした表情を見せ、少年の顔を自分の両手で挟み込んだ。

なのは「こっち、向ーきーなーさーいー!」
??「あ、あう……」

そしてグググと無理矢理少年の顔を自分の方に向かせ、少年は恥ずかしそうに目を逸らす。

なのは「人とお話しする時は相手の顔を見るの! はい、あなたのお名前は!?」
??「……弘政」
なのは「え?」

なのはの言葉に観念したのか少年はそうぽつりと呟き、なのはは首を傾げる。

弘政「く、黒鷹……弘政……し、知ってるか知らないけど、えと、親の事情で少し前にここに入ったんだ……まだ、仲の良い子とかいなくって……緊張、して……」

弘政はぽそぽそと小さい声で呟き、それになのははえへへと笑った。

なのは「まだお友達がいないんだね。じゃあ、私が弘政君のお友達第一号! 弘政君もこれから私のお友達なの!」
弘政「う……うん……ありがとう……なのはちゃん」

なのはは元気一杯の微笑みを見せながらそう言い、それに弘政もようやく微笑むとどこか嬉しそうになのはの名前を呼んだ。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.8 )
日時: 2012/07/11 22:59:02
名前: 孝(たか)

第三話〜それは目覚めの兆候…なの〜


それからいつも通りの1日を過ごし、只今なのは達はバスで帰宅中である。

そして……なのはは今、嬉しさ半分、憂いMAXである。

その原因は……

弘政「………」
なのは「………」

一刀「それでさぁ、今日も告白されちゃったんだよねぇ。あ、勿論断ったよ?僕にはなのはちゃんがいるから」

なのは「なのはと神裂君とは何の関係もないなの。」

神裂一刀に対して、一刀のもとに斬って捨てるような発言であるww。

しかし、自分の都合の悪い事は全て脳内で都合の良い様に変換するのが神裂流である。

一刀「もう〜なのはちゃん。僕が他の女の子に取られると思って拗ねてるんだろぉ〜恥ずかしがらなくても良いのにさ!」

なのは「弘政君はどこに住んでるの?」
弘政「えっと…確か翠屋っていうお店の近くにある一軒家。」

言っても聞かないなら無視する事に決めたなのはであった。

一刀はあーだこーだ言っているが、なのは達は全く聞いていなかった。

なのは「えぇぇ!?そこ、なのはのお家でやってるお店なの!」

弘政「…そうなの?」

なのは「すっごい偶然なの!あ、でも今日はお休みなんだけどね?」

なのはは友達が近くに住んでいる事に喜んでいた。

一刀「……おい。モブの癖に”僕のなのはちゃん”に馴れ馴れしくするな!」

朝と同じように弘政をモブと呼称して睨みつける一刀。

弘政「…別に、お話するのに君の許可を取る必要はないでしょ?それに、なのはちゃんはモノじゃないよ。」

一刀「うるせぇモブ。なのはちゃんが嫌がってるのが判らなねぇのかよ!」

弘政「……どう見てもなのはちゃんは君の事を嫌がってるみたいだけど?」

一刀「なのはちゃんが僕を嫌がる筈がないだろ!」

なのは「嫌いなの。」

一刀「ほら見ろ!モブの事が嫌いだってハッキリ言ってるじゃないか!」

なのは「私は、神裂君が嫌いなの!」

なのはにしては珍しく語気を強めて言う。

一刀「照れなくても良いじゃないか!僕達がラブラブな所を見せつけてやろうよ!」

そういってなのはの肩を掴んで抱き寄せようとする一刀。

しかし……

ガシッ

そんな一刀の腕を掴む手があった。

一刀「誰だよ!?邪魔す…ん…な?」
恭也「なのはに手を出すなら子供でも容赦はしない。」

一刀の腕を掴んでいたのは誰あろう…現在中学生3年でなのはの兄・高町恭也であった。

一刀「これはこれはお義兄さん!今丁度なのはちゃんに手を出そうとする子に注意しようと」

ちゃっかり恭也を義兄と呼ぶ一刀。何ともずうずうしい奴である。

恭也「神裂君…前にも言った筈だ……”なのはに近づくなら容赦はしない”と」

幼稚園児に向かって大人げないと思うが、これが恭也である。

因みに、何故恭也がバスに乗っているかというと、公園を通って帰っている途中、なのは達の乗っているバスが丁度バス停に着いたので出迎えようとしたようなのだ。

そこへなのはの嫌がる声が聞こえたので未だ未完成の神速を使って一刀の腕を止めたのだ。

妹に手を出す不埒な輩は”斬って捨てる”をモットーにしている重度のシスコン。それが恭也である。

恭也「さ、帰るぞなのは。」

これでもかと言う位一刀に向けた表情とは180度違う満面の笑顔でバスから降りて行った。

弘政もそれに続くようにバスから降りた。

弘政「なのはちゃん。この人は…?」
なのは「私のお兄ちゃんの恭也お兄ちゃん!」

恭也「初めましてかな?高町恭也だ。」
弘政「あ、初めまして。黒鷹弘政、です。」

ペコリとお辞儀した後に差し出された恭也の手を取って握手をする。

一刀の時も同じ挨拶をしたが、恭也は一瞬で一刀の邪念を感じ取ってからは入念に警戒している。

今回の弘政も同じかと思いきや…

恭也「ふむ…君は良い目をしているな。これからも、なのはと仲良く遊んでくれ。」
弘政「は、はい!」

弘政の目を見て邪念が無い事を悟ると友好的な態度に出る恭也であった。

因みに……弘政の家はなのは達の家から2軒先という御近所だった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.9 )
日時: 2012/07/12 14:06:06
名前: カイナ

弘政は自分の家に着くとここだからと言って門をくぐり、それを見たなのはがばいばいと手を振る。

なのは「ばいばい、弘政君」
弘政「うん」

恭也「明日から、なのはが迷惑をかけるかもしれないが仲良くしてやってくれ」
弘政「は、はい。こちらこそ……」

なのはに続いて恭也が冗談交じりに言い、それに弘政はぺこりと頭を下げて返し家に入っていった。

??「おう、帰ってきたか」
弘政「ただいま、じーちゃん」

家に入って少し歩き、居間に差し掛かると卓袱台の脇に座り新聞を読んでいる男性――彼の祖父だ――が声を出し、弘政も挨拶を返す。弘政の両親は交通事故で亡くなり、少し前に父方の祖父母に引き取られたのだ。そして弘政は台所で家事をしている祖母にも挨拶をしてから二階の自室に歩いていく。

弘政「っ?……」

するとその途中で眩暈を感じ、咄嗟に階段の手すりを掴んで体勢を保つ。

弘政「なんだろ、立ちくらみ?……まあ、どうでもいいか」

弘政はふるふると頭を横に振ってそう呟き、部屋に入っていった。

――我は汝、汝は我……――
――我、自ら選び取り、いかなる結末も受け入れん……--

人生とは例えるならば前の見えない道を歩き、その先にある分かれ道のどちらかを『選択』し、その過程や結果という『運命』を受け入れながら道の終点に向かって歩き続けるようなもの。それには自ら道を選び取り、それにより起きた事柄は全て受け入れる覚悟が必要である。
そして彼もまた、高町なのはという少女との出会いにより近い未来、己の人生全てをひっくり返してしまうような新たな『選択』を迫られることとなる……しかし、それはまだ先のお話。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.10 )
日時: 2012/07/12 16:13:54
名前: 孝(たか)

なのはの家…

なのは「ただいま〜!」
恭也「ただいま。」

美由紀「あ、なのはに恭ちゃん。お帰り。」

二人を出迎えたのは、二階から降りてくる美由紀だった。

その手には水の入った洗面器を持っていた。

恭也「なんだ。美由紀は先についてたのか?」
美由紀「うん。と言っても、五分くらい前なんだけどね?」

軽く会話を続け、なのはが部屋に入ったのを確認した恭也は気になっていた事を聞いた。

恭也「あの子の様子はどうだ?」
美由紀「もうびっくり!まだ目は覚まさないけど…傷は全部塞がったの。残っていると言えば…腕と足の骨折くらいかな?」

恭也「昨日の今日でか?…一体、あの子は何者なんだ…?」
美由紀「判らないけど…でも、なんとなくだけど悪い子には見えないかな?」

憶測ではあるが率直な感想を述べる美由紀に苦笑を浮かべる恭也だった。

手洗いとうがいを済ませ、部屋に戻って私服に着替えたなのは。

そして早速、昨日現れた少年の部屋へと向かった。

コンコン。

なのは「お母さん。居る?」
桃子「なのは。お帰りなさい。入っても良いわよ」

ガチャリと扉を開けて静かに部屋へと入るなのは。

なのは「ただいま。お母さん」
桃子「はい。お帰り。今日は楽しかった?」

なのは「うん!あのね!今日、新しいお友達ができたの!」
桃子「そう。それはよかったわね」

なのはの嬉しそうな声に、微笑ましく思う桃子。

なのは「あ、そうだ。その子…大丈夫?」

すぐに用事を思い出して少年の事を聞くなのは。

桃子「大分良くなってるわ…驚くぐらいにね…」
なのは「よかったなの。沢山…血が出てたから…助からないんじゃないかって……」

その時の事を思い出したのか、なのははポロポロと涙を流し、小刻みに震えながら桃子に抱きつく。

名前も知らず、会った事もない少年の為に涙を流せるなのはは、両親に似て優しい心の持ち主なのだろう。

桃子はなのはが泣き止むまでそっと抱き締めるのだった。

数分後…

桃子「落ち着いた?」
なのは「…うん////」

少ししてなのはが落ち着いたと見ると、桃子はなのはに少年の事を頼んだ。

桃子「それじゃ、お母さんは御夕飯の支度をしてくるから、この子の事、お願いね?美由紀もすぐ来ると思うから」

なのは「うん!わかったなの!」

そうして、いそいそと桃子は食事の支度をしにリビングへと向かっていった。

なのは「あ、よいしょっと…」

少年の額に乗せていたタオルが落ちていたので、キチンと畳んでから少年の額に乗せ直すなのは。

すると…

氷牙「………u…n」

少年の瞼がゆっくりと開いた。

氷牙「…k…k…h……d…k?(ここは…どこ?)」

ようやく目を覚ましたようだ。

なのは「あ、目が覚めたの!?」

なのはは声を弾ませてズズイと少年に顔を近付ける。

氷牙「!?」

ビクッ!?と少年は体を強張らせ、未だ折れている筈の足と腕を動かしてなのはの反対側に離れ、壁にぶつかる。

氷牙「…u…a…g」

勢い余って壁に背中と頭をぶつけ、それが傷に響いたのか呻きながら折れている腕をギブスの上から押さえた。

なのは「あ、ご、ごめんなの。びっくりさせちゃって…」

オドオドとしながら少年に謝るなのは。

氷牙「…a…u…a…?(あ、う、あ?)」

ゆっくりと辺りを見回して混乱する少年…氷牙。

なのは「待ってて!すぐお母さん達を呼んでくるから!」

またも声を弾ませたなのはに驚いて体を縮こまらせる氷牙。

……何か小動物を見ている気分だ。

タタタっと急いでリビングへと向かうなのはだった。

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