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短筆部文集 2冊目 (残暑の暑さに耐えつつ制作しましょう!)
日時: 2007/08/27 00:34:26
名前: 黒瀬
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

短筆部文集なんと2冊目。おめでたいねえ。
今回も100話になるまで書き続けるよ。夏も気合入れてがんばろーね。

連載も突発もオッケーな自由度高い企画なんだけど、一応ルールは守ってもらわないと。
じゃあとりあえずここでのルール、ね!(箇条書きで)

・参加できるのは短筆部部員のみ。書きたいよ! って子は、まず入部届け(笑)を出してください。
・台本書き(情景を書いていない文章)禁止。
・文章は文字数がオーバーしない範囲……ですが、あとから編集して付け足すこともオッケー。
・リクを貰ったり募集したりするのも可。ばんばんしちゃってくださいな。
・ギャル文字などは厳禁。誰でも読める文を書いてね。
・一次創作・二次創作どちらでも。ただ、(ないと思うけど)年齢制限のかかるようなものは書かないこと。
・リレー小説のキャラ、自分のオリキャラを出すのは一向に構いません。でも、他の方のキャラを借りるときはちゃんと許可を貰ってからにしてね!

間違ってもこちらには参加希望などを書かないでくださいね。

入部希望はこちらへ。⇒http://ss.fan-search.com/bbs/honobono/patio.cgi?mode=view&no=9912

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Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.31 )
日時: 2007/07/21 22:59:35
名前: 垣ゆうと

 銀さん、そんなのはね、慰めにしかならないんですよ。


 破れた赤いチャイナ服と針を片手に、新八はぽつりと呟いた。向かいのソファー
に座って、ぼんやりとその細い針が、器用に赤い布を縫い合わせていくのを見てい
た。破れているのは右手の袖口。奴め、またどこぞのガキと喧嘩をしてきたらしい。


 銀さん、僕等はね、所詮なんの繋がりも無い他人なんですよ。赤の他人。


 がらがらがらと勢い良く玄関の扉を開け、奴は笑顔で帰ってきた。銀ちゃん聞い
てよ私ケンカ勝ったよ。顔は砂まみれ。破れた袖口を見た新八にこってり怒られて
少し拗ねて、さっきまたどこかに遊びに行った。夕飯までには帰ってくるヨー。俺
と新八は顔を見合せて笑った。


 銀さん、ちょっと、寝ないで、聞いて下さいよ。僕は真剣なんですから。銀さん
愛には終わりがあるでしょう? 愛というか、恋に。恋には終わりがあるでしょう、
恋人って永遠じゃないでしょう? 他人同士の繋がりなんて、薄いもんだと思うで
しょう? 母親と子供、父親と子供は家族になれても、母親と父親は家族にはなれ
ないとかって、良く言うじゃないですか。


 今日の夕飯は味噌汁と卵焼きとなんか魚にしよう。そうしよう。神楽が帰ってき
たら準備をしよう。新八はまだ縫わなきゃならん神楽の服があるらしい。ならババ
アに作らせよう。それで下で食おう。ついでに店のあまりもんにあやかろう。神楽
が帰ってきたら。


 銀さん、僕等も同じなんですよ。僕等だって所詮、の、赤の他人の枠に入るんで
す。明日も一緒にご飯を食べていますか僕等は? みんな同じ時間を生きていたと
しても、一緒にいると言い切れませんよ僕は。僕等は、所詮赤の他人ですからね。
所詮、の、赤の他人なんです。


 

 神楽が帰ってきたら。新八はそれまでには手に持っている縫い物を終わらせてい
るだろう。だからそしたらまず、みんなで、さんにんで、借りてきたビデオを見な
くちゃいけない。明日には返さなきゃいけなかったのに、うっかり忘れていた。そ
うだそうだそうだった。借りてきたのは神楽と新八がぎゃーぎゃー観たいと騒いだ
ものなのに、奴ら、ちっとも見やしねえ。今度から奴らの希望は聞かないことにし
よう。そうしよう。浮いた金でいちご牛乳を買おう。さんにんで飲むとすぐに無く
なっちまうから、2本は買っておかなくては。




 でもね銀さん・・・おかえり神楽ちゃん。




「タダイマー!ねえ銀ちゃん聞いてヨー!酢昆布いっこ階段とこで落としちゃって
 よー、三秒ルールでまだ平気じゃー!と思って素早く拾ったら、手の中で酢昆布
 潰れちまって…」
「うお臭っ!酢昆布臭!お前の手!」
「うおー!!酷いヨー!!おらおら嗅げー!」
「何なんだお前はー!」
「はいはい神楽ちゃん、手、拭こうねー」

 


 でもね銀さん。新八が神楽の手をお湯で濡らしたタオルで拭きながら、また、ぽ
つりと呟く。神楽がもっと優しく拭いてよー痛いよーなどとぶつぶつ言っている。
神楽の白い幼い手を見詰める彼の顔が、くしゃりと歪んで微笑んだ。








「僕も、その慰めに縋りたいんですよ」






 事情を飲み込めない筈の神楽が、ただ何にも言わずに新八の頭を撫でた。結構聡い
奴なのかもしれないと思ったが、どっか痛いのか新八と、やはりすっとんきょうなお
約束のボケをかました。慰めだなんてことは分かっていた。
(偽りのファンタジー) ( No.32 )
日時: 2007/07/22 00:16:05
名前: 莉月 一姫

(この気持ちはあふれるだけで...)

「ねぇ・・・やっぱり私のこと嫌い、なの・・・?」
自分でも声が震えているのが分かる。
怖いんだ。あなたからの返答が。
どんなに強がっても、寂しくないふりをしても・・・

大好きだから

「ごめん・・・本当にごめん・・・別れ」
俯きながら言う彼の返答を私はそれ以上聞くことは出来なかった。
足が体が勝手に動いて私は駆け出していた。

どうして...?
どうして伝わらないんだろう。

「はは・・・振られちゃったよ」
空しく私の独り言は虚空に溶け込む。

「結局は私が一方的に好きなだけだったよ・・・迷惑じゃなかったかな・・・」

違う。
本当はそんなこと思っていない。

例え嘘でも一緒にいて欲しかったんでしょう?

それだけ私は彼に執着してしまっていた。
一人で勝手にあなたに溺れていたんだよ・・・
まるで御伽噺のお姫さま気取り。
でも・・・でも、そうだったとしても・・・


xxxあなたがくれた林檎なら例え毒入りでも構わない。だからどうか私に、私だけにその林檎を下さい・・・・・xxx
Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.33 )
日時: 2007/07/22 01:43:58
名前: 黒瀬
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

ぱぁん。

軽くて鋭い音が、耳の鼓膜を震わせた。同時に、左頬に痛みが駆け抜ける。
(たたかれた。)反動で、俺の顔は右に揺れた。
右を向いた顔のまま、頬を押さえて、横目で目の前の男を見る。
黒髪の男は、いつもと同じきつい双眸で、俺をじいと見つめていた。
右手が、俺の顔と同じ方向に流れている。

「何しやがんでィ」

できるだけ低い声で言ったつもりだったが、勿論相手が怯むことなんてない。
少しも揺るがない瞳の奥には、静かな憤りが見えた。

「ふざけるんじゃ、ねえよ」

俺よりも数段低い声音で、男は言葉を紡ぐ。
地を這うような声だったが、勿論俺は怯まない。

「おまえ、自分がやったこと、わかってんのか!」

ぴいん、と鋭くよく透る声が部屋中を震わせる。
男は、俺の頬を叩いた右手を元に戻し、固く握り締めた。

「ばかやろう。ふざけんな。
 いつもは涼しい顔してるくせして、土壇場では考えなしな馬鹿な行動をしやがるんだ!」

馬鹿、馬鹿、と連呼されるが、不思議と苛立ちはしなかった。
だって。(あんたがそんな哀しそうな顔することねーのに……)

「……俺なんかほっといて、自分だけ逃げりゃよかったんだ。
 いつもしてるみてえに。庇う必要なかったのに。
 そうすりゃ、」

お前の手が使い物にならなくなることなんて、なかったんだ。
男の顔が悲痛に歪む。そんな顔を見ながら、俺は、
(馬鹿な人だなあ)
なんて思った。

「……ひじかたさん」
「お前、わかってんのか。そんな暢気な顔しやがって。
 もう使えねーんだぞ。しかも両手だ。
 もう、剣が握れねーんだぞ。わかってんのか」
「…わかってまさァ」
「わかってねェ!」
「わかってまさァ」

包帯が巻かれた両手をぐっと握り締める。
つもりだったが、あまり力は入らなかった。

「俺は、あんたを助けた。
 そのせいで俺ァ手の神経がきれて使いもんにならなくなったが、あんたは無傷だ。
 ちゃんとわかってる。それが一番いいことなんだって。
 ねえ、土方さん。俺ァちゃんとわかってるんでィ。
 後悔なんざちっともしてねえ。むしろ、」

俺も誰かを助けられるようになったんだって、ちょいと感動してるんですよ。
本音を呟いて、笑ってみる。
するとみるみる、男の顔はくしゃくしゃに歪んでいった。

「……馬鹿野郎。
 てめえは、最低最悪の、大馬鹿野郎だ」
「ええ。そーですねィ」

あーこれでチャイナ娘との喧嘩もやりづらくなるなあ、
と頭の隅で思いながら、俺は清々しい思いだった。
Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.34 )
日時: 2007/07/22 10:48:32
名前:
参照: http://monokuro00labyrinth.web.fc2.com/

「どもっ、沖宮先輩初めまして」

そう、目の前の少年が人懐っこそうな笑顔で言った。
俺より一つ下の二年生で、紅(こう)が連れてきた<友達>。

「一度会ってみたかったんスよね。俺、前から先輩のこと尊敬してたんスよ。何でも図書室の本を読破したとか」

俺には絶対無理っスよー、とやはり笑みを絶やさないで彼は言った。
そもそも、俺は彼のことを知らない。正確に言うと知らなかった、か。
後輩の紅朱羽(こう あかね)が珍しく俺の教室にやってきたと思ったらその隣には男子生徒がいた。
結構男前な顔をしていて、けれど印象を与えるのはその顔よりも性格だった。
初めて会った先輩にも関わらず、緊張している様子もなく前々から知っていたかのように話しかけてくる。
結構引っ込み思案な紅とは正反対で、だから俺は何故彼と彼女が一緒にいるのか解らなかった。ただ、

「友達の峰君です。沖人く……沖宮先輩の話をしてたら是非会いたいって言って」

そう言われたからへぇそうなんだと思って、別に興味があるわけでもない。
紅がその<友達>に、俺の何を話していたかというのは多少気になったけれど。

「沖宮先輩の家がすっげえ美味い蟹料理店だって聞いて、朱羽ちゃんが今日行くって言うから俺も駄目かなって訊いてみたんスよ」
「一人増えるなら先に言っておいた方がいいと思って。駄目、ですか……?」

不安そうな顔で俺を見上げる紅。それだけの為にわざわざ階の違う三年生の教室に来たというのか。
別にアポ無しでも良かったと俺が言うと、彼の方が屈託のない笑みで返した。

「俺が言ったんです。挨拶してた方がいいかなって」

その時丁度昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り響き、彼の隣に立っている彼女は慌てたようにスピーカーを見上げた。
峰君、次移動教室だから早く行かなきゃ。そんなことを言い、俺に一度礼をするとぱたぱたっと騒がしく行ってしまった。
彼女の後姿を見送りながら、まだ少年がその場にいることに気付く。

「行かなくていいのか」
「ええ、一言言いたくて」 そこで、今までの無垢な笑顔とは一変。彼は意味有りげに微笑む。

「朱羽ちゃんは俺が貰いますよ」

煩かった雨と風の音が一瞬聞こえなくなり、それはまるで、嵐の前の静けさのようだった。


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>>24の続きです。
(場所なんて関係ない) ( No.35 )
日時: 2007/07/22 15:46:40
名前: Gard
参照: http://watari.kitunebi.com/

 ゆっくりと下ろした目蓋の向こう。そこにはいつもの授業風景が広がっていた。
 ただちょっと違うのは、あたしの大事な友達がぼーっと上の空だったってことだけ。それ以外は変わりない。
 まぁ、だからこそ私はいつもの如く目蓋を下ろしたのだけれど。
 下ろしただけでは音って消えない。聞こえてくる教師の声に数式(奇しくも数学の時間だった)を頭の中に展開させる。
 ただ、それだって面倒なので、思考を放棄する。
 そして眠りの世界へ…………。





 授業が終わって叩き起こしてきたのは、何故かこっちに来てた隣のクラスの弟だった。
「姉貴! ちょ、あれ何とかしてよ!」
「……うっせーのよ、礼治。つかあれって何さ」
「あれはあれだよ!」
 半分以上悲鳴の混ざった声で訴えられる。
 主語を隠すなと言いたいのに全然伝わっていない。伝わってないのではなくて、ただ言いたくないだけなのかも。
 そう思ってると、ある一点を礼治が指さしているのが見える。
「うげ」
 思わず声が漏れた。
 礼治の指が指し示す方向にはあたしの友達とその彼氏の姿。ピンク色のオーラが見えるような気がする。
 思わず腕に鳥肌を立てながら(なんか精神に悪いと思う、知り合いがああしてるのって)あたしは礼治を見た。
「ごめん、あたしにも無理」
「…………だと思った」
 がっくりと肩を落と弟を慰めるためにポフポフと肩を叩いてやる。
 時計に目をやれば、どうやら昼休みになっていたらしい。そう言えば今日の数学、四限だっけ。
 友達の手には二つの弁当箱(!)。どうやら彼氏と食べるために作ってきたらしい(!!)。
 当の彼氏はどうやらそれを事前に聞いていたのか、迎えに来たといったところだろう。
「で、何であんたがここにいるの?」
「……恭哉の付き添い」
「あれ、何時の間に名前呼び?」
「ついこないだ」
「はーん、漸く学校でも名前呼び出来る仲になったわけ」
「うるせーよ、姉貴」
 そんな私達の視線は同時に問題の二人の方へ向かってしまった。
 そして同時に後悔する。
 まだピンクのオーラが発せられていた。思わず高速で目を逸らす。
「ば、場所ぐらい気にしろ……」
「姉貴、それ、本人達に言って」
「無理。恋は盲目」
「だったら諦めて」
 がっくりと姉弟揃って肩を落とす。
 ああもう、これからこういう光景を目にすること、多くなるのかしら。
 …………やってける自信、ないかもしれない。

―――――――――――――――――――――――――
>>22の続き)
>>83へ続く)
(むなしい/レイとユウヤ) ( No.36 )
日時: 2007/07/24 06:03:53
名前: 黒瀬
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

「死んでよ、夕弥。」



そんな僕の言葉は虚しく空を切った。……刀なんて持ってないけど、僕はきみを殺すつもりだった。方法なんて考えてないけど、僕はきみを殺すつもりだった。べつに憎くない。恨みもない。だけど殺さなきゃいけないから。だから。僕はきみを殺しにきた。頸を絞めるとか、袋に詰めて海に投げるとか、なにか硬くて頑丈なもので殴るとか、方法は幾らでもあった。だけどやっぱりいきなり殺してしまうのは卑怯かもしれないと思ったから、わざわざ姿を現して、きみに宣告をしたんだ。死神みたいに。(そしたら、何故かきみは笑ってしまった。)ふつうはみんな恐がるはずなんだ。みんな死ぬのがこわいから。誰かをのこして死ぬのが恐いから。記憶をのこしたまま死ぬのが恐いから。死にたくないはずなんだ。(なのになのに、)なんで君は微笑ってるんだろう。まるで自分の子供に母が向けるような、やわらかな微笑だった。目の前の少年の笑顔を、そんなふうに僕は見ていた。どうして笑うの。どうして。(僕はきみを殺すって言ってるのに。)そして、眉をハの字に下げて笑うきみは、その口を開いた。



「黎。僕がきみに殺されるっていうなら、それこそ喜劇だよ。
 両手を広げて、きみに殺されてあげる。だから、」「もう、泣かないで。」



哀しい。悔しい。僕は目の前のきみがとても憎かった。悔しい。虚しい。どうしてきみは、僕と一緒に死なないんだろう。
Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.37 )
日時: 2007/07/24 21:44:25
名前:
参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

それは、ふとした偶然。

偶然その日は任務が無くて、偶然門の外の森を散歩していて、偶然其処を通りかかった。

通りかかった、その場所に。

人が落ちていた。


「・・・・・・・・・・・・・え、何これ」


落ちていた、とは変な言い方だと思うがそういう表現しか出来ない。
まるで上空から投げ落とされたように、薄汚れた外套を身に纏った人が倒れていた。

「ねぇ、この人何処から来た?」

背後の門番に問いかけてみる。・・・・・確か、物凄く長い名前の。
知らねぇ、いきなり降って来やがった、とそっけない返事を返されて、ありがとうと手を振る。

「このままにしてもおけないし、ねぇ・・・・・・」

さてどうしたものか、と思案していると、人影が微かに呻き声をあげて動いた。
「・・・・・あ、大丈夫、きみ―――」
声をかけた途端、人影がびくりと反応して、こちらに手を突き出す。
その手に握られているのは、小振りなナイフ。
酷く汚れて、微かに錆びているその鉄の物質が、がたがたと震える手に握られていた。
長い黒髪の間から覗くのは、見開かれた暗緑色の瞳。
薄汚れた顔の中で一際目立つその瞳は、全てに絶望したような、哀しい瞳をしていた。

「・・・・・・・・大丈夫」

ナイフを握る、震える右手を強く握り締める。
人影がびくりと震えて手を引き抜こうとしたが、そのまま押し留めた。

「大丈夫、此処は大丈夫だよ。・・・・・・何があったの?」

優しく呟くと、人影―――――青年は酷く聞き取りにくい英語で何か呟き、どさりと倒れこんだ。

手放されたナイフを取り上げ、少女は思案していた。

その青年が呟いた、言葉を。


『―――――――――――――――死にたい、』
(弾けた歯車/東雲歌夜&篝雪人) ( No.38 )
日時: 2007/07/25 03:55:22
名前:
参照: http://mist26.jugem.jp/



あんまり長くない真っ赤な髪に、それよりちょっと暗い色の瞳。
誰かと喋ってるときは人の良さそうな笑顔をつくるのに、1人でいるとちょっと目つきが悪い。
背は標準より少し高めで、後姿はすらっとしてて痩せている。
たまに変な時間に登校してくるおかしい奴。
篝雪人、2組の出席番号11番。


「…恋かも」
「また?」


あはは、歌夜ってたくましい乙女だよね。


……それ、どういう意味よ?


*****


「…あ」


ボンヤリしていたら部室にスティックを忘れてきてしまった。
ごめーん先帰っててー!なんて、無駄に元気良く走り去ったのも本当は独りになりたかったからかもしれない。

電気が消えて薄暗い部室は、さっきまで喧しいエレキギターの音が鳴り響いていたなんて思えないぐらい不気味。
さっさと帰らなきゃ。
黒いケースに仕舞われたスティックを拾い上げて、そそくさとドアへ向かった。


「うわ…」

部室の鍵を閉め、廊下を歩く。
想像以上に陰鬱だ。外も陽が落ちてしまっているし、校内の灯りは最終下校が過ぎれば消されてしまう。

(もー最悪!)

足音が反響したり、自分の幽かな影がガラスに映ることすら背筋を凍らせる始末。
それなのに自分にはまだ“職員室へ鍵を戻す”という仕事が残っている。
バックレちゃおうかな、と一瞬思ったが翌朝の大惨事を想像した瞬間そんな気持ちは萎えてしまった。


「…しょうがない、全力疾走よー…」



鍵を戻さずに騒ぎを起こす前に、用務員に激突して大恥をかいたというのは此処だけの話である。

Re: 短筆部文集 2冊目 (夏の暑さに耐えつつ制作しましょう!) ( No.39 )
日時: 2007/07/25 22:41:14
名前: 深月鈴花
参照: http://ameblo.jp/rinka0703/

音楽室の前で足を止めた。
切なくも美しいピアノの音色が私の耳を擽ったからだ。
この曲は、確か・・・いや、曲名なんてどうでもいい。
扉の向こうでは、制服を着崩すした黒髪の少年が細い指でピアノを奏でていた。
私雨崎 瑠音(あまさき るね)のクラスメイトであり、想い人。
高城 光(たかしろ こう)、というのが彼の名だった。
普段はぶっきらぼうでおおざっぱな性格の彼が、この音色を奏でているという真実はまだにわかには信じがたい。
初めてこの音色を聞いたのは親友と喧嘩をして泣いているときだった。
そう、あの時も、この位置だった。
扉から顔だけを出して、
『入れば?特別にリクエスト受けてやるよ。』

それだけ言われたのを鮮明に覚えてる。
くそぅ・・・あの男・・・字は汚いくせにピアノは嘘みたいにうまいんだから反則だ。
そんなことを考えていたら、突然音楽室の扉が開いた。

「入れば?特別にリクエスト受けてやるよ。」


なんなんだ、この男は。
私をキュン殺したいのか。(←?
こんな状況で、私は仲直りをした親友に言われた言葉を思い出した。



「・・・ねぇ、高城君」
「なんだよ?」




「大切な人のリクエストしか受けないって、本当?」





「・・・だったら?」
「えっ?えーと・・・」
まさか、「私のこと大切なの?」なんておこがましい事を聞けるはずもなく。
「大切だって言ったら、なんかしてくれるわけ?」
「キスでもしたげよっか?」
冗談交じりで、笑ってそう言った。
「いや、いい。」
「まぁ、そりゃそう・・・」
だよね。と言おうとした唇を、柔らかいものがふさいだ。
やがて離れると、目の前で意地悪げに笑っている高城君がいた。



「俺、キスはする側だからv」




なんで、こんな男好きになっちゃったのかなぁ・・・

まぁ、はまっちゃったものはしょうがないし?
とことん愛してやろーじゃないの!!


覚悟しときなさいよ、高城 光!!




少女の心で生まれた小さな決意を、少年はまだ知らない。
(BLAST) ( No.40 )
日時: 2007/07/26 11:07:31
名前: 竜崎総久◆OMBM0w5yVFM

 裏切りというのは、ひどく利己的な感情だ。
 裏切った側も、裏切られた側も。それは諸刃の剣となって、相手を、そして自分自身を傷つける。
 だから尚は、何があっても人を裏切ってはいけないと思った。同時に、どんなにつらくても、裏切られたと思ってはいけない、と思った。そうすることで、自分自身を守っていたのかもしれない。
 ……でも、それならば。
 この身を引きちぎられそうな感情に、何と名づければ良いのだろう。
 好きだと。そう言ってくれたのは、あれは、嘘だったのだろうか。今まで彼女の色々な言葉に励まされ、救われ、頑張ってきたと言うのに。
 ……あれは、社交辞令だったの?
 辛い。怖い。泣きたい。誰もいない屋上に立ち、尚は一人思う。
 …結局、私だけが変わらずにいるんだな。
 びゅうと、強い風が吹いて、少し伸びた髪を遊ばせた。

>>27の続きっぽい感じ)

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