泡になった愛に俯く ( No.21 ) |
- 日時: 2007/07/12 19:51:57
- 名前: 色田ゆうこ
- 俺の好きなシャープな輪郭や切れ長の黒い目は、広げられた新聞によって遮られてしまった。
横のテレビの中で、コミカルな音楽と一緒に、お天気お姉さんが今日の予報を伝えている。 夜、台風が近づいてくるらしい。そういえばもうそんな季節か。 何も書き込まれていない七月のカレンダーを横目で見ながら、俺は視線を手元に戻す。 納豆をかきまぜている途中だったことに気づく。父が新聞をめくる。
「父さん、俺、フランス語教室に通おうと思ってるんだけど」 盛られた白いご飯の上に納豆を乗せながらそういうと、広げた新聞紙の上から、父の両目が覗いた。 「そりゃ、なんでまた」 声も容姿も決してやわらかい印象ではないのに、口調や性格に可愛げがあるのが好きだった。 同級生の親たちに比べるとうちの父は若い方だったし、仕草にどこか上品な感じがあって、 ことあるごとに他人が羨ましがってくるのも嬉しかった。 「今すぐじゃなくていいんだ。いいんだけど、いつか、いつかの話なんだけど、 フランスに行きたい。俺、もっともっと菓子の勉強がしたいんだ」 「……、ああ」 納豆の糸がふわふわ伸びる箸をくるくる回しながら、俺は言った。 父は新聞を畳みながら、すこし視線を上げてどこかの空気を見ていた。 箸を焼き鮭に伸ばす。これは父が焼いた。隣には、俺がつくった目玉焼きがある。 「高校がああいうところだからチャンスはあるし……父さんとよくつくるだろ、ケーキ。 ああいうやさしくてキレーな菓子のこと、もっと知りたいんだ、だから、」 「直樹」 「何?」 日本語ってなんでこんなにいい訳くさいんだろう、と、鮭を口に運ぼうとすると、 父がふっと姿勢を崩した。懐かしむように目を細める。 「Vous ressemblez a mere」 「、え?」 「いーよいーよ、フランス語教室行っていいし、フランスも行っていいよ」 「――ん、ありがと。……俺もバイトするけど父さんも儲けてね」 「うわ、忙しくなるなあー……」 苦笑した父が、そのまま麦茶を飲み干した。 二人そろって起き、二人そろって料理をつくり、二人そろって食べて、 二人そろって家を出るのは、いつのまにかできた家族の中でのルールだった。 (反対されるかと、思ったけど) 目玉焼きをつついてとろりと溢れてきた黄身が指について、俺は口を尖らせる。 「おっ、しし座一位」 テレビが占いを伝え始めて、父が手を止めた。――父さんはかに座だ。 ご飯がかたくなってまずくなるから早く食べろって言っているのに、父はいつもここで手を止める。 父さんはかに座だ。 しし座なのは俺のほうだ。今月の下旬に誕生日がある。 「誕生日どうする? 一緒にいろいろ作るか?」 八位のかに座には目もくれず、父はガラスのコップに新しく麦茶を注いだ。 俺は、その言葉に首を横に振る。いい、と言うと、父はそっか、と笑った。 「そっかそっか、直樹も大人になったんだなあー」 「何言ってんの」
(――――母さん、) 母が。母が。母が。ここにいてくれれば。 一緒に笑ってくれれば、この人がこんなに寂しそうにすることもないのに。 鮭の皮を思い切って飲み込んで、その苦さに顔をゆがめる。 覚えているはずもない母の影を思い浮かべた。 白いレースのカーテンが、父の後ろで揺れている。どんなに目を凝らしたって、母はそこには現れない。 父さんはどんなに努力しても、俺の母にはなれなかった。家族は俺たち二人だけだった。 何気なく飲んだ麦茶が思った以上につめたくて、俺はまた顔をゆがめた。
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(付き合い始めて何日目?) ( No.22 ) |
- 日時: 2007/07/22 15:47:20
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- オレのクラスメイトに彼女が出来た。
そのクラスメイトっつーのは、同い年な筈なのに何処か達観していて、冷静でクールで格好良くて。 実際、女子が(同学年も先輩も一丸となって)夢中になるほどの人気だった。男のオレから見たって美形だし。 ただ、何処か他人と距離を作っているように見える奴だったから、正直彼女が出来たときには驚いたな。 しかもその彼女って言うのが、オレの双子の姉貴の友達で、結構何だかんだでオレとも仲良くしてくれる奴だったんだから更に驚き。 彼女は結構大人しくて目立たないタイプだから、一体何が切っ掛けでアイツが興味を持ったのかオレには解らない。 っていうか、アイツ――――――――恭哉の考えが読める奴なんていないだろ。 分厚い壁を作って、一人でいる時間を好いている恭哉。 オレが話しかけたときだけ壁は薄くなってくれるけど(多分他の女子とかへの対応と同じだ)、会話が終わればすぐに壁が戻る。 だからだろう。 ああもうホント、こんな恭哉の姿なんて想像したこともなかった!
「……ちょっと、聞いてるの?」 「きーてませんでしたー」 「…………殴っていい?」 「それは勘弁っ」
ただいま現在自分から話しかけることが極端に少ないはずの恭哉君に話しかけられてます。 何がどうしてこうなったかって、そりゃあもうすぐ恭哉の彼女である玲奈の誕生日だからで。 玲奈との(友達)付き合いが長いオレに誕生日プレゼントは何がいいかな、と聞いてきたのだ。 玲奈という彼女が出来てから(実際には、その彼女を泣かせた後から)、恭哉のオレへの態度が変わった。 なんて言うか……そう、頼れるクラスメイトに昇格! って感じだ。嬉しかねーケド。 多分あの時に「オレは玲奈の友達なんだぜ〜」みたいなことを言って、尚かつ恭哉に家を教えたのが原因だと思われる。 って冷静に分析してる場合じゃなくて。
「玲奈の誕生日なー。……あー、姉貴は毎年チョコやってるけど」 「チョコ、好きなの?」 「や、甘いもの全般普通に好きじゃなかったかな。女子だし」 「ふぅん。……で、どんなチョコ?」 「チ○ルチョコ」 「………………なにそれ」
だって毎年それなんだもんよ。 オレだって気になって何で毎回それなのか聞いてみたさ。 曰く、「プレゼントはたとえ十円でも十万でも気持ちの入り方が大きい方が高いのよ!」だそうで。 玲奈も嫌がらずに毎回笑顔で受け取っているからきっと、玲奈にとっては確かにそう言うものなのだろうと思う。 だけどいくら何でもチ○ルチョコはどうかと思うんだ、オレでもさ。
「気持ちが入ってりゃ何でも喜んで受け取ってくれるって」 「そりゃあ玲奈は優しいし人の気持ちを第一にするし自分に向けられる好意には積極的に行動しようとするし…………」
あ、地雷踏んだ。 最近は話しかけられる機会が増えたせいか、恭哉の玲奈に対する溢れんばかりの想いを聞かされることが多くなってきた。 っつーかあれだ、プレゼントの話じゃなくて実は惚気たかっただけだろテメー。 等と思っている間にも長々と惚気話は続いていく。 ちなみに今いる時間と場所は昼休みの屋上という絶好の静かなポイント(の一つ)だったりする。 生徒立ち入り禁止だけど、鍵が掛かってたりするんだけど、オレの手にかかりゃあどうってコトないね。 それに、周りがこの惚気話を聞いて恭哉から離れるよりはマシだし。 人垣の中にいるこいつを見るのがオレは結構楽しいのだ。恭哉を囲む壁をしっかり遠くから見れるから。
「はいはい、わーったから。……そーだなぁ、定番としては」 「定番としては?」
くりっ、と小首を傾げる恭哉。 他の奴がやるとただただ幼稚に見えるそれも、何故だか似合って見える(あれ、オレの目って節穴だらけだっけ)。
「ぬいぐるみとか花束じゃね?」 「……ああ、そう言えば結構ぬいぐるみあったかも」
今恭哉は玲奈の部屋の中を思い出していることだろう。大中小のぬいぐるみが置いてあるあの部屋を。 ……うん、女子らしいよな、姉貴の部屋と違って。
「そうか、じゃあぬいぐるみと……お菓子、にしようかな」 「それがいーって」 「ありがとう、礼治」 「うっわ栗宮がオレにお礼言った!」
初めて過ぎてびっくりして腰抜けると思った! そう言ったら呆れた視線を投げかけてくださいました。いらねーっ!
「僕だってお礼を言うときはあるよ」 「言わないときもあるのかよっ!」 「相手によるね」 「っていうか、お前に名前呼ばれたの初めてなんすけど」 「そうだっけ」
今までキミとかキミとかキミとか(あれ、全部二人称じゃん)しか言われてませんでしたけど。 名字ですら呼ばれてねーって、それもどうよ。
「じゃあキミも僕のこと名前で呼んだら」 「え、いいのか?」 「別にどう呼ばれてもいいからね」 「彼女以外興味なしかよ!」 「当たり前でしょ」
がっくりと肩を落とす。 彼女が出来て少しでも変わったんじゃあ、なんて淡い期待を抱いたオレが馬鹿だった。
「まぁ、キミには色々感謝してるけど」 「えっ?」
ボソリ、と呟かれた言葉が信じられなくて顔を上げると、何でもない、と返された。 どうやら聞こえなかったと思ったらしい。 仕方ない、聞こえなかったふりをしてやろうじゃあないか。素直じゃない恭哉君のために! 玲奈と恭哉、付き合い始めてもうすぐ二週間。 恭哉の方に、少しずついい変化がもたらされている、らしかった。
――――――――――――――――――――――――― (>>35へ続く)
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パターン3 ( No.23 ) |
- 日時: 2007/07/15 14:05:43
- 名前: 涼
- 空港で、まだ地についている飛行機を見つめる
あの中に結城がいるんだ・・・・・ 複雑な気持ちで飛行機の方へと伸ばした手は ガラスにあたり、途中で遮られてしまった そのガラスに額をつける
・・・・ごめんなさい・・・・・
私がパリの話を聞いたのは冬の事だった 結城は絵の才能に秀でる人だから、 パリの先生が結城を誘っての事だったみたい 彼は嫌がったんだけど、ちょうどその頃結城のお父さんも海外赴任の話が持ち上がって ちょうどいいからと、お父さんが独断でパリ行きを決意したらしい 彼はこの前まではずっと拒んでて一人で日本に残るって言ってたんだけど あの出来事は私達の予想通り、ショックみたいで彼に旅立つ事を決心させたのだ
結城と別れるのが嫌で、パリに行かないと断言した事を私は素直に喜んでいた これからも一緒に結城といられるその気持ちの方が一杯だったし・・・ でも、昼休憩に美術室に行っている結城を見て考えが変わった 彼にとって、絵の世界は必要なのだ ここにいても才能が埋まるだけでもったいない・・・
ここにいてくれる事を喜んで受け入れるか 彼のためにパリ行きを勧めるか・・・
もちろん私は後者の方に入っていた 友達の怜二に聞いてもまた、彼も後者の方だった 結城は頑固な所があるから、何度私達が進めても決して首を縦に振ろうとはしなかった
だから私はあの計画を考えた 日本で嫌な事があれば、きっとパリに移る事を決めるだろうという仮定の中で それには怜二に協力して貰わないといけない 彼にこの話をすると、最初は嫌がっていたものの 結城があまりにも頑固に首を横に振るから最終的にOKをくれた
私が、計画したせいで結城と怜二の仲を壊してしまった 私のせいだ・・・・ こうして私が隠れて見送っているのも自分のせい
今も好きだよ、結城 片手の携帯を握りしめた
携帯にかすかな振動が感じられる メールが来たみたいだ ちょっとためらってメールを見ると送り主は結城だった そこには一言
「ごめん、ありがとう」
ごめんね、結城 飛行機が発つ 見えているのかどうか分からない結城に泣きながら大きく手を振った
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.24 ) |
- 日時: 2007/07/22 09:51:03
- 名前: 玲
- 参照: http://monokuro00labyrinth.web.fc2.com/
- 平日の午後。
梅雨が近付きつつあり、灰をそのまま固めたような色の雲が空に浮かんでいる。 こりゃあもうすぐ雨でも降るなあと思いながら、おれは正面で視線を下に落としている少年を見た。 そいつは足を組み、鋭い眼孔を眼鏡で隠して手元の本に見入っている。 文庫本のようで、面積自体は小さかったがそれ以前に、字が米粒のように細かくておれなら頼まれたって絶対読まないような代物だった。 分厚い本を器用に片手の指だけで挟んでいる。 そんなおれの視線に気付いたのだろうか、仏頂面でおれを見て一言。
「何」 「なあ沖人。お前女と付き合う気ねぇの?」 「別に」
そいつ――沖人はまた一言で答える。 おれが沖人にこんな質問を投げかけたのには理由がある。 こいつは黒髪眼鏡というおたくも吃驚なダサい外見にも関わらず陰で女子に人気がある。 その由はいまいち不明だが、気が付けば女子と二人で中庭にいるという事もしばしば。 まあ、いつも女の方が顔を紅くさせて戻っていく。 そんな訳で、おれは沖人が女と付き合った事例を見たことが無い。
「女に興味ねぇの?」 「別に」 「好きな女いねぇの?」 「……別に」 「あっ、今間があったぞ! いるんだないるんだろ!」
沖人が形的に多分五月蝿いと口を開きかけた時、教室の扉付近に立っている男子が沖人の名を呼んだ。
「沖宮ー、客だぜー」
客……? おれがそう思ったのと正面でがたがたっと音がしたのがほぼ同時で、おれが<客>に顔を向けようとしたのと沖人の手が顔面に飛んできたのが一緒だった。 咄嗟のことに目を瞑り、次に闇の中から抜け出したらそこに沖人の姿はなく。 視線を扉方向に向けるとそこには女子生徒と対談している沖人がいた。 見たことない顔だな。二年生か? そんなことを思いながら観察する。 見ているうちにある重大なことに気が付いてしまった。 ああ沖人。そんな顔してたらばればれだよ。 傍から見ればいつもと変わらない殆ど無表情の沖人。 多分、自分すら自覚していないだろう。 だが俺には判る。 そうかぁ、あいつにもとうとう……と、その瞬間、沖人の顔が柔らかいものから一変した。 すげぇ殺気立ってるように見えるんだが、どうしたんだ。 よく見ると、女子生徒の他にもう一人、制服を着た男子が突っ立っている。 こっちは見たことがある顔。 同じ部活の後輩で、人見知りっつーもんをしらないでやらた懐っこい奴。 なんであいつが此処に……? 沖人と知り合いだったなんて聞いてないぞ。 その時、タイミングよく雨が降り始めてきた。 こいつは……
「嵐の予感、だな」
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watermelon? ( No.25 ) |
- 日時: 2007/07/16 18:38:16
- 名前: 咲
- 参照: http://yaplog.jp/nekogokoro-111/
- 少しじめじめした、ある梅雨の朝でした。
私の所属している部活の、数少ない部員が引っ越すというので、こうして駅に部長と一緒に見送りにきたのでした。 ドアの向こう側でこちらに手を振っていた彼が、見えなくなったころ、部長が何言い出すかと思えば・・・。
「なんだか、すいかの種みたいな人だったね。」
返す言葉が見つかりませんでした。 す、すいかの種、でありますか?部長。
「いやだからね、いたらいたで結構煩くて変なやつでうざいけど、 いなくなったらいなくなったで悲しいよね、っていう意味だ。」
私の心の中が読めたのか、私の表情の微妙な変化を見つけたのか、部長は解説をして下さいました。 しかし、部長は一番の疑問の解説はして下さりませんでした。
「それで、何ゆえすいかの種?」
仕様無し、私は部長に問いかけました。
「だってすいかの種ってあったら邪魔でしょ? 折角かぶりついたって、種があんから口の中で実と種をわけなくちゃいけない。なんというか、じれったい。 でも、無いは無いで、なんだから嫌じゃないかい? 赤だけの実って、なんだかインパクトがなくて食べる気失せると言うか。芸術じゃない。 それに、種がなかったらアイスのスイカバーにもチョコは入らないと思うと・・・。 君もそう思わない?」
部長は、なんと言うか、変わった考えをお持ちなんだと思いました。 あんな黒い種でインパクトを受けるとも思いませんし、 あんな小さいチョコのこと気にする部長は、A型なのだろうか。 否、ただ単にチョコが好きなのだろうか。
「・・・よく判りません。」
私にはこう答えるしかありませんでした。
(というか、あの緑の黒の縞模様の皮だけでも、充分インパクトはある気がする、と思うのは私だけでは無い筈。)
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(強くなるために、皆と離れていても笑ってくれますか?) ( No.26 ) |
- 日時: 2007/07/18 19:41:53
- 名前: 春歌
- 暑い・・・・
でも、心は冷え切っている こんな矛盾が当たり前になってきた今日この頃
「ねぇ・・・・留美?」 「なにさ、智華?」 「明日終了式?」 「そうだけど?なに」 「いや・・・なんでもない」
小学校からの友人とほとんど会話しなくなって もう2週間が過ぎた 喧嘩があったわけではない、ただ本当に突然 話さなくなったし、遊ばなくなった そんなことが悲しくて、勉強も手に付かなかった
「あー;;夏休みの宿題めんどく無い?」 「仕方ないよ、補修に為んなかっただけマシ」 「そーだけどー」 「いいじゃん、部活に出れるんだから」 「まぁ、、、ね」
7月下旬、暑さが厳しくなり始めたこの時期 もう。 関係は戻らないと、そう思った ねぇ?一度でいいからまた
「留美・・・・」 「なに?」 「うちね、がんばってみようと思う」 「は??・・・・・」 「いいよ、分かんなくたって」 「あ、、、そう?」 「うん」
鈴木智華。 中学最初の夏が始まる
(さぁ、祭りの始まりだ!!!)
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(グロリアス) ( No.27 ) |
- 日時: 2007/07/19 18:59:29
- 名前: 竜崎総久◆OMBM0w5yVFM
- 参照: http://ameblo.jp/html202/
- 罫線も何もない、真っ白なノート。
その自由なキャンバスに、シャープペンシルで落書きをするのが好きだった。 授業中、彼女の横顔をそっと盗み見て。…「音」に依存するようになってからは、めっきり描かなくなってしまったけれど。 「尚、もう絵やめちゃったの?……尚が描く絵、結構好きだったのに。」 彼女がそう言ってくれなかったら、もうあのノートを開くこともなかったろう。ベッドの下で色褪せた、あのピンク色のノート。 ページをめくれば、色々な表情の彼女が居た。眠そうな顔、嬉しそうな顔、どこか物憂げな顔……。荒削りだけど、その分どこか純粋な絵。セミロングヘアの彼女も居れば、髪を切ってショートカットにした姿もあった。 …私も、純粋に恋をしていた時期があったんだ。 叶わない恋だったかも知れないけど。それでも純粋に、恋を、誰かを好きでいることを、楽しんでいた時期があったんだ。 ……昔の自分に、救われた気がする。 目頭が熱くなって、思わずノートを閉じた。
(>>15の続きっぽい感じ)
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(矛盾の世界) ( No.28 ) |
- 日時: 2007/07/20 19:28:48
- 名前: 春歌
- ふと、、、、見上げるとあのころと変わらない空
嗚呼、なんて矛盾 昔の私に・・・そうでなくても一ヶ月前でいい 戻りたい・・・・いま、あの子傷つけたことを物凄く後悔した
「光裏どうかした??」 「藍・・・・・」 「物凄く後悔した・・・・」 「あぁ・・・・智華か」 「うん・・・」
智華とは5年のころから親友で 何でも話せる、そして一緒に泣いてくれる すごくいい友達 なのに・・・・・・・・・・
「あっけなかったねぇ」 「まぁ・・・・」
私たちの最後は単純な言い争い そんなことで関係が終わってしまった 嗚呼、なんて矛盾 こんなにも大切だと思うのに こんな簡単に傷つけて
「綺麗だね・・・」 「明日から夏休みかぁー」 「一度も遊ばないということは避けたいね」 「まぁね、、、、、」
そういってお互い笑って また、3人で笑いたい そんなことを思いながら いつまでも陽のした2人で笑いあった
山本 光裏 中山 藍 お互いの心は通じ合ってる、そう確信して前に進む
(矛盾の世界、過去の思い出が色褪せて蘇る)
>>26の続き
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(まぶしい/ヒヨとオウサワ) ( No.29 ) |
- 日時: 2007/07/24 02:56:40
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- 「オレ、先輩がすきなんです。」
鶯沢が放った言葉は夏の生温い風とともに灯世の耳を掠めていく。いわゆる「告白」というやつではあったけれど、灯世の世界からはそういうものはいままでひたすらに遠く、霞んでいたものだったために、なんだか嘘みたいに頭に沁みていった。あまり驚けない。(もしかしたら、心のどこかで自覚していたのかもしれない。)なんてみにくくて薄情な人間なんだろうと、灯世は自分を嘲った。相手は本気だ。真剣な目をしている。だけど灯世は目の前のこの後輩を「恋愛対象」として見ることはできなかった。その代わり、少しだけ、尊敬した。なんてひた向きなんだろう。なんてきれいでまっすぐなんだろう。それこそ鶯沢は、夏の太陽とか風とか、そういうまぶしいものと同じように灯世の眼に映っていた。なにも言わない灯世に、鶯沢が微笑する。眉をハの字に下げて、こまっているような笑い方だ。「ごめんね」も「ありがとう」も言えない自分に腹が立つ。じわじわと、夏の気配が灯世のなかに苛立ちとなって染みこんできた。鶯沢はまっすぐな茶髪をかきあげて、こまったように、うれしそうに笑った。
「暑いですね。」
まるで先の言葉がなかったかのように、日常的なことを呟いた後輩が、灯世の眼にはやはり眩しく見えたのだった。
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(冷たいけれど優しい君は、) ( No.30 ) |
- 日時: 2007/07/21 14:47:57
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- ピタッ
ひんやりと冷たい手が、私の手に重なった。
日焼けのしていない綺麗なその手は、ひんやりと冷たく、そして優しいように感じた。 女性でもこんな綺麗な手をした人はなかなか見かけない。 そして、まさかそれが若い男の手だったとは思いもよらずに、私は静かに驚いていた。
「あ……ごめんなさい」 「いえ」
本日の特売品と赤い油性ペンで書いた貼り紙の前で、私達は何をするでもなくただ止まっていた。 2人とも手を豚肉のパックに置いたままで。
私の見た限りでは彼は高校生ほどの青年、または少年だった。 さすがに背は私よりも高いけれど、どこかまだ幼さが残るようなところがある。 しかし今はそんなことよりも優先すべきことがあった。 特売の豚肉はあと1パックのみ、これを逃すと今夜の私の夕ご飯は豚肉抜き豚汁になる。 もはや豚汁ではなくなってしまうのである。 (困ったな……) きっと少年もどうしていいかわからないに違いない。 そう思った私は、じつに愚かだった。 彼はしばらく黙っていたあと、ふいに感情のこもらない(こもっているとすれば相当不機嫌な)口調で言った。
「あのー……これ、もらってもいいですか」 「………は?」
私がそう聞き返した時にはすでに彼の姿はなく、私1人がポツリと立っていた。 あまりのことに声も出ない。
(いっ……今時の若者は人に譲ろうとか考えないの!?)
まさか私に「今時の若者は」なんて言葉を使う日がくるとは、夢にも悪夢にも思わなかった。 怒りを通りこして呆れてしまって、もう何も買う気が起きない。 豚肉抜き豚汁でもよしとしよう。
「うー最悪だわ、手が冷たい人は心が温かいって迷信だったのかしら……」 大きな独り言を呟きながら、近くにあったベンチへ腰を下ろした。 あと少しで「よっこいしょ」なんて声に出すところだったが、なんとか回避できた。 ギシ……。 誰かが座ったためベンチが軋んだ。 何気なくそっちに顔を向けて、私は一瞬硬直した。 目に飛び込んできたのは、ついさっき豚肉をかっさらって消えたあの少年だった。 「っ……! さっきの可愛くない少年!」 「……ああ」 少年は心から面倒くさそうに私の方に顔を向けた。 意外なことに、彼は私のことを覚えていたらしい。どうせ五月蝿い女だとかそういう意味でだとは思うが。 そしてなんとなく予測はついたが、素っ気ない口調で言う。 「何か用ですか」 「う……べっ別にないけど……本当に可愛くないわね!」 「それはどうも、ありがとうございます」 棒読みでそう答えて、少年はベンチからスクッと立ちあがった。 本当に可愛さのカケラもない子供。きっとまたそのまま行ってしまうのだろうと思った。 だから差し出された手に、私はとても戸惑った。
「…………これは、何?」 「見ればわかると思うんですけど、頭でもぶつけたんですか」
少年の言葉に少しムッとしたが、ご厚意に甘えて私は彼の手を取った。 やっぱりひんやりと冷たくてどこか優しい感じがした。 「……お礼は言っておくわ、一応ね」 「そうですか」 彼は肩を竦めてそう言った。 その一瞬、彼が微笑んだような気がして、私の動きが止まる。 心のこもっていない声で呼びかけられ、気がつくと彼が少し不機嫌そうな顔をしていた。 (……気のせいだわ、確信が持てる)
うーん、こんなこと思いたくはないけれど。 この季節、冷たい優しさは少しだけ、嬉しいような気がする。……かも。
「手、すごく温かいんですけど。むしろ暑い、ベタベタしてる」 「うっ……五月蝿いわね、君の手がすごく冷たいだけでしょ!」
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