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魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜
日時: 2012/06/17 02:47:22
名前: 孝(たか)

アルハザード……遥か昔に大次元震動により滅び、人々から忘れ去られた超科学都市と謳われた世界…


シナプス……天上人(てんじょうびと)が住まい、天使の舞うヴァルハラと謳われし世界…


ペルソナ……ラテン語で「人」・「仮面」を意味するが、遥か太古では「本能」とも言われ、現代では「もう一人の自分」、別人格が具現化した特殊能力を指す。


魔族……人間達には悪魔として認識される存在ではあるが、本来は誇り高く、気高い種族であり、人間とは比べるのもおこがましい程の強大な力を持っている。


魔王……魔族や悪魔を統べる絶対的存在。その魔王にも、「善・悪」が存在する。


天使…天上人、あるいは「神の御使い」と言われる尊き存在。清き心のまま亡くなった者達を極楽浄土へと導く存在と謳われている。


これらは遥か太古の時代に存在し、現代では大昔の空想・偶像・伝承となっている。


だが…それは間違いである。


魔族も…天使も…悪魔も…神も…


人間達に感知出来ていないだけで…


別の次元…

別の世界…

隣り合う世界でありながら、決して近づく事のない。

そんな世界に……存在しているのだから…。


そして…これは…そんな伝承に語られた者達が出会う…

そんな物語…

なのは「魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜……始まります。」

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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.69 )
日時: 2013/02/22 21:39:34
名前: カイナ

それからなのは達や翠屋JFCのメンバーは喫茶翠屋にやってきていた。士郎が勝ったお祝いとしてここの料理をご馳走しているのだ。ちなみになのは達もちゃっかり便乗しており、今回のMVP氷牙は目を輝かせてもぐもぐとケーキを頬張っている。ついでに一刀は流石に野良犬にかけられたオシッコや鳩や鴉におとされた糞をシャワーか何かで落とすため家に帰っている。

??「こんにちはー」
なのは「あ、弘政君」

するとそこに何者かが現れ、その挨拶を聞いたなのはが笑顔でその相手に返す。

なのは「もう薙刀の練習は終わったの?」
弘政「うん。基礎練習は終わったし、まだ必要以上の訓練は許可されてないから。それに無茶しすぎて身体壊したら元も子もないって」

なのはの言葉に弘政はそう返し、なのはもうんうんと頷く。訓練とは身体に負担をかけて肉体を破壊し、それをより力強く再構築していく。それの繰り返しによって強靭な肉体を作っていく行為なのだが必要以上に無茶をしていけば肉体は再構築する暇もなく破壊されていくのみ。それを防ぐためには適度な休息も必要というわけだ。

選手達『ごちそうさまでした!』

するとそこに食事を終えた選手達が唱和で挨拶し、店を出る。と最後に出た士郎が整列している選手達を見て微笑んだ。

士郎「皆、今日はすっげーいい出来だったぞ。来週からまたしっかり練習頑張って、次の大会でも、この調子で勝とうな!」
選手達『はい!』

士郎「じゃ、皆解散。気をつけて帰るんだぞ」
選手達『ありがとうございました!!』

士郎の言葉に選手達はまた唱和で頭を下げ、帰宅したり友達同士でつるんでどこか遊びに行こうと言い出したりと思い思いの行動を取り始める。そして選手の一人とマネージャーがなのは達四人とすれ違った時、なのはは何か気づいたのかでも気のせいかなというように首を傾げる。

弘政「じゃ、僕も帰るよ」
なのは「食べていかないの?」
弘政「帰って詰め将棋したいから」

ここは家から薙刀の道場の通り道だったらしく弘政も帰ろうと言い、なのはが尋ねると弘政は幼稚園からの趣味である詰め将棋をしたいからと返す。といつの間にか店内に戻っていた士郎が翠屋のお菓子持ち帰り用の箱を手に店から出てきた。

士郎「弘政君、これお土産にどうぞ」
弘政「え、いいんですか?」
士郎「なぁに。君のお爺さんやお婆さんには新メニュー開発の際にお世話になってるからね、気にしなくていいよ」
弘政「あ、ありがとうございます……」

士郎は爽やかに笑いながらそう言って弘政に箱を渡し、弘政はぽかーんとしながらお礼を言うとさよならと一声かけて帰り始める。

弘政「新メニュー開発に協力って……何やってるんだろ爺ちゃん婆ちゃん……」

実はただ単に知り合いで集まり新メニュー候補という名目で作られた料理やお菓子を食べながら談笑しているだけということを彼は知らない。まあ美味しいと評判になったものは実際採用になっていることから新メニュー開発といっても間違いではないだろう。

弘政「……あれ?」

すると弘政は目の前をついさっき翠屋にいた人達と同じユニフォームを着た、つまり翠屋JFCの選手男子とマネージャーらしき女子を見つける。それだけなら別にどうということはないが、男子がポケットから取り出したものを見るとぎょっとした目を見せる。青い宝石のような石、それは弘政にとって見覚えがあるというレベルでは済まないものだ。

弘政(ジュエルシード!?)

まさかとは思うが、とにかく弘政はジュエルシードを見た瞬間走り出す。しかし選手男子にジュエルシードと思しき石を渡されたマネージャー女子がそれを受け取る方が早く、その瞬間石が途轍もない輝きを放つ。

弘政「つっ!? な、何!?」

それと同時に突然地面が揺れ始め、弘政は必死にバランスを保つよう両足で立つ。と選手男子とマネージャー女子の二人が光に包まれ、そう思ったら二人の足元がひび割れてなんと巨大な樹が伸び始め二人を包んでいる光を包み込むとどんどん成長していく。

弘政「わああぁぁぁっ!!??」

二人がいた場所を中心に放射線状に伸びていくヒビとそのヒビの下から出てきて急激な勢いで伸びていく木の根や枝。近くにいた弘政もその成長に巻き込まれ、必死に伸びていく木の枝にしがみついた。ちなみに士郎から渡されたお菓子の箱を両手が塞がるためとはいえ口でくわえてでも手放さない辺り根性がある。

それから少し時間が経ち、弘政は樹の成長が落ち着いた隙に樹をよじ登ってとりあえず横に伸びている部分の上に上がり、一息つく。しかし成長の際に結構流されたらしくこの暴走の中心と思われる選手男子とマネージャー女子の姿をすっかり見失ってしまっていた。まあ一応成長に巻き込まれたビルなどの配置からおおよその位置が把握できているのは救いだろう。

弘政「……とりあえず、なのはちゃんに連絡してみるか」

しかし無駄に同い年離れした冷静さや度胸――なおただ単にローテンションなだけとも言う――を持つ事が自慢とも言える弘政。彼はこの状況を打破できる力の持ち主――高町なのはに連絡を取るため最近買ってもらった携帯電話を取り出すのであった。ちなみにアドレスを登録している人以外にはかけられず、それ以外からは着信もしないという子供用携帯であるのは全くの余談だ。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.70 )
日時: 2013/03/05 09:34:43
名前: 孝(たか)

タッタッタッタッタッタ!

弘政からジュエルシードの発動した場所を聞いたなのはは、すぐさま行動を開始していた。

恭也「なのは。どうするつもりだ?」
なのは「なるべく人目につかない様に、高い所から空を飛んで行く!」

誰かに見られては大騒ぎになる事を考慮して飛んで行こうとするなのは。

恭也「なら、俺は地道に走っていくしかないな。なのは!分かっているとは思うが・・・」
なのは「・・・うん。無茶はしない。絶対!」

なのはは強い意志を持って、恭也に頷き返す。
恭也もそれを見て頷き返す。

恭也「・・・ガングニール。俺では、魔法を使う事は出来ないのか?」

恭也は懐にしまっていたガングニールを取り出して聞く。
流石に怪我が治ったばかりの氷牙を行かせる訳にはいかない。

だが、ジュエルシードに一番詳しいガングニールを氷牙から借り受け、今に至る。

『・・・・・・恭也殿の持つ魔力は、一般の人間が持つ者と変わりません。故に、魔法を行使する程の量はありません。』
恭也「そうか・・・。無い物ねだりしている場合ではないな。急ぐぞ!」
『ならば、私が恭也殿の足となりましょう。モードチェンジ・スライダーフォーム』

恭也がガングニールを懐に戻そうとする前に、ガングニールは自身を展開してその形態を大きく変える。

それは、ダッシュボードの形態だった。

『お乗りください。現場まで、最高速で参りますぞ!』
恭也「もはや何も突っ込まん。頼むぞ。ガングニール!」

そう言って、恭也はガングニール・SFに飛び乗り、片膝をついてしゃがむような体制になる。

それを確認すると、不可視機能を発動させ、一般人からは見えない様にすると、トップスピードでなのはを追う為大空を舞うのであった。


一方その頃・・・

一刀「ふふふ・・・あの大樹。なのはがディバイン・バスターを習得する切っ掛けの話か?と言う事は、今は大体3話辺り・・・もうすぐだ。もうすぐあの子も現れる。なのはとあの子も、俺のハーレムにしてやるぜ!・・・・・・ふふふ・・・あーーーはっはっはっはっはっは!!」

カラス「アホゥ・・・アホゥ!」ブリ!

ひゅ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・ベチャ

一刀「ぶーーーーーーーーーーーペペッペッ!オウエ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

邪な事を口にして馬鹿みたいに高笑いしていると、まるで狙っていたかのようにカラスが上空を通り過ぎる寸前。

まるでお約束の様に糞を落とし、一刀の口にジャストスポット。

一刀はカラスの糞を飲んでしまった。

天罰覿面。悪党に幸福無しである。


弘政「う〜〜〜ん。どうしよう?」

弘政はなのはに連絡を終えると、自分にも何かできないものかと今居る枝から大樹を観察している。

これと言って怪物の様に暴れる事はない様だが、異常なスピードで成長している様だ。
このままでは、街が丸ごとこの大樹に飲み込まれかねない。

弘政「う〜〜〜〜ん・・・火でも付けて見る?ダメだね。そんな事したら大火事になるし・・・地道に切る?ダメだ。何年掛るか分からない。」

持てる知識でなんとか打開策を練ろうとするが、やはり解決策は浮かばない。

なのは「弘政君!!」
弘政「あ、なのはちゃん。良かった。無事に来れたんだね?」
なのは「うん。ここは危ないから、掴まって!すぐに安全な所に降ろしてあげるから!」

異様なスピードで成長し続けている為、気を抜くと落ちそうになっていたのだ。

手を伸ばすなのはの手を掴んで、すぐにその場から離脱、近くのビルに着地する2人。

キィィィィィィィィィィィィンッ!!!

そこへ、なのは達の許へ高速で接近する物体が現れた。

なのは「お、お兄ちゃん!?」

そう、ガングニールに乗った恭也だ。

恭也「なのは。弘政君。無事か!」
弘政「あ、はい。僕は大丈夫です。でも、街が大変な事に・・・」

三人はビルの屋上から街を見下ろす。大樹の成長のせいで建物が倒壊し、道路も滅茶苦茶である。

ユーノ「これが、人間が発動させてしまった場合の被害です。強い想いを持った者が、願いを込めて発動させたとき・・・ジュエルシードは、一番強い力を発揮するから」

まだ魔力が回復しきっていないユーノは、フェレットモードでなのはの肩に乗っている。

なのは「ユーノ君。こういう時は、どうすればいいの?」

なのはは真剣な表情でユーノに問いかける。

ユーノ「う、うん。封印するには接近しないとダメなんだ。先ずは、元となっている部分を見つけないと・・・でも、これだけ広範囲に広がっていたら、どうやって見つければ・・・」
弘政「あ、それなら。あそこ。あの、一番太くて丸くなった所に、ジュエルシードがある筈だよ。」

しかし、弘政の一言ですぐにそれは解決した。

弘政「僕は邪魔にしかならないから、この位しかできないけど・・・」
なのは「ううん!ありがとう!弘政君のおかげで、なんとかなりそうだよ!私、行ってくるね!」
弘政「気を付けてね。なのはちゃん!」

恭也「俺も行こう。もしもの事があったら大変だからな。ガングニール。もう一度頼む。」
『心得ております。』

「「え!?それ、ガングニールなの!?」」

いままで六角板の状態しか見た事のない2人にしてみれば当然の反応と言えよう。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.71 )
日時: 2013/03/26 13:33:45
名前: カイナ

ガングニール[はい。私が変形した姿です]

なのは「ん〜っと……とりあえず、すぐジュエルシードを封印するね!」
ユーノ[ここからじゃ無理だよ! 近くに行かなきゃ!]

六角板の形しか知らないガングニールのダッシュボードの形となっている状態になのはは少し沈黙した後とりあえず後でいっかとでも思ったのかジュエルシードを封印するねと言って杖を構え、それに対しユーノはここからじゃ封印出来ない、近くに行かなきゃ無理だと叫ぶ。

なのは「出来るよ、大丈夫!……そうだよね、レイジングハート」

ユーノの言葉になのはが力強く返し、レイジングハートを見つめる。

レイジングハート[ceiling mode set up]

それに対しレイジングハートはただそう言い、それと共に杖が伸び、先端の金色の部分が鋭いイメージを思わせる形に変化。そして杖の先、金色の部分との付け根が開いたと思うと真っ白い光の羽が姿を現した。

なのは「行って! 捕まえて!!」

なのはの叫びと共に杖の先部分を紫色で縁取られた白い文字がくるくると円状に回り始め、杖の先に白い光が収束していく。

弘政「うわぁっ!?」

直後まるで大砲から砲弾が発射されたようなドゴォンという音と共にその光が光線となって飛んでいき、さきほど弘政が指し示した樹の方目掛けて一直線に飛んでいく。

レイジングハート[stand by ready]
なのは「リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアル]!!」

レイジングハートの声を聞いたなのはが詠唱の言葉を口から紡ぎ出し、レイジングハート先端の金色の部分が淡いピンク色に光りだす。

なのは「封印!!!」

そしてなのはが叫んだ瞬間さっきの光線とは比べ物にならない勢いの光線がレイジングハートから発射、さっき光線が飛んだ樹に勢いよくぶち当たる。

レイジングハート[ceiling]

レイジングハートの呟きの後、街中がピンク色の光に包まれた。



なのは「いろんな人に、迷惑かけちゃったね……」

弘政「え?」
ユーノ「何言ってんだ! なのははちゃんとやってくれてるよ!」

ビルの上から夕日の照らす街中を見回しながらなのはは悲しそうな表情と声で呟き、それに弘政が声を漏らすとユーノが叫ぶ。

なのは「私、気付いてたんだ。あの子が持ってるの……でも、私、気のせいだって思って……」

なのははそう言うとうずくまる。

弘政「なのはちゃん……」

いつも元気ななのはの元気のない様子に弘政はどうしようというようにおどおどとなり始める。

恭也「失敗することは仕方がないさ。それは恥ずかしいことじゃない」

なのは「お兄ちゃん?」

恭也「だが、失敗することでくじけて立ち上がらない。失敗から何も学ばない。そして、失敗を恐れて何もしない。それが本当に恥ずかしいことじゃないか?」

弘政「恭也さん……」

恭也はお兄さんらしくなのはを元気付け、なのはと弘政は恭也を見上げる。それに恭也は優しげに微笑んだ。

恭也「とりあえず、ここを離れ――誰だ!?」

恭也はそこまで言った瞬間何かに反応したように振り返り、鋭く研ぎ澄まされた目で背後を睨みつけながら鋭い声を放つ。

なのは「お、お兄ちゃん? どうしたの?」
恭也「いや……今、何者かの気配があったような……」
弘政「気配って、ここビルの屋上ですよ? そんなところに人の気配って……」
恭也「そうか……そうだな。すまん、この状況に俺も少し動揺しているのかもしれない……」

突然後ろを見て声を荒げた恭也になのはが目を丸くさせてぱちくりさせていると恭也は静かにそう呟き、その言葉に弘政が首を傾げる。それを聞いた恭也もそうだなと頷き、さっき自分が感じた人の気配らしきものを間近で見た魔法というものにどこか動揺していたための気のせいだと結論づける。

恭也「とりあえずここを離れよう。もし人に見られたら事だからな」
なのは・弘政・ユーノ「「「はい!」」」

それから恭也は改めてここを離れようと言い、それに三人――外見上では現在のところ二人と一匹――が返し、ガングニールも肯定の声を漏らすと全員で姿を隠しつつビルを降りていった。



それから数テンポ置き、さっきまでなのは達がいたビルの屋上に一刀が姿を現す。

一刀「ふ〜、危ない危ない。気づかれるかと思った……しっかしなんで原作に関係ない恭也やあのモブが魔法関係の場面に出てくるんだ? 特にあのモブは何度も何度も……チッ」

実は先ほど恭也が感知した気配は一刀のもの。彼は気配や魔力でばれないよう隠密魔法を使っていたのだがそれが完璧ではなかったのか気配が僅かに漏れ出ていたらしく、恭也はその僅かな気配を感知していたのだ。
一刀は自分の知識にあるこのアニメの原作の流れと今回の騒動の相違点を首を傾げて悩んでおり、特になのはに付きまとう(と彼は思い込んでいる)弘政に対しては舌打ちを叩く。が彼は屋上をすたすたと歩きながらにやりと微笑んだ。

一刀「まあいいか。とりあえず……」

一刀はそう呟くと屋上に寝転がる。そこはちょうど先ほどなのはがうずくまっていたところだった。

一刀「ウェヒヒヒヒ〜♪」

そして一刀はそこを堪能するようにごろごろする。やはり彼はヘンタイであった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.72 )
日時: 2013/03/27 03:00:22
名前: 孝(たか)

第十六話〜それは運命の出会い。なの〜

街を大混乱に陥れた大樹事件から数日が経過し、氷牙も怪我を完治させたある日の事。

美由紀「お〜いユーノくーん!」
ユーノ「あ、はい。何でしょうか?」

未だにフェレットモードのユーノは美由紀に呼ばれて駆け寄る。

美由紀「あは!ん〜人間だとわかっててもやっぱり可愛いねぇ〜」
ユーノ「あ、あはは・・・あ、ちょっそこはダメです!?」

ユーノの正体が人間だとわかっていてもフェレットモードだとやはり可愛い動物にしか見えないのでそう言う風に可愛がってしまうのは人間の性か、それとも女の子の性か・・・。

恭也「なのは〜まだかぁ〜?」
なのは「も、もうちょっと待ってぇ!!」

そんな2人が居るリビングに恭也がやって来てなのはを呼ぶと、呼ばれた本人はもう少し待ってほしいと告げる。

美由紀「あれ?恭ちゃんとなのは、どこかお出かけ?」
恭也「ん?あぁ。なのはと氷牙が、すずかちゃんの家にお呼ばれしてな。」
美由紀「ふ〜〜ん。それで、恭ちゃんは忍さんに会いに行く・・・と?」

そう言ってどことなくジト目で恭也を見る美由紀。

恭也「あ、あぁ。なのは達に付き添いがてら・・・な。」
美由紀「・・・あれ?でも氷牙君は朝から出かけてたんじゃ・・・?」

あぁ、それならと恭也が説明しようとするのと時を同じくして玄関の方から声がした。

氷牙「ただいま。」
久遠「くぅん。おじゃま、します!」

噂をすればなんとやら、氷牙が帰宅してきたのだ。それも、久遠を連れて・・・。

恭也「お帰り氷牙、いらっしゃい久遠。」
美由紀「うわぁ!フェレットモードのユーノ君と、子狐久遠ちゃんのツーショットだぁ!」

久遠が来ると同時に、美由紀はすぐさま久遠も抱きかかえる。

久遠の背にユーノを乗せると、どこからか取り出したカメラと携帯で二匹をひたすら撮影しまくる。

久遠「くぅん?」
ユーノ「あ、あははは・・・」汗

久遠は良くわからないと言う様に首を傾げ、ユーノは美由紀の行動力に呆れを通り越して苦笑するしかなかった。

それから間をおかずに、準備が整ったなのはがリビングにやってきた。

いつものように白いリボンでツインテールを作り、オレンジの服と赤いスカートに黒いニーソックス。
そして荷物の入ったリュックを背負っていた。

恭也「よし。丁度氷牙達も来たし。行くか。そろそろバスも来るころだし・・・」
なのは「はーい。ユーノ君、おいで!」
ユーノ「うん。今行くよ。それじゃぁ美由紀さん。」

なのはに呼ばれ、ユーノは美由紀に断りを入れてからなのはの肩へ移動する。

氷牙「久遠も、行くよ。」
久遠「くぅん!みゆき、またね。」

久遠も、氷牙に呼ばれたので、撮影が終わってからはずっと久遠を抱っこしていた美由紀も心なしか寂しそうにしながらも久遠を降ろす。

美由紀「はーい。またね久遠ちゃん!」
「「「行ってきまーす」」」
美由紀「行ってらっしゃーーい。」

そうして美由紀は三人と二匹を見送るのだった。

歩く事数分・・・バス停につくと弘政が先に待っていたようだ。

なのは「弘政君!ごめん、待たせちゃったかな?」
弘政「ううん。そんな事ないよ。あ、恭也さん、氷牙さんこんにちは!」
恭也「ああ。こんにちは。」
氷牙「ん。」

なのはの一声から始まり、恭也、氷牙とあいさつする。勿論、ユーノや久遠にも忘れずにだ。

弘政「今日は、宜しくお願いします。恭也さん」
恭也「ははは!そんなに畏まらなくても良いさ。」

そうして話していると、バスが来たようだ。

一行はバスに乗り込み、談笑しながら目的地・・・月村家へ向かうのだった。

30分程経過して・・・・この街で1・2を争う?程の豪邸へと到着した一行は、なのはが代表してインターホンを鳴らすのだった。

ピンポーーーン。

待つ事数秒・・・ガチャリと扉が開かれる。

一行を出迎えたのは、薄紫の髪をショートカットにした女性・・・月村家のメイド・ノエルだった。

ノエル「恭也様、なのはお嬢様、氷牙様、弘政様。ようこそ、お出でくださいました。」
恭也「ああ、お招きに預かったよ。ノエル」

彼女の名はノエル。この月村家のメイド長を務めている無口だが綺麗でカッコいいお姉さん。
メイドの鑑らしい。

なのは「こんにちわ〜」
氷牙「こん、にちわ」
弘政「こ、こんにちわ。」
久遠「くぅん!」
ユーノ「きゅっ」

一同は簡単に挨拶して屋内に招かれるのだった。

歩いて数分もすると、テラスに到着する。

そこには、2人の女性と、2人の女の子(すずかとアリサだ)・・・そして、沢山の猫達。

すずか「あ、恭也さん、みんな!」
なのは「すずかちゃん!」
氷牙「すずか、こんにちわ。久遠、連れてきた。」
弘政「こ、こんにちわ、皆さん。」

すずか呼ばれたので挨拶を返すと、ノエルと同じ色の髪を肩下まで伸ばしているメイドに呼ばれる。

ファリン「皆さん、いらっしゃーい」

メイドの名はファリン。すずかの専属メイドであり、明るくて優しいお姉さんであるが・・・ドジっ子なのが偶に傷。

忍「恭也。いらっしゃい」
恭也「ああ。」

忍は立ち上がると恭也の所まで近づくと、お互いにじっと見つめ合うのだった。

月村忍。すずかの姉で、恭也とは高校の時からのクラスメート。
そして、恋人同士である。

ノエル「お茶をお持ちしましょう。何が宜しいですか?」
恭也「お任せするよ。」
なのは「私も、お任せします。」

恭也となのはにとってはいつもの事なので、ノエルのお任せで。

ノエル「氷牙様と、弘政様は・・・?」
氷牙「・・・・・・オレンジ、ペコー?」
弘政「えっと、出来れば日本茶を・・・」

氷牙は以前飲んだ事のあるうろ覚えのお茶の名を、弘政は日本人らしく日本茶を頼んだ。どうやら弘政の口には紅茶はまだ合わない様だ。

ノエル「畏まりました。ファリン」
ファリン「了解です!お姉さま!」

ノエルに呼ばれ、お遊びの敬礼を取りながら返事を返すと、ファリンは子供達の分のお茶を取りに行く事になった。
どうやら2人は姉妹の様だ。

忍「じゃぁ、私と恭也は部屋に居るから。」
ノエル「はい、お持ちします。」

そうして、ノエルとファリンは扉の前でお辞儀をして部屋を出ていく。

なのは「よっこい、しょっと・・・」

なのはは椅子の上でゴロゴロしているちょい太めの猫を抱えると、其処に座ってそのまま猫を膝に乗せる。

氷牙の方は、部屋に入った時から猫が群がり始めていたので、椅子の方ではなく窓側のソファーに腰かけた。
弘政の方も流石に1人だけ女子に混ざる勇気はなかったのか、氷牙と同じようにソファーに腰掛けた。

と言っても、ソファーに座っているだけで5人でテーブルを囲っている事に変わりはない。

アリサ「相変わらずなのはのお兄ちゃんとすずかのお姉ちゃんはラヴラヴだよねぇ」
氷牙「仲が良いのは、良い事だと、思う」

アリサの意見に賛成と述べる氷牙。

すずか「あはは、うん。お姉ちゃん。恭也さんと会ってから、ずっと幸せそうだよ」

それに対して、すずかも自分の事の様に嬉しそうに答える。

そんな風に話していると、リュックの中からユーノが這い出てくる。
そんなユーノは当然フェレット(ネズミの仲間)モード。
青い瞳の虎猫(ハンター)と目が合う。

そして、ジリジリと距離を詰めてきた。
狙われている事に気付いたユーノはダラダラと冷や汗を流すしかできない。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.73 )
日時: 2013/03/27 12:48:08
名前: カイナ

なのは「そういえば、今日は誘ってくれてありがとね」

なのはは少し雑談をした後、今日お茶会に誘ってくれたことに礼を言う。ちなみに氷牙はほのぼのとした表情で猫と遊び、弘政は近づいてきた白猫の頭をうりうりと撫でている。

すずか「いえ、こっちこそ来てくれてありがとう」
アリサ「今日は元気そうね」

なのは「え?」

すずかの柔和な言葉に続いてアリサがそう言い、なのはは驚いたように声を漏らす。

すずか「なのはちゃんと弘政君、最近なんだか少し、元気が無かったから……もし、何か心配事があるなら話してくれないかなって……二人で話してたの」

なのは「すずかちゃん……アリサちゃん……」

すずかの言葉になのはは感動したように目をうるうるさせながら二人の親友の顔を見る。それにアリサはわざとらしく紅茶を飲みながら片目だけを開けてなのはを見返した。

アリサ「ま、当の弘政はあんなだけどね。なのははともかくあっちは心配しすぎたかしら?」

アリサはわざとらしくそう言い、弘政を見る。その弘政は現在頭をうりうりしすぎて怒らせたのか白猫に毛を逆立てて威嚇されている。それになのはも苦笑を漏らした時だった。

ユーノ「キューッ!!!」
なのは「ふえっ!?」

突然聞こえてきたユーノの悲鳴、それになのはは目を丸くして悲鳴の方を見る。

ユーノ「キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、キュッー!!!」
虎子猫「にゃーっ」

そこではユーノが虎猫の子供に追いかけられている光景があった。

なのは「わわっ、ユーノ君!?」
すずか「アイン、駄目だよ!」

それを見たなのはは慌てて立ち上がり、すずかも子猫――アインを叱るように声をかける。

ファリン「は〜い、お待たせしました〜。イチゴミルクティーとオレンジペコーとクリームチーズクッキー、ほうじ茶と羊羹でーす」

そこにちょうどお茶を入れて持ってきたファリンが入室、するとユーノとアインはファリンの周りを走り始めた。

ファリン「え、あ、わ、わわわ〜あ!?」

ファリンは慌てて二匹をかわしつつ踏んづけないようにしながら何故か回転し、何回か回転すると目を回したのか目をぐるぐると渦巻きにしてふらついた。

ファリン「ふぁ、ふああぁ〜あ」

弘政「危ない!」
すずか「ファリン、危ない!」

それを見た弘政が一気に走り出し、すずかも続く。

弘政・すずか「「セ、セーフ……」」

弘政とすずかはファリンの背後に回って彼女を後ろから支えており、二人はほぉっと息を吐く。ちなみにユーノは弘政より数歩遅れて駆け寄ってきたなのはの頭上に避難している。するとファリンははっとしたように目を覚ました。

ファリン「ふわぁ〜! 弘政さんすずかちゃんごめんなさぁ〜い!!」


忍「またやってる……」
ノエル「あの子にも困ったものです」

ファリンの慌てた声に、自室に戻っていた忍が呟き、彼女らにお茶を運んでいたノエルが顔に手を当てて困った様子でそう言った。

それからお茶会の会場は外に移り、四人は丸いテーブルを囲むように設置された椅子に座ってなのは達女子四人は紅茶とクッキー、弘政はほうじ茶と羊羹を堪能していた。その周りでは子猫が氷牙に殺到したり少数は子猫同士で遊んでたりしている。その光景をアリサはさっと眺め回した。

アリサ「しっかし、すずかんちは相変わらず猫天国よね〜」
すずか「えへへ」
なのは「でも、子猫達可愛いよね」
すずか「うん」

すずかはアリサの言葉には照れたように笑い、なのはの言葉には嬉しそうに微笑んだ後寂しそうな目を見せて猫達を見る。

すずか「里親が決まってる子もいるからお別れもしなきゃいけないけど……」
氷牙「……少し、寂しい……」

すずかの言葉を聞いた氷牙も子猫を寂しそうな眼差しで見ながら呟く。

すずか「うん……でも、子猫達が大きくなっていってくれるのは嬉しいよ」
弘政「そうだな」
なのは「うん、そうだね」

すずかは寂しそうな目のまま氷牙の言葉に頷いた後にこっと微笑んでそう言い、それに弘政となのはが頷く。その近くでアインが草むらの方に歩き寄るとその奥から青く光る綺麗な石――ジュエルシードを見つける。とジュエルシードが突然短く青く光った。

なのは(あっ!)
弘政(この感じ!)

その瞬間なのはと弘政はジュエルシードの気配を感知、ユーノも真剣な目を見せた。

ユーノ(なのは! 弘政君!)

なのは(うん!)
弘政(すぐ近くだ!)

ユーノのテレパシーになのはと弘政も頷く。氷牙も子猫達と遊びながらも真剣な目でガングニールに目を向けている。

ユーノ(どうする?)

なのは(えっと……えぇーっと……)

弘政(そうだ! ユーノ君、ジュエルシードの方に走って! 僕となのはちゃんでユーノ君を探しに行くふりをしてここを離れよう!)

ユーノ(それだ!)

ユーノの言葉になのはは親友二人を見ながら困った声を心中で漏らし、そこに弘政がこの場を違和感なく離れさせるアイディアを出し、ユーノもそれに頷くとジュエルシードの方に走っていく。

なのは「あ、あらら〜?」

その次になのはが困ったような声を出して立ち上がる。

アリサ「ユーノどうかしたの?」

なのは「う、うん。何か見つけたのかも……ちょ、ちょっと探してくるね」

すずか「一緒に行こうか?」

弘政「僕が一緒に行くよ」
氷牙「僕も……」

なのは「うん。すずかちゃんとアリサちゃんは待ってて。すぐ戻ってくるから」

なのはの言葉に心配そうな声を出したすずかを合図に弘政と氷牙がそう言い、なのははそれに頷くとすずかとアリサには待っててと言い、三人はその場を離れユーノを追いかけていった。
その間にも、アインは草むらを書き分けてジュエルシードに近づき、それに興味を持ったように銜えようと口を近づける。そしてアインがジュエルシードに触れた瞬間、青い光がアインを包み込んだ。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.74 )
日時: 2013/03/27 17:07:37
名前: 孝(たか)

タッタッタッタッ・・・

駆けだす事数瞬。

なのは達はジュエルシードが発動した事に気付いた。

氷牙「・・・!」
弘政「発動した!このままじゃ、月村さん達に被害が!?」
なのは「ユ、ユーノ君!こういう時は、どうしたら!?」
ユーノ「すぐに結界を張ります!」

ユーノは目を閉じて集中すると、月村家周辺一帯に結界を張る。
同時に、結界で覆われた世界は色褪せる。

ユーノ「・・・ふぅ。これで、結界の中と外で時間の進行がずれた筈です。」
なのは「これって・・・ユーノ君と動物病院で再会した時の・・・」

なのはは、魔法に出会う切っ掛けのあの日の夜の事を思い出していた。

すると、近くの茂みでミシミシと木の葉がざわめく音が聞こえてきたため、そちらに視線を向ける一同・・・そこに・・・・・・。

『に”ゃあぉ〜〜』

見上げる程に大きな子猫という矛盾した存在を認識した。


『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』
氷牙「可愛い。」

なのは・弘政・ユーノは子猫のあまりの大きさに目を点にして呆けていた。
氷牙は巨大な子猫を見てもいつもと変わらぬ様子だった。

なのは「・・・・・・・・・・・・はっ!あ、あれは・・・何?」
弘政「・・・・・・・・・っ!?えっと・・・月村さん家の子?猫・・・なの、かな?」
ユーノ「・・・・・・た、多分・・・あの子猫の”大きくなりたい”って願いを、ただしく叶えたんじゃない・・・かな?」

ピッタリ30秒程呆けていたがどうにか正気を取り戻して状況を整理する。

弘政「そ、そっか・・・」
ユーノ「でも、このままじゃ危険だから早く元に戻さないと!」
なのは「そ、そうだね。流石にあのサイズだと、すずかちゃん困っちゃうだろうし・・・」

そうして一行は巨大子猫に視線を戻す。

氷牙「しゅっぱ〜〜つ」

そこには巨大子猫の頭に乗り、すずか達の居るであろう中庭の方を指差す氷牙を視界に収めた。

「「「・・・・・・なにやってるんですかああああああああああああ!!?!?!」」」

一斉に氷牙にツッコミを入れる。

氷牙「うん?すずかとアリサ、久遠にもこの子を見せに行く。きっと喜ぶ!」

にへら〜と無邪気な笑顔を向ける氷牙だった。

それから結界内で20分程経過する。

もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ・・・
もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ・・・
もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ・・・
もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ・・・


アレからなんとか氷牙を説得して、子猫を元に戻そうとしたのだがせめて巨大子猫をもふもふしたいと上目遣いで訴えてくるので仕方なく少しだけ時間を取ると聞くと、心の底から堪能しようと全身全霊で件の巨大子猫のアインに身体全体を使って抱きつく氷牙だった。

氷牙「もふもふ・・・むふぅ」
『みゃぁぁぉ〜』

この時の氷牙は今までで一番の良い笑顔だったと、後に語られる事になるとは、この時の一同には知る由も無かったのだった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.75 )
日時: 2013/05/15 21:36:01
名前: カイナ

それから二十分程度時間が経ち、ユーノがふぅと息を吐く。

ユーノ「もうそろそろいいんじゃないかな?」

なのは・氷牙・弘政「「「えぇ〜っ」」」

ユーノの言葉になのは、氷牙、弘政が残念そうな声を漏らす。氷牙のやっているもふもふの誘惑を見たなのはと弘政も五分程度で我慢できずにアインに特攻、共にもふもふを堪能しておりユーノはその笑みを引きつかせる。

ユーノ「なのは〜」
なのは「……はぁ〜い」

ユーノの言葉になのはは渋々アインから下り、弘政も氷牙を連れてその後に続く。そしてなのははユーノの横に立つと懐からレイジングハートの赤い珠を取り出した。

なのは「レイジングハー――」

なのはがレイジングハートを展開しようとしたその瞬間、突如アインを黄色い弾丸が襲いアインは悲鳴を上げる。

弘政「なんだ!?」

黄色い弾丸の飛んできた方向を弘政がいち早く見る。その視線の先にある電柱の上には黒い服にマントを纏った、金色の髪をツインテールにし寂しそうな目をした少女が立っていた。その手には先端が黒い斧のようになり、黄色い珠がつけられている杖が握られている。

????「バルディッシュ……フォトンランサー、連撃」

金髪の少女の呟きと共に杖の先に黄色い光が集まり、そこから放たれるいくつもの光弾がアインを襲う。

ユーノ「なっ!? 魔法の光……そんな……」
なのは「はっ! レイジングハート、お願い!」
レイジングハート[Stand by ready set up!]

ユーノは信じられないとばかりに呟き、なのはははっと我に返るとレイジングハートに語り掛けレイジングハートもそう言う。そしてなのははレイジングハートから発された光に包まれ、その光が止んだ時彼女は聖祥小学校の制服によく似たバリアジャケットに身を包み杖状態となったレイジングハートを構えていた。

なのは「弘政君、氷牙君、アインちゃんの方に走って!」
弘政「う、うん!」

なのはの言葉に弘政は頷いて氷牙の手を引きアインの方に走り、なのはも魔法で空を飛んでアインの上に着地すると少女の方に向けて杖を構える。と杖から展開した魔法の壁が光弾を防いだ。

????「魔導師……」

少女は光弾を防がれたのを見てそう呟くと冷静にアインの足元目掛けて光弾を放ち、その爆発にアインは「にゃぁお〜ん」と悲鳴を上げながら倒れアインの上に立っていたなのはも一緒に倒れそうになりながらしかし魔法で空を飛び、アインを守るように着地すると杖を構え直す。その隙にユーノと弘政、氷牙もなのはの邪魔にならないよう近くの草むらに隠れた。

ユーノ(そろそろ驚かなくなってきたけど、僕がなのはに教えることはもう何もないのかも……)
弘政(……)

ユーノは草むらに隠れながら心中で呟き、弘政はどこか悔しそうな表情を見せていた。と、なのはの前斜め上に伸びている木の枝にその少女が降り立った。

なのは「あ……」

フェイト「同系の魔導師、ロストロギアの探索者か?……」

なのは「う……」
ユーノ「間違いない、僕と同じ世界の住人……そしてこの子、ジュエルシードの正体を……」

突然接近され、淡々と問いかけられたのに威圧されたのかなのはは言葉を失い、少女を見たユーノはそう呟く。

????「バルディッシュと同系の、インテリジェントデバイス……」

なのは「バル、ディッシュ……」

????「ロストロギア……ジュエルシード」

なのはは少女の呟いた彼女の杖の名前だろう言葉を呟き、少女がそう言うと突然杖の先端が変形、まるで鎌の刃のような造形を作る光の刃が発された。

なのは「うっ……」

????「申し訳ないけど、いただいていきます」

少女はそう言うと光の刃に対し怯えたように動揺するなのはに向かって突進、斬りつけてくる。

弘政「足元を狙ってる! 飛べ!!」
なのは「はっ!」

相手の狙いを察知した弘政が叫び、なのはははっとした表情になると咄嗟に魔法で空を舞う。少女は弘政の方を冷淡な視線でちらりと見、それに彼は一瞬ぎくりとなるが彼女は彼が脅威にならないと一瞬で判断したのか弘政から目を背けてなのはの方を見る。それから彼女は姿勢を低くとって鎌を構え、思いっきりなのは目掛けて振るう。と光の刃が飛び出してひゅんひゅんと回転しながらなのは目掛けて飛んでいった。

なのは「はっ!?」
ユーノ「なのはぁっ!」

それになのはは驚きに目を丸くするがレイジングハートが咄嗟に魔法の壁を張って防御する。

弘政「なのはちゃん! 前方に杖を構えて!!」
なのは「え? ひゃっ!?」

また聞こえてきた弘政の言葉になのはは声を漏らすが、いつの間にか接近してきていた少女に気付くと弘政に言われた通り杖を前方に構えて少女の振り下ろしてきた杖を防御する。

なのは「なんで、なんで急に、こんな……」
????「答えても……多分意味はない」

なのはの問いかけに少女は寂しげな目と冷淡な声で返し、なのはがくっと唸ると二人は一旦離れて距離を取る。そして少女のバルディッシュは光の刃を消して元の形態に戻り、なのはのレイジングハートは先端の金色の部分が鋭いイメージを思わせる形に変化する。そして二人はその先端を互いの相手に突き付けた。

なのは(多分、私と同い年くらい……綺麗な瞳と、綺麗な髪……だけど、この子……)

なのはは少女を見ながら心の中で呟く。その時光弾を足元に受けて倒れて気絶していたのだろうアインが起き上り、なのはの意識がついそっちに向いてしまう。

????「……ごめんね」

少女は誰にも聞こえない声量で呟き、杖の先端に光が集まっていく。

弘政「なのはちゃん! 前!!」
なのは「はっ!?」

弘政がいち早く勘付いて叫ぶがもう遅く、光弾が発射されてなのはに直撃。なのはは爆発に吹っ飛ばされて宙を舞った。

ユーノ・氷牙・弘政「「「なのはぁっ!!!」」」

咄嗟に三人はそっちに向かって走り、ユーノはなのはが落ちてくる地点に辿り着くと地面に魔法を張り、現れた魔法陣がなのはをまるでクッションのように受け止める。

弘政「なのはちゃん! しっかり! なのはちゃん!」
氷牙「なのは……」

弘政が気絶しているなのはを抱きかかえ揺らしながら声を上げ、氷牙も心配そうな表情で見つめる。その間に少女がアインの横に降り立った。

バルディッシュ[ceiling mode set up]

バルディッシュが静かにそう言い先端が180度展開しさらにその先端の根元部分から四本の光の羽のようなものが展開する。

????「捕獲!」

少女がそう言って杖をまるで地面を耕す鍬のように地面に叩き付けるとその先からアインに向かって地面が隆起し、アインを電撃が襲う。その体内から青く光る石――ジュエルシードが姿を現した。

????「ロストロギア、ジュエルシード、シリアル]W……封印」
バルディッシュ[Yes sir]

少女が呟き、バルディッシュを掲げるとバルディッシュは電撃を天空目掛けて放ち、いくつもの光の槍がアイン目掛けて降り注ぎ最後とばかりに光の柱がアインに落ちる。その光が止んだ時アインは元の大きさに戻りその上にはジュエルシードが浮かんでいた。少女はそれをバルディッシュに回収させた後、倒れているなのはと僅かなり身構えている弘政、なのはを守るように立つ氷牙とユーノを一瞥し、しかし何も言わずに踵を返すと歩き去っていく。

それから弘政がなのはを背負って森を抜け、流石に帰りが遅いと心配していたアリサとすずかは気絶しているなのはを見て目を丸くするとすぐにすずかがファリンに連絡を取り、なのはを一室に寝かせる。それから弘政はなんでなのはが気絶したのかをアリサ達に問い質され、弘政は「ユーノを見失って、手分けして探してユーノを見つけた後今度はなのはを探してたら気絶してた」と嘘をつく。なお恭也は何があったのかを察したように腕を組み弘政達を少し厳しさを覗かせる目で見据えていたが流石に今注意するわけにもいかないのか腕を組み厳しい視線で弘政、ユーノ、氷牙、そして気絶しているなのはを貫くのに止めていた。

弘政(僕は、なんて無力なんだ……なのはちゃんがこんなに傷ついてるのに一緒に戦うことも、助けることも出来ないなんて……男として情けない……)

そして弘政はアリサ達に気付かれない程度に拳を握りしめ、歯を噛みしめていた。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.76 )
日時: 2013/05/16 05:18:23
名前: 孝(たか)

それから、太陽が沈み始めて夕日に変わった頃なのはが目を覚ました。

なのははアリサ達にどうして気絶していたのか聞かれ、「よく覚えていない」と嘘をついた。
なのははアリサ達に嘘をついた事で胸を痛め、申し訳ない思いでいっぱいになっていた。

なのは「(”本当の事を言えない”事が、こんなに苦しいとは思わなかった・・・友達・・・なのに。)」
ユーノ「(なのは・・・ごめんよ。僕が、君を巻き込んだせいで、友達に嘘をつかせてしまった・・・本当に、ごめん。)」

なのはに、友達に嘘をつかせてしまった事に同じく心を痛めるユーノ。
謝って済む問題では無いので、敢えて心の中だけでユーノはなのはに謝罪する。

氷牙「・・・・・・・・・(ガングニール。聞こえる?)」
『(はい。どうされました?)』

氷牙はガングニールに念話を繋ぐ。その表情は、あの日・・・”なのはが泣いた日”と同じように、深刻なものだった。

氷牙「(・・・僕の、戦いの記憶を・・・教えて。僕には、それだけの力が・・・”あったんでしょ”?)」
『(っ・・・!)』

ガングニールが息をのむ様に驚く。記憶を失くした事で、漸く平穏を手に入れた氷牙。
その彼が、再び戦う決意をする。それはつまり、戦場に戻ると言う事だ。

あの日・・・アルハザードが氷に閉ざされた日から続く、”終わりの無い闘争”へと、戻ろうと言うのか?

『(で、ですが氷牙様・・・)』
氷牙「(もう、見てるだけは、嫌だ。僕は、傷を治す事が出来る。でも、今の僕、心の傷。治せない。力をちょうだい・・・ううん。一緒に、”戦って”!)」
『(っ!・・・・・・・・・御意に。魔槍ガングニール。氷牙様の思いのままに。私は、その為だけに産まれてきました!今こそ、あの日の誓いを果たしましょう!)』

ガングニールは誓う。氷牙の思いのままに、自分は力を振るうと・・・自分は、その為に産まれてきたと。

その日の夜。

士郎「さて、いい訳を聞こうか?4人共。」

再び高町家に弘政の家族を呼んで、子供達への説教をする事になった。

なのは「ごめん、なさい。」
弘政「え、えと・・・本当は、恭也さんも呼ぼうと思ってたんですけど・・・」

あたふたしながら状況を説明する2人。

ユーノ「ジュエルシードが発動した場所が、森の入口から近くて・・・下手をすればアリサさん達が巻き込まれる可能性があったんです。」

そこへ、ユーノが冷や汗を流しながらも冷静に説明を始める。

爺「それで?」
ユーノ「はい。とりあえず結界を張る事で、周囲への被害を抑えてからガングニールを通じて恭也さんに念話を送ろうとしたんですけど・・・」

弘政の祖父から続きを促され、ユーノは説明を続ける。ユーノは結界を張って被害を最小限に留めてから、ガングニールが念話を送る事で結界の内外で恭也と連絡を取ろうとしていたのだが・・・。

ユーノ「その、今回のジュエルシードは結界を張った直後に発動したんです。それで、出てきたのが・・・レイジングハート。お願い。」

ユーノは言いづらそうに目線を逸らしてレイジングハートに頼む。その時の記録映像を出して貰った。

美由紀「こ、これは・・・」
婆「おやおや、まぁまぁ・・・」
桃子「あらあら・・・」

美由紀はあわあわと映像を凝視し、フルフルと両手を小刻みに震わせ、弘政の祖母と桃子は微笑ましいモノを見る様な表情を取る。

ユーノ「どうやら、今回のジュエルシードは暴走する事無く、すずかさんの飼い猫の・・・多分ですが、”早く大きくなりたい”という願いをある意味正しく叶えたんだと思います。」

レイジングハートの映し出した映像には、体長が7〜8メートルまで肥大化したアインと言う猫が映っていた。
ついでに、氷牙がアインをもふもふし、その誘惑に負けたなのはと弘政の姿もばっちり映っている。

恭也「・・・・・・なる程、これなら俺を呼ばなかった理由が判ったよ。確かに、今までと比べたら危険は少ないな。」

ふぅ。と、苦笑してため息を吐いくと、肩を竦ませて仕方ないと許す恭也。

ユーノ「大体20分程堪能した所で、ジュエルシードを封印しようと言う事になって、なのはに頼んだんですが・・・」

言って、巨大猫アインに電撃の様な光弾が直撃した。発射された方へ視線を向けると、其処に映っていたのは・・・金色の髪の黒装束にマントを羽織、戦斧の様な杖を持った少女だった。

一同はなのはと同じ年頃の少女に目を奪われるのだった。

ユーノ「この杖や衣装。魔法の使い方から、彼女は多分・・・いえ、間違いなく僕と同じ世界の住人だと思います。」

ユーノの説明を聞いて、もう一度少女の戦闘シーンを見る。

士郎「・・・彼女、強いな。恐らく今のなのはでは勝つのは無理だろう。事実、なのはは弘政君がいなければ反応が出来なかった。相当の訓練をしていたに違いない。」

一度の戦闘を見ただけで少女の実力を僅かにだが垣間見る士郎。

なのは「ジュエルシードを集めていると・・・」

ふいになのはが口を開く。

なのは「この子とまた・・・ぶつかっちゃうのかな?」

なのはは悲しそうな表情で漏らす。

なのは「不思議とね、怖くないの。だけど、あの子の目を見てから・・・なんだか、悲しい様な・・・複雑な気持ちになるの。」

それが、今のなのはの本音だった。


同時刻・・・とあるマンションの一室。

なのはを倒した黒の少女は、ソファーに腰掛けるとペットだろうか?オレンジの毛並みを持つ大型の犬?の頭を撫でていた。

??「少し、邪魔が入ったけど・・・大丈夫だったよ。ジュエルシード・・・シリアル]W。いくつかは・・・あの子が、持っているのかな?」

黒の少女は、森で戦った白の少女・・・なのはの事を少しだけ思い出していた。
ペットの方も、何かを感じ取ったのか?心配そうな瞳で少女を見つめる。

??「大丈夫だよ。迷わないから・・・」

少女はペットの頭を撫で続け、スタンドライトに照らされている写真立てを見る。

その写真には、少女と・・・その母親と思われる女性が映っていた。

??「待ってて、母さん。・・・・・・すぐに、帰ります。」

少女は、微笑んでから一言、呟くのだった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.77 )
日時: 2013/05/27 06:25:27
名前: 孝(たか)

開けて翌日早朝。

氷牙は修行の為になのは・ユーノと共に、ユーノと出会ったあの林に来ていた。

なのは「ここなら、簡単には人に見られる事は無いと思うの。」
氷牙「・・・・・・うん。ちょっと薄暗いから、近くまで来ないと分からないね。」

言われ、キョロキョロと辺りを見渡してから返答する。

氷牙「それじゃぁ、ガングニール。戦い方、教えて?」
『畏まりました。ではまず、防御魔法と、それに付随する補助魔法の練習から致しましょう。』

それに対して、氷牙は首を傾げる。

氷牙「・・・素振りとかじゃないの?」
『確かに、武器に慣れるのも戦いの準備の一つですが、今の氷牙様は素人と何も変わりません。ですので、まずは負けない様にする戦い。1対1や、1対多になった場合、恭也殿や士郎殿が駆け付けるまでの時間稼ぎを主眼に置きます。』

いきなり戦って勝てる程、戦いは甘くは無い。
故に、勝てないまでも負けない戦い。時間稼ぎに重きを置き、味方を補助する事で優位に立つ戦法。
後方支援型の訓練である。

氷牙「ん。判った。じゃあ、どうすればいいの?」
『そうですな。まずは・・・』

こうして、早朝5時から6時までの1時間を朝の訓練を魔力運用修行とし、夕方か夜には恭也か士郎の監修の下、筋力・体力面の修行となった。

1時間後・・・

氷牙「堅牢なる守りを!シールド。」

左手を前に突き出し、前方に自分を守れるだけの魔力による盾の壁を出現させる氷牙。

氷牙は魔族の1人と言うだけあり、魔力変換資質・氷結・疾風・電気と3種類のレアスキル(人間個体であれば非常に珍しいが、魔族にとっては珍しくもなんともない。)を持つ。
特に、氷結の資質が高い為かこのシールドの魔法も冷気を帯びている。

シールドに触れた瞬間、それが射撃魔法や砲撃魔法でも、シールドに込めた魔力よりも低ければ早々に凍結され無力化出来る。

近接戦闘を得意とする相手も、迂闊に触れようものなら武器や腕毎凍結させる事だろう。

『それでは、本日はここまでにしましょう。なのは殿もそろそろ終わる頃でしょうな。』

言われ、なのは達の方へ視線を向ける。

なのは「むむむ・・・ほっ!よっ!えい!」

左手を振りまわし、誘導弾を操作するなのは。
誘導弾はなのはの手の動きに合わせて縦横無尽に空を舞い、空中に投げ出された空き缶を何度も空に打ち上げる。

なのは「くっ・・・えい!それ!」
レイハ『43・・・45・・・47・・・49・・・』

レイジングハートは誘導弾が空き缶に当たる回数を数えていき、次で目標の50回目を数えようとして・・・

なのは「ラスト!・・・あ」

スカッ

最後の最後で失敗。

なのは「ん〜〜〜えい!」

ぐぃん!という擬音が聞こえそうな程に直角に近い軌道を描いて空き缶が地面につく前に再び打ち上げ、落下してきた空き缶をキャッチするなのは。

なのは「はふぅ・・・ユーノ君!レイジングハート!どうだった?」
ユーノ「凄いよなのは!まだ魔法に触れて2ヶ月も経ってないのに、これだけ誘導弾を扱えるなんて。やっぱりなのはには才能があるよ!」
レイハ『65点です。空き缶の軌道に乱れが有ります。これからは一定の方向に打ち上げられる様に心がけましょう。』

ユーノはなのはの能力に絶賛し、逆にレイジングハートは辛口評価で答える。・・・が、魔法初心者という点を含めるとそれなりに甘い採点の様だ。

氷牙「なのは、ユーノ、レイジングハート。そろそろ時間。」
なのは「え?あ、本当だ。じゃあ、そろそろ帰ろっか?」

そう言って、一行は自宅へと小走りで帰宅していった。


氷牙となのは、弘政は普通に学校へ行き普通に授業を受け、ユーノはジュエルシードを捜索して1日が過ぎた。
ユーノの報告によると、本日の収穫は無しとの事だった。

その夜、晩御飯前の時間。

今日は恭也が氷牙の修行を見る様で、とりあえずランニングで商店街から自宅を1往復する事で軽く体を温め、腕立て20回、腹筋20回、背筋20回、スクワット20回と筋トレをして、木刀を持って素振り200回。

これで終わりかと思えば違う。とりあえず、今の氷牙がどれだけの体力を持っているかの確認が主な理由である。
氷牙を見ると、うっすらと汗を掻いてはいるがまだまだ疲れていると言う事は無い様だ。

本来なら殆どの体力を使いきってから余計な力が出ない状態での修行をしたかったのだが、思いの外氷牙は体力があるようだ。
やはり、自覚は無くとも魔族であるせいかこの程度ならまだまだ余裕があるようだ。

恭也「じゃぁ氷牙。今から俺はお前に向かってこの木刀を振り下ろす。」
氷牙「?・・・避ければいいの?」

首を傾げながら予想を立てて聞き返す。

恭也「いや。避ける必要はない。振り下ろすと言っても寸止めで絶対に当てはしない。お前がする事は、絶対に目を閉じない事。それだけだ。」
氷牙「目を?」

なんで?とばかりに頭に?を沢山浮かばせる氷牙。

恭也「戦いで重要な事は、決して相手から目を離さない事だ。そうする事で、ある程度だが相手の動きを予想出来るし、相手から攻撃されて目を閉じてしまっては避ける事も出来ない。だから、何があっても相手から目を離さない事、絶対に攻撃に対して目を閉じない事。いいか?」

聞かれ、氷牙はコクリと頷く。
身体の力を抜いて、ジッと恭也の持つ木刀を、その腕を見る。

恭也「うん。今はこの木刀から腕、肩辺りまでを見る事。慣れてきたら、相手の全体を見れるように心がける事だ。それじゃぁ、行くぞ?」

ヒュッ!!

問いかけられた時には既に氷牙の目の前に木刀が来ていた。
ジッと見てはいたが、恭也の動きが速すぎたせいか木刀が目の前に来たとハッキリ認識してから反応が遅れ、ビクリと身体を硬直させていた。

ギリギリで目を閉じはしなかったが、どちらかというと閉じる暇がなかったと言う方が正しかった。
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.78 )
日時: 2013/06/07 09:24:24
名前: 孝(たか)

第一七話〜ここは湯の街、海鳴温泉なの。〜

さて、氷牙となのはが本格的に魔法の練習、戦い方の基礎を学び始めて数日が経過し、連休・・・ゴールデンウィークへと突入!

なのは‐side

あの日・・・以前氷牙達が当てた福引の特賞である温泉がきっかけで、長期連休のある日で家族ぐるみで温泉に行くのが通例となりました。

以前は、私達高町家と氷牙君、弘政君だけでしたが、今回は、アリサちゃんとすずかちゃん達も参加です。

すずかちゃんのところは、お姉さんの忍さんと、メイドのノエルさんとファリンさんが一緒ですが、アリサちゃんのところは御両親が忙しくて、アリサちゃんだけの参加になりました。

アリサちゃんも御両親も寂しそうに、残念そうにしていましたが・・・アリサちゃんのお父さんが、せめてアリサちゃんだけでも友達と楽しんでくるように言うと、少し戸惑っていましたがありがとうと言って、御両親と抱き合っていました。

「この次は、一緒に来れるといいね。」とみんなでアリサちゃんを元気づけて、早速出発です!

side out

ユーノ‐side

・・・ユーノです。今、僕はいつも以上にピンチです。前回は、すずかさんの家で猫に追いかけ回されると言うピンチをなんとか脱しましたが、今回は別の意味でピンチです!

すずか「あはは。猫ちゃん達も可愛いけど、ユーノ君も肌触りとか毛並みがスベスベで可愛いね?」
アリサ「すずか!次は私の番よ!そろそろ変わって!」

フェレットユーノに頬を擦り寄せて可愛がっていると、今度は自分の番だとアリサがすずかに変わってくれと頼む。

すずか「うん、いいよ。はい。アリサちゃん!」
アリサ「ありがとうすずか!」

そう言って、渋る事も無くユーノをアリサに手渡すすずか。

アリサ「可愛い・・・犬や猫も居けど、これはこれで良いわよねぇ」

先程のすずかと同じように頬を擦り寄せるアリサ。いくらフェレットの姿をしているとはいえ、中身はなのは達と同い年の少年である。

可愛い女の子達に頬ずりされて、ドキドキしない筈がない。

[なのは、弘政、氷牙さん!誰でもいいから助けて!]

流石に恥ずかしさが頂点に達したのか、ユーノは三人に向けて念話で助けを求めた。

なのは[にゃはは・・・大丈夫ユーノ君?]
弘政[助けてあげたいけど、無理に引き剥がすのもどうかと思うし・・・]
氷牙[・・・・・・・・・ファイト〜]

三人共早々に諦めた。なのはと弘政は苦笑しながらユーノ達を眺め、氷牙はちゃっかり連れてきた久遠を膝に乗せて撫でながらとりあえず応援して返すしかなかった。

side out

ガングニール‐side

私はガングニール。氷牙様にお仕えする魔槍にございます。
本日、地球の人間界ではゴールデンウィークと言われる長期連休の様です。

普段であれば、士郎殿達高町一家の経営する喫茶翠屋は年中無休なのですが、この様な連休では店員だけにお任せし、御家族で出かける様にしているのだとか。

我々が来る前などは、喫茶翠屋は忙しい時期であり遠出する事は殆どなかったようですが、士郎殿の事故以来は御家族との時間を優先するようになったようです。

以前、氷牙様がお当てになった温泉旅行が切っ掛けなのかは判り兼ねますが、今回も温泉に決めたご様子です。
どうやら、近場にある温泉宿で2泊3日の家族旅行と相成った様で・・・皆さまには氷牙様がお世話になっているので、どうかごゆるりとお体を休めて欲しいものです。

side out

弘政‐side

今日は、なのはちゃん達と一緒に、温泉旅行に行く事になりました。
前回は、なのはちゃんの大胆な行動に振り回されて、いいい、一緒に温泉に浸かったりもしましたが、流石にこの歳になれば一緒に入る事は無いと思いたいです。というか別々でお願いします!恥ずかしいですから!

アレから・・・あの黒い魔法少女の子となのはちゃんが戦ってから数日が経ちました。
あの日から、ジュエルシードは見つかっていませんし、あの子と遭遇する事も無いです。
もしかしたら、彼女が先に見つけて処理しているのかもしれません。

町の人達に被害が無いのは嬉しい事だけど、なんだか胸の辺りがモヤモヤします。
僕に出来る事は多くは無いけど、少しでも力になりたいから・・・前より一層薙刀の練習を一生懸命に頑張っています。

side out

一方その頃・・・

なのは達に意図的に、完全に忘れ去られている変態はと言うと・・・

カララン カララ〜〜ン!

扉を開けると小気味良い鐘の音がなり響く。

神裂「なっのはっちゃーーーん!!愛しの旦那様。一刀がデートのお誘いに来たよ!さぁ!行こう!今すぐ行こう!めくるめく愛の逃避行!」

何から逃げるのか甚だ疑問だ。

店員「すみませんお客様。他のお客様の迷惑となりますので、大声を出さないでください。」

翠屋のレジ担当の店員が、営業スマイルで神裂に注意する。

神裂一刀・・・翠屋のブラックリスト第一位の超問題児。

この店のオーナー&パティシエの娘のなのはに付き纏う10才に満たないストーカーである。
なのは本人が物凄く、本気で嫌がっているのに、それを照れているから素直になれないだけだと聞く耳持たずに自分の都合の良い様にしか聞きとらない迷惑な存在だ。

しかも、女性には素行の良い態度をとるのだが、男性が相手だと途端に態度を翻す。
相手が年上だろうと関係ない。”男性は全て敵”という何とも面倒くさい子供である。

神裂「うるせぇモブ。テメェなんかに用はねぇ。俺が用があるのはなのはちゃんや美由紀さん、桃子さんだけだ。他は消えやがれ。」

男性に声をかけられた途端にこれだ。女性以外は完全無視。全ての女性は自分に惚れている。悪・即・斬ならぬ、男・即・斬である。

店員「恐れ入りますが、オーナー達は今日はお休みですので、ここにはいません。お引き取り下さい。」
神裂「ああ!?ふざけんな!誰がモブの言う事なんか信じるか。俺に断りも無く休むわけねぇだろうが!?」

店員は”一応”神裂がお客という立場である為、丁寧に対応するのだが神裂は聞く耳持たず、まるで自分が世界の中心だと信じて疑わないのだ。

店員「何度申されましても、オーナー達はお休みですので、お会いできません。これ以上、当店の迷惑となるようでしたら、それなりの行動を取らせていただきますが・・・?」

先程まで素晴らしい程の営業スマイルだったが、途端に目を薄目に開くと軽い殺気を醸し出した。

神裂「は。モブ如きが俺の事をどうこう出来ると思ってるのか?身の程を弁えろよモブが!?」

そう言って、神裂は店員に向かって中指だけを立ててkillの意を表す。

店員「・・・・・・そうですか。では、お客様は営業妨害の対象として認可されました。よって、強制的に排除します。」

言うが早いか、ぐわし。と、神裂の顔面にアイアンクローを決める店員。

相手が小学生だろうと、誰が見ても明らかな営業妨害・目上に対しての粗暴すぎる態度。これは流石に御咎め無しと言う訳にはいかない。

神裂「なっ!?この!離しやがれ!?」

神裂はジタバタと暴れ、持ち前の魔力で腕力を底上げして店員の腕を離そうとするが、まるで万力の様な力で行われているアイアンクローには焼け石に水だった。

尤も、真面目に魔法の練習をして居れば全く問題なく振りほどけたであろうが、この馬鹿は神から貰った才能の上に胡坐をかいているだけなので、魔力運用や効率が頗る悪かった。

馬鹿のできる事など、膨大な魔力にモノを言わせた大火力の一撃で相手を屠るだけの一辺倒の戦いで余裕。という”戦闘を嘗め腐っている”素人と何ら変わりないのだ。

自宅に引きこもってオリ主TUEEEEEEEEEEEEEEEな二次創作ばかりしか読んでないので、小手先なんか二の次どころか必要ないとすら思っている。

それなのに”俺最強”とふんぞり返る馬鹿なのだ。

店員「すみませんが、少しだけ持ち場を離れます。」
他の店員一同『ご武運を!』訳:その馬鹿速くなんとかしてくれ。

こうして、翠屋一同の神裂一刀に対する認識は、自分達に仇成す存在とされており、たとえこの馬鹿のニコポ&ナデポを発動しても、三倍の速さで嫌悪感が増す事だろう。

もはや、この馬鹿があり得ないだろうが改心しても、既に手遅れな所まで来ているのだった。

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