(いとしい/ユウヤとレイ) ( No.41 ) |
- 日時: 2007/07/26 11:29:35
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- 「猫って、ほんとうにかわいいよね。」
黎が呟いて、手元の子猫を撫でた。クリーム色の毛並みに黎のしろい手が埋もれる。柔らかそうな子猫。黎は、おだやかな笑みを浮かべながら猫の鳴き声を聞いていた。絶対に人間に向けることはないであろう、無邪気で無防備な、子供の笑顔。ほんとうに黎は猫がすきなんだね。と横にいる僕が笑いかければ、即答で、だいすきだよ! と帰ってきた。やれやれ本当にこれでは子供のようだな。まるでお父さんだかお母さんみたいな気分になって、僕はふと黎の黒髪を撫でてみた。(これは僕だけが知っているのだけど、黎の黒い髪は光の加減によって青にも緑にも紫にも見えるんだ。いまは紫色にきらめいている。)すると、虚を突かれたような顔をして黎が僕を見た。それから、なにしてるの、と少しだけ困ったように僕に尋ねて、仕方なさそうに笑った。(ああ、いとしいなあ。)石鹸の香りが漂う黒髪に手のひらをうずめながら、僕は笑ってみた。
「黎も可愛いよ、ほんとに。」
そう言ったら何故か黎が「信じらんない」って言いながら僕の頭を叩いたんだけど、僕ってなにかへんなこと言ったっけ…?
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(性格の悪い魔導書) ( No.42 ) |
- 日時: 2007/07/26 21:00:25
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- 重いローブを振り上げ、片手に持った分厚い本を開く。
綴られた文字が光を灯して浮き上がり、包み込むように宙に広がった。 さっとローブを翻し文字に示されるままに言葉を紡ぐ。 宙に広がった文字が声に反応し、ユラユラと揺れはじめた。
「――の力よ、我が為に、今ここに示せ! コン…」
『嫌だね』
急に風が吹き上がり、尻もちをついたと同時に手に持っていた本のページがすごいスピードでめくられていく。 一番最後のページまでめくれたところで風は止まった。 白紙のページの上にジワリと「NO」を意味する文字が滲みでた。 「また失敗か……」 顔に覆い被さったローブのフードを上げ、少年は首を振って乱れた髪を整える。 そして本を丁寧に閉じて恨めしそうに睨んだ。 本はピクリとも動かずにどこからかこもったような声をだした。 『中級魔導師ごときが私と契約しようなど、1000億年生きてもまだ早い』 どこか鼻で笑うような言い方だ。 少年は不満そうに顔をしかめ、床に強く両手をついて本を見下ろした。 「おまえじゃないんだからそんなに生きられるわけないだろ」 『どんなに生きようともおまえは無理だね、生理的に受けつけられない』 「本のくせに「生理的に」とか言うな!」 叫びも虚しく、本からはそれっきり何も聞こえてこなくなった。 困ったようにため息をついて少年は本を拾い上げる。 ふと、自然に言葉がポツリと零れた。それを呟き、何だかおかしくて小さく笑う。 勢いよく扉が開く音がして誰かが少年の名を呼んだ。 そっちに向かって返事をし、バタバタと慌ただしく少年は部屋を出て行った。
部屋に残された本はこもった声で呟いた。 『フン、何が』
魔導書のくせに、本当に嫌なヤツ……。
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(一途に・・・) ( No.43 ) |
- 日時: 2007/07/28 16:33:10
- 名前: 春歌
- あの子とあったのが半年前
天使の笑みをまとった悪魔
「アリュス・・・・・また来たのですか?」 「貴方が、誰かを憎み、力を手に入れたいと思うまで
あぁ、またなのね と言えばくすりとわらって私に術をかける 悲しみと、欲と、憎しみの けれど 悲しみに塗れたって 欲に溺れたって
「ア・・リュス・・・・」 「憎む気になった?」
にこっと笑い術をとめる
「アリュス・・・私は決して憎みはしません」 「・・・・不思議な人」
そういって貴方は消える でもまた来るのでしょう? 私に憎しみを植えるために けど・・・・・
「無駄なことを・・・」
ぽつぽつと雨が降っている でもきっと・・・・
「朝には晴れるわ」
なんど、術をかけられたって 一途に何かを思えば・・・・
「穢れはしない、憎みはしない、そうよね?・・・」
光瑠? 今は無き純粋で気高き友人の教えを・・・・・・
「私は決して憎まない」
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(断罪の少年) ( No.44 ) |
- 日時: 2007/07/28 20:11:59
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- 久々に見た夢は綺麗だった。
何も信じられずに、ただ銀の刃を握り締めて。
追われ続けて、それからいきなり変な浮遊感がして。
大地のような所に叩き落されて、動けずにいた時――――――――――
声がした。
久し振りに聞く、怒っても憤っても憎んでも哀しんでも慄いても恐れても蔑んでも狂ってもいない、やさしいこえ。
「―――――――?」
少し聞き取りにくい言葉で、それは自分の話す言語と少しだけ違うと解った。
その声はとてもあたたかで、やさしくて。
この夢がずっと続けば良いのに、そう思ったら、意識はいきなり闇に途切れた。
*
目が覚めると、自分は黒い天井を見つめていた。
清潔なベッドに寝かされていると解り、少し時間をかけて身を起こす。
「・・・・・・・・あ、目が覚めた?」
そのとき自分が寝かされている部屋に誰かが入ってきて、思わず身体を震わせた。 それが先程の声の少女だと解り、急に安堵したような気持ちになる。
「・・・・・・・・・・・此処、は」
少女が首を傾げたので、もう一回ゆっくりと云う。
「此処は、何処」
上擦った声で訊くと、少女はにっこりと笑って言う。 「・・・・・やっぱり、言葉の発音が微妙に違うみたいね。 ・・・・・・・・・・・此処は<教団>。とりあえず、あなたの名前は?」 解りやすく、ゆっくりはっきりと。 少女は告げた。 よく解らない単語もあったが、多分大方合っているだろう。 名前を訊かれ、少し躊躇う。 自分の名前は、周囲には疎まれていたからだ。 きゅっと唇を噛むと、少女は薄く笑ってから話し出した。
「あたしの名前はミユ。ミユラ・アレスラ・ハロルド。あたしは――――――――――エクソシスト、なの」
それから少女―――――ミユは自身について語りだした。 この世界の事、教団の存在、AKUMAというものの悲劇。 全てが信じられない話だったけれど、ミユが嘘をつくような素振りは一切見せないので信じられた。
そして―――――――AKUMAと戦う聖職者、エクソシストの存在。その元となる、イノセンス。
「・・・・・・君も、戦う・・・・・の」 なるべく聞き取り易いように話すと、ミユは理解したように頷く。 「あたしも戦うよ。エクソシストは人数少ないから、一人でも多い方が良いしね。」 こんなに小さいのに。そういうと、彼女は怒ったような顔をする。 「これでもあたし頑張ってんだよー?さっきもAKUMA退治の任務終えたばっかだったし」 好戦的に笑うミユに、一つの面影が被る。 絶望や憎しみ、負の感情だけを瞳に宿し、銃を握る少女。
『あなたが殺した、あなたが――――――――――!』
「―――――大丈夫?」 「・・・・・・・・・・っ、」 震えの止まらない手を、小さな手がそっと握った。 久し振りに触れる人肌の温もりに、ぼろりと目から雫が零れた。 「えっ、ちょっ・・・・・・あれ、あたし何か変なこと―――――」 「いや、違う、大丈夫」 慌てて袖で拭って、ミユを安心させるように笑う。 そして、自分の名を告げた。
「・・・・・・・・・・・・フェイ。フェイラン・レイだ」
そっか、と向こうも笑って、自分の名を呼んでくれた。
―――――――――――――――――――― >>37の続き。
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(I will〜) ( No.45 ) |
- 日時: 2007/07/31 12:55:12
- 名前: 竜崎総久◆OMBM0w5yVFM
- 参照: http://ameblo.jp/html202/
- 新しいピアスが欲しいと、乙香は言った。
だから誕生日には、尚が私に似合うピアスを選んでと。 一応は了承した尚だが、アクセサリーなんてつけたこともないし、そういう店に行っても、乙香について回っているだけだ。まさか、選ぶ立場になるなんて思ってもいなかった。 ―こんなとき、夏音(なつの)さんだったらどうするのかな。 ふと、そんなことを考え、尚は思わず苦笑した。 ……夏音。あんなにひどいことを言われたのに、気がついたら彼女のことを考えてる自分が居る。あんなに辛かったのに、まだ彼女を愛しいと思う自分が居る。 目に付いたピアスがあった。乙香に似合いそうで、そして。 …夏音が、選びそうなものだ。 友達へのプレゼントなのに、好きな人を基準にするなんて。 尚はまた、苦笑した。
(>>40の続きっぽい感じ)
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(なんかきもいですごめんなさい) ( No.46 ) |
- 日時: 2007/08/02 02:02:39
- 名前: 垣ゆうと
冷たいてのひらだ、と思った。少し汗ばんだ指先がすう、と僕の頬をなぞる。さ わるな。そう声を荒げてその手を叩く、奴は笑ったまま。(そんなに僕が滑稽か) そう問うことも出来たけれど、口は噤まれたまま、僕は奴に背を向けその場を 去った。みんみんみん。蝉の声がいつも通り喧しい、鬱陶しい夏の夕暮れだった。
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屋上 ( No.47 ) |
- 日時: 2007/08/02 14:50:26
- 名前: 色田ゆうこ
- (ああ、)
何だってこんなことしなければならないんだって俺は大量のプリントを抱えて 廊下を歩いていた。なんどもぶつかりそうになってそのたびにひやひやする。 廊下は走るな。俺も普段は走ってるけど。そしてふと立ち止まってああ蝉が 鳴いてるなと思った。夏。はやく夏休みになってはくれやしないだろうか。生 憎というかもちろん俺には時間のコントロールをするちからなんて全くないの でそう思うことしかできないのだが、
(おもうだけならただ、だ)
大きな中庭をはさんで向かいにある校舎の屋上が見える。そして、人影が。 夏だ。あつい。蝉が鳴いている。こんなあつい日に死にたいなんて、なぜ思う のか。落ちたいのか。そこから。落ちたら気持ちいいだろうか。風を、感じるん だろうか。ばかばかしい。こんなにあついのがいけないのだ。あいつも頭がおか しくなってるんだ。あつすぎて。 俺以外は、その人間の存在に気づいていなかった。皆窓の向こうになど、興 味なんてないし。ああ、なんで見つけてしまったんだろう。無論、時間をコント ロールするちからなんて俺は持っていない。あいつが死んだところでなにもでき ない。見なかったことにもできない。死ななくても、いいんじゃないだろうか。
(おもうだけならただ、だ)
生きる意味もわからないけれど。思うだけなら、タダ。しかし俺はこのプリント を教室まで運ぶという仕事が。しかしそうすれば、彼は死んでしまう。あのま ま。フェンスの外で足を震わせる彼。落ちてしまう。あいつが死んだら、なにも できない。 プリントが舞った。誰かに呼び止められた気がして、しかし、それどころではな い。なんどもぶつかって叫ばれて睨まれた気がして、しかし、今、それどころで は、ない。
ずるりと足を踏み外してがくりと体を揺らしたその男のワイシャツの襟をつかん で引き寄せたら背中がフェンスにあたった。フェンスがものすごい音をたてて歪 んで、彼は俺とともに、屋上のコンクリートにたたきつけられていた。痛い。あ たまが。ぶつけた。ぐっと体を持ち上げると、ゆがんだはずのフェンスがもとに戻 っていることに気づいた。時間をコントロールするちからなんて、俺は持ってい ない。可笑しい。なにかが大量に、目の前をふわふわと飛んでいた。さっき、 俺がぶちまけたプリントみたいに。しかしこちらはやわらかくて白い。くしゃみをし そうだ。
(羽、)
羽だった。やわらかくて白い。小さい。おどろいて俺を凝視する彼と目が合う。 普通。普通の子供。俺と同じくらいの歳の、男。しかし、これは、この羽は、
「天、使…………?」
思うだけなら、タダだった。
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(幸せの次の日の朝) ( No.48 ) |
- 日時: 2007/08/02 16:14:31
- 名前: 阿是羅◆T/m6vOA2DTM
- 好きな子と両想いになるってのは偉大だ。
片想いの時よりも頭が好きな子のコトしか考えないし。 毎日、自分の隣で微笑んでくれるしね。
「おはよっ、佐藤くん♪」
菅原が元気な声で俺に挨拶してきた。 そのせいか眠気がバッとぶっ飛んで、俺の重かった瞼はパッと上がる。
「おーい?佐藤くーん?」
挨拶を返さない俺に菅原が俺の目の前で手を振る。
「ん?あ、悪りぃ。おはよ。」 「どしたの?眠いの?」 「さっきまでは眠かった。・・・けど菅原の挨拶でぶっ飛んだ。」 「そう?ははっ、私佐藤くんの目覚まし時計みたいだねっ。」
と、にっこりとした笑顔で言った。 朝っぱらから幸せだ・・・。と思っていたその時だ。
「オイオイオイッ!朝っぱらからラブラブだねー。」
俺の背中に声の主が寄りかかった。 ・・・大体誰なのかは想像つく。
「啓・・・お前、意外と重いな。」 「はぁっ?この俺が重いだとっ!?」
そう言うと俺の背中から離れて、俺の肩をワシッと掴んで揺さぶった。 コイツは土田啓。俺の中学からの親友である。 ちなみに啓には昨日の出来事を話しておいた。
「・・・と、それより。」
と言って俺の肩から手を離し言った。
「二人共、カップル成立おめでとー☆」
ニッと笑って俺と菅原を交互に見やった。 チラッと横目で菅原を見やると少し俯き加減で頬をうっすら紅く染めていた。 それを見た瞬間、俺たち付き合ってるんだということを改めて実感した。
「おっはよー♪佐藤くんに綾に啓ー♪」
無駄にテンションの高い女子の声が聞こえた。 声をしたほうを見ると、啓の彼女である斉藤幸が手を大きく振って歩いてきていた。
「・・・啓、斉藤って無駄にテンション高くね?」 「ん、そうだな。でもそこがアイツの良いトコだ♪」 「土田くんって、幸にベタボレだね。」
啓が「んなわ(けねーっつーの!!)」と言いかけたところで斉藤が俺たちのところまでやって来た。
「何?何の話してたの?」 「いや、啓が斉藤にベタボレっつー話を、」 「違うっつーの////」 「えっ?んもぉー啓ったらぁ、そんなに照れなくてもイ・イ・の・にっ!」
勢いよく斉藤が啓の背中をバシッ!と叩いた瞬間にチャイムが鳴った。
「げぇっ!!」 「チャイム、鳴っちゃったね。」 「調度背中叩いたタイミングと同じね、さすがアタシ♪」 「いててて・・・まず教室まで走るぞっ!」
啓の言葉でみんな、いっせいに教室まで走った。
この日の朝は、いつもより幸せで楽しくて・・・。 だけど、その幸せは朝だけで。 ・・・この日、俺は聞いてはいけないコトを聞いてしまったんだ。
(>>5の続き)
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(過呼吸/ユウヤ、とレイ) ( No.49 ) |
- 日時: 2007/08/02 19:54:22
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- ふと気が付くと息がしづらくなっていた。
「あ………、れ、」
喉元に手をやる。ひくひくと規則的に震えるそれ。 どう考えても、普段の自分の喉の運動とはちがう 動きをしていた。けれど、確か初めての感覚では ない。小学生の頃はこんなことしょっちゅうだっ た。しかしいつまでたってもこの突然の発作には 慣れることができない。 やばい。じわじわじわと、どこか遠くで蝉のこえ が聴こえる。じわじわじわ。その音とともに、ま るで、夏が僕のちからを奪っていっているようだっ た。ゆっくりと。暑さが頭を支配して、遂に、呼吸 がとまった。
「……つ……、っ、う………!」
ぎゅう、と指で首をよわく絞める。そうでもしない と、逆に、息を何処かへ持っていかれそうだった。 いきなり水中に放り出されたかのように、酸素が 身体から消失した。けれど水中と違って、どうしよ うもないほど暑い。苦しい。ひゅうひゅうと、音の ない風が体中を弱弱しく駆け巡る。だれか。
「…かっ、……、……っ」 (だれか、たすけて)
薄れゆく景色のなかで、坂道のむこう、聞きなれた 声と、見慣れた黒髪が、こちらへ向かってくるのを 感じた。
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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.50 ) |
- 日時: 2007/08/08 16:23:30
- 名前: 壱ノ由華
- 初めてですが〜・・・・。よろしくお願いします。
『灰色の羽の天使』
『落ちこぼれ!!!!』 聞きなれない少女の声が聞こえる・・・・。 何故、 貴方は私の事をそう言うの? 知らない人なのに 私は落ちこぼれなんかじゃない。 私は―――――――
「あれ・・・・・?」 目が覚める。 いつもの朝・・・・・。 「変な夢見たなあ・・・・。」 白い羽のついた人達が、 ある人を『落ちこぼれ』と言って、何処かから突き落とす・・・・。 ある人・は、分からない。顔が見えない。 でも・・・・確か・・・・。 「里奈・・・・里奈!!!」 「ほえ?」 外から声が聞こえる・・・・。 「あ・・・・優李!」 外には友達の優李が。 「ごめん!!!ちょっと待ってて!!」 私はこの時、さっきのことを軽く考えていた。 まさかこれが・・・・・ 私の人生を180℃変えるなど・・・・ 思っても見なかった・・・・。
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