Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.79 ) |
- 日時: 2013/06/07 22:33:55
- 名前: カイナ
- それから海鳴温泉へと到着し、さっそく皆は温泉に入る。今の場面は男湯だ。
ユーノ[た、助かったよ弘政……]
男湯の湯船に浸かっている弘政の頭の上に乗っかっているユーノがぐったりとした体勢でそう呟き、弘政も苦笑を漏らす。温泉に入る前、男女に別れる場面でアリサとすずかはユーノをそのままの流れで女湯に連れ込もうとしていたのだが一応ユーノは男性、弘政がどうにか言いくるめてユーノを奪取したのだ。ちなみにすずかはともかくアリサはかなり不満気だったのだがユーノが凄まじく必死に弘政にしがみつき、なのはがまあまあとアリサを落ち着かせたことでどうにか納得させた形になっている。
弘政[まあ、流石に精神的にきついもんね……]
ユーノの言葉に弘政も苦笑しながら返す。ちなみにその横では久遠が備え付けの桶にお湯を入れてその中に入りパシャパシャとお湯を蹴って遊んでおり、氷牙はそれを眺めていた。
弘政「それにしても、じーちゃんとばーちゃんが来れなかったのは残念だなぁ……」
ユーノ[あぁ、何か用事があるんだったっけ?]
弘政[うん。じーちゃんはゲートボールになんか最近新しい仲間が入ったって聞いて出かけていったし、ばーちゃんは今日近所の剣道愛好会の人達と交流試合をするそうだから……]
弘政の言葉を聞いたユーノが念話で問うと弘政も咄嗟に念話で返す。その言葉通り今回の旅行に弘政の祖父――博吉と祖母――雅花は不参加になっていた。
その頃博吉。彼は自分の所属するゲートボールチームに新しいメンバーが入ったという事で久しぶりに練習場であるゲートボール場へとやってきていた。
博吉「へぇ。このガキが新メンバーってわけか」 ????「誰がガキだこのジジイ!」
博吉はにししと笑いながら目の前にいる子供を見てそう言い、それに子供――紅色の髪をおさげにし、目つきの悪い(まあ博吉を睨んでいるため当たり前だが)少女――が口から牙を覗かせながら怒鳴るように返す。と博吉より少し年上らしいお爺さんが穏やかに笑った。
「おいおい博さんや、あんまりヴィータちゃんをからかわないでやってくれ」 博吉「へいへい」 ヴィータ「ふんっ!」
お爺さんの言葉に博吉が悪戯っぽく笑いながら返すとヴィータと呼ばれた少女は怒っていますというようにふんっと博吉から顔を背け、声をかけてきたお爺さんを見る。
ヴィータ「なあダケさん、こいつ本当に強ぇのか?」 「もちろん。わしらのチームが大会で勝ち抜けるのはほとんど博さんの作戦と実力のおかげだからね」 博吉「はっはっは。ダケさん、おだてたって何も出ねえぜ?」
ヴィータの言葉にダケさんと呼ばれたお爺さんは穏やかに笑いながら返し、それを博吉は笑い飛ばすがヴィータはふ〜んと若干怪しむような視線を博吉に向ける。
ヴィータ「なああんた、あたしとゲートボールで勝負しろ!」 博吉「あん? 別にいいが、ゲートボールは団体戦だぞ?」 ヴィータ「あー……えっと……んじゃどっちが早くあがれるかで勝負だ!!」
ヴィータはそう言って博吉にゲートボール勝負を持ち掛け、博吉はくっくっと笑う。
博吉「いいぜ。ダケさん、いいよな?」 「そりゃあ面白い。やってみなよ」
博吉はくっくっと笑いながらダケさんに問いかけ、ダケさんも笑って快諾する。それを聞いたヴィータはスティックを博吉の方に向けた。
ヴィータ「よっしゃ! 覚悟しろよテメエ!」 博吉「へいへい。んじゃ久しぶりにやるか」
ヴィータの牙を覗かせながらの怒号も意に介さず、博吉は軽くそう言いながらマイスティックを肩に担いで開始位置に歩いて行った。
それとほぼ同時刻、こちらは市民体育館の武道場。雅花は近所の剣道愛好会のメンバーと交流試合を行うためここにやってきていた。ちなみに交流試合の後は翠屋で親睦を深めるためお茶会をすることになっていたりする。雅花は自身が所属する薙刀愛好会のメンバーと共に防具を身にまとい剣道愛好会の人達を待っていた。
「申し訳ありません。遅れました」 雅花「いえいえ」
慌てて入ってきた少々年配の女性、彼女の申し訳なさそうな言葉に雅花はにっこりと柔和な笑みを浮かべて返し、その女性は隣に立っている女性――ピンク色の髪をポニーテールにし、背筋がピシッと伸びているためか凛とした雰囲気を見せる――を紹介するように手を向ける。
「雅花さん、こちらシグナムさん。最近従姉妹の家に引っ越してきて、剣道に興味を持ったそうなの」 雅花「そうなの? 私は黒鷹雅花。よろしくね、シグナムさん」 シグナム「あ、はい……」
女性の言葉に雅花が柔和な笑顔で挨拶すると女性――シグナムも少しぎこちなく挨拶を返し、雅花はふふっと笑う。
雅花「ねえ、少しシグナムさんと手合わせをさせてもらってもいいかしら?」 「ええ、いいですよ」 シグナム「え!?」 「皆さん、雅花さんがシグナムさんとお手合わせしたいそうなので、シグナムさんに防具を着せてあげてー」 シグナム「え、あ、あの……」
雅花の言葉に女性が頷くとシグナムは驚いたように声を上げ、雅花を見る。その間に女性はぱんぱんと手を鳴らしながらそう言い、シグナムは困惑しながら剣道メンバーの女性陣に引っ張られていく。そして数分後なすがまま剣道の防具を着けさせられたシグナムは未だ困惑しつつ竹刀を握って、面をつけ薙刀を持っている雅花と対峙する。
シグナム(……す、少しお年を召されているようなのだが……大丈夫なのか?……)
シグナムはお年寄り相手に大丈夫なのだろうかと考えてしまい、その間に試合が開始される。
雅花「はぁっ!」 シグナム「っ!?」
と同時に雅花が振るう薙刀がシグナムの脛を狙い、シグナムは咄嗟に後ろに飛んでその攻撃をかわす。が雅花はそのまま薙刀を振り回しつつシグナムの面を狙ってきた。
雅花「めぇんっ!!!」 シグナム「!?」
先手必勝とばかりに放たれる面打ち。剣道にない脛打ちに動揺し無茶なかわし方をしていたシグナムはその第二打をかわすことも出来ず面に薙刀が突き刺さった。
「面あり!!」
審判の声が響き、雅花は面の向こうで柔和な微笑みを浮かべながらぺこりと頭を下げて開始位置に戻る。
「シグナムさん! 雅花さんは相手の薙刀愛好会一の腕前、油断はしてはいけませんよ」 シグナム(……なるほど)
後ろからかけられる声、それにシグナムは遠慮はいらないと考えて開始位置に戻り、竹刀をまっすぐに構える。
「始めぇっ!!!」
そして審判の掛け声と同時、雅花とシグナムは同時に動いた。
それから少し時間が過ぎ、博吉達のいるゲートボール場。その隅っこではヴィータが完全にぶすくれていた。
博吉「おーい……ったく、いい加減機嫌治せって……」
彼女がぶすくれている理由は博吉とのゲートボール対決に完敗してしまった事なのだが、博吉は完全にぶすくれてしまっているヴィータを持て余していた。
博吉「お前この前ゲートボール始めたばっかなんだろ? だったらあれぐらいできれば充分だっての」 ヴィータ「……うっせー、手加減しやがって……」
博吉のどこか呆れたような言葉にヴィータは完全に子供みたいにぶすくれており、博吉は呆れたようにため息をつくとヴィータをまるで猫でも持ち上げるように持ち上げた。
ヴィータ「てっ、てめえ何しやがる!? 離せてめー!!」 博吉「へいへい。美味い菓子食わせてやるから機嫌治せ」
博吉はそう言ってヴィータを運んでいき、ヴィータも最初はじたばたしていたがやがて諦めたように大人しくなった。
一方翠屋。士郎達がいない店内で雅花達はお茶会をしていた。ちなみに何故か店員は一名外出しているらしい。
雅花「それにしてもシグナムさん、剣道を始めてまだあまり経っていないとおっしゃるのにあそこまでの腕前……でも剣道にない動きをしますし、剣道の前にも何か武道をなさっていたのですか?」 シグナム「えっ!? あ、いえ、その……ま、まあ、その……祖国で少々……」
雅花はお茶とケーキを嗜みながら微笑んでシグナムに問いかけ、その純粋な疑問の言葉にシグナムは一瞬面食らった後少し慌てた様子でそう返し、お茶を一口飲む。
雅花「そうなんですか……ここのケーキは絶品ですし、遠慮せずにどうぞ」 シグナム「は、はい」
雅花は柔和に微笑みながらシグナムにケーキを勧め、彼女もおずおずと自分の前に置かれたケーキにフォークを伸ばす。 なのは達がいない海鳴町でのちょっとした日常。しかしこれもまた近い未来に新たな運命を示す一日となっていく。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.80 ) |
- 日時: 2013/07/04 06:12:44
- 名前: 孝(たか)
- カララン カララーン
店員「いらっしゃいませーって、博吉さん。いらっしゃい・・・そちらの子は?」
神裂を連れだした店員に代わって別の店員がカウンターで待機していると、ヴィータを連れた博吉が入店してきた。
博吉「おう。御苦労さん。いやよ、家のゲートボール仲間に新しく加わったガキでな。機嫌治す為に連れてきたんだよ。」
博吉は簡単に要点だけを説明して、席に連れて行ってもらうよう促す。
店員「あ、そう言えば雅花さんも来てますよ?ご一緒しますか?」 博吉「あん?婆さんがか?」
博吉は偶然にも自分の妻が来ている事に気分を良くする。
店員「なんでも、今日試合をした剣道愛好会に新人さんが入ったそうで・・・歓迎会も兼ねてるそうですよ?」 博吉「なるほどなぁ・・・邪魔する訳にもいかねぇが、挨拶くらいはしておかねぇとな。ほれ、行くぞヴィータ。」
そう言って、未だに猫掴みされているヴィータに声をかける。
ヴィータ「・・・・・・あのよぉ。いい加減降ろせよ!?服伸びるだろ!?」 博吉「おめぇさんが暴れなきゃ良いだけの話だ。」 ヴィータ「ジジイが降ろせば全部解決する事だろうが!?」
うがーーと吼えるヴィータを、飄々とスルーする博吉だった。
店員「はい、あちらの席ですよ。」 博吉「おう。ありがとうな。」
雅花達が居る席を指差され、軽く礼を言いながら向かっていく。 ・・・未だにヴィータを降ろさずに。
博吉「おーい、婆さん。」 雅花「?あらあら。お爺さん。おや?そちらの子は「ヴィータ。何をしてるんだ?」あら?シグナムさん。お知り合い?」
雅花が博吉の捕まえているヴィータの事を聞こうとすると、先にシグナムが反応した。
シグナム「あ、はい。私の仲・・・家族です。」
一瞬仲間と言いかけて辛うじて家族と言い直すシグナム。
ヴィータ「おう。シグナム・・・助けろ」 シグナム「なんでそんな事になっているんだ?いたずらでもしたのか?」
シグナムは分かっていて聞いているのだろう。その証拠に、苦笑というより、呆れの様な表情だ。
ヴィータ「ちげーよ。何度言っても降ろそうとしねぇんだよこの爺さん。」
ゲートボールをしていた広場からここまでおよそ30分近く、両手両足を宙ぶらりんの状態だったのだ。いくらヴィータと言えど、中々に辛い態勢の様だ。
雅花「おやおや・・・お爺さん。ダメですよ?そんなにカラかっては。」 博吉「カッカッカッカ!いやいや、ついつい反応が面白くってよ。ほれ、詫びだ。何でも好きなもん食っていいぜ。」
ずっとからかっていた詫びも込めて、雅花達の席の背後にある席につくと、メニューをヴィータに渡す。
ヴィータ「・・・本当に何でも食っていいのか?」 博吉「おう。男に二言はねぇからな・・・腹壊さねぇ程度に食いな。」
ちょっと遠慮気味にヴィータが聞き返すが、大丈夫だと返されたので「じゃあ遠慮なく」と言ってメニューを見回す。
ヴィータ「じゃぁ、手始めにこれ!”ジャンボシューアイス・桃子エディション”!」 博吉「ん。お〜い。注文いいか?」 店員「はーい。今行きまーす!・・・・・・はい、ご注文をどうぞ。」
呼ばれ、すぐさま店員が注文を取りにくる。
博吉「ん。俺はコーヒーと親子丼の竹。コイツには・・・」
自分の注文を伝えた後、ヴィータに視線を移す博吉。
ヴィータ「えっと・・・この、”ジャンボシューアイス・桃子エディション”って言うのを一つ。」 店員「はい。コーヒーがお1つ。親子丼の竹がお一つ。ジャンボシューアイス・桃子エディションがお一つですね。アイスの種類はバニラ・ストロベリー・メロン・オレンジ・チョコ・ミントがあります。コラボもありますが?」 ヴィータ「コラボ?」
ヴィータが小首を傾げながら聞き返す。
店員「はい。シューアイスの中身を、二種類のアイスで組み合わせる物です。」 ヴィータ「あ、じゃぁ・・・メロンとオレンジのコラボで。」
ヴィータはほんの少し迷ったが、メロンとオレンジのフルーツで組み合わせる事にした。
店員「はい。承りました。少々お待ち下さい!」
言って、店員は早速オーダーを口頭で厨房に伝えながら戻っていく。
注文品が来るまで世間話に花を咲かせる事5分少々・・・
店員「お待たせしました!ジャンボシューアイス・桃子エディションMOコラボです!」
言って、ヴィータの前に置かれたのは・・・通常のシュークリームの3倍はあるまさにジャンボであった。
コッペパンの様にやや横長に作られたシューの片側には、薄くカットされた林檎が耳の様に刺され、一見ウサギの様な形に見えるシューアイスだった。
ヴィータ「お〜〜でっけぇ・・・じゃぁあ早速・・・いただきます!」
お絞りで手を拭いて、合掌し食前の礼儀を取ると、ゆっくり味わう様にかぶりついた。
サク・・・サクサク・・・!?
サクサクとしたシューを味わうと、唐突にメロンアイスの程良い甘みが口の中に広がる。
こぼれない程度にやや硬め・・・ジェラート状に作られたアイスの優しい味わい。
サク・・・ジュワ・・・トロリ・・・ペロン。
そのまま食べ進めるヴィータ。奥に行くほどアイスの量が増え、端に向かう程徐々に少なくなるアイス。 ジェラート状の為、ゆっくりと倒れそうになる出てきたアイスを舐める。
6分程かけて味わって食べたアイスの余韻に浸るヴィータ。
そして・・・
ヴィータ「ギガウマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
突如[クワッ]と目を見開くと、シューアイスに対する率直な感想を叫ぶのだった。
シグナム「落ち付け」
ゴッ!
少々恥ずかしさで顔を赤くしたシグナムがヴィータに拳骨を食らわせて黙らせるのだった。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.81 ) |
- 日時: 2013/07/09 23:22:50
- 名前: カイナ
- ヴィータ「ふぃ〜食った食ったー」
少し時間が過ぎてヴィータは満足そうに笑いながらお腹をぽんぽんと叩く。あれからヴィータはこの小さな身体のどこに入るとツッコまれそうな量のお菓子を注文、その全てを綺麗さっぱり平らげたのだ。
シグナム「……ひ、博吉殿、支払いは大丈夫なのでしょうか?」 博吉「こんくらい屁でもねえっての」
流石に心配になったのだろうシグナムの冷や汗を流しながらの言葉に博吉はかっかっと笑いながらそう言い、立ち上がる。
博吉「うっし。飯も終わったことだし帰るとすっか」 雅花「そうですね」
博吉がそう言うと雅花も立ち上がり、満足そうになんかトリップしているヴィータを除いた面々も立ち上がる。
博吉「おらいくぞ」 ヴィータ「ふにゃっ!?」
そう言って博吉は再びヴィータを猫みたいに持ち上げる。
ヴィータ「て、てめー何しやがる!?」 博吉「あー……あれだ。満腹で動けないだろうから運んでやろうって俺様の優しい心持ちだ」 ヴィータ「分かりやすすぎる嘘ついてんじゃねー!!!」
ヴィータの怒鳴り声に博吉は明らかに分かりやすい嘘をつき、それにヴィータは再び目を三角にして怒り出しじたばたと暴れるが博吉は気にする様子もなくレジに行って利き腕ではないはずの左手で財布を取り出すと片手で器用に財布を開き金を払う。
博吉「さーて帰るか。ヴィータ、お前家どこだ? ついでに送ってってやるよ」 ヴィータ「いらねーっての! 下ろせー!!」
二人はそうコントをしながら店を出ていき、雅花達もくすくすと笑いながらその後に続く。
一刀「チッ、あのモブこの俺に逆らうなんてふざけやがって……」
その頃翠屋前。一刀は店員に酷い目に合わされて路地裏に放置されていたが不屈の変態根性で復活、再び翠屋へと向かっていた。その時丁度翠屋の入り口ドアが開き、一人の男性が少女をまるで猫みたいに掴みあげて翠屋から出てくる。その赤毛の少女の姿を見た瞬間一刀の身体がぴしっと固まった。
一刀(あ、あれは、あれは……間違いない!!!)
一刀の頭の中に一つの記憶が組み上がる。今男性に掴みあげられている少女こそ彼の転生後の目的であるハーレムメンバーの一人――ヴィータ。
一刀(そうか、ヴィータちゃんはあのジジイに捕まっているわけだな!!! つまりここで俺がかっこよく助けてやればヴィータちゃんは俺の虜!!!)
一刀は腐った頭でそんな妄想を繰り広げ、近くにあった鉄パイプを掴みあげると自分の腕力を魔力で増幅させて博吉に襲いかかった。
一刀「その子を離しやがれこのジジイイイイィィィィィッ!!!」
博吉「アン?」
その言葉と共に振り下ろされる鉄パイプ、右手にヴィータを抱えている博吉は半目でその方を見る。少し年を取っている男性ならば受けてしまっては場合によっては致命傷ともなりうる、それを見たヴィータとシグナムは目を見開き二人は咄嗟にヴィータは暴れもがき、シグナムは持っていた竹刀を手にやる。
博吉「っと」
一刀「なぁっ!?」
しかし博吉はなんと左手一本で軽く鉄パイプを受け止め、ヴィータを離して身体をそっちに向ける。
博吉「せいやぁっ!!!」
直後彼の足から鉄パイプ目掛けて放たれるハイキック。軌道すら見えないほどの速さで放たれたそれは鉄パイプを綺麗に曲げてしまった。
博吉「……うーん、俺も腕が落ちたか? 現役ならこんなもん苦も無くへし折れたってのに……年は取りたくねえなぁ……」
一刀「え、え?……」
しかし博吉は不満そうにそう呟き、一刀は気づかれないように少しとはいえ魔力で強化していた鉄パイプを平然と曲げられた事に唖然とした様子を見せる。
ヴィータ「オイコラテメエ!! よくもジジイに手ぇ出しやがったな!!!」 一刀「え!? あ、いや、これは……」
唖然としている一刀に怒り心頭のヴィータがずかずかずかと機嫌最悪とばかりの様子で詰め寄り、一刀は混乱しつつも引きつった笑みを見せる。とヴィータの頭に青筋が浮かんだ。
ヴィータ「なんっかむかつくな……」
そう呟き、彼女はゲートボールのスティックを取り出し、振りかぶる。
ヴィータ「ぶっ飛べぇっ!!!」
一刀「え? ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そう叫んでスティックをフルスイング。その一撃に一刀は吹っ飛び、空に消えて行って星となった。
博吉「おーおー流石ギャグ補正は違うなーおい」 ヴィータ「ぎゃぐほせー? 何訳分かんねーこと言ってんだ?」 博吉「あん? あー……なんでだろうな?」
博吉の言葉にヴィータは首を傾げながらメタ発言にツッコミを入れ、それを聞いた博吉も自分でも分からないというように首を傾げる。
博吉「ま、なんにせよだ」 ヴィータ「ん?」
と、彼はそのメタ発言についての話題をそこで唐突に打ち切り、ヴィータも首を傾げる。と彼はにっと人当たりの良い笑みを浮かべた。
博吉「助けてくれてありがとよ、ヴィータ」
そう言ってヴィータの頭に手を当て、まるで孫を褒めるように笑顔で頭を撫でる。すると突然ヴィータの顔が真っ赤に染まり上がり彼女は咄嗟に博吉の手を払うと数歩後ろに下がる。
ヴィータ「バ、ババババカ野郎! 別にお前のためじゃねーよ! あ、あれだ! お菓子奢ってくれたお礼だよ!!」 博吉「おーそうかそうか。んじゃまた助けてもらうためにも定期的にお菓子奢らねーとな」
ヴィータの言葉に博吉はからかうように笑いながら返し、それにヴィータはまたカーッと顔を赤くする。
ヴィータ「ふ、ふんっ! まあ、ゲートボールの練習後になら考えてやるよ!! じゃあな、博吉!!」
ヴィータはそう言うが早いか逃げるようにその場を走り去り、シグナムはそれを見ると雅花や剣道仲間の方を向いて頭を下げる。
シグナム「皆さん、申し訳ありませんが私もヴィータを追うので」 雅花「あらそう? また試合しましょうね? ヴィータちゃんを誘ってのお茶でも歓迎よ?」 シグナム「はい、またいずれ。では失礼いたします」
シグナムの言葉に雅花は柔和に微笑みながらそう返し、シグナムは礼儀正しく一礼するとさっきヴィータが走り去っていった方に走っていく。
博吉「んじゃ、俺も帰るわ」 雅花「私はこれから薙刀の練習があるので」 博吉「おう。んじゃな」
博吉の言葉に雅花はそう返し、博吉はそうとだけ言うとひらひらと手を振って家に帰っていき、雅花達は再び練習場に向かっていった。
ヴィータ「ふっざけやがってあのジジイ! せっかく助けてやったってのに!!」 シグナム「まあ落ち着け」
ヴィータの顔を赤くしながらの言葉にシグナムは呆れたように落ち着かせる。
???「ん? どないしたん?」 ????「どうしたの?」
と、そこにそんな声が聞こえ二人ははっと声の方を向く。そこには車いすに乗った少女とそれを押す金髪の綺麗な女性、そしてその二人に付き従う青い毛並みの、狼と言っても過言ではない大きさの犬が立っていた。
ヴィータ「はやて、シャマル、ザフィーラ! な、なんでもねーよ!」 はやて「たしかヴィータはゲートボールに、シグナムは剣道に行ったんやろ?」 シグナム「ええ。そこで知り合った方と少し食事をしていたんですが、その知り合いがヴィータがゲートボールで意気投合した方のお知り合いだったそうで……」 ヴィータ「いっ、意気投合なんてしてねえよあんなジジイと!!」
ヴィータがその三人――二人と一匹と言った方がいいかもしれないが――の名前を呼んだ後ふんっと顔を逸らして続け、車いすの少女――はやてが首を傾げて尋ねるとシグナムが説明、その一言を聞いたヴィータが顔を赤くして否定するとはやてはにやにやと笑った。
はやて「はは〜ん……ヴィータって実は年上好きなんやな〜?」 ヴィータ「なぁっ!!??」
はやてのにやにや笑いでの言葉にヴィータは絶句。と金髪の女性――シャマルがくすくすと笑いながら口を開いた。
シャマル「まあまあはやてちゃん。お話は帰ってからにしましょう」 はやて「せやなー。帰ってからじっくり聞かせてもらうわー」 ヴィータ「だから違うっつーの!! そ、それよりあいつはどうしたんだよ!?」 はやて「あぁ、兄ぃやんやったら昼寝しよる。昨日遅くまで本読んどったからなぁ……で、話を逸らそうとしても無駄やで〜?」 ヴィータ「だーかーらー!!」
シャマルの言葉にはやてはとりあえず賛同し、ヴィータの方を見てまたもにやにや笑いながらそう言い、それをヴィータは必死で否定。彼女らは揃って歩き出しながらはやてとヴィータはまた言い合いを始め、シグナムは犬――ザフィーラの顔を見て苦笑いを漏らし、ザフィーラも気のせいかそれに応えるように首を傾げて見せた。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.82 ) |
- 日時: 2013/07/15 08:52:00
- 名前: カイナ
- さてさて一方海鳴温泉。温泉から上がった弘政、ユーノ、氷牙、久遠、なのは、アリサ、すずかは旅館内を探検していた。ちなみにユーノは流れのまま弘政の頭に、久遠は氷牙の肩に足を乗せて、身体を頭に預け得る形だ。
???「はっあーいっ、おチビちゃん達っ!」
そこに聞こえてきた声に五人は足を止めて声の方を向く。そこにはオレンジ色の髪を腰ほどまで伸ばし、浴衣から胸の谷間を覗かせ口からは牙のような歯を見せている美女が立っていた。彼女はニコニコと微笑みながらなのはの横に歩き寄る。
???「ふんふん、君達かねぇ? うちの子をあれしてくれちゃってるのは?」
女性はそう言いながらなのはと弘政に目線を合わせるように屈みこみ、なのはは怯んだように僅かに下がり、弘政は胸の谷間が見える視点になったためつい顔を赤くして目を逸らしてしまう。
なのは「え、え?」 ???「あんま強そうでも、かしこそうでもないし・・・ただのガキンチョに見えるんだけどなぁ・・・ってあら?」
訳が分からないように声を漏らすなのはに対し女性はそう言い、次に顔を赤くして目を逸らしている弘政に気付く。
???「ふふ・・・おやおやぁ〜?真っ赤にしちゃって。大人だねぇ、ぼ・くぅ?」 弘政「・・・・・・」
女性の妖艶に微笑みながらの言葉に弘政は何も返さない。するとアリサがなのはを守るように前に出た。
アリサ「なのは、お知り合い?」 なのは「う、ううん・・・」 アリサ「この子、あなたを知らないようですが、どちら様ですか?」
アリサの確認の言葉になのはが首を横に振って返すとアリサは強い口調で女性に問いかける。それに女性は怪しく微笑んだ。
???「あっははははははは!!!」
と、女性は突然笑い出し、頭をかく。
???「ごめんごめん、人違いだったかな〜? 知ってる子によく似てたからさ〜」 なのは「あ、な〜んだ。そうだったんですか」
女性の言葉になのははそう言ってほっと胸を撫でおろす。それから女性は弘政の頭上にユーノをよしよしと撫で始める。その時だった。
???[・・・今のところは、挨拶だけね?]
なのは・ユーノ・弘政・氷牙「「「「!?」」」」
突然頭に響くような聞こえてきた。それは、目の前の女性から発せられた念話によるもの。 それに四人は反応し、女性は再び怪しい笑みを見せた。
???[忠告しとくよ? 子供は良い子にして、お家で遊んでなさいね? オイタが過ぎると、ガブッといくわよ?]
女性はそう言って歩き去ろうとする。
氷牙「ジ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・」 ???「ん? なんだいボウヤ? アタシの顔に何かついてるかい?」
しかし氷牙は女性の顔をじーっと見ており、それに女性は首を傾げる。
氷牙「・・・お手」 ???「ワン」
氷牙の言葉に女性はポテと、躊躇なく右手を彼が差し出した右手の上に置く。
氷牙「お座り」 ???「ワン」
その次の言葉に彼女はチョコン、とその場に座る。
氷牙「ボール」
そう言って氷牙は久遠用に持ってきたボールをポイ、と庭に投げる。
???「わふん!」
氷牙の投げたボールを取りに行く大人の女性。
氷牙「良い子。良い子」 ???「わふぅん・・・・・・・・はっ!?」
咥えていたボールを氷牙の手に返し、ご褒美に撫でられ気持ちよさそうにするが、直後彼女は正気に戻る。
???「あ、あう、あ・・・・・・お、覚えてろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
大衆の面前で大恥をかき、顔を真っ赤に染めてズダダダダダダッ走り去っていった。
なのは「な、なんだったの・・・?」 ユーノ[分からない。でも、さっきのあれは・・・]
なのはの呟きにユーノも念話でさっき彼女が念話を使う、つまり魔術師であることに気づきそう呟く。
ユーノ[ってうわっ!?] なのは「ユーノ君!?」 弘政「いだだだだだだ!!!」 なのは「ひ、弘政君!?」
直後聞こえてきたユーノの悲鳴になのはが声を上げ、直後聞こえてきた弘政の悲鳴にも声を上げる。
アリサ「あーっもうむっかつく!!! なぁによあれ、昼間っから酔っ払ってんじゃないでしょうね!!!」 弘政「バニングスさん痛い痛い痛い!!!」
アリサはさっきの怒りを弘政にヘッドロックで八つ当たりして発散しているらしくかけられている弘政は悲鳴を上げるがアリサは逆に彼を睨み付けた。
アリサ「うっさい! あんたこそあんな女に見惚れて!! 胸がおっきけりゃなんでもいいのかあんたは!?」
そういうと、ヘッドロックからコブラツイストへと変化させるアリサ。 よくもまぁ浴衣でそのような技をかけられるものだと感心してしまう。
弘政「そ、そういうわけじゃないけどな、なんか皆と違って目のやり場がいたたたたたたた!!! つ、月村さん!ううう、腕の間接はそっちには曲がらなあだだだだ!!!」
アリサの怒号に対し弘政は墓穴を掘り、黒い妖しい笑みを浮かべたすずかが弘政の右腕を取るとギギギギギと間接を極め始める。
弘政「な、なのはちゃん!氷牙さん!ユーノ君!たーすーけーてー!!!」
弘政は必死でなのはと氷牙とユーノに助けを求め、なのはは助けに入ろうとするが直後、自分達といても何も変化がなかったのにさっきの女性の豊満な胸を見て顔を真っ赤にした弘政を思い出す。と彼女の心の中に何かイライラとした気持ちが浮かび上がった。
なのは「知ーらないっ」 ユーノ[ぼ、僕は所詮無力なフェレットだから・・・その、ゴメン] 氷牙「久遠、遊びに行く。僕、ついて行く・・・」
なのはは頬を膨らませると助けに入るのを止めてぷいっと顔を逸らし、彼女の肩に避難したユーノは触らぬ神に祟りなしといわんばかりに気まずそうに弘政から顔を背け、氷牙はマイペースに久遠と遊びに行く。
弘政「ちょっ!まっ!見捨てな・・・・・・アッーーーーーーーーーーーーーー!!!」
そして、一人の少年の悲鳴が旅館に響き渡った。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.83 ) |
- 日時: 2013/07/19 03:01:59
- 名前: 孝(たか)
- 20分ほどして・・・
弘政「ううう・・・やっと解放された」
ぐでぇぇぇっと痛む身体をソファに預けてダレル弘政。
そんな弘政を他所に、原因たるアリサはというと・・・
アリサ「ちょりゃぁ!」パコン! 氷牙「ん。」コン
アリサ「ええーーい!」パカン! 氷牙「ん。」コン
氷牙とアリサで温泉旅館の定番?たる卓球をしていた。
何度も強烈なスマッシュを放つアリサだが、氷牙は恭也と士郎によって鍛えられた動体視力により、卓球のピンポン玉の軌道がはっきりと見えている為、其処にラケットを持って行くだけで返している。
当然、スマッシュを打ち続けるアリサは早く体力を失い、最小限の動きで返す氷牙は疲れる事など無い。
アリサ「こんのぉ!!」パカン!! 氷牙「ん。」コン
しかし、何度やっても焼き回しの様に同じ事の繰り返しだった。
アリサ「きいいいい!氷牙!少しは撃ち返したらどうなの・・・よ!」パカン!! 氷牙「・・・そうする」
アリサに言われ、反撃しろと言うので・・・左手に握ったラケットを縦に構えると、思いっきり振り下ろした。
まさかの角打ち!?と、驚いているアリサ。しかし、実際には・・・
ピンポン玉がラケットの角に当たると思われたが、ラケットのラバーを限界まで使う様に滑らせる。
まるでテニスのラケットの様に扱う氷牙。
そうして勢い良く回転が加えられたピンポン玉が、アリサの陣地に着弾すると、ピンポン玉である筈なのに、弾む事無くその場で回転し続ける。
それも、速度を上げて・・・3秒程回転していたかと思えば、ピンポン玉はブーーーン!と、プロペラが回転する時にあげる音を響かせながら真上に跳んだのだった。
氷牙「これなら、跳ね返せない」
ムフ〜という表情でアリサに返す氷牙。
アリサ「ピンポン玉の物理法則無視すんじゃないわよぉぉぉぉ!?!どう言う事!?何をどうしたらピンポン玉が跳ねずに時間差で跳ぶのよ!?」 すずか「あ、アリサちゃん!落ち着いて!」 アリサ「私は馬じゃないわよ!!」
ドウドウとアリサを落ち着かせるすずか。
久遠「くぉん?くぅ〜ん」 氷牙「怒られちゃった」しょぼ〜〜ん
アリサに吼えられて影を背負いながら久遠の近くに行く氷牙。 それをみた久遠は項垂れる氷牙の頭に前脚を乗せて撫でるのだった。 何とも器用な狐である。まぁただの狐ではないから出来る芸当なのかもしれないが・・・。
それからもメンバーを変えて卓球したり、インベーダーゲームに興じたり、水槽の金魚を眺めたりして時間を過ごし、部屋に戻る一同。
途中、散歩から戻ってきた高町夫婦と合流したりもして部屋につくと、丁度食事の時間になったらしく、夕食をいただく事になった。
山の幸と海の幸という海鳴ならではの懐石料理に舌鼓を打ち、夜は更けていく。
大人達は酒盛り、子供達はトランプやUNO、トレーディングカードゲームで時間を過ごし、9時を過ぎると子供達は揃って隣の部屋に移って床につくのだった。
子供達『『『おやすみなさーい』』』 大人達『『はい。おやすみ』』
そうして子供達が寝静まると、大人達もキリの良い所で酒盛りを終え、就寝する。
全員が眠りに就き、そろそろ日付が変わろうとする時間帯に目が覚める数名の子供・・・なのは、弘政、氷牙である。
と言っても、ただトイレに行く為に起きただけだが・・・しかし、それは良かったのか悪かったのか、このタイミングで旅館近くの森の方からジュエルシードが発動する感覚を捉えた三人。
気配によって跳び起きるユーノ。士郎と恭也を起こそうと奮闘してみたが、どうやら酒が効いてるらしく眠りが深い為に起きる気配は全くなかった。
肝心な時に限って悪い予感は続くのだった。
仕方なく4人(3人と1匹?)で現場に向かう事に。 途中、魔力が膨れ上がるのを感じた一行。恐らく、ジュエルシードが封印されたのだろう。
そこで待ち受けていたのは・・・案の定、封印したジュエルシードを手に持った・・・前回対峙した黒衣の魔法少女。 そして、昼間に氷牙に大恥をかかされたオレンジの髪の女性だった。
数時間前・・・
『フェイトオオオオオオオ!!!!』 フェイト『ア、アルフ?どうしたの?なんで泣いてるの?』
先程のオレンジの女性…アルフはフェイトという少女・・・以前、なのは達を襲った黒衣の魔法少女だ・・・に、念話を送っていた。 その時、えぐえぐと泣きながら念話してくるアルフに、少女はオロオロした様な口調で念話を返す。
アルフ『えぐっ・・・あの、薄い蒼色の髪のボウヤに、大恥かかされたんだよぉ!!』 フェイト『大恥って・・・一体、何をされたの?』
恥をかかされたと聞いて、声のトーンを落とすフェイト。
アルフ『えぐっ・・・なんだかよくわからないけど、あのボウヤの言葉に逆らえなくて、人間形態のままで、[お手]と[おすわり]と[ボール遊び]で大恥かいたんだよぉ・・・』
先程起きた事をそのまま伝えるアルフ。
フェイト『え・・・?元の姿じゃなくて、その、人間体の姿で?』
フェイトはその状況を想像して困惑する。元の姿なら何の問題も無かっただろうが、人間体でそれをすれば確かに恥ずかしい。
アルフ『フェイトぉ〜〜もしジュエルシード争奪でアイツらと遭遇したら、あのボウヤはアタシにヤらせておくれよ!あんな大恥かかされたんだ!仕返ししないとこっちの気が収まらないよ!』
アルフはうが〜〜と吼えそうな勢いでフェイトに念話で詰め寄る。
フェイト『・・・うん。分かった。でも、やり過ぎないでね?結界の中に居たって事は、魔導師の可能性もあるし・・・』 アルフ『それは分かってるよ。でも・・・もしかしたら手加減する余裕も無いかもしれないよ』
先程まで荒れていたアルフだが、唐突に真剣な声色で念話を続ける。
フェイト『どう言う事?』 アルフ『直接触れたから分かったんだけど・・・あのボウヤ・・・・・・フェイトより何倍も凄い魔力が渦巻いてた。アタシの予想にすぎないけど、フェイトの最大出力の魔法でも、ダメージを与えられるか分からないくらい膨大で、濃密な魔力。』
意気込んでいたアルフは、その時の感覚を思い出すと、小さく身震いしていた。
フェイト『警戒は必要・・・って事?』 アルフ『うん。だけど、アタシは負けないよ!なんたって、アタシはフェイトの使い魔だからね!』
先程までの暗い雰囲気を払拭するように明るく振る舞うアルフだった。
フェイト『うん、分かったよ。アルフ、次のジュエルシードの位置も大分特定できてきた。今夜には捕獲できると思うよ』 アルフ『う〜ん、ナイスだよフェイト! 流石アタシのご主人様だねぇ〜』 フェイト『うん、ありがとうアルフ・・・夜にまた落ち合おう』 アルフ『じゃあ、また夜にね。フェイト』
アルフとの念話も終わり静かになる。 ジュエルシードが発動すれば、恐らく白い少女達も来るだろう。 そう思い、フェイトは木の枝の上で・・・思考に耽っていた。
そして、その夜、2人の魔法少女は対峙する。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.84 ) |
- 日時: 2013/08/14 23:58:18
- 名前: カイナ
- アルフ「あーらあらあらあら……子供は良い子で、って言わなかったっけか?」
ユーノ「それを、ジュエルシードをどうする気だ!? それは危険なものなんだ!」
アルフ「さあ〜? 答える理由が見つからないねぇ。それに、アタシ親切に言ったよねぇ?」
ユーノの叫びをアルフは受け流すように返し、そこまで言うと目を研ぎ澄ます。
アルフ「良い子にしてないと、がぶっといくよって」
その言葉と共に美人な大人の女性の髪が伸び、手がまるで獣の足のように変化。顔も人間のものから獣の、狼の顔へと変わっていく。女性は少しの時間で狼へと変化。毛並みは女性と同じオレンジ色の毛で、その額には赤い宝石のようなものが埋め込まれていた。
ユーノ「やっぱり、あいつ、あの子の使い魔だ!」 弘政「使い魔!? 何それ!?」
アルフ「そうさ。アタシはこの子に造ってもらった魔法生命。制作者の魔力で生きる代わり、命と力の全てをかけて守ってあげるんだ……」
ユーノの声に弘政が驚きの声を上げるとアルフはそう言い、突然氷牙を睨み付ける。
アルフ「さっきあんたには大恥かかされたんだ!! これはそのお礼だよ!!!」
なのは「氷牙君!」
そう叫んでアルフは氷牙に牙を剥き、突進する。そのスピードになのはは反応できず、叫ぶのが精一杯だった。
ガングニール[氷牙様!] 氷牙「うん」
と、氷牙が懐に入れていたガングニールの声が響き、氷牙はガングニールを取り出すとまるで某時代劇で越後のちりめん問屋を仮に名乗るご老公様の従者が印籠を見せつける時のようにガングニールを前に突き出す。
氷牙「堅牢なる守りを、シールド!!」
アルフ「なっ!?」
ユーノ「今だ! なのは、あの子をお願い!」
叫び、魔力を放出するとその魔力が硬質化。アルフの突進を受け止めて見せる。それを見たユーノはその隙を逃さずになのはの頭から飛び降りて魔法陣を展開、自身と氷牙、アルフを包み込む。
アルフ「移動魔法!? まずっ!」
ユーノ「氷牙さん! 一緒にこいつを足止めしてください!」 氷牙「うん……」
相手が何をたくらんでいるのかに気付いたアルフはまずいと声を上げるがもう回避も間に合わず、ユーノが氷牙に援護をお願いすると同時、光が爆発。その光が消えた後その場からユーノ、氷牙、アルフの姿が消えていた。
なのは「ユ、ユーノ君!? 氷牙君!?」
フェイト「あの結界、相当な魔力。アルフが言ってたのは嘘じゃなかった……それに強制転移魔法、良い使い魔を持っている」
なのは「ユーノ君は使い魔ってやつじゃないよ! 私達の大切な友達!」 弘政「そもそも使い魔ってなんなのか分かってないけど、それだけは確かだ!」
なのはは敵と同時に二人が消えたことに困惑を隠せなかったがフェイトは冷静に分析、ユーノの事も使い魔と解釈してなのはに声を投げかけるがそれになのはと、残された弘政がそう言い返す。それにフェイトは驚いたように反応を見せた。
フェイト「……で、どうするの?」
なのは「話し合いで解決できるってこと……ない?」
フェイト「私はロストロギアの欠片を、ジュエルシードを集めないといけない……そしてあなた達も同じ目的なら、私達はジュエルシードを賭けて戦う敵同士ってことになる」
なのは「だから! そうやって簡単に決めつけないために、話し合いって必要なんだと思う!」
なのはの話し合おうという言葉にフェイトは冷淡な口調で返し、しかしそれを認めたくないというようになのはが言うとフェイトは目を閉じる。
フェイト「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ……きっと何も変わらない」
そう呟き、彼女は目を開くと鋭く研ぎ澄ませた。
フェイト「伝わらない!」 なのは「!?」
叫ぶと同時に彼女の姿が消え、なのはは一瞬面食らう。と弘政が背後に回し蹴りを放った。
フェイト「……」
と、さっきの一瞬でなのはの背後に回っていたフェイトはその回し蹴りを見切りながらもまさか魔力がほとんどない人間の方が反応するとは思っていなかったのか僅かに体勢を崩し、なのはに向けて牽制するようにバルディッシュを振るう。
弘政「うわ当たった!? なのはちゃん、飛んで!」
どうやら半分以上勘で放った一撃らしく、弘政は相手の狙いが背後からの攻撃だという読みが当たったことに驚きながらもなのはに飛ぶように指示、そう言うが早いかレイジングハートが飛行魔法を発動しなのはは宙に飛んだ。そしてフェイトも空を飛んでいる魔導師――なのはの方が危険だと判断しているのか弘政はもう眼中にないように自身も空を飛びなのはの方に向かう。その隙に、魔法戦が始まってしまってはもう自分は役立たずだと自覚している弘政は近くの草むらに飛び込み身を隠す。
弘政(……情けない)
ただ一つ、氷牙も守る力を得た中これで本当にこの戦いの関係者の中でただ一人戦えない自分の無力を噛みしめながら。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.85 ) |
- 日時: 2013/08/17 04:29:10
- 名前: 孝(たか)
- なのはとフェイトが空に舞い上がり、1対1の空中戦を繰り広げている頃、氷牙&ユーノコンビとアルフが対峙していた。
アルフ[ちっ・・・してやられた。だけど・・・ボウヤ。アンタ、素人だね。さっきの防御魔法は確かに硬かったけど、その膨大な魔力で無理矢理に固めたって所かい?]
憶測ではあるが、アルフは氷牙のシールドの魔法に直に触れる事である程度どの様な物か判別していた。 大まかな事しか分からないが、無理矢理に固めたのが一番近い答えだと思っている。
氷牙「・・・僕は、昔の記憶がない。ガングニールの話だと、戦えたみたいだけど・・・。でも、君とこうしていても、不思議と、怖くない。負ける気、しない。」 アルフ[減らず口を!!]
初速からトップスピードで氷牙に向かって駆けだすアルフ。 途中で高く跳び上がり、右の爪にバリアブレイク・・・防御貫通の魔法を宿して振り下ろす。
氷牙「・・・・・・(相手をよく見る。)」
士郎や恭也の教え通りに、ジッとアルフから視線を逸らさず、落下してきたところで慌てずに5歩下がる。
ドゴッ!!
アルフの右前脚が地面を抉る。それを見ても、氷牙はアルフだけを見つめる。他の事に気を回さず、向かってくる敵(アルフ)だけを・・・。
アルフ[へぇ・・・今のを避けるんだ?じゃぁ・・・これなら、どうだい!!]
アルフは人型に戻ると、バチバチと魔力を電気に変換し、射撃魔法をセットする。
アルフ「フォトンランサー!!ファイア!!」
自分の周りに3つの魔力球体(フォトンスフィア)を生み出し、其処から1発ずつ魔力の矢が氷牙に向けて発射される。
氷牙「魔を退ける守りを、マジック・バリア」
シールドの時とは違い、赤く発光する球状の光が氷牙を包み込む。 三方向から同時に発射されたフォトンランサーは、マジック・バリアに触れると同時に四散した。
アルフ「さっきとは違うね・・・魔法に対する防御魔法って、所かい?だったら・・・こうするまでだ!!」
アルフは右腕に魔力を込め、同時にその魔力を電気に変換する。
アルフ「例え物理、魔法は防げても、発生した電気までは防げないだろう?・・・食らいな!!」
またも跳びかかる様に氷牙に向かうアルフ。
アルフ「うおおおおりゃああああああああああ!!!」 氷牙「・・・・・・」
ガァァァァンッ!!
氷牙のマジック・バリアにアルフの拳がぶち当たる。 バチバチと帯電している電気が、氷牙を襲う・・・と思われたが、電気も通って居なかった。
アルフ「なっ!?電気に変換しているのにそれも通さないってのかい!?」 氷牙「・・・?それ、”魔力”で、電気に変換してる。魔法と、変わらない。」
魔力を電気に変換しているとはいえ、大元のエネルギーは魔力なのだから、結局一緒なのだ。対魔法防御に効く筈がない。
ユーノ「今だ!チェーンバインド!!」
ユーノが手をかざすと、鎖状の魔力で作られた拘束魔法でアルフを雁字搦めにする。
アルフ「な。し、しまった!?フェレットの方を忘れてた!?」 ユーノ「氷牙さんが気を引いてくれていたおかげで、貴女を捕まえる事が出来た。観念しろ!」
決して以前の様に氷牙を危険な目に会わせて溜まるものかと気を抜かずにしっかりと拘束するユーノ。 完全に雁字搦めにされてアルフは蓑虫状態になっている。
アルフ「くっこの!?なんて複雑な構造のバインドなんだい!?解いても解いてもキリがない!?」
ユーノのバインドから抜け出そうとバインドブレイク続けるが、基礎的な拘束魔法とは思えない程のロジックが組まれており、バインドを一つ解いている間に他のバインドの構造を丸ごとその場で変えて同じ方法では解けない様にしていくユーノ。 ユーノは攻撃魔法に適性が全くと言って良い程無い。しかし、その代わりに補助に関しては天性とも言える程の才能を持っている。更に、そのずば抜けた処理能力により、マルチタスク(並列思考)の数が常人のそれを凌駕する程の数を有している。
よって、ユーノのバインドを解くのならば、大出力の魔力を用いて力ずくで一気に吹き飛ばすか、魔法そのモノを断つしかない。
アルフ「く、くそう・・・フェイ・・ト・・・・・・」
次々とアルフを拘束する魔力の鎖が蓑虫状態のアルフを更に雁字搦めにする。
アレスターチェーン。結界魔法が得意なユーノの最強最大の技。 無数の魔力の鎖で対象を絡めとリ、一切の動きを封じてしまうのだ。
もし、ユーノの他に、攻撃魔法・・・特に、砲撃が得意な魔導師が居れば、大質量の砲撃魔法でバインドごと撃ち貫く事で、身動きの取れない相手に必殺の一撃を放てる外道戦法が取れる。 もしくは、雁字搦めに撒きついたバインドを一気に解放する事で、必中の爆破魔法にも化ける。
まさに必滅のコンビネーションと言えるだろう。
後はこのまま注意を怠らなければ逃げられる事も無いだろう。このまま拉致じゃなくて、監禁いやいや、人質として扱うもよしだ。
まぁ氷牙達の事だから、拉致も監禁もしないだろうし、せいぜいが軟禁だろう。少なくとも、アルフが酷い目に会う事はまず無い。 まぁ襲われたという事で、博吉に拳骨を落とされるくらいだろうか?
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.86 ) |
- 日時: 2013/08/22 07:35:43
- 名前: 孝(たか)
- 氷牙「・・・・・・ユーノ。」
ユーノ「はい。なんですか氷牙さん?」
ふと、氷牙は団子と化したチェーンバインドを見て思った事を口にする。
氷牙「頭も一緒に、閉じ込めたら、息・・・出来ないよ?」 ユーノ「・・・・・・・・あ”!!いいい、急いで頭を出します!!」
ユーノも油断ならない相手と思ってこれでもかという程にチェーンバインドで拘束する事だけを考えていた為、その辺りを失念していた。 魔力で構成されているとはいえ、物質として存在しているのであるから、密閉する程バインドで拘束すれば窒息してもおかしくない筈である。
ジャラジャラとバインドの一部を解いていき、首を絞めない程度に且つ逃げられない様に隙間を埋める。
アルフ「プハッ!?ゼェ、ゼェ・・・殺す気かアンタ!?危うく窒息するところだったじゃないか!?」 『自ら襲撃してきたのだろう。ならば返り討に会い、殺される事も覚悟するのは、当たり前の事ではないのか?』
ガングニールは弱肉強食の理論で戦いの心構えを説く。 氷牙達の様な、魔族の住む世界・・・魔界は弱肉強食の是とする世界が多い。 戦い=死闘というのがほぼ当たり前なので、アルフの事を少し馬鹿にしたような口調で言い返す。
アルフ「馬鹿な事を言うな!”非殺傷設定”で攻撃してるんだから、負けたって魔力ダメージで気絶するだけだろう!そう簡単に死ぬもんか!?」 氷牙「・・・ユーノ。非、殺傷、設定って、何?」
氷牙は初めて耳にする単語が分からず、ユーノに質問する。
ユーノ「えっと・・・簡単に言うと、物理的な身体ダメージを失くして、純粋に魔力にダメージを与える様にする能力設定なんだ。と言っても、酷く外傷を負うという事を避けられるだけで、それなりに衝撃や痛みも伴うし、魔力が枯渇した状態で身体的な衝撃とかを受けると、バリアジャケットの破壊や、気絶・昏倒などの危険性もあるけどね。」
出来るだけ分かりやすく氷牙に説明するユーノ。魔法初心者状態の氷牙が、簡単に理解できるかどうかは分からないが・・・。
『愚かな。だとすれば、なのは殿の様な砲撃型魔導師の一撃でビルにでも激突させれば、死亡確率が上がるのではないか?水中に墜とし、その場で今の貴様の様に拘束魔法で水中から逃げられない様にすれば窒息。あるいは溶岩のある場所への撃墜。魔法は万能ではない。外的要因でいくらでも相手を殺す事は出来る。その程度の覚悟で戦いに身を置くなど・・・魔法は喧嘩の道具ではない!!相手を傷付ける事が出来る凶器でもあるのだぞ!!』
魔法に対する認識の甘さにガングニールが一喝する。なにせ、自分の主が彼女らの使う系統の魔法によってボロボロにされたのだ。 中途半端な覚悟で力を使うアルフに、怒り心頭である。
氷牙「ガングニール。落ち着いて。」 『ですが!氷牙様!』 氷牙「今は、落ち着いて。この子の飼い主?も、一緒に、お話、する。」
このままだとガングニールの説教で夜が明けてしまいかねないのでとりあえず止めさせる氷牙。
『ぐ、む・・・氷牙様がそう仰るならば・・・犬。氷牙様に感謝せよ。』
氷牙に言われ、仕方なく説教を止めるが、その憤りは収まらないせいかアルフを犬呼ばわりである。
アルフ「アタシは狼だ!!」 『覚悟の甘い貴様なぞ、同じ狼に失礼である。犬で十分!』 アルフ「くぬぅのぉ・・・デバイスの癖に生意気なぁっ!?」 『否!デバイスに非ず!私は氷牙様の為に作られた魔槍!魔法支援端末と並べられては困る!』
実はデバイスではなく列記とした一振りの槍である。ただ、デバイスの様に可変機能があるだけだ。
ユーノ「え!?デバイスじゃなかったんですか?」 氷牙「知らない。同じようにしか、見えない」 『そんな!?氷牙様まで!?』
記憶が無いのだから仕方がないと言えばそれまでだが、やはりショックなのは変わりなかった。
数分後、ガングニールが落ち込んでいる間に、なのは達の下へ移動しながらユーノがアルフに尋問する。
因みに、バインドによって達磨状態のアルフに浮遊魔法を掛けて浮かせ、氷牙がチェーンバインドを数本引っ張って移動している。
・・・・・・中々にシュールである。
ユーノ「使い魔を生成出来る程の魔導師が、どうして管理外世界であるここに来ているんだ?ジュエルシードについて、ロストロギアについて何を知っている?」 アルフ「ふんっ!答え得る理由が無いね!」 『その様な無様な姿で何を粋がっている?敗者は勝者に従うのが当然の理。それとも、負けを認められない程、貴様は愚かなのか?犬。』
負けた癖に口を割らないのは主人思いなのかそれともただの反抗か。それとも答えられるだけの答えを持っていないのかもしれない。
ドオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
氷牙「っ・・・あそこ。」
氷牙は音のした方向・・・前方の上空を指差す。
そこに居たのは、お互いに得意な砲撃魔法で競り合っている白の魔導師なのはと、黒の魔導師フェイトの姿だった。
氷牙「・・・・・・弘政?何処に、いる?」
2人をみた後、キョロキョロと周囲を見渡し、もう一人の友達である弘政を探す氷牙。
弘政「氷牙さん!ユーノ君!良かっ・・・えっと・・・達磨?」
氷牙の声が聞こえたのか、茂みに隠れていた弘政が2人の姿を見て駆け寄っていく。しかし、氷牙の背後に達磨にされて浮いているアルフを見てどう反応していいのか困っていた。
氷牙「ユーノが、頑張って、捕まえた。これで、お話、出来る。」
なのはと同じように、氷牙も出来れば話し合いで解決したいようだった。 しかし、なのは達の戦いを邪魔するのも気が引けて、アルフを人質として止める事もせずに2人の戦いを傍観する。
ゴソゴソ・・・・・
弘政「あの、氷牙さん?一体何を・・・?」 氷牙「疲れたから、一休みしたい。2人の戦い、邪魔する良くない。そんな気がする。はい。弘政、ユーノ。」
そう言ってポケットから取り出し、2人に差し出したのは・・・サラミ。
「「脂っこ!?」」
疲れたとはいえ、子供がこの様な深夜に食べるには些か身体に悪い。
氷牙「ダメ?・・・じゃぁこっち。」
次に取り出したのは・・・〇ダイのソーセージ。
「「まぁ、それなら・・・って、呑気に食べてる場合じゃないよ!?」」 氷牙「う〜〜ん。大丈夫。危なくなったら、レイジングハート、止めてくれる。・・・多分。」
結局自信は無かった様だ。
氷牙「はい。君も、どうぞ。」 アルフ「え・・・?あ、アタシ・・・に?」
まさか敵である自分にも差し出してくるとは思わなかったアルフ。 どうしていいのか分からないのか、困惑した表情で固まるしかなかった。 そもそも、首から上以外の全てが拘束されているので受け取る事も出来ないのだが・・・。
氷牙「はい。あ〜〜ん。」
既に久遠という似たような存在が友達に居るので、何の気兼ねも無しに”あ〜ん”を実行する氷牙。 つまるところ、無自覚とはいえ氷牙もアルフを動物扱いしているのに変わりは無かった。
アルフ「あ、えと・・・あ、あ〜ん。むぐ・・・むぐ。」
混乱冷めやらぬ内に差し出されたソーセージを食べさせられたアルフ。 使い魔と言えど、結局のところ動物が素体であるせいか?動物を虜にする氷牙の魔力?には抗えない様だ。
BD『フォトンランサー・Get Set』 フェイト「ファイア!!」
生成された4つのフォトンスフィアから得意の射撃魔法を同時に撃ち放つフェイト。
RH『ディバインシューター。』 なのは「シューター!いっけええええ!!」
なのはも負けじと、同じ数の射撃魔法を撃ち放ち、相殺する。
ユーノ「なのは・・・強い!まだ魔法に触れて、2ヶ月程度なのに、もう戦えてる・・・!」 アルフ「に、2ヶ月だって!?嘘言ってんじゃないよ!たった2ヶ月で、あそこまで戦える筈無いだろう!?」
才能と師に恵まれ、数年間魔法を鍛えたフェイトと、魔法を知ってたった2ヶ月しか経っていないなのはが、ほぼ互角の魔法戦を行っている。 そんな事実、到底信じられる筈が無いアルフだった。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜 ( No.87 ) |
- 日時: 2013/08/23 04:17:10
- 名前: 孝(たか)
- そうこうしている内に、なのはとフェイトはお互いに最後の一撃の準備に入る。
フェイト「サンダー・・・・・・・」 なのは「ディバイーーーーン・・・」
金色の魔力光と、桃色の魔力光が、魔法陣を展開しながら迸る。
フェイト「・・・スマッシャアアアアッ!!!」 なのは「バスタアアアアアアアアアアッ!!!」
サンダースマッシャー:バルディッシュのデバイスフォームから放たれた雷を纏う直射型の砲撃。
ディバインバスター:レイジングハートのシューティングフォームから放たれた直射型の砲撃。
それらが互いの中心地点で衝突!
フェイト「く・・・ぅぅぅ・・・」 なのは「・・・いっ・・・けええええええ!!!」
気合と魔力を込めて威力を底上げし、フェイトのサンダースマッシャーを押し返す。
フェイト「はっ!?」
驚きに目をむき、次の瞬間・・・フェイトはなのはの砲撃に飲み込まれた。
アルフ「フェイトオオオオオオオオオオオオオオ!!」 ユーノ「・・・なのはが・・・勝った?」
アルフはフェイトが砲撃飲まれた事で取りみだし、逆にユーノはなのはが勝った事に茫然とする。
氷牙「・・・・・・違う。なのはの、負け。」 弘政「え?」
チャキ・・・
氷牙の言葉の通り、弘政がなのはの方に視線を向けると、バリアジャケットのマントが一部破けている以外は特に外傷の見当たらないフェイトが、なのはにサイスフォーム:鎌の形態となったバルディッシュをなのはの背後から首筋に突き付けていた。
弘政「どうして・・・あの子が!?」 氷牙「・・・あの子、凄く、速い。なのはの魔法、当たる瞬間に、瞬間移動、してた。」
ソニックムーブ:フェイトの扱う瞬間高速移動魔法。熟練の魔導師でも、この速さを見切るのは相応の訓練が必要とされるだろう。
因みに、氷牙がフェイトを捕捉出来たのは、魔族としての反応速度と、士郎達の速さを見ていた慣れから来るものであり、もしも士郎達から師事を受けていなければ、氷牙もフェイトの姿を捉える事は出来なかっただろう。
RH『put out』 なのは「レイジングハート!?何を!」
レイジングハートはジュエルシードを1つ自分の中から取り出す。 その行動になのはは驚く事しかできない。
フェイト「きっと、主人思いの良い子なんだ。」
そう言って、フェイトはレイジングハートから出てきたジュエルシードを手に取ると、なのはから距離を取る。
フェイト「・・・っ!アルフ!?」
しかし、そうする事で周りを見る余裕ができたのか?視界の端に移った達磨・・・もとい、アルフを見て驚きの表情を浮かべる。
シュンッ!!
急ぎ、フェイトは再びソニックムーブを発動させ、アルフを救出しようと氷牙の居る方へ急襲する。
氷牙「・・・堅牢なる守りを、シールド。」
ガングニールを左手に持ち、やや上に向けて伸ばし、対物理防御魔法を発動させる。
ガギィィィィィィン!!!
バルディッシュ:鎌形態の切っ先が、氷牙の防御魔法とカチ合う。 そのままギチギチと競り合う音が響くが、次の瞬間にはバルディッシュの魔力刃が凍り始めたのだ。
フェイト「なっ!?バルディッシュ!」
危険を感じ取り、すぐさま氷牙から距離を取るフェイト。 そのまま氷牙から視線を外さない様にバルディッシュをチラ見すると、既にバルディッシュの魔力刃が半分近く凍りついていた。
フェイト「・・・凍結の、魔力変換能力・・・!」
まさか自分と同じように、魔力変換のレアスキルを持っているとは予想できなかった。
氷牙「・・・大丈夫。この子に、怪我、させて、ない。僕達は、君と、争いたい訳じゃ、無いから。」 フェイト「・・・信用、出来ません。」
知り合いでもないのだから信用など出来る筈も無い。
氷牙「話し合おう?争いは、怪我するだけ。」 フェイト「言葉だけでは、何も伝わりません。」 氷牙「それは、君が、理解する気が、無いから。耳を、貸さないから。僕達は、話す為の、口がある。言葉がある。心が、ある。」 フェイト「話し合いなど無意味。力で、奪い取る!」
氷牙は話し合いでなんとかならないか持ちかけるが、フェイトはそれら全てを切り捨てる。
『止むを得ませんな。氷牙様。ここは、あの少女を打ち負かし、話を聞かせる状況を作る必要がありますぞ。』 氷牙「・・・でも、無理矢理は、ダメだと、思うよ?」 『ああいう輩は、一度膝を着かせてから出ないと耳を貸さない分からず屋です。恐らく、打ち負かせば大人しく提案を受け入れるでしょう。』
力ずくで物事を決める者は、力に屈すると素直になるのはどこも一緒だとガングニールは答える。
氷牙「でも・・・僕、武器、扱えないよ?」
目の前に対峙している人物がいるのに攻撃手段が素手だけと行っている様な物ではないか。
『ご心配は無用です。魔槍・ガングニール。必ずやあの少女を屈服させて見せましょう。』
氷牙が武器を扱えないと言っているのに、どうやって武器であるガングニールがフェイトを屈服させるというのだろうか?
『では、氷牙様。少々お身体をお借りします。』 氷牙「??ガングニール・・・が?どうするの?」 『私が、氷牙様に憑依するのでございます。そうですな・・・ゲームで言うところの、プレイヤー交代の様な物と、お考えください。』
身も蓋も無い例えを出されても困るだけだ。
氷牙「よくわからない。でも、良いよ。貸してあげる。だけど、絶対、あの子に、怪我、させちゃ、駄目。」 『御心のままに。御身は氷牙様の為だけに。然らば、お身体拝借いたします。憑依合体!』 氷牙「ん!」
ガングニールが叫ぶと同時に、待機状態のガングニールが氷牙の胸に溶け込む様に入っていくと・・・氷牙の薄蒼色の頭髪が、鈍色(灰色っぽい色)に変わる。
氷牙?「それでは、氷牙様。よく見ていてください。これが、以前の貴方の戦い方です。」
氷牙の口から機械副生音ではない、生のガングニールの声が漏れる。 どうやら憑依合体する事で、ガングニールが表の人格として浮き出てくるようだ。
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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.88 ) |
- 日時: 2013/08/31 06:01:04
- 名前: 孝(たか)
- 氷牙G「ふぅ。・・・・・・」
一つ、溜め息を吐くと両手を閉じたり開いたりを何度か繰り返す。 憑依合体したとはいえ、肉体を借りているのである。多少の反応の違いがあってもおかしくは無い。
氷牙G「小娘。今の氷牙様は記憶喪失で戦い方を忘れている。故に、この私・・・魔槍・ガングニールがお相手する。だが、我が主はお主に怪我をさせるなと命じられた。よって、全力は出せないが本気は出してやる。それで許せ。」
そう言うと、ガングニールの左手に如意棒の様な長い棒が現れる。 やや太めで、長さは身長よりやや短いぐらいのシンプルな棒だ。
氷牙G「槍は使ってやれぬが、杖術でお相手しよう。」 フェイト「全力を出せないのなら、私が勝ちます!」
ガングニールの余裕が癪に障ったのか、フェイトは目付きを鋭くして睨みつける。
フェイト「はああああああああああッ!!」
直後、フェイトはソニックムーブでガングニールの背後に回り、サイズフォームにしたバルディッシュを振り下ろす。
ガギィィィィンッ!!
しかし、ガングニールは慌てることなく下からの振り上げでバルディッシュを弾き返す。 だが、フェイトはそのまま刃を返すと横凪へとシフトして斬りかかる。
ギギィィィィンッ!!
しかし、それでもガングニールは反応して見せる。 逆手に持った棒を、バルディッシュの魔力刃と付け根の間辺りに持っていくと、梃子の様に角度を変えると、バルディッシュの魔力刃の腹とグリップに絡まり、バルディッシュを封じつつ、フェイトの腕を捩じる様な体勢に持って行った。
ガッ!
すぐさまバルディッシュを蹴り飛ばすと、その衝撃によって掴みの甘くなったフェイトの腕を痺れさせる。 すると、あっさりとフェイトの手からバルディッシュは離れ、棒に絡まっていた為にクルリとガングニールの方へグリップが向けられる。
ガングニールはそのままバルディッシュを取って片手で振りまわす。 もう一方の手で持った棒でフェイトに突きを放つガングニール。
氷牙G「ハァッ!!」
地面を踏みぬき、足から伝わる衝撃を棒に乗せて放たれる突きは鋭く、当たればバリアジャケットを纏っていると言っても、機動性を重視した為に防御面は薄いフェイトのバリアジャケットを無視してダメージを与えかねないだろう。
フェイト「くっ!?」
棒と言えど、槍の様に突き出されてはバックステップでの回避は危険と判断し、サイドステップでとっさに回避して見せるフェイト。
バルディッシュを奪われたが、威力は多少下がるとは言え魔法を放てない訳ではないフェイトは、すぐさま魔力弾を生成しようとする。
ブオンッ!!
直後、強烈な風切り音が聞こえた為に視線を向けると、バルディッシュがブーメランのように大回転しながらフェイトに突き進む。
フェイト「なっ!?ぐぅっ!!!」
だが、とっさにバルディッシュを掴む事に成功したが、勢いは殺せなかったのかそのままフェイトごと跳んで行く。
そして・・・・・・・・・ガッ!!!
背後にあった岩に背中を強かに打ちつけ、バルディッシュの鋭い魔力刃は深々と岩につきささる。
更に、ガングニールもバルディッシュとともに追いかけて来た為に、バルディッシュのグリップを足と岩で挟む様に踏みつけ、手に持った棒をフェイトの首筋にピタリと突き付けた。
岩とバルディッシュで両手を封じつつ胸を圧迫。更には首筋に突き付けられた武器。
凡そ2分と経たずにフェイトを無力化させて見せたのだった。
氷牙G「・・・詰みだ。大人しく降参しろ。」 フェイト「くっ・・・ううう・・・」
だが、フェイトはそれでも降参を口にせず、下からガングニールを睨みつける。
『『・・・・・・・・・・・』』
お互いに無言で睨み合う。
そして・・・・・・
フェイト「わかり、ました。」
遂にフェイトが折れたのだった。
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