Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の ( No.51 ) |
- 日時: 2007/08/08 23:41:21
- 名前: 深月鈴花
- ・・・流れる、あか。
澄んだ、空の、あお。
あかに染められたしろの、薔薇。
足元に転がる無残な死体を悲しそうに見つめ、微笑んだ。 「ねぇ、終わったよ、パパ・・・ママ・・・全部。」 愛する育て親を、この手で葬るのは、あまりにも簡単で。 少女のゴシックロリータの服から伸びる細い腕は、銀色の銃を握っている。
これは、象徴。私が生きる、象徴。
庭に広がる白薔薇の一部を、赤く染めた。 涙なんて、出るはずもないって思ってた。 でもやはり人間には感情という物があるらしい。 力一杯両親を抱きしめた。 その拍子に、貯めていた涙がこぼれ落ちる。 「パパぁ・・・ママぁ・・・っ」 しょうがなかった、なんて言う気はない。言い訳にしかならないことは本人が痛いほどわかっている。 でも、これは少女を殺し屋として育てた両親の願いでもあったのだ。 少女の瞳に後悔はない。ただ、深い悲しみが広がっていた。 ひどく残酷なこの事実を、今はまだ誰も知らない。
あれから、四年。
パパ、ママ。
フレア、今、笑ってるよ。
あのときは言えなかった、さようなら。
そして、また会おうね。
それから、だいすきっ!
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(朝の白と少年の紫と小説家の鳩羽色と料理人の蘇芳色) ( No.52 ) |
- 日時: 2007/08/09 12:57:38
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- 「みーちゃん!」
甲高くよく響く、けれど確実に少年の声であるとわかるそれが、夢間をうつろうおれの鼓膜を震わせた。 (うるせえな) 丁度いいアイデアが浮かびそうな夢だったというのに、とぼやりと膜のかかったような意識のなかで呟く。 朝のしろい光が瞼の裏までも透き通らせて、少年の影を浮かび上がらせた。 「みーちゃん! 鳥はもう起きてるんだよー!」 縁側を背にしておれの布団の脇に膝を突くそいつ。 幼いこどもの口調ながらそれを叫ぶ少年の姿はしかしどこからどう見ても高3くらいの立派な男だ。 少し長めの黒髪に、所々、紫色が混ざっている。 顔立ちは間違いなく東洋うまれのものだし、喋る日本語も流暢だ。 まあ、この空間のなかでは国や言葉の違いなんぞ意味を成さないものではあるのだが。 実際この屋敷には何人、いや何百人の人間が出入りしているかわからない。 俺はもうこの屋敷で過ごして十五年くらいになるが、それでも未だ初対面の奴らと顔を合わせることなど日常茶飯事だ。 といっても俺は行動範囲が狭く他の人間と違ってしょっちゅう屋敷内を歩き回ったりしないので、頻繁に関わる奴らなんてごく僅かである。 おれはゆるゆると眼を開いて、二日酔いのがんがんと疼く頭を抱えて起き上がった。 それから、傍にしゃがみこんでいたそいつの頭を容赦なくぶっ叩く。 「いった!」 「るっせえんだよ、遊紫よ。いつも起こしになんてこねえくせに、こんな日に限って。 なんだ?誰にいわれた?誰に命令された?」 「のらねこ!」 ゆうし、とおれが呼ぶ少年の鈍紫の瞳がきらりと輝く。 「………乃藍の野郎かよ、オイ」 あいつだって昨日がんがん呑んでたくせに。流石ザル。 寝癖の残る自らの頭をばりばりと掻いて溜息を吐き、だるい身体を立ち上がらせる。 ずれた作務衣の胸元を直しつつ遊紫のほうを見ると、いつになく様子が浮ついているように見えた。 「あん? なんだおまえ、やけに浮き浮きしてんじゃねえか」 「うん! あのね、」 と、上気した頬で眩しいくらいの笑顔を広げ、身を乗り出してくる遊紫の言葉を聞こうとしたおれの耳に、
「霙っ!!」
すらたーんと勢い良く後ろの障子が開く音と、おれの名前を呼ぶ男の声と、がしゃーんと何かが割れる音が一斉に駆け抜けていった。 「……おい、なんか割れたぞ」 「あ、蘇芳じゃん」 遊紫がそう呼ぶので振り向くと、蘇芳という男が肩を上下させておれらを見ていた。 長身痩躯、襟足が肩を過ぎるまでの長さの茶髪。 普段着の緑色のパーカーの上に紺色のエプロンを羽織っているといった家庭的な格好だ。 「おう、料理人。朝っぱらからでっけえ声で。どうした?」 母屋にある厨房からここまで来るなんて、随分と時間がかかるだろうに。 母屋と分室をつなぐ廊下がどれだけ長いか、思い出すだけで疲労が圧し掛かってくる。 そんなふうに項垂れる俺に気付かず、蘇芳は叫んだ。
「客人だ! しかも外部からの!」
……こうして、「狭間の家」帯刀(たてわき)屋敷の一日が、慌しく幕を開けるのであった。 (と、一応文を入れてみる)
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.53 ) |
- 日時: 2007/08/09 13:24:00
- 名前: 壱ノ由華
- 「で・何処行く?」
「う〜ん・・・・電車でジャス●に行く?」 「それいいネ!!!決定!」 今は冬休み。 私達はあと少しで中学生・・・・。 優李と普通の市立中学校に行く予定だった。 でも・・・・運命の歯車はこのときに動き出していた。 ****ジャ●コ**** 「わあ〜・・・・これ欲しい!!」 オレンジと黄色のかわいい花の髪飾り。 「それ・・・・きっと里奈によく似合うよ!」 「本当!?・・・・じゃあ・・・・買おうかなっ。」 320円余裕で買える。 すると脇に、色違いの物を発見。 「優李、おそろいの買おうよ。色違いだけど。」 「それ、いいね!買う買う!!!」 二人ではしゃいでいた。 その時・・・・。 『堕天使ナンバー7リャーン』 「えっ!?」 声に振り向く・・・・が、誰も・・・い・・な・・い。 「・・・・・。」 いなく・・・無い!!かなり離れているけど、向こう側の店で・・・ロリータっぽい服を来た少女が私を見つめている。
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(世界は一つとは限らない、自分が「自分」とは限らない) ( No.54 ) |
- 日時: 2007/08/11 18:55:33
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- それは、少しだけ前のこと。
赤い髪を高くポニーテールで一つに結った黒服の女性に、柔らかな長い茶色の髪の少女が声を掛けた。
「……………………並盛に行きたい」
髪よりも少し淡い琥珀色の瞳で女性を見上げる少女は、自身が来ているゴスロリ調の服に付いたリボンを片手で弄っている。 そんな少女ににこりと微笑み、女性は窓を開ける。 開け放たれた窓から入ってきた風は、女性の赤い髪と少女の茶色の髪、白いレースのカーテンを揺らす。
「じゃあ日本行きのチケット、早く取らないとね。それとも、ヘリかなにかで行くかい?」
そっちの方が早いよ、と言う女性に少し頬を膨らませながら少女は言った。
「ナナ姉、私は並盛に戻りたいんじゃないんだよ。行きたいの」 「どう違うのさ」
ナナと呼ばれた女性は解らない、と言った具合に首を傾げてみせる。 その仕草に少しだけ口端を上げると、少女はリボンを弄っていた手を止め、足を組む。
「コラ、はしたない」 「スカートだから?」 「当たり前だろ。ほら、ちゃんと直す」 「…………世界は一つとは限らないんだよ、ナナ姉」
足を元に戻しながら言った少女の言葉にナナは少し考え込むと、手をぽん、と打つ。 納得したかのように苦笑を浮かべると、少女の側に寄り頭に手を置いた。
「つまり、夢でよく会っている『沢田綱吉』っていう十代目に会いたいんだね?」 「流石ナナ姉! よく解ってる。ロウ兄に言ったら絶対変な顔されるよ」 「アイツは頭が硬いからねぇ」
二人して苦笑を浮かべると、少女は座っていた椅子から立ち上がる。 スカートの裾をふわりと揺らしながら扉に近付き手を掛けると、ナナが待ったを掛けた。
「でもどうやっていくんだい。それに、向こうに行ってもあんたは存在していないんだろ?」 「行く方法は……まぁあるんだよ、一応は。存在を確保する方法は……何とかなるよ」 「ならないって」
行き当たりばったりが半分以上を占めるその作戦に呆れた溜息を吐き、ナナは少女にもう一度近寄る。 くしゃくしゃと長いその茶色の髪を撫で回すと少女は一度顔を顰めて手櫛で乱れた髪を整えた。 それを見て悪い、と言いながらその肩に手を置くと、扉をゆっくりと開けた。
「とりあえず九代目にも話、付けておこうか」
何か知恵が借りられるかもよ。 ナナの言葉に頷きながら、それでも何処か憮然とした態度で、
「私、もう高校生なんですけど」
少女は呟いた。
それは、彼女が彼の隣に行く少しだけ前のこと。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.55 ) |
- 日時: 2007/08/12 21:44:31
- 名前: 壱ノ由華
- 「・・・・・。」
気味が悪い。 すると、もう一度声がした。 『回復率32%』 「え・・・。」 すると少女は消えた。
光の世界 「おかえり・・・・アテナ。」 「・・・・何だ。」 茜色の長髪の女性に声をかけられる。 「古き親友の元へ??」 「・・・・親友なんかじゃない。」 「じゃあ・・・なぜリャーンの所へ行ったの?」 「・・・・・。」 アテナは黙り込む。 「さあ・・・・ね。近いうちに始まるから・・・かも。」
そう・・・・
戦争が・・・・。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.56 ) |
- 日時: 2007/08/16 16:54:36
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- ( alice in the labyrinth / 或る男の独白・1)
・・・・・・おや、こんな所に人が迷い込んでくるなんて珍しいね。 残念だね、此処に入ってしまったら、出られるまで暫く時間がかかってしまうんだ。 暇つぶしに、俺の話でも聞くかい? ―――――――そうか、聞いてくれるか。 これは、数多に存在する世界の、その端に存在する―――――ちっぽけな世界の、物語だ。
では話そう、永劫の迷宮に囚われたアリス達の物語を。
その世界には、“思念”というものが存在する。 何だろうね、簡単に言えば、ヒトの“想い”みたいなものかな。 思念っていうのはヒトの一部のようなもの。 無数に存在するそれは、惹きあい、形を取った。 そして、“ヒトに似たモノ”となったんだ。 信じられないって?本当だよ。 ヒトっていうものは不思議な生物だからね。 想いが強くて、強すぎて、時にそれは形となって視覚出来るものになってしまうんだよ。 そして出来たそれは、思念から創られた故にヒトを超える程の力を持った。 ああしたい、こうしたいという想いから創られたものは、それを叶えることが出来たんだよ。 ただ一つ、不可能なことがあった。 それはそう――――――完全な、ヒトになることだ。
創り主に似てるけど、同じじゃない。 何でも出来るけど、ヒトになることだけが出来ない。
疎まれたり、忌まれることもあったそれは、自分達の存在に迷い始めた。 迷宮を彷徨う、アリスのように。 そして此処にも、自分の存在に迷う者がひとり。 乱雑した思念が混ざり合って生まれたそれは、若い少年の姿をしていた。 思念が混ざり合って、頭の中を常に違う自我が駆け巡る。 創られたばかりで自我のコントロールの出来ない彼――――人の三人称も一応使っておこう――――にとっては、いっそ狂うくらいに苦しかったのかもしれない。 生まれた意味さえも解らず、路地に倒れ伏した彼に、或る男が声をかけた。 「・・・・・やぁ、大丈夫かい、きみ」 逆光で顔はよく見えないけれど、微笑んでいる様子の男はそういい、彼は自棄で悪態をついた。 「・・・・・・・・・・大丈夫だったら、こんな所で寝てねぇよ・・・・」 「ははっ、それもそうだね」 男は笑って、それから手を差し伸べた。 ふわりと、優しく彼の赤褐色の髪に触れて、男は言う。 「・・・・・・・・きみは、“アリス”だね?」 「・・・・・・・・・・? ・・・・・俺に、名前なんかない」 「違うよ、きみみたいに、思念で創られた、ヒトに似た存在。 それを俺は、アリスと呼ぶんだ。迷宮に囚われた、ね」 「・・・・・・・・・センス、悪・・・・・・」 ぼつりと少年は呟き、男は苦笑した。それから、突拍子も無いことを言う。 「きみ、困ってるみたいだね。・・・・・よかったら、うちの娘たちの子守りでもしてくれない? 俺出張多いから、そういう人が欲しいんだ」 あまりに予想もつかない言葉に、少年は驚いて目を見開く。 見開いた視線の先に、男が笑って手を差し伸べていた。 少年は僅かに笑って、その手を取った。
彼は後に、男によってチェシャと名付けられた。 迷宮を彷徨うアリスの、いつか道標になることを願って。 ・・・・・・あまりにセンスが無いし嫌だと彼に反論されて、結局はチェックという名前になったが。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.57 ) |
- 日時: 2007/08/16 22:26:20
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- ( alice in the labyrinth / 或る男の独白・2)
「・・・・・・・・・・・皆、紹介するよ。この子は、マーチヘア・・・・マーチ、って言うんだ」 少年―――チェックが、男に拾われてから半年が経った頃。 男がまた一人、新たなアリスを連れてきた。 そこは巨大な古い屋敷。 吸血鬼伝説とか、ものすごい陰惨な伝説の残る屋敷を、物好きな男は買い取り、住んでいた。 自身と二人の双子の娘と、チェックと家の家事を取り仕切るエティカというアリス二人と。 「なに、おとーさん、またひろってきたの?この子もチェックみたいに落ちてたの?」 ストレートな言い方をする娘の片割れの言葉に、お父さんと呼ばれた男は苦笑し、チェックは青筋を立てた。 「アイカシア、そんなお父さんが節操無いみたいな言い方はよそうね・・・・?」 「てめぇ人の事落ちてただの何だの言いやがって・・・・!」 二人に言われ、アイカシアと呼ばれた片割れは悪びれもせず言う。 「だっておとうさん、おかあさんはおとうさんのこと、せっそーなくて困るわー、ってずっと言ってたし」 「えっ嘘っ本当にあいつ俺のことそう言ってたの・・・・!」 「それに何よーチェック、あんたが落ちてたのは本当のことじゃないっ」 「何だとてめぇ!」 「うっさい馬鹿猫っ!」 言い争いの始まった二人に、双子のもう片方の眼鏡をかけた方、メルカシアがおろおろと仲裁に入ろうとする。 その光景を見て、男は溜息をついた。 「・・・・まぁこんなんだけど・・・・仲良く、してやってね」 「は、はい・・・・」 男に苦笑気味に微笑まれて、綺麗な金髪の少年の姿をしたアリスは困ったように笑う。 そして男は告げた。 「・・・・・・・・アイカシア、きみはこの子と契約してもらうからね」 「ええー!?なんで、なんで?」 予想していた驚きと抗議の声に男はまぁまぁ、と娘を諭す。 「アイカシア、負のエネルギーは知っているね?」 アイカシアは戸惑いつつも答えを口にした。 「・・・・うん、知ってるよ?“思念”の中でも、怒ってるのとか憎しみとか悲しみとか、そういうよくない気持ちから出来たものでしょ?」 「そうだよ。そしてそれで出来たアリスのことは?チェック」 「・・・・ジャバウォック、ってお前は呼んでるんだろ」 チェックに話を振り、正しい答えを聞き男は満足げに笑う。 「その通り。・・・・この子、マーチはね、思念と負のエネルギーが入り混じったアリスなんだ。 ちょっとした負のエネルギーを吸収しただけで、ジャバウォックにもなりかねない。 存在自体が、不安定になってしまっているんだ」 それはまるで、心の中に狂気を秘めた“三月ウサギ”のようで。 だからこそ男は、彼を“マーチヘア”―――――――“三月ウサギ”、と呼んだ。 「契約するのも、彼が消えないようにするためなんだ。 俺はエティカの契約者だから、マーチとは契約が出来ない。・・・・・解って、くれるね?」 言い聞かせるように言った男の言葉に、アイカシアはにっこりと笑った。 「もちろん。この子が消えないために、あたしが力をあげるんでしょう? 大丈夫よ、よろしくね、マーチ」 「・・・・・・・・・・・・・うん、アイカシア」 こうして二人は契約を交わし、互いの手首に赤い兎の契約印を印した。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.58 ) |
- 日時: 2007/08/17 12:11:20
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- ( alice in the labyrinth / 或る男の独白・3)
活発で積極的な契約者、アイカシアのおかげでマーチはすぐこの屋敷に馴染み、子供達4人で仲良く遊ぶ様子がよく見られた。 ただ、双子の妹―――――メルカシアは、自分でなく姉が契約者として父に選ばれたことに、少なくともショックは受けているようだった。 「・・・・・・・・・・アイちゃん、いいなぁ」 契約を交わした数日後のこと。 姉妹2人きりの部屋の隅で、メルカシアが呟く。 アイカシアは不思議そうな顔をした後、メルカシアの視線が自分の手首に向けられているのに気づきああこれ、と呟く。 「メルも欲しかった?」 「・・・・・だって、綺麗なんだもの」 ぶすっとむくれたように言うメルカシアに、アイカシアは諭すようにメルカシアのふわりとした金髪を撫でる。 「メルは体弱いでしょ?マーチに力あげる前に、メルが倒れちゃうわよ。お父さんも考えてるんだよ、ちゃんと」 「解ってるけど・・・・わたしは体が弱いし、何かやってもすぐ失敗するし、要領悪いし。 お姉ちゃんが選ばれるって、当然だし当たり前だけど・・・・・やっぱり、ちょっとショックだったな」 透き通るような真紅の瞳を細めて、悲しそうな顔で。 呟く妹の顔を見て、アイカシアはそっと妹の手を握った。 「大丈夫よ、メル。メルもきっと、契約者になれるよ。 ・・・・・・・・・・・・・チェックと、とかね?」 名前を出した途端赤くなった妹の顔を見て、アイカシアは笑う。 「・・・・・・・・・・・・好きなんでしょ、チェックのこと」 「・・・・・・・・うん。ぜったい、絶対秘密だよ?絶対、だよ?」 顔を赤らめながら、縋る様な目でメルカシアは姉に言う。 「・・・・・・・・・もちろん。2人だけの秘密、ね」 アイカシアがにこりと笑い、メルカシアも微笑んだ。 それは、ある日交わされた、小さな姉妹の小さな微笑ましい約束事に過ぎなかった。
これがその後、惨劇の要因の一つになろうとは、誰も思いもしなかった。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.59 ) |
- 日時: 2007/08/18 23:02:03
- 名前: 壱ノ由華
- 「何なの・・・・。」
蓮華は、その夜眠れなかった。 いや、正式には眠らなかっただろう。 夢を見るのが・・・・怖くて・・・・。 「蓮華!!!」 「優李・・・・・おはよう・・・・。」 明らかに元気がない。 「どうか・・・・した??」 「何でもない・・・。」 全然なんでもなくない!! でも 優李には心配をかけたくなかった。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.60 ) |
- 日時: 2007/08/18 23:51:41
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- ( alice in the labyrinth / 或る男の独白・4)
それから更に半年が経った、ある日のこと。 「皆さん、落ち着いて聞いてくださいね。・・・・・・・・・・・・・主様が、いなくなられました」 朝食の席で、エティカが皆に言う。 その目は悲しげに、今はいない主、アイカシアとメルカシアの父が座るべき座席に向けられていた。 男はとある怪しげな会社の社長だった。 詳細は語らなかったが、屋敷をよく訪れる社員らしき客人達の変わった風貌で、とても変わった職種だということは家族全員が理解していた。 そして出張がとても多く、エティカにさえ告げず急に失踪し数週間後に帰ってくるのは最早習慣のようになっていた。 しかし、エティカの表情で、今までとは状況が違うことが痛いほど伝わってくる。 気まずい空気の中朝食が終わり、アイカシアは食べ終わったメルカシアと共に部屋を後にし、自室へ向かう。
「・・・・・・・・アイちゃん、アイちゃん・・・・・どうしよう、わたし、」 沈黙が続いたまま歩いていた時、泣きそうな声音で呟いたのはメルカシアの方。 その声に振り向いたアイカシアは、もう、と眉根を吊り上げて妹を叱咤する。 「メル、何時までも気にしないの!どーせ何時ものことよ、またふらっと帰ってくるって」 「でも、でもエティカは・・・・・!」 ついにメルカシアは泣き出して、アイカシアは呆れたように、けれど優しくメルカシアの頭を撫でる。 「・・・・・・大丈夫、エティカはちょっと悲観的なだけよ。きっと・・・」 「でも、でも・・・・!わたしがお父さんの大切なもの、壊しちゃったから・・・!きっとお父さんは、わたしを嫌いになったの」 赤く泣き腫らした目で、メルカシアは必死に語る。 二人には母がいない。 元々体の弱かった二人の母は、双子を産んだことで体調をさらに崩し、二人が6歳の時に死んだ。 その母が持っていた、大切なペンダントがあった。 男は自分の妻の形見として大切に保管していたが、先日メルカシアが落として壊してしまった。 男は笑って「大丈夫」と言ったが、幼いメルカシアはそれがずっと気に病んで仕方なかったのだ。 「それに、お母さんも・・・・!わたしを、二番目のわたしを生まなければ、きっと、」 体を崩して、死ぬこともなかったのに。 たった10歳の幼子に、その重圧が圧し掛かっていた。 アイカシアも黙りこくり、暫く沈黙が続く。 その日のうちメルカシアが口を開くことは、一度として無かった。
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