Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.36 ) |
- 日時: 2012/10/14 05:49:10
- 名前: 孝(たか)
- 第十話…高町なのは。九歳になりました!なの。
久遠と友達になってからは週3回程のペースで一緒に遊ぶようになった氷牙。 その話をすると、恭也も久遠の事は知っていたようで驚いていたが、仲良くしてやってくれと言われたのは記憶に新しい。
それから2年の時が流れる。 神裂一刀のストーキングがエスカレートしている以外は至って平凡な日々が続いている。
なのはの精神が尋常ではないくらいのストレスを感じているが、ガングニールから教わった心を穏やかにする魔法・フローラル。
花の香りで心をリラックスさせる魔法だ。 それによって、今のところなのはの堪忍袋が切れる事態は防いでいる。
まぁこれ以上一刀のストーキングがエスカレートすれば時間の問題だが…。
なのは達が小学三年生になったある日の夜。
なのは・氷牙・一刀はある夢を見ていた。
民族衣装の様な物を着たクリーム色の髪をした、なのは達と同じ位の少年が、街中を、空を、湖の上を文字通り飛んでいる。
その少年は何か…黒い霧の様な物体と相対している夢。
少年「!!……!…!……!!……!」
少年の手から魔法陣が浮かび上がり、霧の様な物体を光の鎖で拘束し、その物体を何かの呪文を唱える事で青い宝石に変えてしまった。
少年「はぁ、はぁ…一体、逃がし…ちゃった。急がないと…うっ!」
しかし、どうやら同じような個体がもう一体居たらしい。 しかも、それを取り逃がしたようだ。
今の戦いで負傷したのか、疲労したのか?少年は森の中で倒れ込む。
すると、少年が光に包まれ、光が消えると…一匹のフェレットと思しき動物へ変わっていたのだった。
(・・・・・・誰か・・・・・・僕の声を聞いて・・・・・・力を貸して・・・・・・魔法の・・・・・チカラ・・・・・を・・・・・・・)
明けて翌日。
なのは「ん〜〜〜〜。あふ。」
携帯の目覚ましが鳴り、布団の中でモゾモゾとしながら携帯を取って止める。
目をこすり、可愛らしい欠伸をするなのは。重い瞼に抗えず、ふらふらとした足取りともたついた手付きで着替えを終える。
頭をすっきりさせる為、洗面所にて顔を洗うと先程とは打って変わって思考がはっきりする。
なのは「・・・・・・?今日は不思議な夢を見た気がするけど…なんだっけ?」
うんうん唸って思い出そうとするが、なにぶん朝に弱いなのはは結局思い出せなかった。
氷牙「なのは。おはよう。」 なのは「氷牙君。おはよう!」
丁度そこへ、氷牙が顔を洗いにやってきたので、思考を中断して朝の挨拶を交わすのだった。
氷牙が高町家にきて約4年ちょっと。変わった事と言えば、氷牙が大分一般人としての常識を覚えたのと、高町兄妹がすくすく育ったくらいだ。
しかし、何一つ変わらない事…それは、氷牙の身体の成長が全く変わらない事だ。
ガングニールによって氷牙が数百年生きている事は、なのはと氷牙以外は聞き及んでいる。 故に、成長が人間よりやや遅いのかもしれない。程度の認識だった。
と、言う訳で…兼ねてから温めていた計画・・・と言うか作戦?
氷牙を”学校に通わせよう”と言う事だ。
だが、問題は、小学校と中学校。 どちらに通わせるかと言う事だ。
別に学校に通わせる必要は全くないのだが、記憶を失くし、壮絶な日常を送っていた氷牙に、子供としての生活をして貰いたいと思っている高町家一同。
氷牙の人見知りもだいぶ薄れてはいるものの、やはり最後の一歩が踏み出せない。
それだと氷牙はここ以外では孤独になってしまうのではないか? という心配がどうしても過ってしまうのだ。
そうこうしている内に時は過ぎて、今日この日に至った。 多少無理矢理の手段を行使する事になるが…小学校に、私立聖祥大付属小学校3年。
なのは達のクラスに編入させようと!
なのは達が居ればある程度フォロー出来る筈だ。
それを氷牙と話し合い、ガングニールの説得もあって、氷牙は晴れて、聖祥大付属小学校の3学年に編入が決まったのだった。
因みに、一刀をこの世界に転生させた神は、アレから一刀を時折監視しており、あまりにもあまりな態度であった為…
というかなのは達がとても不憫に思えたし、何より自分のせいもあってかちょびっとだけ干渉した。
それは、今後一刀となのは達が同じクラスになる様な事だけは無い様に仕向ける程度であったが、なのはにとっては顔を合わせる機会が減ったのは良い事なのだろう。
……………休憩時間の度に会いに来るのであまり意味は無いのだろうけども。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.37 ) |
- 日時: 2012/10/14 11:27:33
- 名前: カイナ
- 少年は一人、とある場所に立っていた。その目の前に存在するものは不思議な光を放つ常識では分からない何か。しかし少年はそれが何かを理解していた。その存在は彼の住む星の全生物を滅ぼす存在、死そのものと言っていい存在だ。
――DEATH――
その存在が放った破壊のエネルギー弾が炸裂し、少年はまるで分子レベルにまで粉々にされそうな衝撃波をその身に受ける。しかし彼の身体は何か不思議な力に守られているかのようにその命を保っていた。そして、彼は右手をゆっくりと掲げる。
??「ペ、ル、ソ……ナ」
その言葉と共に、彼の右手にあったカードからまばゆい限りの光が放たれ、その光が強くなっていくと共に少年の意識は薄くなっていった。
??「んぅ……」
とある家の布団。その中で眠っていた少年――少し黒っぽい青髪を右目を隠すように伸ばしており、隠れていない左目からは髪と同色の瞳を覗かせている――は夢から醒め、起き上がると目をこすった。
??「また、あの夢か……ペルソナ……」
少年は夢の中の存在が呟いていた言葉を反芻し、テーブルの上に置いていた本を手に取る。
??「ペルソナ……ラテン語で人や仮面を意味し、キリスト教の用語で、三位一体において神は三つの位格からなる。ねぇ……う〜ん……」
少年は本で調べていたペルソナという単語の意味について分かった事、というかもはや暗記している事を反芻し、頭を抱える。数年前に突然見始めたこの夢、大体一ヶ月に一度二度程度の頻度の夢だがその中で頻繁に出てくる単語が“ペルソナ”という言葉。これがこの夢の謎を解く鍵ではないかと思い彼は独自に調べていた。とはいえさっぱり分かっていないのが現状であるわけなのだが。
??「しかもそれだけじゃないんだよなぁ……」
彼は一つため息をつく。彼が夢で見る少年と、その少年と同じ力を持つ仲間達はこのペルソナという言葉と共に不思議な存在を呼び出す力を持ち、それらは彼の知る限りでも様々な国の神話に出てくる神やらなにやらの名前。これもまたこの夢の謎を解く手がかりになるのだろうがどうにも話が大きすぎ、小学三年生の少年が一人で調べるのには少々無理がありすぎた。
??「弘政ー、飯だぞー!」 弘政「あ、はーい!」
聞こえてきた男性――少年の祖父の声だ。少年は昔交通事故によって両親を亡くし、祖父母に引き取られ育てられている――の声に少年――弘政は反応し、返事をすると起き上がって学校の制服に手早く着替え部屋を出て行った。
弘政「行ってきまーす!」
そして八時少し前、弘政は学校の鞄を持って家を出ながら挨拶をし、走り出した。
彼が通学しているのは私立聖祥大附属小学校という小学校だ。
弘政「よし、ついたっと」
時刻は八時二十分。始業前の余裕到着、弘政はそう呟いて教室に入ると鞄を席に置いた。
???「おはよ、弘政君」 弘政「あっ! お、おはよ、高町さん……」
そこに声をかけてきた相手に弘政は驚いたように振り向き、心なしか頬を赤く染めながらその相手――高町なのはに挨拶する。ちなみに例の夢を見始めたのは彼女と出会い友達になった時期でもあるのだが本人は偶然だろうと片付けている。すると弘政の挨拶になのははぷぅと頬を膨らませた。
なのは「も〜、だから昔みたいになのはちゃんでいいってば〜」 弘政「い、いや、だからもういい加減恥ずかしいって言うか……」 ???「な〜によあんた、もう女の子と仲が良いのは恥ずかしいっての!?」
なのはの言葉に弘政が返すと彼の背後からそう声が聞こえその直後声の主が弘政にヘッドロックをかける。
弘政「いたたた! バニングスさん止めて痛い痛いギブギブギブ!」 ???「ア、アリサちゃん。もうその辺に……」 アリサ「……すずかがそう言ってるし、許したげるわ」
弘政は自分を締め付ける腕をパンパンと叩いてギブを宣告するがヘッドロックをかけている金髪の少女――アリサは力を緩める様子はなく、苦笑いをしながら彼女を治める紫髪の少女――すずかの言葉を聞くとヘッドロックを解く。
弘政「あたたた……ありがと、月村さん」 すずか「い、いえ……」
弘政はしめつけられていた頭を押さえながらすずかにお礼を言い、すずかも穏やかに微笑んで返す。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.38 ) |
- 日時: 2012/10/15 05:26:47
- 名前: 孝(たか)
- 第十一話〜転校生は、彼!?なの。〜
それから数時間後…終了前のSHR……
先生「はーい。みんな席に着いて!今日は皆さんに、新しいお友達を紹介します!」
『『『えええええええええええええええええ!!!??!?』』』
これから帰宅すると言う時間にいきなりの転校生到来宣言。
何故この終了間際の時間帯に?と疑問に思うが、子供達にとっては新しい友達が出来るかもしれないという期待の方が上だった。
男子「先生!男の子ですか!」 女子「それとも女の子ですか!」
二人の生徒が待ちきれないとばかりに性別だけでも質問する。
先生「ふふ。それは、見てからのお楽しみです!」
女性教師は口元に手をあてて、微笑ましく思いながらもその期待を増幅させるようにはぐらかす。
なのは「どんな子かな?」 アリサ「神裂みたいな奴じゃないなら歓迎よ。」
これ以上なのはのストレスを溜めてなるものかと、友達思いなアリサである。
弘政「将棋が出来たら嬉しいかも…」
やはり一人で一人打ちしているのも寂しいのか、ボソリと呟く弘政。
すずか「楽しみだね。」
仲良くなれればそれでいい。と、ニコニコしながら転校生を待つすずか。
先生「それじゃぁ、入ってきてくれるかな?」
先生が笑顔で扉の方へ顔を向けると、生徒達も扉の方へ視線を向ける。
…………………ガラガラガラ………
これでもかと言う程ゆっくり、おずおずと扉を引く転校生。
しかし、扉が開いた場所には誰もいない。
先生「あ、あら??ど、どうしたのかなぁ?」
笑顔で固まった先生が聞くと、プルプルと震えながら扉から少しだけ顔を出して教室を覗く転校生。
どこまで人見知りなんだと思うが、何故か可愛らしく思えてしまうから不思議だ。
転校生「あ、あう……」
複数の視線が一点にこちらを見ているのでなかなかそれ以上の行動が出来ないでいる。
先生「ど、どうしたの?震えてるけど…?」
転校生「あう…知らない人、いっぱい。・・・こわい」
ウルウルと潤んだ片目で先生を見る。 ズキュ〜〜〜〜〜〜ンッ!!
先生の胸にハート型の矢が突き刺さる。 どうやらショタっ気のある先生だったようだ。
先生「だ、大丈夫よ!みんないい子だから!イジメたりしないから!」
しかし、そこは教師としての意地が勝った。 多少声は震えているが、平静を装って転校生を手招きする。
転校生「ううう・・・本当?」
コテン。と小首を傾げて聞き返してくる転校生に、またも心臓を抉られる様な快感が走る教師。 駄目だこの人。早くなんとかしないと…
なのは「え、氷牙君!?」
そして転校生が誰か判別できたなのはが一番に声を挙げた。
氷牙「あ・・・なのは。・・・弘政も・・・」
なのはと弘政を見つけた氷牙は、幾分か落ち着きを取り戻したのか漸く教室に入った。
薄蒼の髪を一房だけを首元辺りで紐で纏めて腰辺りまで伸ばし、他は首元で切りそろえている。
身長は約140センチと頭一つ分高い身長。
中性的な整った顔に、綺麗な薄蒼の瞳。
まさしく、4年程前から毎日見てきた高町家の同居人・氷牙が転校生としてやってきたのだ。
確実に年上だと思っていたのに、同じ学年と言うのはどう言う事だろうか?となのはの思考はグルグルと回っている。
女子「なのはちゃんの知り合い!?」 男子「なにぃぃぃ!?高町の知り合い!?しかもまた美形だと!?クソウ!勝てる気がしねぇorz」
女子は黄色い声を挙げ、男子は早い絶望を覚える。
ただ教室に入ってきただけなのに此処まで教室が変貌するとは誰も思うまい。
氷牙「ううう・・・こわい・・・」
ビクビクと先生の後ろに隠れる氷牙。
壁にされている教師は内心心臓バクバクである。
数分後…既にSHRが終わろうとしている時間なので大人しくする様に伝えると、意外とあっけなく鎮まる生徒達。
早急に場を沈める事に成功した教師を褒めるべきか、素直な生徒達を褒めるべきか。
先生「それじゃぁ、自己紹介。してくれるかな?」
後ろから氷牙の肩を掴んで自分の前に立たせ、氷牙の名前を書いていく。
氷牙「あ、あう・・・た、高町…氷牙、です。好きな事、動物と、遊ぶ。料理する事。です。嫌いな物。動物、苛める人。です。よ、よろしく、おねが、します。」
なのは達という知り合いがいる為恐怖は大分治まったが、声は振るわせつつも自己紹介を終える氷牙。
高町姓を名乗っているのは士郎達のごり押しである。
先生「みんなも見ていて気付いたと思うけど、氷牙君はとある事情で極度の人見知りなの。だから、慣れるまでは後ろから声をかけたり、脅かしたり、大きすぎる声を出したりしない事。良いかな?」
『『『『はーーーーーーい!!』』』』
先生「それじゃぁ、氷牙君の席は、なのはちゃんの隣で窓際の席。一番奥の空いてる場所よ。」 氷牙「は、はい。」
言われ、ソロソロと生徒達の視線を気にしながら向かう。
なのは「氷牙君。大丈夫?」 氷牙「な、なのは・・・良かった。知らない人、沢山・・・慣れない。」
涙目で心底居てくれてよかったと安堵する氷牙に苦笑するなのはだった。
なのは「にゃ、にゃはは・・・まだ知らない人には慣れないんだね・・・」
翠屋に来るお客さんは平気になったのにと零すなのはだった。
しかし、忘れてはいけない。
好奇心の強い子供達が、転校生という恰好の獲物を黙って見ている筈が無いと言う事を・・・数分後に実感する事になるのだった。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.39 ) |
- 日時: 2012/10/27 04:41:00
- 名前: 孝(たか)
- 数分後……放課後。
女子1「氷牙君!なのはちゃんとはどういう関係なの!?」 女子2「名字が同じって事は、親戚?」 女子3「薄蒼の髪って珍しいね!どこに住んでたの!?」
女子達が群がり、なのはとの関係やどこの人か聞いてくる。
そんな状況にビクビクと震えながら弘政の方に視線を向ける。
弘政「・・・・・・あ〜〜ちょっといいかな?」
そんな視線を見かねて弘政が仕方ないとばかりに氷牙の前に出る。
女子1「ん?どうしたの黒鷹君。」 弘政「さっき先生も言ってたけど、氷牙さんは人見知りが普通じゃないんだ。そんなに一気にまくしたてたら、多分泣き始めちゃうから…」
苦笑しながら女子達を止める弘政。一応事情を知っているし、4年もの御近所付き合いもある。
女子2「あ、そっか…ごめんね。氷牙君。」 氷牙「う、うん。大、丈夫…えと、一人ずつ順番に、答えるから…」
一度に沢山押し寄せてこられると怖がるが、一人ずつならなんとか対処出来るくらいには成長している氷牙であった。
女子1「じゃぁ私から!さっきも聞いたけど…なのはちゃんとはどういう関係なのかな!」 氷牙「えっと…4年くらい前に、僕、事故にあったらしくて…なのはの家の近くで大怪我して倒れてたみたい。僕、その時までの記憶が無くて…持ち物から氷牙って名前を知って…それで、記憶が戻るまでなのはの家でお世話になってる。」
まさか一発目からド暗い話になるとは思ってもいなかったので、テンションはだだ下がりだ。
女子2「あ、じゃ、じゃぁ次は私!えと、えっと…動物が好きって言ってたけど、1番好きな動物は?」
暗い雰囲気をどうにかしようと、自己紹介の時に動物が好きと言うのを思い出して聞いてみた。
氷牙「動物は、何でも好き。犬も猫も。鳥やネズミとか狐も…」 女子2「そうなの?」 氷牙「うん。例えば…すぅ〜〜ピィィィィィィィッ!」
氷牙は窓を開けると大きく息を吸い、手を口元に当てると、口笛を鳴らす。
皆は何をしているんだろうと首を傾げていると…
パタタタタ…バサバサバサバサ!
スズメ、ハト、インコ果てはオウムが数羽ずつ飛んできた。
氷牙「みんな。今日も元気?」
オウム「元気!元気!氷牙、元気!」 ハト「「クルッポォ!」」 スズメ「「ピピピっ!」」
普通に会話までする始末。
氷牙「じゃぁ、また明日ね?」
そう言うと、鳥たちは去っていった。
女子3「す、すご〜〜い!!」 女子2「ほ、ほんと、凄い…」
氷牙「猫や犬も、呼べば来てくれる。動物、みんな友達。」
ニッコリと笑顔を向けながら言う氷牙。 鳥たちと戯れたおかげで緊張も取れた様だ。
まぁ、すぐにぶり返すのだろうが…
なのは「氷牙君。私達今日は塾があるからそろそろ帰るけど…大丈夫?」 氷牙「あ、なのは。僕も、一緒に帰る。みんな、またね。」 弘政「じゃぁ、僕もそろそろ。またね?みんな。」
女子1「なのはちゃん!またねぇ!」 女子2「氷牙君!明日は猫ちゃん呼んで!」 女子3「また明日!」
一同はバイバイと手を振って別れた。
その数分後…
一刀「ふぅ…いやぁ遅くなってごめんよ?なのはちゃん。先生に手伝いを頼まれちゃってさぁ」 女子3「……神裂君。なのはちゃんならもう帰ったよ?」
折角氷牙という転校生の話で盛り上がっていたのに、この学校の最大の問題児がやってきて女子3人のテンションは一気に下がった。
一刀「なに!?くっ!あのモブ!また僕のなのはちゃんに手を出してるのか!?」
そう言って一刀は走り去っていった。
女子1「………なのはちゃんも大変だよね。あんなストーカーに迫られて…」 女子2「本当だよね…みんな神裂君の事カッコいいとか言ってるけど…私は黒鷹君の方が好みかな?」 女子3「あ、私も〜。なんか、つい目で追っちゃうよねぇ?」
一刀が去った後は弘政と一刀のどちらが良いかという話で花を咲かせていた。 お前ら本当に小学生か?
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.45 ) |
- 日時: 2012/10/29 20:21:44
- 名前: カイナ
- 氷牙「行って、らっしゃい。なのは……」
なのは「うん、行ってきまーす」 弘政「じゃーね」 アリサ「また明日ね」 すずか「さようなら」
一刀が叫んでいた頃から少し時間が経ち、なのは達は塾に行くため氷牙と別れていた。ちなみにその塾への道は人気のないというかまだ太陽が昇っているにも関わらず薄暗い雰囲気を思わせる森の中で、アリサ曰く「近道」らしい。それからなのは達四人は横並びで女子三人は雑談に花を咲かせ、弘政も所々相槌を打っていた。
なのは「それでね……あれ?」 弘政「ん?」
なのははアリサ達と話していると突然足を止めて顔を上げ、弘政も同時に同じ動作をする。
アリサ「どうしたの? なのは、弘政」
なのは「今、何か聞こえなかった?」 弘政「聞こえた。なんか、呼んでるような……」
すずか「え?」 アリサ「何も聞こえなかったわよ?」
アリサの首を傾げながらの言葉になのはが問い返し、それを弘政が肯定するとすずかとアリサは首を傾げて返す。しかし二人は辺りをきょろきょろと見回すと少し道から外れた茂みの方に入っていった。
アリサ「ちょ、ちょっとなのは! 弘政!」
慌ててアリサとすずかも後を追い、二人は先に向かっていたなのは、弘政と合流。とアリサはなのはの手に抱えられている白い毛の動物を見る。
アリサ「何それ? ネズミ? いや、イタチかな?」 弘政「フェレットだよ、多分」 すずか「酷い怪我……」
アリサの言葉に弘政が首を傾げながら返すとすずかがその動物――フェレットを見ながら呟き、なのはも悲しそうな表情でうんと頷く。
なのは「……あ、そうだ!」
アリサ「ちょっ、なのは!?」 すずか「なのはちゃん!?」
するとなのはは思い出したように声を出すと突然元来た道を戻りだし、アリサとすずかも慌ててその後を追う。弘政もその後に続いて走り出そうとするがその時、足元で何かがキラッと青い光を放ったのに気づいた。
弘政「ん?」
足元に何か落ちているのに気づき、弘政はかがみこむとその何かを拾い上げる。
弘政「……鍵? にしても古い型だな……」
彼が拾ったのは青い綺麗な光を放っている鍵、それを弘政は不思議そうな表情でまじまじと眺めていた。
アリサ「ちょっと弘政ー! とっとと来なさーい!!」 弘政「あ、はいはい!」
遠くから聞こえてきたアリサの呼び声、それに弘政は咄嗟に鍵をズボンのポケットに入れると慌てて走り出した。
なのは「氷牙くーん!」 氷牙「え?」
なのはは大急ぎで走って氷牙に追いつき、氷牙はなのはに呼ばれて振り向く。そしてなのはは氷牙にフェレットを差し出した。
なのは「氷牙君! この子、治せる?」 氷牙「え?……あっ、うん」
なのはの言葉に氷牙は一瞬首を傾げるがすぐ合点がいったように頷くとなのはの両手に、正確にはその手に乗っているフェレットに手をかざし、目を閉じて意識を集中する。
氷牙「我は望む。祝福を、精霊よ、その力、白き絆の雫となりて、彼の者の傷を癒せ……ヒール」
その言葉と共に光の粒子が氷牙の手からフェレットへと移り、フェレットを包み込む。そしてその光が消えた後、フェレットの傷はほとんど塞がっていた。
なのは「ありがと、氷牙君」 氷牙「うん」
アリサ「なのは! どうしたのよ!?」 なのは「え? あ、うん、ちょっとね……」
フェレットの傷が塞がった直後アリサ達が追いつき、アリサの言葉になのははごまかし笑いをする。とすずかがフェレットを見て首を傾げた。
すずか「あら? フェレットさん、怪我が治ってる?」 アリサ「何言ってんのよすずか、あんな酷い怪我して……あれ?」
すずかの言葉にアリサがそう言いながらフェレットを見るが、その傷が塞がっているのを目の当たりにすると彼女も首を傾げ、なのはを見る。
アリサ「どうなってんの?」 なのは「え、えと、その……」 弘政「でも、念のため獣医に連れて行ったほうがいいよ」 なのは「そ、そうだね! うん! 急ごう!!」
アリサの訝しげな目での言葉になのはが返答に詰まると空気を読んだのか読んでないのか弘政が口を挟み、なのははそれにこくこくと頷くとフェレットを連れてピューンと走っていく。それにアリサは首を傾げながらすずかと一緒に後を追い、弘政も氷牙と共にその後を追っていった。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.46 ) |
- 日時: 2012/10/29 20:22:10
- 名前: カイナ
- それからやってきた動物病院でなのは達はフェレットを獣医の先生に預け、その獣医はフェレットに包帯を巻きながらふぅんと呟く。
獣医「森の中で倒れてた、ねぇ。外敵に襲われたのかしら?……まあ、安心して。今日はここで預かるから」 なのは・アリサ・すずか「「「よ、よろしくお願いします!」」」
獣医の言葉に女子三人がぺこりと頭を下げ、弘政と氷牙はフェレットの様子を見ていたが女子三人の言葉に気づいて二人も獣医の方を向きぺこりと頭を下げる。
フェレット「う……」
その時フェレットが身じろぎし、僅かに目を開けて顔を上げようとするが全員フェレットから目を離していた上にその次の瞬間フェレットは再度気絶。ゆえにフェレットが一瞬目を覚ましていたことに気づいていたものは誰もいなかった。
なのは「……ああっ! 塾! 塾どうしよ! 今から走っていったら絶対遅刻だよ!!」 弘政「うあ……」
そこに思い出したようになのはの声が響き、弘政もしまったと言いたげな声を漏らす。とアリサが呆れたように息をやけに大袈裟に吐いた。
アリサ「全くもう。でも安心して、こんなこともあろうかと鮫島に車を出すようお願いしておいたわ。この場所も教えたし、すぐ来るわよ。ああ、氷牙君も乗っていきなさい。私達を塾まで送らせた後なのはの家まで乗せていくわ」 氷牙「あ、ありがとう」 なのは「ありがとう! アリサちゃん!」
アリサの言葉に氷牙がお礼を言い、なのはもにこっと微笑んでお礼を言う。
それから彼女らは車がやってくると獣医の先生にフェレットさんをお願いしますともう一度頭を下げてから車に乗って塾に向かう。ちなみにぎりぎり遅刻せずに済み、今は授業の真っ最中だ。
なのは(ねえ、アリサちゃん、すずかちゃん、あのフェレットさん、どうしよっか?) アリサ(う〜ん、あたしんち犬いるしなぁ……) すずか(私も、猫さんが……)
なのはの小声の言葉にアリサとすずかは困ったように頭を返す。その間弘政はなのはの隣で平然と勉強に勤しんでいた。ちなみに一緒の塾である一刀は席が遠くしかもなのは達がどちらかといえば後ろ側なのに対し一刀は最前列で、時たまちらちら後ろを見てきてはなのはに言ってはなんだがキモい視線を投げかけたり弘政に殺気を送ってきたりしている。なおなのははその視線をガン無視、弘政はなんだかんだで人が好い性格が災いしてか完全に無視できずたまに困ったように頬をかいている事を追記しておこう。
先生「高町さん、この問題の答えを言ってください」
なのは「え? あ、はいっ! え、えっと……」 弘政「高町さん、これ」 なのは「あっ」
突然先生に呼ばれ、なのはは慌てたように立ち上がって問題を考え始めるが弘政がこっそり答えを見せ、なのははその答えを言う。それに先生は満足そうに頷くと解説を始め、なのははほっと息を吐くと席に座って弘政ににこっと笑顔を見せる。
なのは「ありがと、弘政君。助かっちゃった」 弘政「き、気にしなくていいよ……」
なのはのお礼の言葉に弘政は彼女から目をそらしながら頬をぽりぽりとかく。とその頬が微妙に赤くなっているのに気づいたアリサがにやにやと笑った。
アリサ「弘政ってば照れてるし」 弘政「う、うるさいなぁ……あのフェレットが気になるのは分かるけど、一応授業中だからね。授業に集中しなよ」
アリサの言葉に弘政は頬を赤く染めながら呟くように返した後わざとらしく続け、その照れ隠しに気づいたアリサはまたにやにやと笑う。それに弘政はもう諦めて授業に集中することにした。
それから授業終了後、弘政達は帰宅する。なお一刀が弘政に喧嘩を売ってきたがなのは達と共にガン無視したことを追記しておこう。
なのは「じゃーねー、弘政君」 弘政「う、うん。また明日ね高ま……なのはちゃん」
なのはがばいばいと手を振ってお別れを言い、弘政もそれに返そうとするが高町さんと言おうとした瞬間なのはが泣きそうな顔をしたのに気づき、少し押し黙ると昔のように名前で呼ぶ。それになのははにこっと笑った。
なのは「うん、弘政君!」 弘政「お願いだから二人っきりの時だけで勘弁して、ここでまた名前呼びに変えたら絶対バニングスさんにからかわれる……」 なのは「む〜……しょうがない」
なのはのにこっと明るい笑顔に弘政は懇願、それになのはは少し頬を膨らませた後妥協。二人はそれぞれの家に入っていった。
弘政「ただいまー」 祖父「おう、お帰り。飯出来てるぞ。婆ちゃんは遅くなるってよ」 弘政「うん」
弘政の挨拶に祖父が返し、弘政はそういうと自室のある二階に上がっていき部屋に入ると私服に着替えていく。とズボンの中の異物に気づき、彼はポケットに手を入れるとそれを取り出す。
弘政「あの時の鍵……ま、いいか」
弘政はフェレットを見つけた後に拾った青い鍵をそこで初めて思い出し、しかし少し考えるとまあいいかと結論付けてその鍵を畳んでいる布団の上に無造作に放り投げておき、着替えが終わると彼は夕食を食べるために部屋を出て行く。 ちなみになのはもほぼ同じタイミングで夕食を食べるため部屋を出て行っていた。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.49 ) |
- 日時: 2012/10/31 04:13:55
- 名前: 孝(たか)
- 第十二話〜それは不思議な出会いなの。〜
夕飯時……高町家の場合
なのは「・・・と、言う訳で。そのフェレットさんを家で預かる訳にはいかないかなぁって・・・」 士郎「・・・う〜〜ん。フェレットか・・・」
一応、飲食店を営んでいる手前、どの様な動物でも飼うのは難しい。 なのはも氷牙もどきどきと期待の眼差しを士郎に向ける。
士郎「ところでなんだ?フェレットって?」
その一言に高町兄妹は脱力し、氷牙に至っては目をパチクリとさせていた。 判らないのに悩んでいたのか・・・
恭也「イ、イタチの仲間だよ父さん。」 美由紀「大分前から、ペットとして人気なんだよ。」
恭也は頭の後ろで両手を組み、美由紀は顎を手に乗せて苦笑しながら答える。
氷牙「成体で尻尾の長さを合わせて、大体35センチから50センチ前後の、小動物。3000年くらい前から飼育されていた歴史、ある。飼育する場合、平均的な室温は15度から22度が、目安。28度、超えると熱中症、なる。恐れ、ある。寿命は、6年から12年。」
図書館などに行けば動物図鑑なども目に通す氷牙がフェレットについての詳しい知識を触りだけ披露するのだった。
士郎「ほぉ…なのは達の言っているフェレットはどのくらいの大きさなんだ?」 なのは「ん〜と…確か、この位?だったよね氷牙君。」
士郎の問いになのはが両手を広げて大体の大きさを表す。 およそ、なのはの肩幅より一回り大きいくらいだろうか?
氷牙「うん。そのくらい。多分、20センチくらい。あの子、まだ子供。」 桃子「なるほどねぇ…じゃぁ、キチンと籠に入れておけて、なのは達がちゃんとお世話出来るなら良いんじゃない?恭也、美由紀。どぉ?」
それを聞いた桃子はキチンと面倒をみる事が出来るなら良いと答え、恭也達にも問いかける。
恭也「俺は、特に異存は無いけど?氷牙も居るし。」 美由紀「私も。それに、氷牙君は動物を手なずけるの得意だし、逃げたり暴れたりしないと思うし、二人なら大丈夫だと思うよ。」
それを聞いた士郎はうむうむと頷くと、なのは達に微笑む。
士郎「なら、決まりだな。」 桃子「良かったわね」
と言う訳で、高町一家満場一致でフェレットを飼う事の許しを得るのだった。
氷牙「なのは、良かったね」 なのは「うん!ありがとう!お父さん!お母さん!お兄ちゃん!お姉ちゃん!氷牙君!」
満面の笑みを浮かべながらお礼を言うのだった。
桃子「さぁ!冷めない内に食べちゃってね。」 美由紀・なのは「「はーーい!」」 「「「いただきます。」」」 桃子「はい、召し上がれ」
今日も明るい笑顔で夕食を迎えるのだった。
数時間後…
食事も終わり、宿題を済ませ、お風呂も済ませたなのはは、アリサ・すずか・弘政に同じメールを書いていた。
なのは「え〜〜と・・・アリサちゃん、すずかちゃん、弘政君。あの子は家で、預かれる事に、なりました。えっと…明日、学校帰りに、一緒に迎えに、行こうね…なのは。送信っと」
そうしてなのはが携帯を充電器に差し込んで、布団に潜ろうとした時である。
急に頭の中に直接声が響いたのは・・・
運命の歯車が…今、動き出す。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.50 ) |
- 日時: 2012/11/05 18:57:16
- 名前: カイナ
- 弘政「……」
普通小学生ならもう寝始める時間帯、弘政は布団の上に座り込んで考えにふけっていた。寝ようとしたその瞬間、変な声が聞こえてきたのだ。
弘政「……やっぱ空耳かな? でも変な声だったけど、聞こえてきたというより頭の中に響いたみたいな……」
弘政は一人そう呟き、考え始める。と偶然窓から見えた人物に驚愕する。
弘政「なのはちゃん!?」
思わずそう叫んで立ち上がり、窓を開けるがその時には既になのはは曲がり角に消えていた。弘政はそれを眺めた後うんと頷き、寝巻きから手近にあった小学校の制服に着替える。それから彼はふと枕元に目を落とす。そこには昼間フェレットを助けた時近くに落ちていた青い鍵がある。
弘政「……」
彼はかがみこむと神に誓ってなんとなく、持っていった方が良いと直感的に考えただけでその青い鍵を拾い上げてポケットに入れる。そして開けている窓からその下にある屋根に飛び降りて身軽に玄関まで飛び降り、玄関前に隠している合鍵で玄関のドアを開けるとこっそり靴を取ってからまた鍵を閉め、合鍵はいつもの場所に隠す。
弘政「さて……行くか!」
そして彼はさっきなのはが消えていった曲がり角の方に走っていった。
それから彼はたたたっと走り回る……が、完全になのはを見失っていた。
弘政「……ここはどこ?」
ついでに道が真っ暗なせいですっかり迷子になってしまっていた。怖がりな子供なら不安で泣き出すシチュエーションだが無駄に同い年離れした冷静さや度胸――なおただ単にローテンションなだけとも言う――を持つ彼。泣き出すような真似は全くしていない。
弘政「……ん?」
すると彼はふと一つの方を向く。言ってみれば単なる直感、しかし弘政はその向いた道の方に走っていった。そして、彼はその先でなのはを発見する。
弘政「なのはちゃん!……って!?」
なのは「ひ、弘政君!?」 フェレット[えっ!?]
そこに立っていたなのはは聖祥小学校の制服に似た、しかしどこか天使のような服を着用して杖を持っており、その様相はどこか魔法少女を思わせる。しかもその肩には放課後に見つけたフェレットが乗っかっておりしかもさっき気のせいじゃなかったら喋っていた。
弘政「しかも何あれ!?」
さらになのはの目の前にはなんというか、少なくとも今まで彼らが見てきた現実から考えると圧倒的に異常な生物らしい物体が存在していた。
なのは「え、えっと、その……」 フェレット[わ! ま、前!!] なのは「あっ!」
突然の乱入者――弘政になのはが慌てて誤魔化そうと考え始めるがフェレットが叫ぶとなのはは慌てて杖を構え直し、謎の生物の突進をバリアーで受け止める。
なのは「う、くぅ……」
しかし反応が遅れたせいか謎の生物を弾き飛ばすと同時にバリアーが砕け散り、なのははふらっとふらつく。
弘政「なのはちゃん!」 なのは「ひ、弘政君……逃げて……」
ふらついたなのはに弘政が駆け寄るとなのはは少し苦しげな表情でそう呟き、それを聞いた弘政はほんの僅か考える様子を見せた後なのはの前に立った。
なのは「弘政君! 逃げてってば!」 弘政「あれがなんなのかよく分からないけど、女性を守るのは男性の務めだ!」 フェレット[む、無理だ! 君に魔力は……あ、あるにはあるけど、この子に比べたら……]
なのはの言葉に弘政が叫び、フェレットも続ける。そしてそんなこんなをやっている間に謎の生物がまた突進をしかけてくる。
弘政「来い!」
弘政は拳を構え、そいつを迎え撃とうとする。子供の頭で考えても力で敵うはずがないことはすぐに分かる。基本的に理性で物事を考える彼がそれでもなおこの場に残ったのはやはり女性は守るべきという教え込まれた信念、そしてそれを実行しようという心ゆえだろうか。するとその時、彼がポケットに入れていた青い鍵が青い淡い光を放ち始め、彼の心臓が強く脈打ち、フェレットが驚いたように頭を上げて弘政を見た。
フェレット[な、なんだ、これ?……不思議な力を感じる、魔力、いや、微妙に違う?……] 弘政「うおおおぉぉぉぉっ!!!」
フェレットの言葉のかき消す勢いで弘政が吼える。その時彼は自らの内部から何か別の力が解放される気配を感じ取り、直後、謎の生物が炎に包まれた。
生物[ぎいいぃぃぃぃっ!!??]
弘政「うっ……」 フェレット[いったい何が……あ、そうだ! 今の内に封印を!] なのは「は、はい!……リリカルマジカル」 フェレット[封印すべきは忌まわしき器・ジュエルシード!]
なのは「ジュエルシード! 封印!」 杖[standbyready ceiling mode set up]
なのは「リリカルマジカル! ジュエルシード! シリアル]]T! 封印!!」 杖[ceiling]
弘政がふらつき、フェレットは驚いたように声を漏らした後なのはに指示、それになのはも頷いて杖を構えて呪文を唱え、その詠唱が終わると共に生物から浮き出た光のようなものがなのはの杖の先端についている赤い宝石に吸い込まれていった。
なのは「こ、これでいいの?」 フェレット[うん、ありがとう……]
なのはの少しおどおどとしながらの言葉にフェレットは頷いてお礼を言い、訝しげな目で弘政を見る。
弘政「な、なんか凄い疲れた……」
彼は現在、汗を流しながらぜえぜえと荒い息を漏らしていた。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.54 ) |
- 日時: 2012/11/06 06:22:25
- 名前: 孝(たか)
- 弘政が息を乱していると、遠くから何かの音が近づいてくる。
ピーポー ピーポー ウゥゥゥゥ
それはサイレン…それに気づいた時、二人と一匹の頭に浮かぶのは…
なのはの脳内 なのは『この音って…サイレン?パトカー…警察…私の周りは地面とか塀とかが割れてたり、電柱が倒れてる…』
弘政の脳内 弘政『…サイレン?こんな時間になんか事件でも……はい。此処ですね。どう考えてもココだよね?辺りはボッコボコ…そして僕たちはそんな場所に立っている……』
フェレットの脳内 フェレット『何の音だろう?でも、そんな事より…疲、れ…』
なのはは周囲を見渡して自分がとてもアレな状態に漸く気付く。 弘政は激しい疲労を感じつつも冷静な判断で状況を分析する。 フェレットは怪我は治っていても疲れは取れていないせいか気絶する。
ポクポクポク・・・・・・・チーーーーン
「「も、もしかして、此処に居ると大変アレなのでは・・・?」」
二人は漸く気付く。自分達がとんでもなくマズイ状態にある事を…
「「・・・・・ご、ごめんなさあああああああああああああああい!!!」」
なのははフェレットを抱きかかえ、弘政はなのはの手を取ってその場から走り去っていく。
因みに、そのすぐ近くでは……
一刀「う、おお、おおおっ!? 目、目が、目がああああああああ!?」
デジカメを首に下げた例のバカたる神裂一刀が両目を押さえながらゴロゴロとのたうち回っている。
なのは達が来る少し前まで時間を戻そう。
神裂一刀は転生者であり、重度のなのはオタクであった。 今日この日。彼はなのはが初めて魔法に触れる日である事を知っていた。それを、今か今かと待ちわびていたのである。
そう、この馬鹿はなのはの変身を…アニメと同じように変身シーン…つまりなのはの裸体が見れるのでは?と言う変態思考が真っ先に挙がった。
故に彼はデジカメにそれを納める為に待ち伏せしていたのだ。
しかも、フェレットがなのはと合流する前に潰されそうになった時も、軽く無視して。 彼はなのはに近づく男は原作キャラクターでさえ嫌いだ。憎いと言っても良い。
だから助ける気さえなかった。 もしフェレットが原作と違い、なのはと合流する前に息絶えたならそれすら利用し、自分がフェレットの立場になり変わろうとも考えていた。
そして、その時は訪れる。
なのはがフェレットと合流し、フェレットを狙っていた怪物に襲われ、危険な目に会う。
そこからずっと彼はカメラを構えていた。
そして・・・
フェレット「心を静めて、僕の後に続いて。」 なのは「う、うん。・・・・・温かい。」
フェレットの言葉に従い、なのはが心を落ち着けると、フェレットから受け取った赤い宝石が淡い光を放つ。
フェレット「いくよ?・・・我、使命を受けし者なり。」 なのは「えと、わ、我、使命を受けし者なり。」
フェレットの指示に従い、なのはも続く。
フェレット「契約のもと、その力を解き放て。」 なのは「け、契約のもと、その力を解き放て。」
同時に、なのはは感覚的にではあるが、自分の奥底から湧き出る力を感じ取る。
フェレット「風は空に、星は天に。」 なのは「風は空に、星は天に。」
そして、唐突に理解する。次の呪文が、パスワードがなんであるか!
「「そして、不屈の魂(こころ)はこの胸に。この手に魔法を!レイジング・ハート!セットアップ!!」」
そして、なのはは赤い宝石…レイジング・ハートの放つ強い光に包まれた!
その瞬間である。
なのはにとっては自分を包み込む温かな光。
だが、邪な心を持ち、カメラのレンズ越しにその瞬間を激写しようとしていた馬鹿は・・・・・・
強烈な光を、レンズ(・・・)越しでその視界にとらえた。
一刀「ギャアアアアアアアアアアア!?!?目目目、目が、目がああああああああああ!?!?」
目に魔力を送って遠くを見れるように強化し、カメラのレンズで強烈な光をみれば目が焼かれるのは当たり前のことである。
つまり、自業自得、天罰である。
一刀「う、ぐぅ…」
警官「こ、これは…一体何が?」 警部「そこらじゅう穴だらけじゃないか…む?そこに居る奴!誰だ!?」
一刀「や、やべぇ…(原作通りなら警察が・・・だが、まだ目が…)」 警官「子供!?なんでこんな時間に子供が…」
そんなこんなで、一刀は警官達に補導された。
もうすぐ日付が変わろうとしている時間に、小学生がカメラを持って出歩いている。 怪しさ抜群であるのはいたしかたない事であろう。
そして一刀は海鳴警察署まで連れて行かれ、事情聴取ならびに説教を受けるのだった。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.56 ) |
- 日時: 2012/11/07 06:40:05
- 名前: 孝(たか)
- 一刀が警察署まで連行されている頃…
なのは「はぁ…はぁ…はぁ…ん、はぁ。はん…」 弘政「はぁ…はぁ…ぜぇ、はぁ…うっぷ…」
全速力であの場から逃げ出し、近くの公園のベンチで休憩していた。
・・・・・・別にやましい事してたわけじゃないんだよ?本当だよ?
フェレット「う・・・あれ?」 なのは「ふぅ…あ、起こしちゃった?怪我は大丈夫?」
丁度なのは達の息が整った頃、気絶していたフェレットが目を覚ました。
フェレット「あ、はい。魔力を怪我の回復に回そうと思ったんですけど、病院で目が覚めた時には何故か殆ど治っていて…この世界の医療は、そこまで進んでいるんでしょうか?」
自分は一個目のジュエルシードの捕獲時に怪我をしていた筈のに、何故か治っている事に驚いている。
なのは「あ、それは医療じゃなくて、氷牙君のおかげかも…」 フェレット「氷牙さん?君の隣に居る子の事?あれ?でもさっき弘政って…?」
あれ?あれ?と混乱し始めるフェレット。 これでは話が進まないと思ったなのははある提案をする。
なのは「ねぇ、自己紹介。しても良い?」 フェレット「あ、はい。お願いします。」
言われて思いだす。自分達はまだお互いの名前すら聞いていない事に。
なのは「私、高町なのは。市立聖祥大付属小学校3年生。で、こっちが…」 弘政「弘政。黒鷹弘政だよ。それで、君は?」 ユーノ「僕は、ユーノ・スクライア。スクライアは部族名だから、ユーノが名前です。」
なのは「ユーノ君か。可愛い名前だね」 弘政「うん。いい名前だね。」
ユーノ「う、ん・・・・・・すみません」 「「え…?」」
自己紹介が済むと、ユーノは項垂れると同時に謝ってきた。
ユーノ「あなたを…え?」 なのは「なのはだよ?」
名前で呼んで欲しかったのか、ユーノを抱き上げてすぐに訂正させるなのは。
ユーノ「なのはさんを、巻き込んでしまいました。」 なのは「あ、えと……ふふ。多分、私。平気!ところで、さっきの怪物は一体なんだったの?」 弘政「たかま…なのはちゃん。知らないで戦ってたの?」
高町さんと呼ぼうとしたら悲しそうな顔をしたので呼び直し、てっきり以前からあんな事をしていたのかと思っていた弘政。
なのは「う、うん。成り行きで…ユーノ君。教えてくれる?」 ユーノ「うん。アレは…」
弘政「ちょっと待って。」
説明しようとするユーノに待ったをかける弘政。
なのは「ふえ?どうしたの弘政君?」 弘政「なのはちゃん。僕たちみたいな子供が、こんな時間に出歩いてたら家族が心配するよ。今日は一旦帰って、話は明日にした方がいいと思うんだ。あんな怪物が出るんだから、相当込み入った話の筈だよ。」
いつも冷静で大人顔負けの思考力を持つ弘政は正論を放つ。
なのは「あ”…そ、そ、う、だ、ね。」
ギギギと錆びついた機械の様な動作で答えるなのは。
弘政「・・・なのはちゃん。もしかして、黙って出てきた?」
弘政も黙って出てきたので大凡の見当はついていた。
なのは「う…はい。」
しゅんと、項垂れるなのは。心なしかツインテールも萎れて見える。
弘政「ま、僕も黙って出てきたんだけどね…急いで戻ろうか?」 なのは「……うん!」
それから十数分程走ると自宅に着く。 弘政は送って行こうかと聞いたが、なのはは丁重に断ると、「お休みなさい。また明日。」
二人はそう言いあって別れようとする。
弘政「あ、なのはちゃん」
とその時弘政がなのはに話しかけ、なのはとユーノは振り返る。
弘政「何かあったら協力するからね。巻き込みたくないような危険なことだったとしても一人でしようってのは無しだよ」 なのは「……うん、分かった。約束だよ!」 弘政「うん、約束」
弘政の言葉になのはは少し考えた後頷いて返し、その言葉に弘政もこくんと頷く。
そうして、今度こそ二人はお互いの家の近くで別れた。
ススーーーソロリソロリ…
引き戸をゆっくり開けて、忍び足で玄関に向かうなのは。
恭也「お帰り。」 なのは「ビクッ!?お、お兄ちゃん!」
玄関横から恭也に声をかけられ、吃驚しながらもユーノを背中に隠すなのは。
恭也「こんな時間に、どこにお出かけだ?」 なのは「あの、えっと、その…」
険しい表情の恭也に委縮し、上手い言い訳も思いつかず無為に時間だけが過ぎて行く中、なのはの後ろからも近寄る人物が居た。
美由紀「あら可愛い!」 なのは「お、お姉ちゃん?」 美由紀「あら、なんか元気ないね?この子の事が心配で、様子を見に行ったのね?」
もう隠しても無駄なので、ユーノを前に持ってきて抱き直すなのは。
恭也「気持ちは判らなくもないが…だからと言って、内緒でと言うのはな。」 美由紀「まぁまぁ良いじゃない!こうして無事に戻ってきてるんだし。それに、なのはは良い子だから、もうこんな事。しないもんね?」
更に眉間の皺を増やそうとする恭也を見かねて、美由紀がその場を取り繕い、なのはにウィンクを投げる。
なのは「うん。その、お兄ちゃん。内緒でお出かけ…心配かけてごめんなさい。」
言って、なのはは恭也に頭を下げる。
恭也「うむ。次からは、キチンと話すんだぞ。」 美由紀「はい。これで解決!それにしても…可愛い動物だね!母さんだったら、可愛すぎて悶絶しちゃうんじゃない?」
恭也「ふむ…その可能性は否定できんな。」
美由紀の言葉に頷く恭也だった。
家の中に戻ると、二人の予想通り、桃子がユーノを見て可愛い可愛いと撫で回し、頬ずりしていた。
ユーノも、ばれない方がいいと思い、フェレットの演技をするのだった。
尚、寝付きの良い氷牙はこの騒ぎでも部屋ですやすやと寝ているのだった。
同じ頃、高町家同様。弘政も家を抜け出しているのがバレていた。 そーっと玄関を開けると……仁王立ちした鬼が居たのは言うまでも無く。
とりあえず理由を聞いてから拳骨を食らったのは言うまでも無く、その一撃が重かったのと、疲労により、弘政の視界はブラックアウトするのであった。
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