Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.11 ) |
- 日時: 2012/07/18 03:43:55
- 名前: 孝(たか)
- なのは「お母さんお母さんお母さん!!」
美由紀「わっ!?なのは、そんなに慌ててどうしたの?」
大声を出しながら階段をドタドタと駆け下りる途中、水を取り替えてきた美由紀と遭遇する。
なのは「あ、お姉ちゃん!あの子が、あの子が目を覚まして起きあがったの!」
美由紀「本当に!?なのは、お母さんを呼んできて!私は先にあの子の所に…」
なのは「うん!」
美由紀の言うとおりになのはは桃子の下へと急いだ。
コンコン…ガチャ。
美由紀は驚かせない様に静かに、しかし急ぎ足で部屋に向かい、ノックをしてから入出した。
氷牙「a…!?」
入ってきた美由紀に驚き、またもや縮こまる氷牙。
よく見ると目に涙を浮かべている。
美由紀「(うわぁ…何?この小動物みたいなの…)え、っと…目が覚めたんだね?どこか痛い所とかは無い?」
なんだか居た堪れなくなった美由紀はそっとベットの傍まで近づき、氷牙と目線を合わせるように膝立ちになる。
氷牙「a…u…(あう…)」(泣)
しかし、やはり怯える様な表情は消えず、美由紀からも距離を取ろうと後ずさる。
美由紀「え〜と…私、君に何か嫌われるような事、したかな?」
困ったような表情で氷牙に問いかける美由紀。
氷牙「uuu…(ううう…)」
美由紀「……あれ?もしかして…言葉が通じてない?」
今更だが、目の前の少年は薄い青の頭髪に、髪と同じ色の瞳をしている。
どう見ても日本人ではない。
そもそも、なのはの言う事を信じるのならば、普通の人間かどうかも怪しい位だ。
コンコン。ガチャ。
そんなとき、なのはに呼ばれた桃子が到着した。
桃子「お待たせ、美由紀。」
美由紀「あ、お母さん」
天の助け…もとい、母の助けが来た。
桃子「…こんにちわ。私の事、覚えてる?」
桃子はニコニコと安心させるような微笑みを浮かべながら氷牙に近づく。
すると…美由紀やなのはの時は驚き、怯え、涙を浮かべていた氷牙は桃子に対しては多少震えては居たが、そっと桃子の袖を掴んでいた。
桃子「あらあら…怖かったのね…大丈夫。ここには、貴方を怖がらせるような人は誰も居ないから…」
そう言って、桃子は優しく氷牙を抱きしめ、そっと頭を撫でるのだった。
氷牙「a…u…cc…dc…?ant…dr?(あう…ここ、どこ?貴女は、誰?)」
氷牙は何か言っているようだが、桃子達には理解できない言語だった為、聞きとれていない。
桃子「う〜ん…どこの国の言葉かしら?なのは。士郎さんを呼んできてくれる?もしかしたら、この子の言葉が判るかもしれないから…」
とりあえず氷牙が手を放してくれないので、抱きしめて待つ事にした桃子。
なのは「わかったなの!」
またも駆け足で部屋を出ていくなのは。
美由紀「お母さんだけ良いなぁ…私も抱きしめてみたいかも…」
そう言って美由紀が一歩近づくと…
氷牙「h…!?(ひっ!?)」
今度はガタガタ震えながら桃子に抱き付いた。
美由紀「うう〜そんなに怯えなくても…」
氷牙の怯え様に美由紀も泣きたくなってきたのだった。
そうしていると…
コンコン…ガチャ。
三度目のノックがして、士郎となのはが入って来た。
士郎「いや〜待たせたみたいだね?こんにちわ”氷牙”君。俺の事は判るかい?」
なんと、士郎は少年を氷牙と呼んだ。
なのは「ふぇ?お父さん、その子のお名前知ってたの?」
士郎「あ、いや、知っていたと言うか、教えて貰ったと言うか…」
困ったような表情で頭を掻く士郎。
『氷牙様!!』
どこからともなくエコーの効いた声が響く。
氷牙「hu!?(ひう!?)」
またも恐怖に駆られて一掃震えが激しくなる。
士郎「っとと…”ガングニール”君。少し落ち着いて…氷牙君は、目を覚ましたばかりだから…」
『む…そう、ですな。私とした事がつい我を忘れて…』
士郎は胸ポケットから六角形の鉄板を取り出した。
美由紀「あ〜〜お父さん?何、それ?ガン…何?」
士郎「あぁ、ほら、氷牙君の持っていた槍だよ。朝道場に行ったらこんな姿に変わっちゃってね。」
美由紀は引きつった笑みを浮かべながら士郎に聞くと、士郎は苦笑しながら答える。
美由紀「えええええええ?!これが、あの大きな槍!?どこをどうしたらこんなコンパクトに!?」
美由紀の反応は一般人からしてみれば当然の反応である。
『そんな事よりも、士郎殿。早く私を氷牙様の下へ!』
士郎「あぁ、判った。はい。氷牙君。君の持ち物だ。」
そう言って、士郎は手の平に乗せた六角形の鉄板…ガングニールを氷牙に差し出す。
氷牙「??????」
氷牙はいきなり差し出されて困惑している。
『氷牙様!お会いしとうございました!』
氷牙「??au…dr?(??あう…誰?)」
可愛らしくコテンと首を傾げる氷牙。
『!?ひ、氷牙様?よもや、私をお忘れか!?氷牙様の一心同体!唯一無二の相棒!魔槍・ガングニールにございます!』
氷牙「????」
全くもって知らないと言う表情の氷牙。
それを見たガングニールは愕然とするのだった。
『こうなれば…士郎殿!私を氷牙様に持たせてくれぬか!?』
氷牙が持ってくれないので、士郎に頼んで持たせて貰う事にした。
士郎「あ、あぁ。はい。氷牙君。」
ガングニールの言うとおりに、氷牙にガングニールを持たせた士郎。
『!?こ、これは……!?何という事だ!?』
士郎「どうかしたのかい?」
『氷牙様!記憶を失われたばかりか…幼児退行しておられる!?』
「「「「え!?」」」」
ガングニールのいきなりのカミングアウトに驚きを隠せない一同。
士郎「記憶をって…氷牙君は記憶喪失なのかい!?」
『…はい。恐らく、落下の時に強く頭部を殴打したのでしょう。そのせいで、御自分の事どころか、言語まで忘れておられます。』
桃子「あらあら…困ったわね。言葉が通じないと不便だわ。」
ガングニールの存在よりも言葉が通じないと言う方が重要らしい。
『貴女様は?』
桃子「あ、すみません。私は、士郎の妻の桃子と言います。」
ペコリと会釈しながら自己紹介をする桃子。
『おお。これはこれは…士郎殿の奥方殿で、私、氷牙様にお仕えする魔槍・ガングニールと申します。以後、お見知り置きを…』
六角形の鉄板と美人の人妻が自己紹介をする何とも言えないシュールな光景がそこにあった。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.12 ) |
- 日時: 2012/07/22 00:22:51
- 名前: 孝(たか)
- 第四話…記憶喪失!?
士郎「と、なると…氷牙君にはまず日本語を覚えて貰わないといけない訳か?」
士郎が問題の一つを挙げる。
『その辺りはなんとかなります。私の翻訳機能を使えば、基本的な物はなんとかなるでしょう。ですが、にんげ…いえ、この次元世界の言葉となると、少々心許ないですね。』
ガングニールが翻訳する事で、基礎はなんとかなる様だ。
しかし、それも絶対ではないらしい。
士郎「まぁ、言葉も大事ではあるが…もっと重要な事がある」
士郎が重々しく口を開く。
士郎「まずは、氷牙君が美由紀達に慣れないとね?」
一同「あ〜」汗
苦笑しながらそう言う士郎に、一同納得する。
美由紀「…あれ?そう言えば、恭ちゃんは?」
一人姿の見えない兄の名を挙げる美由紀。
なのは「盆栽弄ってるなの。」
美由紀「あ、あはは…」汗
中学生でその趣味は枯れていると思うのだが…口には出さない美由紀だった。
それからなんとか桃子を離してくれた氷牙の頭を撫でて、桃子は夕食の準備に戻って行った。
入れ替わりで入ってきた恭也だが、氷牙と目が合ったが特にこれといった反応は無かった。
ガングニールを介して氷牙の事を理解していったのだが…これが曲者だった。
聞いてみると、氷牙は桃子と士郎以外が怖いらしい。
なのは=声が大きくて吃驚するから怖いらしい。
美由紀=身の危険を感じるらしい。
桃子=温かい感じがして安心するらしい。
士郎=桃子と似た感じがするらしい。
恭也=なのは達ほど怖くはないから平気らしい。
それを聞いてなのはと美由紀が部屋の隅で膝を抱えたのは当然と言える。
なのは「いいもーん…絶対に仲良くなって見せるもーん…」
ぶすくれた表情をしながらも諦める気は無いらしい。
美由紀「無愛想な恭ちゃんより怖いって…私、そんなに怖いのかな?ううう…」
美由紀は余程ショックだったのか、膝を涙で濡らしていた。
桃子「みんなー御夕飯が出来ましたよ〜!」
そうこうしていると夕飯の準備が整ったらしい。
なのは達を先に行かせて、士郎は氷牙を背負って一緒にリビングへと向かった。
氷牙を椅子に座らせ、皆も同様に椅子に座る。
桃子「それでは、いただきます!」
『いただきます!』
高町家の一同が手を合わせて合掌する。
氷牙「……うー?いた、だき、まう?」
氷牙は首を傾げながらも同じようにしていう。
ガングニールの翻訳機能によってなんとか聞きとれる言語を話す氷牙。
幼児退行しているせいか、微妙に片言ではあるが…それは追々どうにかしていくだろう。
因みに、氷牙の事で色々合ったので、今日の夕飯は、オムライスとコンソメスープとポテトサラダの様だ。
なのは「はむ…もぐもぐ…ん〜美味しい!」
氷牙「……う〜?…」
よくわからなかったが、氷牙はなのはの動作を見て、スプーンでオムライスを掬う。
氷牙はじ〜〜とスプーンの上のオムライスを眺めていると、なのはが氷牙を見ている事に気付いた。
なのは「氷牙君?食べないの?」
氷牙「…食べ、る?」
余程記憶喪失のショックが大きかったのか、食べると言うのもよくわからないらしい。
なのは「おいしいよ♪はむ!」
そう言って、再びオムライスを頬張るなのは。
氷牙もそれに倣ってオムライスを口に入れる。
もぐもぐと潤滑してコクリと飲み込む。
皆が皆、様子を窺うように見ていると…氷牙の目はキラキラ輝いていた。
余程気にいったらしいのか、パクパクと食べ進めていく。
それを見ていた高町家の一同も、一安心した。
氷牙「んぐっ!?」
そして古典的ではあるが…そんなに急いで食べればどうなるかも判る筈だ…そう。喉に詰まらせたのだ。
なのは「た、大変!?氷牙君!お水!お水飲んで!」
喉を押さえている氷牙を見てなのははコップの水を飲ませる為に背中を押さえながらコップを口に近付ける。
氷牙「んん〜〜んっくん。けほっ…けほっ」
ぜぇぜぇ言いながらなんとか飲み込んだ。
なのは「だ、大丈夫?」
氷牙の背中を擦りながら心配そうに伺うなのは。
氷牙「はふぅ…はふぅ…あい、が、とう。なには。」
なのは「どういたしましてなの!でも、”なには”じゃなくて、”なのは”なの。な・の・は。」
氷牙「な、の、は?」
なのは「うん!」
氷牙「なの、は?」
なのは「うん!そうだよ氷牙君!」
名前を覚えてもらえて嬉しいのか、幸せ一杯の笑顔を向けるなのはだった。
こうして、騒がしくも微笑ましい一日は過ぎていくのだった。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.13 ) |
- 日時: 2012/07/22 14:43:35
- 名前: カイナ
- それから翌日の朝、なのはは元気よく家を出て行く。
なのは「じゃあ行ってくるね、氷牙君!」 氷牙「ん……」
なのはの元気な言葉に玄関で氷牙はこくんと頷く。一応氷牙も多少なのはには打ち解けていた。とはいえまだ桃子と士郎の方に懐いているが。 それからなのははバス停の方に走っていくが、自分の家の二軒隣の門から誰かが出てきたのを見ると足を止める。
なのは「おはよっ! 弘政君!」 弘政「……」
なのはの元気なスマイルでの挨拶。しかし弘政はそれに気づかず、何かを考えている様子で彼女に背を向けバス停の方に歩き出す。
なのは「むっ」
それになのはは頬を膨らませ、こそこそと彼の背後に忍び寄る。
なのは「おーはー……」 弘政「ん?」
なのはの声にようやく弘政は気づいたように足を止める。
なのは「よーっ!!」 弘政「わあっ!?」
直後弘政の背中に抱きつきながらそう言い、弘政は驚いたように声を上げる。
弘政「な、なのはちゃん!? え、いつの間に!?」 なのは「さっき挨拶したよ! 弘政君が気づかなかっただけなの!」 弘政「え? そう? ご、ごめん。ちょっと考え事してて……」 なのは「ふ〜ん?」 弘政「っていうか、下りてよ……」
弘政となのははそう会話し、その会話の最後に弘政がどこか呆れたような声を漏らす。なのはは未だに弘政の背中に抱きついており、弘政はなんだかんだでバス停まで彼女を背負い運ぶこととなった。同年代に比べると少し背が高い代わりに痩せ型というような体形の割りに意外に力持ちである。
??「あぁ〜っ!!!!」
そして丁度バスが来たバス停で、バスの中から悲鳴のような声が上がり直後ズドドドドとバスの中から何者かが降りてくる。まあもう言うまでもないがなのはに付きまとっている一刀だ。 彼はバスから走り下りると弘政に詰め寄る。なんか目がものすっごい血走っており、なのははゆっくり弘政から下りるとこそこそと距離を取った。
一刀「モブ貴様ぁ! 誰に断って僕のなのはちゃんに抱きついてたんだぁ!?」 弘政「いや、僕が抱きついてたんじゃなくって僕が抱きつかれてたんだけど」 一刀「どっちも同じだ!!」 弘政「違うよ……」
完全に怒ってますと言わんばかりの表情で目が血走り声を荒げている一刀に対し、無表情に近い顔で眠そうな半目に冷静というかローテンションで返す弘政。まるで炎と氷のぶつかり合いである。
なのは「……弘政君、バスに乗ろう。他の子が待ってるの」 弘政「そ、そうだね……」
するとなのはは一刀を無視して弘政に話しかけ、ヒートアップしている彼を置いてバスに乗る。
一刀「あっこらモブ貴様! なのはちゃんの隣は僕の指定席だぞ!?」
そして一刀もそう叫んでバスに乗り込んだ。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.14 ) |
- 日時: 2012/07/25 01:00:45
- 名前: 孝(たか)
- なのは達が幼稚園に行き、恭也達が学校に行っている頃…
翠屋休憩室…
『それでは氷牙様。私の後に続いて、順番に、一緒に読んでください。』
氷牙「あい。」
『最初は、あ、い、う、え、お。』 氷牙「あ、い…う?え、お。」
『はい。お上手です。』
ガングニールの出す小さな光を見ながら、渡された”よい子のあいうえお”を一つ一つ確認しながら習っている。
……鉄の板に、小学生高学年位の少年が、ひらがなを教わるとはなんとシュールな光景か…。
『次は、か、き、く、け、こ。』 氷牙「か、き、く、けぇ、こ?」
少し訛りが出ているようだ。
『少し違います。もう一度、か、き、く、け、こ。』
先程よりゆっくりとした動作で光で文字をタッチしながら繰り返すガングニール。
氷牙「か、き、く、け、こ?」 『そうです。その調子です。』
そうしてとりあえず30分程ひらがな50音を繰り返し復唱していくのだった。
『はい。それでは少し休憩しましょう。』
氷牙「あい。んく、んく。」
そう言われて、氷牙は桃子から貰った”赤ん坊用”の、ストローの付いたカップの中のジュースを少しずつ飲んだ。
因みに、なのはの御下がりであるが、本人達はそれを知らない。
何故氷牙が翠屋の休憩室に居るかというと…
流石に何日もお店を閉めている訳にもいかず、かといって怪我人であり、右も左も勝手も判らない氷牙を、ガングニールが居るとはいえ、一人家に置いてけぼりにする訳にもいかなかった。
なら、いっその事何があっても良い様に、翠屋の休憩室に居させようとガングニールから提案された。
士郎達もそれで妥協した。 忙しいとはいえ、ちょっとずつなら様子を見る事は出来るし、なにより大人しい氷牙なら大丈夫だろうという意見も出たからだ。
そうして椅子に座ったまま折れていない片方の足をプラプラさせる事5分。
『はい。それでは続きをしましょう。』 氷牙「あい。」
そうして、二人?は延々とひらがなを復唱していったのだった。
その甲斐あって、一日中ひらがなを復唱していたおかげで、一日でひらがなを覚える事が出来た氷牙だった。
ひらがなは覚えたが、まだカタカナと言葉の意味合いは覚え切れていないが、この調子であればひと月もあれば十分覚え切れるであろう。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.15 ) |
- 日時: 2012/07/26 16:19:33
- 名前: カイナ
- 少々時間を戻して幼稚園終了後、帰りのバスの中。なのはは変わらず一刀に付きまとわれてため息をついていた。
ちなみに二つの席の内窓際の席になのはが座り、通路側の席に弘政が座って眠っており――本人曰く「変な夢を見て寝た気がしなかった」、ちなみに朝考え事をしていたのはこの夢のことでらしい。というものと幼稚園で一刀に度々喧嘩を売られて疲れていたという理由がある――その弘政を越えるようにして一刀が付きまとっているのだが。
弘政「くー……」 一刀「ねえねえなのはちゃん、こんな君をほっといて寝てるような奴より僕と一緒の方が楽しいよ? ねえねえ?」 なのは「うるさいの。弘政君が眠れないの」
いつもの無表情やローテンションとは打って変わってあどけない寝顔を見せている弘政に対しうざったくなのはに話しかけてくる一刀。それになのははうるさいというような目を一刀に向けていた。
弘政「ペ……ナ……」
そんな中彼が何か呟いていたが、それに気づいていたものは誰もいない。
一刀[ねえねえなのはちゃん、ねえねえ」 なのは「……」
なおも一刀はしつこくなのはに付きまとい、いよいよなのはの額に青筋が立った時だった。
弘政「うるひゃいっ!!!」 一刀「へぐっ!?」
なんと弘政が寝ぼけながら一刀の顎に左アッパーを叩き込み、綺麗に入ったそれで一刀の頭が跳ね上がり彼は一発で昏倒する。その一撃の威力や綺麗さたるや関係者が見れば彼をボクシング業界にスカウトするやもしれないほどのものだった。
弘政「くー……」
しかしそのパンチを放った本人は何も知らずぐっすりと眠り続けていた。恐らく寝ぼけてアッパーを放ったなんて記憶にも残らないだろう。そして一刀は白目を剥きぴくぴくと痙攣していた。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.16 ) |
- 日時: 2012/07/28 08:37:14
- 名前: 孝(たか)
- 第五話…初めてのお使い。
そんなこんなで変わらぬ日々を過ごしていく内に、氷牙が高町家に墜落してから2か月の時が経過した。
氷牙「行って、きます。」 桃子「はい。行ってらっしゃい!車に気をつけてね」 氷牙「ん。」
怪我もすっかり完治した氷牙は桃子に買い物を頼まれたので街へと出かけて行った。 最初の頃は人見知りが激しく、美由紀にも怯えていた氷牙だが、字を覚え、言葉を覚え、見分を広め、漸く人並みになった彼。
今では美由紀にも普通に接している。 タタタッと、身軽な足取りで街へ向かう氷牙。
途中、猫や犬などの動物が彼の後を付いてきているせいか…動物の大行進が海鳴の名物となりつつあった。 街の商店街につくと、振り返って後ろの動物達に「また後で。」と伝えると、動物達はそれに従って散開していった。
彼は動物調教師の資質でもあるのだろうか??
最初のお店…八百屋。
氷牙「すみま、せん。」 助六「おう。ボウズ!桃子さんの手伝いかい?」
ガタイの良いオジサンが返事を返す。
氷牙「ん。」
コクリと頷きながら返事をする氷牙。
氷牙「……ニンジン、タマネギ、ピーマン、しいたけ、一袋ずつ、下さい。」 助六「おう。ちょっと待ってな!」
イソイソと品を袋に詰めていく店主の助六。
助六「おし、全部で580円だ。」 氷牙「ん。600円」
助六「あいよ。お釣り20円だ。」 氷牙「ありが、とう、ござい、ます。」
言葉は覚えたがまだ色々とぎこちない様だ。
助六「どういたしまして!おぉ、そうだ。ボウズ、これ食べてみろ。」
そう言って助六は赤い果物…苺を一個氷牙に渡した。
氷牙「うゆ?」 助六「苺だよ。家の畑で試しに作ってみたんだがな?感想が欲しいんだよ。ほれ、遠慮せずに食べてみな」
氷牙「ん。…あむ…むぐむぐ…んっくん…甘い。おいしい。」
氷牙は満面の笑顔でそう答えた。
助六「そうか!そいつは良かった。じゃ、桃子さんの手伝い、頑張れよボウズ!」 氷牙「ん!イチゴ、ありがとう、ござい、ました」
ペコリとお辞儀して次のお店に向かうのだった。
2件目のお店…お肉屋さん。
氷牙「すみま、せん。」 皆子「おや氷牙ちゃん。桃子さんのお手伝いかい?」
ふくよかな気の良いおばちゃんが返事を返した。
氷牙「ん。挽き肉、500グラム、パン粉、一袋、下さい。」 皆子「あいよ。ちょっとお待ちね。」
テキパキと分量を量って素早く用意を済ませるおばちゃん。
皆子「はいよ。全部で1060円だよ」 氷牙「あい!1100円。」
皆子「それじゃ、40円のお釣りだよ。」 氷牙「ありが、とう、ござい、ます。」
お礼を言って次に向かおうとする氷牙。
皆子「あぁ、お待ちよ。」 氷牙「う?」
何?と首を傾げながら振り返る氷牙。
皆子「今ね、千円以上お買い物した人にね、福引券を配ってるのさ。これで一回出来るから、帰りにでもやって行きな。」 氷牙「ん。」
福引券を受け取り、ペコリとお辞儀して次の店に向かうのだった。
三件目…スーパー。
氷牙は買い物かごにL卵1パック・1L牛乳2パック・1L薄口しょうゆ1本・徳用のケチャップとマヨネーズ1本ずつ・単3乾電池10本入りを2つ入れると、早々にレジへと向かった。
会計も終わり、レジ袋に商品を丁寧に詰め、持ってきていたリュックサックに収納すると、スーパーを出た。
因みに、ここのスーパーでは福引券を2枚手に入れた。
スーパーを出ると、丁度帰宅途中のなのは達と出会った。
なのは「あ!氷牙君!お買いものしてたの?」 氷牙「なのは、お帰り。桃子、買い物、頼まれた。」
因みに氷牙は全員を呼び捨てだ。 と言っても、ただ敬語を使いこなせていないだけである。
なのは「そうなんだ。もう終わったの?」 氷牙「ん。…その子、ダレ?」
なのは「あ、紹介するね?私の友達で…」 弘政「黒鷹弘政です。えと、なのはちゃんのお兄さん…ですか?」
氷牙「違う。でも、なのはの家、お世話、なってる。」
フルフルと首を振って否定した後、軽く説明する。
なのは「氷牙君はね、きおくそうしつって言うのになってて、名前以外はよくわからないんだって…」
氷牙の説明不足に追加する形でなのはが補足した。
なのは「あとは帰るだけ?」 氷牙「ん。福引、もらった。3枚、ある。一緒、する?」
氷牙は二人を誘って福引所に行くことにした。
弘政「え?僕もですか?」 氷牙「ん。一緒。やる。」
そう言って氷牙は1枚を弘政に渡した。
弘政「あ、どうも。ありがとうございます。」
遠慮するのは逆に悪い気がしたので、戸惑いながらも一緒に行くことにしたようだ。
なのはの場合…
ガラガラガラ……カラカラ〜コトン。赤い玉が出てきた。
カランカラ〜ン。
「おめでとうございます!5等賞のレターセットです!」 なのは「わぁ!やったぁ!かわいいお手紙!」
女の子のなのはにとっては良い物の様だ。
弘政の場合…
ガラガラガラ……カラカラ〜コトン。青い玉が出てきた。
カラ〜ンカラ〜ン。
「おめでとうございます!4等賞のミュージックプレイヤーと川村○みさんのマキシシングルのセット(Burn My Dreadとキミの記憶入り)です!」 弘政「え!え?!あ、当たった?」
なのは「わぁ!弘政君すごーい!」
まさかの連続で当たったので驚いている様子だ。
氷牙の場合…
ガラガラガラ……カラカラ〜カツーーン。金の玉が出てきた。
カララ〜ンカララ〜ン!
「お、大当たりいいいいいい!特賞!海鳴スーパー温泉2泊3日御家族御招待チケットです!!」
『『『おおおおおおお〜〜』』』
パチパチパチパチと周りの見物達や福引所のスタッフから拍手喝采。
氷牙「??????」
氷牙本人はよくわかっていないようだ。
なのは「氷牙君すごい!特賞だって!すごいね!」 氷牙「……なのは」
なのは「ん。なにかな?」 氷牙「………温泉て、何?」
ドンガラガッシャーーーーン!!
拍手していた見物人達が一斉にこけた。
なのは「にゃ、にゃはは…そ、そうだよね。氷牙君はそう言うのも分からないんだよね…(汗)」
そうして帰りながらどう言うものか説明していくなのはだった。
海鳴スーパー温泉…ようするに、温水プールである。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.19 ) |
- 日時: 2012/07/30 21:31:01
- 名前: カイナ
- それは、ごく普通の休日でした。
祖父「ほい、王手だ」 弘政「うぐ……」
弘政は朝から居間で祖父に付き合って将棋を打っていた。しかしまあ容赦ない攻撃に弘政の場は壊滅状態、弘政がむむむと悩んでいるのを見ながら祖父はかっかっかと笑って取った駒をじゃらじゃらと弄んでいた。
祖父「おらどうした? 待ったしてもいいんだぜ?」 弘政「いらない……」 祖父「ったく、意地っ張りだな」
祖父の言葉に弘政はむむむと悩みながらもそう返し、それに祖父は呆れたような微笑ましいような笑みを見せる。と、突然ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。
祖父「ん? 弘政、悪いが出てくれや」 弘政「はーい」
祖父の言葉に弘政は頷いて玄関に向かう。
弘政「どなたです……あ、なのはちゃん」
玄関の戸を開けながらそう尋ねるがその相手を見ると思わず声を漏らした。玄関に立っていたのは笑顔のなのは、その後ろに彼女の兄恭也。ちなみに家の門の前には車が一台止まっている。
なのは「弘政君! 海鳴スーパー温泉にいくよ!」
そしてなのはは満面の笑顔で突然そう言う。
弘政「……はい?」
しかし、弘政は呆けた声でそう聞き返した。
弘政「……どうしてこうなった?」
そして場所は海鳴スーパー温泉に移る。あれからなのはに急かされるように準備をさせられ、その間に恭也が弘政の祖父母に挨拶と説明を行い、祖父母は平然と許可。最終的に弘政は事態を理解してるようなしてないような状態でなのはに半ば彼の荷物ごと車に放り込まれるようなことになっていた。 弘政は準備された荷物を持って車から降りるとため息をつきながら呟き、するとその横に恭也が立って苦笑交じりに口を開く。
恭也「なのはがすまないな。弘政君も一緒に行くと言って聞かなくてな」 弘政「あ、いえ。でも家族水入らずで楽しんだ方が……」 恭也「友達と一緒に遊びたい年頃なんだ。察してくれないか?」 弘政「はぁ……」
恭也の言葉に弘政はそう声を漏らす。となのはが目をキラキラと輝かせて弘政の手を掴んだ。
なのは「ね、ね、弘政君! 早く行こう!」 弘政「ちょっとあの、なのはちゃん?」 なのは「ほらほら早く! 一緒にお風呂入って、今日は一緒に寝よう?」 弘政「い、一緒にってちょっと! わー! 恭也さん助けてー!!」
テンションマックスななのはの驚きの発言に弘政は顔を赤くして声を上げ、ずるずるとなのはに引きずられていく。恭也はそれを苦笑交じりに見送った後荷物を下ろし始めた。
氷牙「二人……仲良し……」
それを見送った氷牙も、柔和な笑みを浮かべてそう呟いた。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.20 ) |
- 日時: 2012/07/31 01:37:54
- 名前: 孝(たか)
- 第六話…温泉、それはパラダイス!なの。
そんなこんなで水着に着替えた一同は漸く合流を果たす。
スーパー温泉…温泉と銘打ってはいるが、結局のところはぬるま湯のウォーターパークである。
勿論、普通の温泉コーナーもあるが、結局は遊ぶ場である。
なのは「弘政君!氷牙君!アレ乗ろ!」
そう言って、異様な迫力を放つウォータースライダーを指差すなのは。
因みに、なのはの水着は白地にピンクの水玉模様が描かれ、小さなフリルのスカートをあしらったどこにでもある可愛らしい水着だ。
弘政「あ、アレに??なのはちゃん…本気?」 なのは「本気と書いてマジなの!」
笑顔をひきつらせながら冗談であってほしいとなのはに聞くが、なのはは無情にも本気で異様な存在感を放つウォータースライダーに向かおうとウキウキ顔で弘政を背中から押している。
そんな弘政の水着はトランクスタイプで黒地に黄色の縦線が描かれたシンプルな水着である。
氷牙「なのは、走ると…危ない。滑り台は、逃げない。」
そんな二人を見て走りださないよう声をかける氷牙。
しかしまぁ、ウォータースライダーに行く事は止めない氷牙を弘政は”止めてよ!”と、目で訴えるがそれには気付きもしなかった。
そんな氷牙の水着は、トランクスタイプの青地に黒の縦線が描かれた水着と、上着として水場用の白地Tシャツを着ていた。 因みに、Tシャツの背面には”順風満帆”と書かれている。
氷牙の回復力は確かに高かったが、いくつかは”一生傷”として残ってしまった。 その最たる例が、胸から背中に貫通している刺し傷である。
小学生高学年くらいの氷牙に、そんな痛々しい傷があるのを一般人に見せるのは氷牙の衛生上宜しくないだろう。
どんな目で見られるか分かった物ではない。 その為の配慮だ。
弘政「え、えと…僕は遠慮し…」 なのは「レッツゴーなの!」
ガシっと弘政と腕を組んで引きずる勢いでスタスタとウォータースライダーに向かうなのは。 氷牙も後ろから付いていく。
弘政「あ、あう…」
可愛い女の子であるなのはに密着されて真っ赤になる弘政。 子供らしい活発さと、大人顔負けの頑固さはなのはの特徴とも言える。
それに……いつもは神裂一刀のせいで溜まっていた鬱憤を解消しようとテンションがフォルテッシモしているのが原因とも言える。
そして、順番に並んで行く事30分程…
弘政「ああ…とうとう僕達の番が…」
スタート地点はおよそ地上から高さ60メートル。ゴール地点まではおよそ100メートルと通常の約倍。
幼稚園児たる弘政にとっては恐怖を感じるのは普通の事である。
因みに、氷牙の当てた招待券には子供用のスライダー回数券1日フリーパスの半額割引券が2回分付属されていたのでそれを使って購入していた。
つまり……”何度でも”乗れるのである。
因みに、流石に幼稚園児は直滑りは出来ないので、3人乗りボートを使用して滑る事になった。
係員「では、お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
氷牙「行く。」 なのは「しゅっぱーつ!」 弘政「うう、い、行きます。」
ジャアアアアアアアアアア!!
初速からそれなりのスピードで発進! まずは傾斜35度で直進、そこから大きくカーブを描く。
氷牙「おー…」 なのは「はやいはやーい!」 弘政「あわわわ!?」
そこからまた直進、少ししてから小さなカーブで3回転!
氷牙「回るー。」 なのは「キャハハハハハ」 弘政「わぁぁぁ!?」
そして最後は傾斜が40度まで高くなり、少しのスピードアップと共にゴールまで15メートル程を一直線!
ポーーーン!
氷牙「おお〜。」 なのは「キャッキャッ!」 弘政「おち、落ちる!?」
バッシャアアアアアアアアアン!!
ボートが着水した反動で身体が軽く浮く。 後ろに乗っていた氷牙は反動が少々強く、体重も軽めだったため、頭からプールへダイブ。
なのはと弘政は横転したボートと共に入水した。
氷牙「……ぴゅー」
氷牙は水面に出てくると口に入った水を噴き出す。
なのは「ぷはぁ!」 弘政「ぶはっ!お、溺れるかと、思った。」
ボートについている取っ手を握りしめていて離すのを忘れていた為、中々水面に出られなかった弘政は少々息切れしていた。
なのは「はぁー!楽しかった!」 氷牙「…うん。楽、しい」 弘政「う、うん。確かに、面白かった。」
異様な雰囲気を放っていた割には、それ程のものではなかった。
だが、彼らがもう少し大人であったなら気付いただろう。
ウォータースライダーのゴール地点には目を爛々とギラつかせた男共の視線があったのを…
つまり、なのは達がウォータースライダーのスタート地点に向かう階段と、ゴール地点は直線状になっている。
まぁあれだ。
ウォータースライダーのゴールに居る男共は、女性陣の”ポロリ”を期待した馬鹿共の集まりで…
弘政が感じ取ったウォータースライダーの邪気は、男共のエロオーラだったと言う訳だ。
チャンチャン。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.21 ) |
- 日時: 2012/07/31 14:17:45
- 名前: カイナ
- なのは「あー、楽しかったー!」
少し時間が過ぎて夕暮れ時、なのはは私服に着替えてベンチに座り満面の笑顔を浮かべていた。ちなみに今彼女らがいるのは遊戯室。ゲームセンターのようなゲームの他、温泉らしく卓球台、そしてプールではなく温泉を目的にやってくるお年寄りへのためか将棋盤や囲碁盤まで置かれている、というか一つのコーナーになっている。
士郎「はぁっ!」 男性「うっ!」
卓球台では士郎がプールで知り合った男性と卓球をしており、士郎の放ったスマッシュに男性は反応できず、士郎に得点が入る。
桃子「きゃーっ、士郎さん、かっこいいー!」
桃子が声援を送り、士郎は爽やかな笑みでそれに答えた。
なのは「あはは、相変わらずなの……えっと、弘政君は……」
それを見たなのはは苦笑した後弘政を探して辺りをきょろきょろと見回す。ちなみに氷牙はインベーダーゲームに夢中になっており、美由希は可愛い人形のあるクレーンゲームに挑戦、恭也は外に散歩に出かけている。
男性「これで王手だ」 弘政「……」
そして弘政はお年寄りや中年の男性に混じって将棋を指していた。相手――室内にも関わらず帽子を被っている中年の男性――は意地悪をするような表情でパチンと駒を打つが弘政は対し怯むことなく、むしろ楽しそうな笑みを見せ、しかし目は真剣そのものというように研ぎ澄まされていた。
弘政「ふふ」
笑い声を零し、パチンと音を立てて駒を打ち、相手もまた駒を打つ。傍目には弘政の防戦一方、しかしある局面に来た時だ。
弘政「王手、いや、詰みだ」 男性「!?」
突如弘政が出した言葉、それに男性はぎょっとしたように盤を見る。いつの間にか彼の王は詰み、チェスで言えばチェックメイトの状態になっていた。
男性「ば、馬鹿な……幼稚園児に……」 弘政「子供相手だからって油断しすぎたね。相手を弱いと考えての無意味なかく乱にしかならない、無駄な攻めが多すぎた。毎日打ってるじーちゃんに比べたらまだまだだったよ」
男性が唖然とした様子を見せ、弘政は席を立って得意気に笑いながら返す。
なのは「わー、大人に勝つなんて凄いね。弘政君」 弘政「な、なのはちゃん!? べ、別にそんな、じーちゃんには一回も勝ったことないし……」
そこになのはが目を輝かせながら入り、彼女の褒め言葉を聞いた弘政は顔を赤くして照れたように頬をかく。すると男性がにやにやと笑った。
男性「お、なんだお嬢ちゃん、こいつの彼女か?」 なのは「彼女?」 弘政「ちっ、ちちち違います! な、なのはちゃんはただのお友達です!」 男性「おーおー顔を真っ赤にして。ちょっと待ってな」
男性の言葉になのはが首を傾げると弘政はボッと顔を真っ赤にして首を横に振り否定、しかし男性はにやにやと笑いながらそう言って席を離れ、コーヒー牛乳を二本買ってくると戻ってきた。
男性「ほれ、勝った祝いだ」 弘政「あ、ありがとうございます」 なのは「わー、おじさんありがとう!」 男性「おじ……」
男性が渡してきたコーヒー牛乳を弘政はおずおずと受け取り、なのはの嬉しそうに受け取ってお礼を言うがそのおじさんという発言に男性はショックを受けた様子を見せる。それから二人はさっきなのはが座っていたベンチに戻り、コーヒー牛乳を飲み始めた。
なのは「それにしても、ほんとに凄かったね。大人に勝っちゃうなんて」 弘政「別に、将棋に腕力や体力はあまり関係ないし、必要なのは経験の他、いつでも冷静に盤上を見渡し最善の一手を見抜く判断力や周りに惑わされる事のない集中力だってじーちゃんに教わってたから……経験はまだじーちゃんと指したり詰め将棋をするぐらいしかないけど、集中力なら自信あるから」
なのはの言葉に弘政は恥ずかしそうにうつむきながら、でも楽しそうに微笑みながら呟く。
なのは「そうなんだ。ね、ところでもうすぐお風呂の時間だし、一緒に温泉入ろう! ここの露天風呂ってお星様が綺麗に見えるんだって!」 弘政「い、一緒にってちょっと!?」 なのは「ほらほら、氷牙君も誘って急ごう! 温泉に入って、早く寝て、明日も朝からプールで遊ぼう! なの!」 弘政「たーすーけーてー!」
なのははそう言って右手でえいえいおーとしながら左手で弘政を掴んでずるずると引っ張っていく。それに対し弘政はまた誰かに助けを求めるが、結局誰も助けに来ず氷牙も素直になのはについていく事になり三人は遊戯室を出て行った。
|
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.22 ) |
- 日時: 2012/08/01 19:33:41
- 名前: カイナ
- なのは「温泉気持ちいいね〜」
氷牙「うん」
なのはの満面の笑顔での言葉に氷牙も頷く。ちなみになのはは裸だが幼稚園児ゆえ特に恥らう様子も無く、氷牙も同じ状態だ。
弘政「……」 なのは「どうしたの? 弘政君? やっぱり無理矢理連れてきちゃ迷惑だった?」 弘政「あ、いやそんなわけじゃ……た、ただ、温泉って聞くと嫌な予感がするんだよ……」
何か考え込んでいる状態の弘政になのはがどこかすまなそうな表情で問いかけると彼はやっぱり照れているためかなるべくなのはの方を見ないようにしながらふるふると首を横に振り、考え込む様子で呟く。
なのは「嫌な予感?」 弘政「う、うん……なんだろこれ? 僕は温泉に来たのはこれが初めてのはずなのに……」
なのはの疑問の声に弘政はこくんと頷く。と彼の頭に何かがフラッシュバックし、彼は頭を押さえ顔がお湯につかりそうなくらいにかがみこんだ。
弘政「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 なのは「ひ、弘政君!?」 弘政「違うんです―――――先輩俺は被害者なんです―――先輩の言うとおり事故なんです悪いのは―――――と――――ですだから処刑だけは勘弁してください許してください――――そんなに顔を真っ赤にして違うんだ―――も睨まないでお願い話を聞いてこれは誤解なんだ――――頼む誤解をといてくれ短いお付き合いでしたとか言うな俺はまだ死にたくない嫌だ処刑は嫌だ……」 なのは「弘政君!? 弘政くーん!!??」 弘政「はっ!?」
弘政は頭を押さえて尋常じゃないぐらいガクガクと恐怖に震えながら何か呟き出し、なのはが必死に呼びかけると彼は正気を取り戻したように顔を上げる。
弘政「あ、あれ?……僕、一体何があったの?」 なのは「大丈夫なの弘政君!? 顔が真っ青だしなんか尋常じゃないぐらい震えてたの!!」 弘政「え? あれ?……なんか、変な事を思い出したような?……まあ、大丈夫だよきっと。温まったら治ると思う」
弘政が呆然としたような表情を見せるとなのはが心配そうな声を出し、弘政はう〜んと考え込む様子を見せた後にこっと微笑んで続ける。
なのは「う、う〜ん……まあ、本人がそういうなら、大丈夫かな?……」
それになのはは引きつった笑みでそう言うのが精一杯だった。
それから彼らは温泉を出ると高町家と合流。今日泊まる部屋にやってくるとなのはが一番に「今日は弘政君と氷牙君と寝る」と言い出し、氷牙はこくんと一つ頷いて承諾、弘政も照れながらも承諾。三人は布団を三枚敷くと川の書き順で言うと氷牙、なのは、弘政の順に布団に入り、それぞれ眠りについた。
弘政「……ここは?」
気がつくと彼は部屋中真っ青な、例えるならどでかいエレベーターの内部のような場所にいた。
????「ようこそ、ベルベットルームへ」
突然の光景に弘政が混乱している中突如目の前から聞こえる声、それに弘政は前を向く。それでようやく気づいたが彼は今椅子に座っており、目の前にあるのは丸いテーブル。その向こう、弘政と向かい合うように鼻の長いギョロ目の老人が椅子に座っていた。
弘政「うわっ!? オバケ!?」 イゴール「オバ……私の名はイゴール……お久しぶりにございます」 弘政「久しぶり?……僕はあなたみたいな人、知り合いにいないですよ?」
弘政がぎょっとしたように悲鳴を上げると老人――イゴールは僅かにショックを受けたように目を伏せたあと自身の名を名乗り、ぺこりと頭を下げる。しかしその言葉に弘政は不思議そうに首を傾げた。
イゴール「それもそうでしょう……では改めてご説明いたします。ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所……」 弘政「?」 ?????「要するに、異次元空間と考えてくだされば構いません」
イゴールの説明に弘政は首を傾げ、そこにイゴールの隣に立っていた女性――銀色の髪をしており、全身真っ青な服や帽子、ブーツで決めている美女だ――が助け舟を出した。
イゴール「こちらはエリザベス、同じくここの住人だ」 エリザベス「お久しぶり……いえ、お見知りおき下さい」
弘政「どうも……」
イゴールが紹介すると女性――エリザベスは丁寧にお辞儀する。それに弘政も会釈して返した。そしてイゴールは自らの膝に両肘を乗せ、自らの鼻の下で両手を組み少し前かがみになった。
イゴール「今回はご挨拶です。またいずれ、あなたはきっと『力』を必要とする。その時にまたお会いいたしましょう」
その言葉とともに部屋は白い光に飲み込まれ、弘政の目には白い光しか映らなくなった。
???「……君、……政君、朝だよ?」 弘政「ん……」
何者かに揺り起こされ、弘政はそう声を漏らすと目を開ける。その目の前にはなのはがいた。
なのは「おはよ、弘政君」 弘政「……おはよ……」
なのはの朝から元気一杯スマイルに対し弘政はまだ寝ぼけているのか半目になっており、目をごしごしと擦るとようやく覚醒する。と言っても眠そうな雰囲気が消えたくらいで半目はあまり変わらないが。すると彼は首を傾げた。
なのは「どうしたの?」 弘政「いや、なんか変な夢を見たような……ベル、なんたらって」 なのは「ベル? 鈴がどうしたの?」 弘政「ん〜……まあ、大事なことなら思い出すよ。夢の話なんだし」
弘政の言葉になのはが聞き返すが、彼はふっと微笑んでそう言い、布団から起き上がる。
弘政「さてと。じゃ、今日もプールで遊ぶの?」 なのは「うん! あのウォータースライダーにもっかい乗るの!」 弘政「うっ……ま、まあ思ったより怖くなかったし、別にいいよ」
弘政の言葉になのはが元気一杯に微笑んで頷くと彼は本気でそう言っているのかそれとも強がりなのか頷いて返した。
なのは「じゃーお着替えして、早く朝ごはん食べよう!」 弘政「はいはい」
なのはの言葉に弘政も頷き、鞄から着替えを取り出し始めた。
|